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フッ化酸素

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
酸化フッ素から転送)
二フッ化酸素
二フッ化四酸素

フッ化酸素(フッかさんそ、: oxygen fluoride)は、酸素フッ素からなる無機化合物である。現在 OF2O2F2O3F2O4F2、O5F2、O6F2[1] および O2F の7種類のフッ化酸素が知られている。二フッ化酸素は他のハロゲン化酸素と同様に水とフッ素との反応で生成するが、それ以外のフッ化酸素は低温下で二酸素 O2 と二フッ素 F2 の混合物に放電もしくは紫外線を照射することで生成する[2]。また、酸化フッ素(さんかフッそ、: fluorine oxide)と呼ばれることもある。また、フッ化酸素はロケット燃料の酸化剤として検討されている[3]

二フッ化酸素

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二フッ化酸素の球棒モデル

二フッ化酸素(にフッかさんそ、: oxyden difluoride)は、化学式が OF2 と表される常温で特異臭のある無色の気体。液体は淡黄色[2]。有毒。融点-223.8 °C、沸点-144.8 °C

水酸化ナトリウム水溶液にフッ素を通じるか、HF-KF の水溶液を電解すると得られる[4][2]。湿ったフッ化カリウムの存在下にフッ素を反応させる方法もある[3]。ガラスを侵さず、水にやや溶けるが、水溶液は酸性を示さない。125 °Cまで安定である[5]。フッ化酸素中最も安定で、単独では化学的に不安定というほどではない。しかしその強い酸化力に特徴があり、ハロゲンの単体や二フッ化酸素とは室温で爆発する[3]。水蒸気と混合しても室温で爆発する。放電下で H2CH4CO とは爆発的に反応する[2]

二フッ化二酸素

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二フッ化二酸素の球棒モデル

二フッ化二酸素(にフッかにさんそ、: dioxygen difluoride)は、化学式が O2F2 と表される褐色気体。液体は赤褐色、固体はオレンジ色。融点-163.5 °C、沸点-57 °C。分子構造は過酸化水素のような折れ曲がった線状分子である。O-O 結合長は121.7 pm、O-F が157.5 pm、∠FOO が109.3°、二面角は87.3°である[6]

二フッ化二酸素は、低圧力下の O2 と F2 の等モル混合気体中に低温77-90 Kで高圧放電すると得られる[7]。分解して酸素とフッ素になりやすい[5]。O-F 間距離140.9 pm、∠FOF 103.18°[6]。 -50 °Cでは半減期3時間ほどで O2 と F2 に分解する。 強力なフッ素化剤、酸化剤で、条件を制御すると OOF 基(フルオロペルオキシル基)が導入される。多くの物質は低温でもこれに触れると爆発的に反応し、四フッ化エチレン C2F4 も COF2、CF4、CF3OOCF3 に分解する。脂肪族一級アミンと反応して対応するニトロソ化合物を与える。三フッ化ホウ素のようなフッ素イオン受容性物質と反応するとジオキシゲニル塩を生成する[3]

二フッ化三酸素

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二フッ化三酸素(にフッかさんさんそ、: trioxygen difluoride)は、化学式が O3F2 と表される、液体酸素と液体フッ素の混合物に紫外線を照射すると生じる赤褐色の結晶で、90 Kで暗赤色、粘性のある液体となる。きわめて不安定で、F2 あるいは F2 と O2 の混合物より反応性が高い[2][5]

二フッ化四酸素

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二フッ化四酸素(にフッかしさんそ、: dioxygen tetrafluoride)は、化学式が O4F2 と表される、77 Kで赤褐色の固体であるが[2]、-183 °Cでも穏やかに分解する[3]。詳細はまだよく分かっていない。

一フッ化二酸素

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一フッ化二酸素(いちフッかにさんそ、: dioxygen monofluoride)は、化学式が O2F と表される、低温でのみ安定な O-O-F のような分子である。原子状フッ素と二酸素とから生成することが報告されている[8][3]

註・出典

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  1. ^ Streng, A. G., A. V. Grosse (1966). “Two New Fluorides of Oxygen, O5F2 and O6F2”. Journal of the American Chemical Society 88: 169–170. doi:10.1021/ja00953a035. 
  2. ^ a b c d e f 漆山 秋雄、「フッ化酸素」、『世界大百科事典』、CD-ROM版、平凡社、1998年。ISBN 978-4582040029
  3. ^ a b c d e f Cotton, F. A.; Wilkinson,G.; Murillo, C. A.; Bochmann, M. (1999). Advanced Inorganic Chemistry (6th ed), pp. 455–456. Wiley: New York. ISBN 0-471-19957-5
  4. ^ HF はほとんど電離しないため、KF を加えてイオン性の KHF2 としている。
  5. ^ a b c 長倉三郎ら(編)、「フッ化酸素」、『岩波理化学辞典』、第5版 CD-ROM版、岩波書店、1999年。ISBN 4-00-130102-4
  6. ^ a b J.L.Lyman,J.Phys.Chem.Ref.Data,1989,18,799.
  7. ^ S.A.Kinkead et al, Inorg.Chem,1990,29,1779.
  8. ^ J.L.Lyman and R. Holland, J. Phys. Chem.,1988,92, 7232.

関連項目

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