餃子バル
餃子バル(ぎょうざバル)は、餃子をつまみにアルコールを提供する居酒屋(バル)形態の飲食店の総称[要出典]。アルコールにあうよう様々な趣向を凝らした餃子を、スペインのバル(居酒屋)のようなスタイルで楽しむ。バルとはバール(bar)のことで、南ヨーロッパで簡易食堂や軽食喫茶店、居酒屋などを指す。
歴史
[編集]「バル」とは南欧に見られる飲食店の形態で、日中は喫茶店、夜は酒場として機能する店舗である。日本でも20世紀末頃からバルを名乗る店が開かれるようになり、「スペインバル」「イタリアバル」などの国名のほか、「肉バル」「魚介バル」といった素材の名称を冠する店も見られるようになった[1][2]。
さまざまなバルが開店する中、餃子を扱うバルとして登場したのが餃子バルである。それまで餃子は専門店やラーメン店で、ビールと合わせて食べるものであり、男性的なイメージが強かった。これに対し餃子バルは、ワインやシャンパンなどを飲み物に、バル形式で餃子を供することで女性客の集客を図った[3]。
餃子バルの元祖は、高円寺に開店した「餃子バル」(店名)である。専門店で餃子を食べ歩いて研究した店主が、ワインエキスパートの妻と組んで開店した[4]:172。また後のブームのはしりと言えるのが、2009年に渋谷に出店した立吉餃子である[5]。当初は通常の餃子専門店であったが[4]:172、餃子にワインを合わせて出し、餃子自体もワインと相性が高まるよう工夫することで、女性客は1.5倍に増えたという[6]。一方、2012年1月にはパリで、やはり餃子とワインを合わせて出す「GYOZA BAR」が開店し[7]、こちらも店の前に行列ができる人気を集めた[8]。
2013年8月にはぐるなびに初めて「餃子バル」なる語が登場し、同様の形態で「餃子バル」を名乗る飲食店も増え始めた[3]。さまざまな飲食店を手掛けるアガリコは2014年、餃子バル「亜GALICO餃子楼」を北千住に開店した[9]。アガリコ社内の独立支援制度を利用した店舗で[10][11]、後に2018年9月に新宿に出店するなど[12][13]、店舗数を増やした。既存の店も拡大し、立吉餃子は2016年3月に青山に2店目を出店した[14][4]:172。パリのGYOZA BARも2014年7月には2店目が開店した[15][16]。
このパリでの人気と、日本での餃子バルの躍進を結びつける見方もある。2015年8月には、パリの店に感化されたフランス料理のシェフがプロデュースした「ギョウザバー コムアパリ」が開店した[5][17]。また2014年にシャンパーニュに餃子を合わせて出す「スタンドシャン食」を大阪に出店した店主は、フランスでの流行を聞いて成功を確信し、シャンパーニュに合う餃子を開発して開店に臨んだという[4]:171。
餃子バルという形態による餃子人気は、餃子を扱ったイベントにも影響を及ぼした。2016年10月に中野区で開催されたイベント「餃子フェス」には、5日間で8万人が集まった[18]。2016年9月には「関西餃子バル」と称して飲食店50店が餃子の趣向で競うイベントが、餃子の王将の発祥地である京都の四条大宮で開催された[19]。このイベントは翌2017年1月には西院、大宮、烏丸と範囲を広げて開催されている[20]。
餃子バルという店舗形態に合わせた独自のメニューの開発も進められている。2017年6月に開店した大阪の餃子バル「餃子酒場 餃、」は、焼かずに氷水で締めた「お刺身餃子」を提供している[21]。また東京・中野の「餃子バル ぴこれ」は泡の立つスープの中に水餃子が仕込まれた「泡とエビの水餃子」を開発し、女性客8割がこれを注文する人気を得た[22]。
脚注
[編集]- ^ 戸川祐馬「飲食店「バル」繁華街で人気 南欧の味 手ごろな値段」『中日新聞』2014年5月9日付朝刊20面。
- ^ 小出和明「全国で「街バル」イベント大盛況 マップ見ながら「おいしい散歩」」『サンデー毎日』第96巻第54号、2017年11月5日、毎日新聞出版、32ページ。
- ^ a b
- 「週刊外食倶楽部: 旬トレンド 注目集める「餃子バル」」『毎日新聞』2016年4月14日付東京本社朝刊22面(東京)。
- 「ぐるなびのチョットぐな話 女性人気でじわり、こだわり「餃子バル」」『FujiSankei Business i』2016年5月21日付8面。
- ^ a b c d 「TOKYO & ワインバル・クルージング 第28回 餃子バル」『ワイン王国』第18巻第5号、ワイン王国、2016年9月、170-173ページ。
- ^ a b 日本経済新聞社・日経BP社. “おしゃれ餃子のバルがいまブームの理由|MONO TRENDY|NIKKEI STYLE”. NIKKEI STYLE. 2019年9月22日閲覧。
- ^ 「メニュートレンド: ギョウザとワインのマリアージュ 「キッチンタチキチ」」『外食レストラン新聞』2013年4月1日付。
- ^ 魚住桜子「パリで超話題! 「Gyoza Bar」の、ワインに合う餃子──名店直伝 あの料理を家庭でも」『GQ JAPAN』2012年8月2日。
- ^ フランス・パリに行列ができる餃子レストランが登場 / 本当に美味しいのか食べに行ってみた
- ^ 「今、多店舗化を進めるトップに学ぶ 創業から3年で10店に 「アガリコ」大林社長の戦略」『日経レストラン』第487号、2014年10月、16-19ページ。
- ^ 「アジア料理をさらに深掘り 細分化するお客に応える 大林芳彰
Big Belly 代表」『日経レストラン』第500号、2015年1月、28-29ページ。 - ^ 渡辺未来「連日大盛況、北千住「アガリコ1/3」の並びに、アガリコ7店舗目となる「亜GALICO餃子楼(アガリコギョウザロウ)」 5月20日オープン」
- ^ 「都内初出店など4店舗が新規出店!「新宿西口ハルク食堂酒場ハル★チカ」がリニューアル9月21日(金)「横丁スタイル」×「バル&ビストロ」の新たな空間が誕生!」2018年8月17日。
- ^ 「小田急電鉄、「食堂酒場ハル★チカ」リニューアル 女性客取り込み意識」『日本食糧新聞』2018年9月28日付。
- ^ 桑原恵美子「表参道で“おしゃれ餃子のバル”戦争!?」
- ^ “L'art du Gyoza selon Shinichi Sato”, Le Chef, (26 août 2014)
- ^ Tomas, Patrick (2014-10-03), “Où peut-on déguster le véritable Gyoza à Paris ?”, Le Fashion Post
- ^ パリで人気の餃子バーが逆輸入!「gyoza bar comme à paris」(東京・青山/餃子×ワイン)
- ^ 村手久枝「限定 要チェック 餃子フェス(世田谷区) シェアする楽しみ 魅力 17~20日 具やタレ 多彩 30種超」『東京新聞』2017年3月10日付朝刊。
- ^ 宮川佐知子「京都・四条大宮で3、4の両日、「関西餃子バルin大宮」が開かれる」」『毎日新聞』2016年9月3日付大阪本社朝刊27面。
- ^ “【関西餃子バル】大人気イベントが、西院・大宮・烏丸の3駅を舞台に開催決定”. WEBLeaf (2016年12月13日). 2019年9月22日閲覧。
- ^ 「メニュートレンド: 斬新!焼かないギョウザ創作メニュー 「餃子酒場 餃、」」『外食レストラン新聞』2018年2月5日付。
- ^ 「メニュートレンド: ギョウザを泡で包む新発想 フランス料理から着想」」『外食レストラン新聞』2018年10月1日付。