コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

軍用機の命名規則 (イギリス)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

イギリス軍軍用機の命名規則は、主にイギリス空軍が保有した軍用機と保有している軍用機の命名法。

第一次世界大戦以降、イギリスの軍用機は、メーカーによって(いくつかの輸入機種については最初に採用した国の軍によって)付けられた「型名 (type name)」で知られている。これは、軍用機の機種を基本的には英数字の型番によって識別するアメリカ合衆国などの他国とは対照的な命名法である。

これ以前には、1910年ごろから、イギリス陸軍向けの航空機は全てファーンボロー(ファーンバラ)のロイヤル・エアクラフト・ファクトリー (ロイヤル・エアクラフト・エスタブリッシュメント) で設計することとなっていた(生産は別の場所で行なわれることもあった)。ロイヤル・エアクラフト・ファクトリーは型式をいくつかに分類し、それぞれに以下のような接頭語を付与した:

  • B.E.: Blériot Experimental(ブレリオ式。プロペラ配置が牽引式; トラクタ) - 例: B.E.2
  • F.E.: Farman Experimental(ファルマン式。プロペラ配置が推進式; プッシャ) - 例: F.E.2
  • R.E.: Reconnaissance Experimental(偵察機) - 例: R.E.8
  • S.E.: Scouting Experimental(軽偵察機 (Scout)) - 例: S.E.5

一方、海軍は私企業による設計と製造の道を選んだ。陸軍も後には海軍にならい、メーカー製の航空機を購入するようになった。

1920年代には、F が戦闘機 (fighter)、N が海上用 (naval)、B が爆撃機 (bomber) といったように、用途にちなんだ機種名が使用された時期もあった。

1920年から1949年にかけて、ほとんどの航空機には、F.4/27 といったような航空省仕様(Air Ministry Specifications) 記号が割り当てられた。この場合、プロトタイプ(原型試作機)は、契約の下で生産されて(メーカー名 +)F.4/27 と呼ばれ、承認されると運用名が付与される。これ以外の場合、企業による私的な計画 (PV: private venture) を元にプロトタイプが製作され、それから後の公式契約で使用される仕様が発される。あるいは、外国から輸入することもあった。

命名

[編集]

実際の名称は航空省か海軍省によって、発注時に決定される。名称は、ある一定のパターンに基づいていたり、頭韻を踏んでいることが多かった。

時には、VC-10HS.125 のように、メーカーが付与した記号がそのまま型名として採用されることもあった。

ジェット推進後退角翼核兵器などの急速な導入に伴って、新型の4発ジェット爆撃機のヴァリアントバルカンヴィクターは頭文字に"V"が付けられた(3Vボマー)。

マーク・ナンバー

[編集]

大戦間期から、運用中の機体の派生型は「マーク・ナンバー」で表されることが一般的となった。これは型名の後に付けられるローマ数字で、ふつうは Mark あるは Mk. の後に付けられた(例: Fury Mk. I 「フューリー・マークワン」)。マーク・ナンバーは、エンジン型式の変更などの大規模な改変が施されると順番に増やされた。武装の変更などの小規模な改変を示すために、マーク・ナンバーの後にさらに大文字のアルファベットが付けられる事もあった(例: Bulldog Mk. IIA 「ブルドッグ・マークツー・エー」)。

第二次世界大戦時には、マーク・ナンバーの前にはその派生型の用途を示す接頭語(夜間戦闘機の NF, 爆撃機の B など)が付与された。1943年から1948年にかけてはローマ数字とアラビア数字が混在していた(en:Supermarine Spitfire variants参照)が、1948年には、アラビア数字へと統一された。この命名法は基本的に今日まで大きくは変わっていない。ただし新たな用途ができるたびに接頭語の種類は増えている。

典型的な例としては、ロッキード ハーキュリーズ(Hercules. アメリカ空軍などでは C-130 として知られるターボプロップ4発輸送機)が挙げられる。RAF(イギリス空軍)での最初の派生型はハーキュリーズ C1(Cargo, Mark 1. Cargo は輸送機の意)であったが、胴体を延長された次の輸送機型には C3 が付与された。3となったのは、天候調査用に作られたたった1機の派生型が既に W2 という名称を占めていたからである。

マーク・ナンバーは異なる三種類のスタイルで書かれる事がある。たとえば、

  • Hercules C Mark 3 - めったに使用されない
  • Hercules C Mk 3 - 公式のスタイル
  • Hercules C3 - よく見かける省略したスタイル

さらに、フルストップ(ピリオド)が数字の前に置かれることが頻繁にある(例: C. Mk. 3 だとか C.3 など)。ただしこのフルストップ方式は現在運用中の機体については公式には使用しないことが近年決まった。

ローマ数字の時代と同様に、大幅な改変があると数字が変更される。たとえば、ハリアー GR7 がより強力なエンジンと電子装備によって改良された際には、ハリアー GR9 への改称がなされた。小規模な改修についてもやはり同様で、たとえば、VC-10 C1(輸送機)が空中給油機へ改修されると VC-10 C1K の名称となった。

用途を表す接頭語は以下のようである(過去のものも含む):

接頭語 説明
A Airborne エアボーン。空挺部隊輸送 ハリファックス A7
AOP Airborne observation post 空中観測ポスト Auster AOP9
AEW Airborne early warning 空中早期警戒 セントリー AEW1
AH Army helicopter 陸軍ヘリコプター アパッチ AH1
AL Army liaison 陸軍連絡 アイランダー AL1
AS Anti-submarine 対潜水艦 ガネット AS1
ASR Air-sea rescue 航空海上救難 シーオッター ASR.II
ASaC Airborne Surveillance and Control 空中監視統制 シーキング ASaC7
B Bomber 爆撃 バルカン B2
B(I) Bomber/interdictor 爆撃ないし阻止攻撃 キャンベラ B(I)8
B(K) Bomber/tanker 爆撃ないし空中給油 ヴァリアント B(K)1
B(PR) Bomber/photo reconnaissance 爆撃ないし写真偵察 ヴァリアント B(PR)1
C Transport 輸送 ハーキュリーズ C4
CC Transport and communications 輸送と通信 BAe 125 CC3
COD Courier - later Carrier - onboard delivery ガネット COD4
D Drone or pilotless aircraft ドローン(無人機) Shelduck D1
E Electronic warfare 電子戦 キャンベラ E15
ECM Electronic counter-measures 電子妨害 アヴェンジャー ECM6
F Fighter 戦闘 ユーロファイター タイフーン F2
FA Fighter/attack 戦闘ないし攻撃 シーハリアー FA2
FAW Fighter, all-weather 全天候戦闘 ジャベリン FAW9
FB Fighter-bomber 戦闘爆撃 シーフューリー FB11
FG Fighter/ground attack 戦闘ないし対地攻撃 ファントム FG1
FGA Fighter/ground attack 戦闘ないし対地攻撃(後にFGへ) ハンター FGA9
FGR Fighter/ground attack/reconnaissance 戦闘、対地攻撃、ないし偵察 ファントム FGR2
FR Fighter/reconnaissance 戦闘ないし偵察 ハンター FR10
FRS Fighter/reconnaissance/strike 戦闘、偵察ないし(核使用を含む)攻撃 シーハリアー FRS1
GA Ground attack 対地攻撃 ハンター GA11
GR General reconnaissance 全般偵察(後にMRへ) ランカスター GR3
GR Ground attack/reconnaissance 対地攻撃ないし偵察 ハリアー GR9
HAR Helicopter, air rescue 空中救難ヘリコプター シーキング HAR3
HAS Helicopter, anti-submarine 対潜ヘリコプター シーキング HAS2
HC Helicopter, cargo 輸送ヘリコプター チヌーク HC2
HCC Helicopter, transport and communications 輸送・通信ヘリコプター スクワロー HCC1
HF High-altitude fighter 高高度戦闘機(スピットファイア専用) スピットファイア HF.VII
HM Helicopter, maritime 海上ヘリコプター マーリン HM1
HMA Helicopter, maritime attack 海上攻撃ヘリコプター リンクス HMA8
HR Helicopter, rescue 救難ヘリコプター ドラゴンフライ HR5
HT Helicopter, training 練習ヘリコプター グリフィン HT1
HU Helicopter, utility 汎用ヘリコプター シーキング HU4
K Tanker 空中給油 VC-10 K4
KC Tanker/transport 空中給油ないし輸送 トライスター KC1
L Low-altitude fighter 低高度戦闘機(シーファイア専用) シーファイア L.III
LF Low-altitude fighter 低高度戦闘機(スピットファイア専用) スピットファイア LF16
Met Meteorological reconnaissance 気象偵察(後にWへ) ヘイスティングス Met.1
MR Maritime reconnaissance 海上偵察 ニムロッド MR2
MRA Maritime reconnaissance and attack 海上偵察ないし攻撃 ニムロッド MRA4
NF Night fighter 夜間戦闘 ベノム NF2
PR Photographic reconnaissance 写真偵察 キャンベラ PR9
R Reconnaissance 偵察 センチネル R1
S Strike (核使用を含む)攻撃(主に海軍航空隊の保有機) バッカニア S2
SR Strategic reconnaissance 戦略偵察 ヴィクター SR2
T Training 練習 ホーク T1
TF Torpedo fighter 雷撃戦闘 ボーファイター TF10
TR Torpedo/reconnaissance 雷撃ないし偵察 シーモスキート TR33
TT Target tug 標的曳航 キャンベラ TT18
TX Training glider 練習グライダー カデット TX3
U Drone or pilotless aircraft ドローンまたは無人機(後にDへ) ミーティア U3
W Weather research 天候調査 ハーキュリーズ W2

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]