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非自発入院

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

非自発入院(ひじはつにゅういん、英語: involuntary commitment)、行政入院英語: civil commitment, sectioning, being sectioned[1][2]とは、認定された代理人によって深刻な症状があると見なされる人に対しての、法的手続きである。これによって精神障害患者は、精神科病院(入院)または地域社会(外来)での治療を裁判所に命じられる。

非自発入院の基準は、さまざまな国によって法で定められてる。入院手続は緊急入院がなされた後に行われることが多く、ひとまず急性症状を有する人は比較的短期間(例えば72時間)入院となり、その期間に精神障害の専門家によって評価と安定化がなされ、またその間にさらなる入院が必要・適切かどうかが判断される[3]

歴史的には、20世紀初頭の3分の1、さらにその後も大部分の地域では、公的精神施設入院のすべてと、民間施設入院の大部分は、非自発的なものであった。それ以来、非自発入院の廃止または大幅な削減に向けての取り組みがなされ、これは脱施設化(deinstitutionalisation)として知られる傾向である[4]

なお欧米ではコミュニティ治療命令英語版として、外来による治療命令を裁判所が発することができる制度がある。

国際連合

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国際連合総会決議46/119「精神障害者の保護と精神的健康管理の改善のための原則」は、 非自発的入院を実行するためのいくつかの手順を支持する、拘束力のない決議である[5]

世界保健機関は、1996年に「精神医療法:10の原則」を公表し、以下の指針を示している[6]

精神医療法:10の原則MENTAL HEALTH CARE LAW: TEN BASIC PRINCIPLES

  1. 精神保健の推進と精神障害の予防。全ての人は最良の精神的健康づくりと精神疾患予防によって、利益を得られるべきである。
  2. 基本的精神保健ケアへのアクセス。必要とする全ての人は、基本的精神保健ケアへにアクセスする権利を持つ。
  3. 国際的に承認された原則に則った精神保健診断。診断は国際的に承認を得た基準(WHO ICD-10など)に沿うべきである。
  4. 精神保健ケアにおける最小規制の原則。患者への規制は最小限とされるべきである。
  5. 自己決定権。あらゆる介入は事前に患者からの同意を求めるべきである。
  6. 自己決定権を擁護される権利。患者は自己決定が可能だが困難を覚えている場合、当人の選択した専門的第三者からの支援によって利益を得ることができるとされる。
  7. レビュー手続きの利用。判事、後見保護者、医療機関などによる意思決定に際しては、必ずレビュー手続きを経なければならない。
  8. 定期的レビューのメカニズム。患者への処置(治療)や拘束(入院)が長期間に渡る場合には、機械的に定期レビューが実施される制度が存在していなければならない。
  9. 意思決定者のクオリティ。判事、後見保護者などについては、認証制度を持たなければならない。
  10. 法の遵守。決定は現行法に沿ってなされるべきであり、その他の基準や裁量で行ってはならない。

—  世界保健機関、2014年[6]

各国の状況

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イギリス

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イギリスでは2007年精神衛生法英語版を根拠としてなされる。

日本

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日本では精神保健及び精神障害者福祉に関する法律を根拠とし、資格を取得した精神保健指定医によってなされる[7]。以下の種類が存在し、その条件を満たすことはカルテに明記されなければならない[7]

非自発入院の判断基準(日本精神科救急学会ガイドライン)[7]

  1. 精神保健福祉法が規定する精神障害と診断される。
  2. 上記の精神障害のために判断能力が著しく低下した病態にある
    (精神病状態,重症の躁状態またはうつ状態,せん妄状態など)。
  3. この病態のために,社会生活上,自他に不利益となる事態が生じている。
  4. 医学的介入なしには,この事態が遷延ないし悪化する可能性が高い。
  5. 医学的介入によって,この事態の改善が期待される。
  6. 入院治療以外に医学的な介入の手段がない。
  7. 入院治療についてインフォームドコンセントが成立しない。

医療保護入院は非自発入院の判断基準をみたす場合に、判断能力のある家族等(いない場合は市町村長)の同意によってなされるものである[7]。入院期間は原則1年以内とされており、社会的入院のツールとならないよう考慮されるべきである[7]

措置入院は非自発入院の判断基準をみたし、かつ自他を傷つける行為に及んだか,もしくは及ぶ 可能性が高い場合になされるものである[7]

自他を傷つける行為(日本精神科救急学会ガイドライン)[7]

  • 自傷行為
    1. 致死性の高い自殺企図
    2. 致死性が高いとはいえない自殺企図
    3. 自殺の意思表示行動
    4. 自殺の言語的意思表示
  • 他害行為(未遂を含む)
    1. 身体的損傷を伴う対人暴力
    2. 前記以外の対人暴力
    3. 器物破損
    4. その他の触法行為相当の他害行為
    5. 触法行為以外の他害行為・迷惑行為

脚注

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  1. ^ Being sectioned (in England and Wales)”. Royal College of Psychiatrists (August 2013). 2013年10月閲覧。
  2. ^ What does 'being sectioned' mean?”. Rethink Mental Illness. 2013年10月閲覧。
  3. ^ Texas Young Lawyers Association (January 2008). “Committed To Healing: Involuntary Commitment Procedures” (PDF). Austin, TX: State Bar of Texas. p. 2. 2018年1月閲覧。 “The law provides a process known as Involuntary Commitment. Involuntary commitment is the use of legal means to commit a person to a mental hospital or psychiatric ward against their will or over their protests.”
  4. ^ Hendin, Herbert (1996). Suicide in America. W. W. Norton. p. 214. ISBN 978-0-393-31368-0. OCLC 37916353 
  5. ^ UN General Assembly (17 December 1991). “A/RES/46/119: Principles for the protection of persons with mental illness and the improvement of mental health care”. United Nations. 16 June 2016閲覧。
  6. ^ a b Division of Mental Health and Prevention of Substance Abuse (1996). MENTAL HEALTH CARE LAW: TEN BASIC PRINCIPLES (PDF) (Report). World Health Organization. WHO/MNH/MND/96.9。
  7. ^ a b c d e f g h 精神科救急ガイドライン2015』一般社団法人日本精神科救急学会、2016年、Chapt.1.V。ISBN 978-4892698798http://www.jaep.jp/gl_2015.html 

関連項目

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さらに読む

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外部リンク

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