階段を昇る裸婦
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カタルーニャ語: Dona nua pujant l'escala フランス語: Femme nue montant l'escalier | |
作者 | ジョアン・ミロ |
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製作年 | 1937年 |
種類 | デッサン |
寸法 | 78 cm × 55.8 cm (31 in × 22.0 in) |
所蔵 | ミロ美術館、バルセロナ |
『階段を昇る裸婦』(かいだんをのぼるらふ、仏: Femme nue montant l'escalier)は1937年にジョアン・ミロが厚紙に鉛筆と木炭で描いたスケッチ。この絵はバルセロナのミロ美術館が所蔵している[1]。
来歴
[編集]ミロはスペイン内戦のさなかにこの絵を描いた。彼は当時パリに住み、グラン・ショミエールの肖像画のクラスに通い始めていた。彼はカタルーニャで起こっている事態を表現しようと、人物画の制作に立ち返った。その心境は、階段を昇る歪んだ裸婦の姿で現わされた[2]。この時期の他の作品には、『古い靴のある静物』と『スペインを救え』がある[3]。
解説
[編集]画像外部リンク | |
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[[:en:File:Duchamp - Nude Descending a Staircase.jpg|マルセル・デュシャン『階段を降りる裸体No.2』]] |
ミロ美術館によると、「内戦の道義的な悲劇に対するミロの失望感が、人物の極端な変形、気だるげな手足、階段を昇ろうと苦難する様子に現われている[4]。」すなわち人物の変形と苦難の様子は、スペイン内戦の反映だと解釈されている[4]。画面の右上では窓か箱らしきものから、光線が室内に射しこんでいる。女は右手で梯子を掴もうとしている。この梯子は、脱出の象徴としてミロがいくつかの作品で使っているものである。女の露出した性器は大きく誇張され、『排泄物の山を前にした男と女』で描かれたものと似ている[5]。
この『階段を昇る裸婦』は、マルセル・デュシャンの『階段を降りる裸体No.2』との関連性が指摘されている。1912年にバルセロナのダルマウ画廊で開かれたキュビスト展で、ミロは初めてこのデュシャンの作品を見ている[6][7]。興味深いことに、デュシャンの絵は全くのオリジナルではない。それは、動物の動作を最初に記録した写真のひとつである、エドワード・マイブリッジの写真に触発されたものだった[8]。マイブリッジが示した階段の女の動作は、デュシャンとミロの想像力を捉えただけでなかった。同時代のサルバドール・ダリもデュシャンの作品のオマージュを制作している。ダリの作品では、ミロ同様、モデルはやはり階段を昇っている[9]。
展示
[編集]開始 | 終了 | 展覧会 | 会場 | 都市 | 出典 |
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1964年 | 1964年 | テート・ギャラリー | ロンドン | [10] | |
1964年 | 1964年 | チューリッヒ美術館 | チューリッヒ | [11] | |
1978年9月20日 | 1979年1月22日 | Dessins de Miró | ポンピドゥー・センター | パリ | [12] |
1980年6月1日 | 1980年10月31日 | ベラスケス宮殿 | マドリード | ||
1986年11月21日 | 1987年2月1日 | チューリッヒ美術館 | チューリッヒ | [13] | |
1987年2月14日 | 1987年4月20日 | デュッセルドルフ市立美術館 | デュッセルドルフ | [13] | |
1988年11月24日 | 1999年1月15日 | Impactes. Joan Miró 1929–1941 | ミロ美術館 | バルセロナ | [14] |
1989年2月3日 | 1989年4月23日 | Joan Miró: Paintings & Drawings 1929–1941 | ホワイトチャペル・ギャラリー | ロンドン | [15] |
1990年7月4日 | 1990年10月14日 | マーグ財団美術館 | サン・ポール・ド・ヴァンス | [16] | |
1993年4月20日 | 1993年8月30日 | ミロ美術館 | バルセロナ | [17] | |
1993年10月6日 | 1994年1月11日 | ニューヨーク近代美術館 | ニューヨーク | [18] | |
1995年2月11日 | 1995年4月17日 | デュッセルドルフ市立美術館 | デュッセルドルフ | ||
1995年5月12日 | 1995年7月16日 | クンストハレ・ヴィーン | ウィーン | ||
1995年7月28日 | 1995年10月22日 | ヴェローナ近代現代美術館 | ヴェローナ | ||
1996年2月26日 | 1996年5月5日 | バルセロナ現代文化センター | バルセロナ | ||
1997年7月7日 | 1997年11月11日 | Miró, ceci est la couleur de mes rêves | ピエール・ジアナダ財団 | マルティニー | [19] |
1998年5月15日 | 1998年8月30日 | Joan Miró. Creator of new worlds | ストックホルム近代美術館 | ストックホルム | [20] |
1998年9月18日 | 1999年1月10日 | Joan Miró. Creator of new worlds | ルイジアナ近代美術館 | フレデンスバーグ | [21] |
2000年7月4日 | 2000年11月5日 | マーグ財団美術館 | サン・ポール・ド・ヴァンス | ||
2001年10月23日 | 2002年1月27日 | Rèquiem per les escales | バルセロナ現代文化センター | バルセロナ | [22] |
2002年3月6日 | 2002 年6月24日 | La Révolution surréaliste | ポンピドゥー・センター | パリ | [23] |
2002年7月20日 | 2002年11月24日 | ノルトライン=ヴェストファーレン美術館 | デュッセルドルフ | ||
2004年11月25日 | 2005年2月6日 | Joan Miró. Arquitectura d'un llibre | ミロ美術館 | バルセロナ | [24] |
2007年10月25日 | 2008年1月27日 | Joan Miró. 1956–1983 Sentiment, emoció i gest | ミロ美術館 | バルセロナ | [25] |
2011年4月14日 | 2011年9月11日 | Miró. | テート・ギャラリー | ロンドン | [26] |
2011年10月15日 | 2011年3月18日 | Miró i l'escala de l'evasió. | テート・ギャラリー、ミロ美術館 | ロンドン、バルセロナ | [27] |
2012年5月6日 | 2012年8月12日 | ナショナル・ギャラリー | ワシントン | [27] |
2011年10月に開催された展覧会『ジョアン・ミロ:脱出の梯子』で展示された。
脚注
[編集]- ^ “Naked woman going upstairs”. 2011年11月6日閲覧。 - ミロ美術館による絵の写真と解説
- ^ Works by Joan Miró. Joan Miró Foundation. 1988. Ediciones Polígrafa.
- ^ “The Tate Modern discovers the most political Miró” (スペイン語). Diario de Mallorca. 2011年11月5日閲覧。
- ^ a b A New Approach To Joan Miró, Joan Miró Foundation, p. 41 2011年11月5日閲覧。
- ^ Clavero 2010, p.72-73
- ^ (カタルーニャ語) Surrealisme a Catalunya, 1924–1936: de l'amic de les arts allogicofobisme, Polígrafa, (1988-08-01), pp. p.17, ISBN 978-84-343-0539-7 2011年11月5日閲覧。
- ^ Rosa Maria Malet; Joan Miró (1993), Joan Miró, Edicions 62, pp. p.19, ISBN 978-84-297-3568-0 2011年11月5日閲覧。
- ^ Tomkins, Calvin (1996), Duchamp: A Biography, U.S.: Henry Holt and Company, Inc, ISBN 0-8050-5789-7
- ^ Judovitz et al, Dalia (2010), Drawing on art: Duchamp and company, Minnesota Press, pp. 147 2011年11月5日閲覧。
- ^ Jacques Dupin; Joan Mirâo; Ariane Lelong-Mainaud (2002), Joan Miró: catalogue raisonné : paintings, Daniel Lelong 24 September 2011閲覧。 cat num 151
- ^ Jacques Dupin; Joan Mirâo; Ariane Lelong-Mainaud (2002), Joan Miró: catalogue raisonné : paintings, Daniel Lelong 24 September 2011閲覧。 cat num 151
- ^ cat. núm. 145, repr. p. 70
- ^ a b cat. nº 108 repr
- ^ cat. nº 56 repr. p.88
- ^ cat. repr.
- ^ cat. nº 102, repr. p. 343
- ^ cat. nº 147 repr. p.343
- ^ cat. repr. p.226
- ^ cat. nº 40 repr. p.95
- ^ cat. nº 102 repr. p.113
- ^ cat. nº 84 repr. p.66
- ^ Agustí, Fancelli (25 October 2001). “Óscar Tusquets entona un réquiem emocionado por la escalera”. El País. 20 August 2011閲覧。
- ^ “La Révolution surréaliste. Fitxa de l'exposició” (PDF) (2002年). 20 August 2011閲覧。
- ^ “Joan Miró. Arquitectura d'un llibre”. Fundació Joan Miró (2004年). 29 September 2011閲覧。
- ^ “Joan Miró. 1956–1983 Sentiment, emoció i gest”. Fundació Joan Miró (2007年). 29 September 2011閲覧。
- ^ “Miró i l'escala de l'evasió. Fitxa de l'exposició” (2011年). 20 August 2011閲覧。
- ^ a b “Miró i l'escala de l'evasió. Fitxa de l'exposició”. Fundació Joan Miró (2011年). 20 August 2011閲覧。
関連文献
[編集]- Clavero, Jordi.J (2010), Fundació Joan Miró. Foundation's Guide, Barcelona: Polígrafa, ISBN 978-84-343-1242-5
- Joan Miró (1988), Obra de Joan Miró: dibuixos, pintura, escultura, ceràmica, tèxtils, Fundació Joan Miró-Centre d'Estudis d'Art Contemporani 5 October 2011閲覧。
- Jaques Dupin – Ariane Lelong-Mainaud. "Joan Miró. Catalogue raisonné. Drawings I 1901–1937" 2008. Daniel Lelong and Successió Miró