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高鳴 (元)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

高 鳴(こう めい、1209年 - 1274年)は、モンゴル帝国フレグ・ウルスおよび大元ウルス)に仕えた漢人官僚の一人。字は雄飛。真定府の出身。

概要

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高鳴は幼いころから文学に長けることで知られ、河東の元裕に推薦されたこともあったが、仕官には至らなかった。しかし、モンゴル帝国による華北支配が始まり、真定地方がトルイ家の領地となると、トルイの三男であるフレグが高鳴を見出した[1]。このころ、フレグの兄モンケが第4代皇帝に即位したことにより、フレグは西アジア方面の遠征軍の司令官に起用されていた。そこで、フレグは遠征に出発する前(1252年ころ)に人材収集に務めており、高鳴には3名の使者を派遣してこれを招請した[1]。これに応じて高鳴は西アジア遠征軍に従軍し、フレグに対して20余りの献策を行い、しばしばフレグから称賛を受けたという[1][2]

西アジア遠征従軍の功績から高鳴はフレグ家の領地である彰徳路の総管に推薦され、恐らく1257年頃に華北に戻って総管の地位に就いた[3]。しかし1259年己未)にモンケ・カアンが急死するとその弟でフレグの兄でもあるクビライが即位し、高鳴はクビライから誥命金符を下賜されて翰林学士・兼太常少卿に任じられた。1268年(至元5年)に御史台が新設されると高鳴は侍御史に抜擢され、多くの裁定を行った。このころ、御史台に並ぶ官署の中書省枢密院で政治の滞りが続いていたため、「督事官」を置くべきであるとの声があったが、御史台の外に監督官を置くことをやめるよう働きかけたと伝えられている[4]

1270年(至元7年)には三つめの省を立てるべきとの議論が起こったが、高鳴は官署が増えるだけ事務が繁雑となること、また官が多すぎることにより責任の所在が曖昧となることなどを理由に反対し、クビライも高鳴の意見を容れて省の新設を取りやめとしている。また、盗賊の横行に対して代表的な者を処刑し見せしめとすべきだとの意見が出た時には、かえって天下の反発を呼び後の害となると反対し、クビライも高鳴の意見を善しとしたとの逸話がある[5]

1272年(至元9年)には吏礼部尚書の地位に移ったが、1274年(至元11年)に病のため66歳にして亡くなった[6]

脚注

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  1. ^ a b c 松田 1980, p. 43.
  2. ^ 『元史』巻160列伝47高鳴伝,「高鳴字雄飛、真定人、少以文学知名。河東元裕上書薦之、不報。諸王旭烈兀将征西域、聞其賢、遣使者三輩召之、鳴乃起、為王陳西征二十餘策、王数称善、即薦為彰徳路総管」
  3. ^ 高鳴の総管就任の時期は『元史』に記載がないが、『秋潤集』巻60「韓府君墓表」に「明年春、降璽書、起聘君、太原高公鳴為彰徳路総管」とあって、丙辰年(1256年)以後のことと推定される。ただし、この文章には欠落があって「1256年の翌年」とは断定できない(松田 1980, p. 44)
  4. ^ 『元史』巻160列伝47高鳴伝,「世祖即位、賜誥命金符、已而召為翰林学士、兼太常少卿。至元五年、立御史台、以鳴為侍御史、風紀條章、多其裁定。尋立四道按察司、選任名士、鳴所薦居多、時論咸称其知人。天下初定、中書・枢密事多壅滞、言者請置督事官各二人、鳴曰『官得人、自無滞政、臣職在奉憲、願挙察之、毋為員外置人也』」
  5. ^ 『元史』巻160列伝47高鳴伝,「七年、議立三省、鳴上封事曰『臣聞三省、設自近古、其法由中書出政、移門下、議不合、則有駁正、或封還詔書。議合、則還移中書。中書移尚書、尚書乃下六部・郡国。方今天下大於古、而事益繁、取決一省、猶曰有壅、況三省乎。且多置官者、求免失政也、但使賢俊萃于一堂、連署参決、自免失政、豈必別官異坐、而後無失政乎。故曰政貴得人、不貴多官。不如一省便』。世祖深然之、議遂罷。川・陝盜起、省臣患之、請專戮其尤者以止盜、朝議将従之、鳴諫曰『制令天下上死囚、必待論報、所以重用刑・惜民生也。今従其請、是開天下擅殺之路、害仁政甚大』。世祖曰『善』。令速止之」
  6. ^ 『元史』巻160列伝47高鳴伝,「鳴每以敢言被上知、嘗入内、值大風雪、帝謂御史大夫塔察児曰『高学士年老、後有大政、就問可也。』賜太官酒肉慰労之、其見敬礼如此。九年、遷吏礼部尚書。十一年、病卒、年六十六、有文集五十巻」

参考文献

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  • 元史』巻160列伝47高鳴伝
  • 新元史』巻188列伝85高鳴伝
  • 松田孝一「フラグ家の東方領」『東洋史研究』第39巻第1号、東洋史研究會、1980年6月、35-62頁、CRID 1390572174787539072doi:10.14989/153772hdl:2433/153772ISSN 0386-9059