通議
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『通議』(つうぎ)は、頼山陽による漢文体の日本の政論書である。全3巻。
頼山陽が得意とする史論の体裁を採りながら、彼の政治・法律思想の根幹にある「勢」とこれに付随する「権」と「機」について説きつつ現状の政治の得失について説き、更に今後の日本のあるべき姿について政治・経済・軍事の各面から論じた。
山陽が提示した「勢」の概念には、次の三つの要素がある。 一 絶対的な力 「勢」なるものは、しだいに移りかわり、しだいに成熟する。人間の力では、 どうにもならな い。人間は「勢」に逆らうことはでき ない。二 可変的な力 そのまさに移りかわろうとして、まだかわらないうちは、これを制禦できるものは人間である。「勢」なるものも、人間に頼って成熟 する。三 発展的な力 「勢」なるものは、それが行きつくところまで行って、極限に達するときには、必ず次の政治形体が 生まれる[1]。
1806年(文化3年)に『新策』(全6巻)を執筆したが、後にこれの補訂・再構成を行い、1830年(天保元年)に27篇からなる『通議』とした。後に1篇(「論内廷」)を追加した。刊行は山陽没後に出された『拙修斎叢書』の一部として1839年(天保10年)以前に刊行されたと言われている。
参考文献
[編集]- 石毛忠「通議」(加藤友康・由井正臣 編『日本史文献解題辞典』、吉川弘文館、2000年 ISBN 978-4-642-01335-2)
- 安藤英男「頼山陽通義」白川書院
脚注
[編集]- ^ 『頼山陽通議』白川書院、1977、26、27頁。