虹 (アイヴァゾフスキー)
ロシア語: Радуга 英語: The Rainbow | |
作者 | イヴァン・アイヴァゾフスキー |
---|---|
製作年 | 1873年 |
種類 | 油彩、キャンバス |
寸法 | 105 cm × 136 cm (41 in × 54 in) |
所蔵 | トレチャコフ美術館、モスクワ |
『虹』(にじ、露: Радуга, 英: The Rainbow)は、ロシアの画家イヴァン・アイヴァゾフスキーが1873年に描いた絵画である[1][2]。
キャンバスに油彩で描かれている[1][3][4]。縦 105 センチメートル、横 136 センチメートルの大きさをもつ[1]。モスクワのトレチャコフ美術館に所蔵されており、ホール19に展示されている[1][5][6][7]。海景画に分類される[1]。ロマン主義に属する[1][8]。
概要
[編集]本作は、批評家らによる、「アイヴァゾフスキーの描画スタイルは現代的ではなく、彼の才能は尽きかけている」といった主旨の批判に対する答えであるとされる[8][9]。発表後、本作は大きな評判になった[9]。本作は、美術品収集家のパーヴェル・トレチャコフによって「ロシア絵画の真珠」と称され、彼によって買い上げられた[8]。小説家のフョードル・ドストエフスキーは、本作に接して、実際に嵐の中にいるようなスリルを感じ、この絵を好んだとされ、「アイヴァゾフスキーは本作によって巨匠になった」との旨を述べている[6]。
トレチャコフ美術館館長のゼリフィラ・トレグロワは、「虹の光によって、広い意味で救いの希望があることが表現されている」との旨を述べている[10]。2016年にトレチャコフ美術館で開催された「イヴァン・アイヴァゾフスキー展」では、本作の他に、『第九の波』や『黒海』などが展示された[11][12][13]。
作品
[編集]水しぶきの中を太陽の光が通過して、激しい嵐に見舞われた海の上に虹が出ているが、虹はほとんど視認できない[1][14][6]。岩石の多い海岸の付近で、沈没しかけている船から船員が救命ボートに乗り移って逃げようとしている[1][15][16]。救命ボートには、13人の船員が乗っている[9]。船を漕いでいる者もいれば、恐怖のあまり縮こまっている者もいる[9]。操舵手は、航行する方向を示している[8]。帽子を振っている白髪交じりの男性は、虹のほうに視線を向けている[9]。
船のマストは、大きく傾いている[8]。カモメが1羽飛んでいる[15]。高い波に妨げられて、水平線は確認することができない[1]。水しぶきのために、海岸の岩肌はほとんど見えなくなっており、沈没する船の輪郭もぼやけている[14][8]。本作には、青色の他に、紫色や緑色、ピンク色や白色、水色など様々な色が用いられており、色調は落ち着いている[14][6]。虹の向こう側に見える海水は、ややピンク色がかっている[1]。
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g h i j “Радуга”. トレチャコフ美術館. 2020年3月22日閲覧。
“The Rainbow. 1873”. トレチャコフ美術館. 2020年3月22日閲覧。 - ^ “トレチャコフの19世紀美術品トップ15”. ロシア・ビヨンド. (2015年3月17日) 2020年3月22日閲覧。
- ^ “В гостях у Айвазовского…”. Журнал «Третьяковская галерея». 2020年3月22日閲覧。
- ^ “Радуга”. Журнал «Третьяковская галерея». 2020年3月22日閲覧。
- ^ “Only got an hour? 10 masterpieces in the Tretyakov Gallery that you must see”. ロシア・ビヨンド. (2018年1月11日) 2020年3月22日閲覧。
- ^ a b c d “Ivan Aivazovsky Artworks”. THE ART STORY FOUNDATION. 2020年3月22日閲覧。
- ^ “20枚の海を描いたロシアの絵画”. ロシア・ビヨンド. (2019年11月3日) 2020年3月22日閲覧。
- ^ a b c d e f “Жемчужиной русской живописи называл Третьяков эту картину”. СОКОЛЬНИКИ и весь Восточный округ. (2018年7月26日) 2020年3月22日閲覧。
- ^ a b c d e “Страсти по морю. Что смотреть на выставке Айвазовского в Третьяковке”. Аргументы и Факты. (2016年8月12日) 2020年3月22日閲覧。
- ^ “Море Айвазовского”. Союзное Вече. (2016年7月31日) 2020年3月22日閲覧。
- ^ 『ロシア絵画の旅』 2012, p. 261.
- ^ “Очередь на выставку Айвазовского может стать самой длинной в этом году”. Москва 24. (2016年2月5日) 2020年3月22日閲覧。
- ^ “Опять «Девятый вал»?”. Новые Известия. (2016年7月27日) 2020年3月22日閲覧。
- ^ a b c “Введение. Детство художника”. Харківський національний університет міського господарства імені О. М. Бекетова. 2020年3月22日閲覧。
- ^ a b “Painting up a storm: Ivan Aivazovsky”. The Ukrainian Weekly. (2000年8月6日) 2020年3月22日閲覧。
- ^ Е.Б. РОМАНЦОВА. “Воспитание экологии внутреннего мира ребенка”. Журнал "Начальная Школа". 2020年3月22日閲覧。
参考文献
[編集]- ポルドミンスキイ 著、尾家順子 訳『ロシア絵画の旅 はじまりはトレチャコフ美術館』群像社、2012年10月。ISBN 978-4-903619-37-8。