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香港丸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

香港丸東洋汽船の貨客船。のち、大阪商船に売却。日露戦争では仮装巡洋艦となった。

東洋汽船がサンフランシスコ航路用にイギリスの造船所に発注した3隻のうちの一隻で、ジェームス・レーング造船所には註された2隻のうちの片方が「香港丸」である[1]。1898年7月4日に進水 [2]。1899年2月8日に就航した[3]

日露戦争の際には1904年1月19日に徴用され、仮装巡洋艦となった[4]。横須賀鎮守府籍[5]。雇用代金は60万5385円[5]。兵装は安式40口径15cm砲2門、安式40口径8cm砲4門、47mm重速射砲2門、小銃42、拳銃24であった[5]

就役後、「香港丸」は「日本丸」とともに黄海で船舶の臨検任務に従事した[6]。3月5日、2隻は津軽海峡の哨戒を命じられ、以後約1か月間同方面で活動する[7]。5月、「香港丸」と「日本丸」は遼東半島への陸軍上陸に先立ち橋頭保確保のため上陸した海軍陸戦隊を運んだ[8]。8月末からは2隻は宗谷海峡、千島方面などの哨戒を行った[9]

12月から「香港丸」と「日本丸」は南方へ派遣された[10]。その目的はロシアの第2太平洋艦隊が使用する可能性のある港湾の偵察及び、2隻が活動することでロシア艦隊の行動を遅疑させることであった[11]。2隻は12月13日に佐世保を出港し、シンガポールに到着後、ジャワ島沿岸を航行し、ボルネオ西岸などを経て1905年1月18日に佐世保に戻った[12]。次いで2隻は再び北方で活動した[13]。「香港丸」は6月末から樺太占領作戦に参加した[14]

戦後の10月23日、横浜沖で実施された凱旋観艦式に参加[15]

1906年1月、サンフランシスコ航路に復帰[16]

1908年に「天洋丸」と「地洋丸」がサンフランシスコ航路に就航すると、「香港丸」は南米西岸航路に移された[17]

1913年7月、「香港丸」は北米航路に加えられた[18]

1914年6月23日、大阪商船に売却[19]。神戸・基隆線に投入された[20]

シベリア出兵時、徴用される[21]

1924年、満洲航路(大阪・大連線)に投入される[22]

1934年、屏東丸型の見合い船として、あんです丸型とともに解体された[23]

脚注

[編集]
  1. ^ 『東洋汽船六十四年の歩み』20-22ページ
  2. ^ 『東洋汽船六十四年の歩み』35ページ
  3. ^ 『東洋汽船六十四年の歩み』37ページ
  4. ^ 『東洋汽船六十四年の歩み』65、428ページ
  5. ^ a b c 石橋孝夫『日本海軍仮装巡洋艦入門』59ページ
  6. ^ 石橋孝夫『日本海軍仮装巡洋艦入門』57-58ページ
  7. ^ 石橋孝夫『日本海軍仮装巡洋艦入門』58ページ
  8. ^ 石橋孝夫『日本海軍仮装巡洋艦入門』57ページ
  9. ^ 石橋孝夫『日本海軍仮装巡洋艦入門』58、60ページ
  10. ^ 石橋孝夫『日本海軍仮装巡洋艦入門』60-61ページ
  11. ^ 「第1編 露国増遣艦隊に対する作戦準備/第5章 香港丸日本丸の南洋巡視 付 新高の南清巡視」292-293ページ、第1画像
  12. ^ 石橋孝夫『日本海軍仮装巡洋艦入門』61ページ
  13. ^ 石橋孝夫『日本海軍仮装巡洋艦入門』61-64ページ
  14. ^ 石橋孝夫『日本海軍仮装巡洋艦入門』85ページ
  15. ^ 石橋孝夫『日本海軍仮装巡洋艦入門』88ページ
  16. ^ 『東洋汽船六十四年の歩み』72ページ
  17. ^ 『東洋汽船六十四年の歩み』108-109ページ
  18. ^ 『東洋汽船六十四年の歩み』135ページ
  19. ^ 『東洋汽船六十四年の歩み』136ページ。『大阪商船株式会社五十年史』年表42ページ
  20. ^ 『大阪商船株式会社五十年史』231ページ
  21. ^ 『大阪商船株式会社五十年史』80ページ
  22. ^ 『大阪商船株式会社五十年史』245ページ
  23. ^ 『大阪商船株式会社八十年史』86ページ

参考文献

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  • 石橋孝夫『日本海軍仮装巡洋艦入門』潮書房光人新社、2024年、ISBN 978-4-7698-3361-1
  • 『東洋汽船六十四年の歩み』東洋汽船、1964年
  • 『大阪商船株式会社五十年史』大阪商船、1934年
  • 『大阪商船株式会社八十年史』大阪商船三井船舶、1966年
  • 「第1編 露国増遣艦隊に対する作戦準備/第5章 香港丸日本丸の南洋巡視 付 新高の南清巡視」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C05110083700、「極秘 明治37.8年海戦史 第2部 戦紀 巻1」(防衛省防衛研究所)