野良アプリ
野良アプリ(のらアプリ)とは、アプリケーションソフトのうち、オペレーティングシステムの開発元や通信事業者などが提供する公式のアプリケーションストアから提供される以外のもの。サイドロードとも呼ばれる。携帯電話(フィーチャーフォン)アプリでは「勝手アプリ(かってアプリ)」と呼ばれていたが、スマートフォン普及以降は「野良アプリ」の表現も多く使われている。
プラットフォームごとの「野良アプリ」
[編集]Android
[編集]Androidを搭載したスマートフォンでは、セキュリティオプションで「提供元不明のアプリ」を有効にすることで、Google Play以外から提供される任意のアプリファイル(APKファイル)をインストールすることができる[1]。Google Playから提供されるアプリは審査を通して掲載されているが、野良アプリには審査がなく、マルウェアや個人情報の流出など、悪意のあるコードが含まれているものが多いとされる[2]。
2015年には、Amazon.comが自社通販サイト用のAndroidアプリをGoogle Playから自社提供のアプリに変更し、いわゆる勝手アプリ(野良アプリ)として公開した[3]。
2018年には、人気ゲーム「フォートナイト」の配信元であるEpic Gamesが、Google Playを用いず、「野良アプリ」として配信することを発表した[4]。Google Playによる配信では、売上の30%をグーグルに支払う必要があるのを嫌ってのこととされる。
2021年には、Androidの人気野良アプリストア「APKPure」の公式アプリにアドウェアが含まれていたことが発覚し、当該バージョンの公開が打ち切られた[5]。
iOS
[編集]iOSの場合、原則としてアプリはApp Storeから入手する必要があり(カスタムB2Bなど、特定の顧客向けに開発されたアプリなどの例外はある)、「野良アプリ」を利用するためにはJailbreak(脱獄)と呼ばれる操作が必要となるが、これにはセキュリティ上の大きな懸念が生じる。そのため、脱獄不要で野良アプリをインストールする方法がたびたび考えられており、iOS向けの開発環境であるXcodeを用いて、開発中のアプリとして野良アプリを実行する方法[6]や、非公式のアプリストアである「AltStore」[7]などが知られている。
iモード
[編集]NTTドコモの携帯電話でのインターネット接続サービスであったiモードでは、2001年からアプリ実行環境としてiアプリが提供されていた。2001年発売の503iシリーズでiアプリの実行環境が搭載され、iアプリ上で動作するJavaアプリケーションが開発されるようになった。2004年に開催されたJava Technology Conference 2004において、当時NTTドコモのiモード部長であった夏野剛は「iモードやiアプリには勝手サイトや勝手アプリが登場した」といわゆる「勝手アプリ」に言及している[8]。
2010年には、Android等で提供されていた「ドコモマーケット」のiモード版を提供し、これまで勝手アプリとして配信するしかなかったiアプリを、ドコモマーケットの公式アプリとして配信できる仕組みを整えていくと発表した[9]。
BREW
[編集]au携帯電話のアプリ実行環境であったBREWでは、2001年の開発当初はBREWアプリは通信事業者であるKDDIの承認を得たアプリのみが配信され、いわゆる「勝手アプリ」は配信できなかった[10]。2003年にクアルコムジャパンのビジネス開発担当部長であった野崎孝幸は、勝手アプリの配信については否定的な見解を示していた[11]。
その後2007年にauから「オープンアプリプレーヤー」搭載機種が発売され、KDDIの承認を得ないアプリの配信が可能になっている[12]。
脚注
[編集]- ^ 海上忍 (2014年3月22日). “野良アプリって何? どうして存在するの? - いまさら聞けないAndroidのなぜ | マイナビニュース”. マイナビニュース. マイナビ. 2021年9月30日閲覧。
- ^ 安藤類央 (2017年4月19日). “CasperJSと類似画像分類で見えてきた、Android野良アプリの具体的な危険性:統計で見るサイバーセキュリティ群像劇(4)(1/2 ページ) - @IT”. @IT. ITmedia. 2021年9月30日閲覧。
- ^ 永江一石 (2015年3月15日). “Amazonさん、Androidアプリを突然勝手化して大炎上 - More Access! More Fun”. More Access! More Fun. 2021年9月30日閲覧。
- ^ Ryan Whitwam (2018年8月29日). “人気ゲーム、フォートナイト「野良アプリ」配信の重大危機 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)”. Forbes JAPAN. リンクタイズ. 2021年9月30日閲覧。
- ^ Zack Whittaker (2021年4月10日). “Androidの人気野良アプリストア「APKPure」公式クライアントに悪質なアドウェアが含まれていたと発覚 | TechCrunch Japan”. TechCrunch Japan. ベライゾンメディア・ジャパン. 2021年9月30日閲覧。
- ^ 湯木進悟 (2016年3月28日). “非正規アプリをiPhoneやAndroidスマホへインストールする方法 | ギズモード・ジャパン”. ギズモード・ジャパン. メディアジーン. 2021年9月30日閲覧。
- ^ “脱獄不要でiPhoneに非公式アプリをインストールできる「AltStore」レビュー - GIGAZINE”. GIGAZINE. OSA (2020年11月15日). 2021年9月30日閲覧。
- ^ 津田 啓夢 (2004年2月19日). “【Java Technology Conference 2004】”. ケータイWatch. インプレス. 2021年10月1日閲覧。
- ^ 園部修 (2010年7月30日). “モバイルを核とした総合サービス企業へ――NTTドコモ2011年3月期第1四半期決算:iモードのオープン化構想も(2/2 ページ) - ITmedia Mobile”. ITmedia Mobile. ITmedia. 2021年10月1日閲覧。
- ^ 吉岡綾乃 (2005年8月30日). “BREWアプリは公開まで、なぜ時間がかかるのか (1/3 ページ) - ITmedia ビジネスオンライン”. ITmedia ビジネスオンライン. ITmedia. 2021年10月1日閲覧。
- ^ 湯野 康隆 (2003年7月14日). “BREW関係者インタビュー クアルコム野崎氏、「シングルチップでも快適な環境を」”. ケータイWatch. インプレス. 2021年10月1日閲覧。
- ^ 浅賀美東江 (2006年10月11日). “auの携帯電話でもJavaの“勝手アプリ”が利用可能に--KDDI - CNET Japan”. CNET Japan. 朝日インタラクティブ. 2021年10月1日閲覧。