魔都 恐怖仮面之巻
『魔都 恐怖仮面之巻』(まと きょうふかめんのまき)は、栗本薫によるミステリ小説。
概要
[編集]孤独を託つ作家が迷い込んだ幻の世界、もうひとつの「明治」を舞台とした幻想的なミステリ。同年に著者が製作したミュージカルを小説化したもの。
講談社が企画した複数の作家による「創業八十周年記念推理特別書下ろし」シリーズの1作品として、1989年6月28日に単行本(ISBN 4-06-193982-3)が刊行された。のち、1992年8月15日に講談社文庫版(ISBN 4-06-185212-4)が刊行されている。表紙は単行本版、文庫版ともに木原敏江が担当している。
本書の刊行後、1989年8月に同タイトルのミュージカルが上演された。また、本書もしくはミュージカルの続編についての構想もあり、『魔都 怪盗おぼろ之巻』とのタイトルが予告されていたが[1]、小説、ミュージカルともに実現はしなかった。
あらすじ
[編集]孤独を託つ26歳の作家・武智小五郎は、自らが描く小説の幻想的な夢の中に生きたいと願っていた。ある夜、酒の席で友人の作家の大河原三郎に暴言を吐かれた武智は、いつしか夜の霧の中に囚われ、意識を失っていた。
意識を取り戻した武智は、自分が憧れていたような異世界にいることに気がついた。そこは過去の世界ながらも、実際には存在しなかったはずの明治47年の帝都・東京であった。
その世界での彼はしがない作家ではなく、警視総監の信頼も厚い名探偵であった。そして彼を待っていたのは、かの切裂きジャックのごとき「恐怖仮面」と呼ばれる紳士風の人物による連続殺人事件であった。名探偵として事件の捜査に当たる一方、美しい女給との恋に落ちた武智。その彼の前に男装の麗人・桂木環が現れた時から、武智の運命が大きく動き出す。
主要な登場人物
[編集]〈現実世界〉
- 武智小五郎
- 26歳の売れない小説家。
- 大河原三郎
- ベストセラー作家。武智の友人。
〈明治47年の世界〉
- 武智小五郎
- 世界的に有名な名探偵。
- 三島道庸
- 日本国警視総監。
- 春子
- カフエ・プランタンの女給。武智と恋に落ちる。
- 桂木環
- 男装の麗人。婦人参政権運動の活動家にして小説家。
- 恐怖仮面
- 帝都を騒がす謎の連続殺人鬼。
ミュージカル
[編集]本書と同タイトルのミュージカルが、1989年8月3日から20日まで 銀座博品館劇場にて上演された。
キャスト
[編集]- 女給春子/桂木環:旺なつき
- 武智小五郎:南條豊
- 三島総監/春山編集長:治田敦
- 両津巡査/大河原三郎:後藤宏行
- 髭田巡査長/森川:神山陣
- 女給おさよ/ミチ子:高瀬美亜
- 豊三:ハマン
- さなえ:杉山紗月
- 女給お光:園山晴子
- 女給お加代:朝吹里香
- 女給おとら:夏姫久美子
- 警官山田/辻音楽師:岡本順太郎
- 警官佐藤:西村仁
- ショール屋のおかみ:北林優香
スタッフ
[編集]- 作・演出:中島梓
- 演出補:菅原道則
- 作詞:アンあんどう/中島梓
- 作曲:中島梓/難波弘之
- 音楽:難波弘之
- 振付:江夏淳
- 振付助手:古川里香
- タップ振付:本間窓奈
- 歌唱指導:泉忠道
- 装置:金井勇一郎
- 照明:塚本悟/浜照男
- 音響効果:岩下雅夫
- 舞台監督:矢田貝誠吾/福井啓介
ミュージカル・ナンバー
[編集]- 魔都のテーマ
- ハードロック
- おまえはピエロ
- 夢の中へI春子ヴァージョン
- 帝都行進曲
- 明治四十七年
- 恐怖仮面
- カフェへおいで
- 夢幻―MUGEN
- 春子の子守唄
- 夢の中へIIデュエット・ヴァージョン
- 春子
- 闇に生きる
- カフェ・プランタン
- 桜の唄
- まるでヴィオロンのように
- 光vs闇
- 困・つ・た
- あこがれ
- 地獄へ堕ちろ
- 炎
- 赤い月
- DA・RE・DA
- 夢の中へIIIコーラス・ヴァージョン
- AGAIN(もう一度)
- カーテン・コール
脚注
[編集]- ^ 著者のエッセイ『アマゾネスのように』(中島梓名義)による。