魔術師のおい
『魔術師のおい』(まじゅつしのおい、原題:The Magician's Nephew )は、C・S・ルイスによる児童文学「ナルニア国物語」7部作のうち、6番目に執筆・出版された作品。1955年に出版された。ナルニア年代記として時系列順にみると、『ライオンと魔女』に先立つ最も古い時代、ナルニア創成期の物語にあたる。日本語表記は、岩波書店で出版されている瀬田貞二訳による。
概要
[編集]ナルニアの天地創造の物語である。聖書の創世記のアナロジーになっているが、キリスト教の知識が無くても物語として十分楽しめる作品である。ふたりの子どもたちの目を通して、ナルニアの天地や生き物たちの創造と、そこにいかにして悪が入り込んだかが語られる。
登場人物
[編集]- ポリー・プラマー:ロンドンに住む女の子
- ディゴリー・カーク:ポリーの隣の部屋に住む男の子
- アンドルー・ケタリー:ディゴリーの叔父で錬金術師
- レティティア・ケタリー:アンドルーの妹
- ジェイディス:異世界チャーンの最後の女王
- フランク:ロンドンの馬車屋
- ヘレン:フランクの女房
- イチゴ:フランクの馬車馬
- アスラン:ライオン、ナルニアの創造主。
あらすじ
[編集]魔術師アンドルーは、異世界と行き来のできる魔法の指輪を作った。その効き目を試そうとするアンドルーの策略により、甥のデイゴリーとその遊び友達ポリーは「世界と世界の間の林」に飛ばされる。そこにはいくつもの池があり、それらの池はそれぞれ別の世界につながっていた。
池のひとつから滅びた世界チャーンにいったポリーとディゴリーは、その世界の最後の女王ジェイディスに出会う。二人がロンドンに戻るとき、ジェイディスがついてきてしまい、ロンドンで大変な騒ぎを引き起こす。二人はジェイディスを元の世界に連れ戻そうとして、別の世界にジェイディス、伯父アンドルー、馬車屋とその馬とともに入り込んでしまう。
その場所は最初からっぽで暗闇に包まれていたが、やがて不思議な歌声とともに新しい世界の創造が始まる。ナルニアの世界の誕生である。歌声の主は大きなライオン、アスランであった。アスランは、ディゴリーに遠い荒れ野を越えた先にある果樹園に行ってリンゴをひとつ、もぎ取ってくるように命じる。
日本語訳
[編集]- 魔術師のおい ナルニア国ものがたり (6) (瀬田貞二 訳、ポーリン・ベインズ(イラスト)、岩波書店)
- 魔術師のおい ナルニア国物語1(土屋京子 訳、YOUCHAN(挿画)、松本朗(上智大学文学部教授)解説、光文社古典新訳文庫、2016年)、ISBN 978-4334753405
- 新訳 ナルニア国物語6 魔術師のおい(河合祥一郎 訳、pako(挿画)、角川文庫、2023年)、ISBN 978-4041108581