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階段を昇る裸婦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『階段を昇る裸婦』
カタルーニャ語: Dona nua pujant l'escala
フランス語: Femme nue montant l'escalier
作者ジョアン・ミロ
製作年1937年
種類デッサン
寸法78 cm × 55.8 cm (31 in × 22.0 in)
所蔵ミロ美術館バルセロナ

階段を昇る裸婦』(かいだんをのぼるらふ、: Femme nue montant l'escalier)は1937年にジョアン・ミロが厚紙に鉛筆と木炭で描いたスケッチ。この絵はバルセロナミロ美術館が所蔵している[1]

来歴

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エドワード・マイブリッジの『The Human Figure in Motion』(人体動作の連続写真集)にある「階段を降りる女」(1887年)。マルセル・デュシャンはこれに触発されて『階段を降りる裸体No.2』を描いた。

ミロはスペイン内戦のさなかにこの絵を描いた。彼は当時パリに住み、グラン・ショミエールの肖像画のクラスに通い始めていた。彼はカタルーニャで起こっている事態を表現しようと、人物画の制作に立ち返った。その心境は、階段を昇る歪んだ裸婦の姿で現わされた[2]。この時期の他の作品には、『古い靴のある静物』と『スペインを救え』がある[3]

解説

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画像外部リンク
[[:en:File:Duchamp - Nude Descending a Staircase.jpg|マルセル・デュシャン『階段を降りる裸体No.2』]]

ミロ美術館によると、「内戦の道義的な悲劇に対するミロの失望感が、人物の極端な変形、気だるげな手足、階段を昇ろうと苦難する様子に現われている[4]。」すなわち人物の変形と苦難の様子は、スペイン内戦の反映だと解釈されている[4]。画面の右上では窓か箱らしきものから、光線が室内に射しこんでいる。女は右手で梯子を掴もうとしている。この梯子は、脱出の象徴としてミロがいくつかの作品で使っているものである。女の露出した性器は大きく誇張され、『排泄物の山を前にした男と女英語版』で描かれたものと似ている[5]

この『階段を昇る裸婦』は、マルセル・デュシャンの『階段を降りる裸体No.2』との関連性が指摘されている。1912年にバルセロナのダルマウ画廊で開かれたキュビスト展で、ミロは初めてこのデュシャンの作品を見ている[6][7]。興味深いことに、デュシャンの絵は全くのオリジナルではない。それは、動物の動作を最初に記録した写真のひとつである、エドワード・マイブリッジの写真に触発されたものだった[8]。マイブリッジが示した階段の女の動作は、デュシャンとミロの想像力を捉えただけでなかった。同時代のサルバドール・ダリもデュシャンの作品のオマージュを制作している。ダリの作品では、ミロ同様、モデルはやはり階段を昇っている[9]

展示

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開始 終了 展覧会 会場 都市 出典
1964年 1964年 テート・ギャラリー ロンドン [10]
1964年 1964年 チューリッヒ美術館 チューリッヒ [11]
1978年9月20日 1979年1月22日 Dessins de Miró ポンピドゥー・センター パリ [12]
1980年6月1日 1980年10月31日 ベラスケス宮殿スペイン語版 マドリード
1986年11月21日 1987年2月1日 チューリッヒ美術館 チューリッヒ [13]
1987年2月14日 1987年4月20日 デュッセルドルフ市立美術館 デュッセルドルフ [13]
1988年11月24日 1999年1月15日 Impactes. Joan Miró 1929–1941 ミロ美術館 バルセロナ [14]
1989年2月3日 1989年4月23日 Joan Miró: Paintings & Drawings 1929–1941 ホワイトチャペル・ギャラリー英語版 ロンドン [15]
1990年7月4日 1990年10月14日 マーグ財団美術館英語版 サン・ポール・ド・ヴァンス [16]
1993年4月20日 1993年8月30日 ミロ美術館 バルセロナ [17]
1993年10月6日 1994年1月11日 ニューヨーク近代美術館 ニューヨーク [18]
1995年2月11日 1995年4月17日 デュッセルドルフ市立美術館 デュッセルドルフ
1995年5月12日 1995年7月16日 クンストハレ・ヴィーン ウィーン
1995年7月28日 1995年10月22日 ヴェローナ近代現代美術館 ヴェローナ
1996年2月26日 1996年5月5日 バルセロナ現代文化センター英語版 バルセロナ
1997年7月7日 1997年11月11日 Miró, ceci est la couleur de mes rêves ピエール・ジアナダ財団 マルティニー [19]
1998年5月15日 1998年8月30日 Joan Miró. Creator of new worlds ストックホルム近代美術館 ストックホルム [20]
1998年9月18日 1999年1月10日 Joan Miró. Creator of new worlds ルイジアナ近代美術館 フレデンスバーグ英語版 [21]
2000年7月4日 2000年11月5日 マーグ財団美術館 サン・ポール・ド・ヴァンス
2001年10月23日 2002年1月27日 Rèquiem per les escales バルセロナ現代文化センター バルセロナ [22]
2002年3月6日 2002 年6月24日 La Révolution surréaliste ポンピドゥー・センター パリ [23]
2002年7月20日 2002年11月24日 ノルトライン=ヴェストファーレン美術館英語版 デュッセルドルフ
2004年11月25日 2005年2月6日 Joan Miró. Arquitectura d'un llibre ミロ美術館 バルセロナ [24]
2007年10月25日 2008年1月27日 Joan Miró. 1956–1983 Sentiment, emoció i gest ミロ美術館 バルセロナ [25]
2011年4月14日 2011年9月11日 Miró. テート・ギャラリー ロンドン [26]
2011年10月15日 2011年3月18日 Miró i l'escala de l'evasió. テート・ギャラリー、ミロ美術館 ロンドン、バルセロナ [27]
2012年5月6日 2012年8月12日 ナショナル・ギャラリー ワシントン [27]

2011年10月に開催された展覧会『ジョアン・ミロ:脱出の梯子英語版』で展示された。

脚注

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  1. ^ Naked woman going upstairs”. 2011年11月6日閲覧。 - ミロ美術館による絵の写真と解説
  2. ^ Works by Joan Miró. Joan Miró Foundation. 1988. Ediciones Polígrafa.
  3. ^ The Tate Modern discovers the most political Miró” (スペイン語). Diario de Mallorca. 2011年11月5日閲覧。
  4. ^ a b A New Approach To Joan Miró, Joan Miró Foundation, p. 41, http://www.fundaciomiro-bcn.org/imgdin/spdossier/0010.pdf 2011年11月5日閲覧。 
  5. ^ Clavero 2010, p.72-73
  6. ^ (カタルーニャ語) Surrealisme a Catalunya, 1924–1936: de l'amic de les arts allogicofobisme, Polígrafa, (1988-08-01), pp. p.17, ISBN 978-84-343-0539-7, https://books.google.co.jp/books?id=KqZDAAAACAAJ&redir_esc=y&hl=ja 2011年11月5日閲覧。 
  7. ^ Rosa Maria Malet; Joan Miró (1993), Joan Miró, Edicions 62, pp. p.19, ISBN 978-84-297-3568-0, https://books.google.co.jp/books?id=o7e_jwEACAAJ&redir_esc=y&hl=ja 2011年11月5日閲覧。 
  8. ^ Tomkins, Calvin (1996), Duchamp: A Biography, U.S.: Henry Holt and Company, Inc, ISBN 0-8050-5789-7 
  9. ^ Judovitz et al, Dalia (2010), Drawing on art: Duchamp and company, Minnesota Press, pp. 147, https://books.google.co.uk/books?id=rt-BCXnPokUC&dq=stairs+duchamp+dali&source=gbs_navlinks_s&hl=en 2011年11月5日閲覧。 
  10. ^ Jacques Dupin; Joan Mirâo; Ariane Lelong-Mainaud (2002), Joan Miró: catalogue raisonné : paintings, Daniel Lelong, https://books.google.com/books?id=VVk9bwAACAAJ 24 September 2011閲覧。  cat num 151
  11. ^ Jacques Dupin; Joan Mirâo; Ariane Lelong-Mainaud (2002), Joan Miró: catalogue raisonné : paintings, Daniel Lelong, https://books.google.com/books?id=VVk9bwAACAAJ 24 September 2011閲覧。  cat num 151
  12. ^ cat. núm. 145, repr. p. 70
  13. ^ a b cat. nº 108 repr
  14. ^ cat. nº 56 repr. p.88
  15. ^ cat. repr.
  16. ^ cat. nº 102, repr. p. 343
  17. ^ cat. nº 147 repr. p.343
  18. ^ cat. repr. p.226
  19. ^ cat. nº 40 repr. p.95
  20. ^ cat. nº 102 repr. p.113
  21. ^ cat. nº 84 repr. p.66
  22. ^ Agustí, Fancelli (25 October 2001). “Óscar Tusquets entona un réquiem emocionado por la escalera”. El País. 20 August 2011閲覧。
  23. ^ La Révolution surréaliste. Fitxa de l'exposició” (PDF) (2002年). 20 August 2011閲覧。
  24. ^ Joan Miró. Arquitectura d'un llibre”. Fundació Joan Miró (2004年). 29 September 2011閲覧。
  25. ^ Joan Miró. 1956–1983 Sentiment, emoció i gest”. Fundació Joan Miró (2007年). 29 September 2011閲覧。
  26. ^ Miró i l'escala de l'evasió. Fitxa de l'exposició” (2011年). 20 August 2011閲覧。
  27. ^ a b Miró i l'escala de l'evasió. Fitxa de l'exposició”. Fundació Joan Miró (2011年). 20 August 2011閲覧。

関連文献

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