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イギリスの人口統計

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
英国の人口統計から転送)
イギリスの旗イギリスの人口統計
2020年のイギリスの人口ピラミッド
人口67,081,234人[1]
人口密度274人/km2
増減率増加 0.53%(2021年)
出生率10.2人/人口1,000人
死亡率10.3人/人口1,000人
平均寿命81歳(2020年)
 • 男性79.04歳
 • 女性82.86歳
合計特殊出生率1.46人(2022年)
乳児死亡率1000出生あたり3.82人
純移動率3.59人
年齢構成
14歳以下17.63%
15 - 64歳63.89%
65歳以上18.48%
男女比(女性1人当たりの男性の人数)
全年齢0.97人
0歳(出生時)1.05人
15 - 64歳1.03人
65歳以上0.73人
国民
国民イングランド人スコットランド人ウェールズ人アイルランド人パキスタン人ルーマニア人ポーランド人インド人、その他
言語
公用語英語

イギリスの人口統計(イギリスのじんこうとうけい、英語:Demographics of the United Kingdom)では、イギリス人口について記述する。イギリスの総人口は、2020年6月30日の時点で67,081,234人であった。これは世界21位にあたる。イギリスの人口は典型的な先進国にみられる少産少死の状態であり、平均寿命の延伸と少子高齢化が進行している。ただし20世紀末期以降は、世界でも有数の移民流入の多さによって進行は緩和されており、人口は増加を続けている。

また都市化が進行しており、国民の大半はイングランドスコットランド南部の都市部に居住する。

概要

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イギリスはイングランドウェールズスコットランド北アイルランドの4つの構成国(カントリー)からなる連合王国である。人口の大部分はイングランドに住んでおり、全体の84%以上を占める。イギリスの人口は増加を続けているが、これは出生数が死亡数を上回る自然増に加え、2000年代以降特に増加している移民流入が影響している。民族としては白人イギリス人が大部分を占めるが割合は年々減少しており、代わって旧植民地であるインドパキスタンにルーツを持つアジア系イギリス人[注釈 1]や、アフリカ系イギリス人が増加している。

国内には多数の大都市を有する。都市圏人口が50万人を超えるのは、ロンドン、バーミンガムグラスゴーウェストヨークシャーハンプシャーシェフィールドリヴァプールレスターマンチェスターベルファストブリストルニューカッスル・アポン・タインノッティンガムの13都市である[2]

マンチェスター産業革命時代に隆盛を誇った工業都市であり、現在もイングランド北部最大の都市である。
グラスゴースコットランド最大の都市。

歴史

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国勢調査以前

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ローマ時代のグレートブリテン島は、2世紀末に280万人から300万人の推定人口を抱え、4世紀の終わりには360万人に増加した。首都ロンディニウム(現在のロンドン)の人口は約6万人であったと推定される[3]

ローマ人がブリテン島から撤退した後、アングル人サクソン人ジュート人などのヨーロッパ大陸からのゲルマン民族は、ブリテン島南東部への移住を始めた。それにも関わらず、全体の人口は政治的混乱と疫病のために急激に減少したと考えられている。11世紀ドゥームズデイ・ブックが編纂された頃には、イングランドには125万人〜200万人が住んでいた可能性がある[4][5][6]

1086年から1750年の間、イングランドの人口は内戦飢饉、疫病によって大きく変動した[7]13世紀の終わりまでに400万人〜600万人に達したのち、1315年から1322年の農業危機と1348年から1350年の黒死病によって総人口の3分の1を失った。

薔薇戦争に代表される15世紀の戦乱の時代は、非常に緩やかな人口増加であったとされる。その後人口増加は加速し、イングランドの人口は1750年に574万人に達した。スコットランドでは、17世紀後半から18世紀初頭にかけてイングランドよりも乳幼児の死亡率が高かったため、人口増加は加速せず、1691年の推計人口123万人からしばらくの間ほぼ横ばいであった。一方、19世紀以前のアイルランドは一貫して急速な人口増加を示している。これはイングランドよりも出生率が高く、結婚が早かったためである。

1800年、国勢調査法が可決され、イギリス史上初の近代国勢調査の実施が認められた。

国勢調査の開始

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1801年の最初の国勢調査によると、イギリスの人口は1050万人であった。このうちイングランドの人口は830万人、ウェールズの人口は60万人、スコットランドの人口は160万人であった。アイルランド島は、450万人〜550万人で安定していたとされる。1801年以降は10年ごとに国勢調査が行われており、アイルランドでは1821年に初めて国勢調査が行われた。

1750年以降のヨーロッパとアイルランドの人口増減を示したグラフ。

19世紀になると、産業革命がもたらした工業化によって死亡率が大幅に低下し、人口増加が加速した。1841年の国勢調査では、イングランドとウェールズの人口は1590万人、アイルランドでは820万人、スコットランドでは260万人と40年間で倍増した。イングランドの人口は1851年の1680万人から1901年には3050万人に急速に増加し続けた。ウェールズでは、人口は1801年の60万人から1901年には200万人に増加し、スコットランドでは1901年に160万人から450万人に増加した。一方、アイルランドでは1840年代に始まったジャガイモ飢饉のために100万人が死亡し、さらに100万人をはるかに超える移住を引き起こした。結果、アイルランドの人口は1841年の820万人から1901年には320万人へと急速に減少した。しかし、北アイルランドの人口は20世紀初頭までに飢饉以前の人口に回復した。アイルランドの歴史におけるこの長期にわたる移民と純人口減少は、20世紀半ばにようやく逆転した[8][9]

第二次世界大戦ののち、1960年代にはベビーブームが起こり、出生数は10年以上にわたって90万人を超えた。その後、出生率は急速に低下し、出生数が死亡数をやや上回るのに対して社会増減は若干の流出超過トレンドとなり、イギリスの人口は90年代初頭まで5,600万人前後でほぼ横ばいの状態が続いた。

21世紀

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2001年の国勢調査では、イギリスの人口は59,113,000人であった。イングランドは49,497,000人、スコットランドは5,064,200人、ウェールズは2,910,200人、北アイルランドは1,689,300人だった[10]

20世紀末には移民流入が増加したことで、総人口の増加と民族多様性をもたらした。2001年、イギリス系白人の人口は総人口の88.52%と登録されていたが、2011年までに人口のこの割合は81.88%に減少し、他の民族グループは大幅に増加した。2011年の国勢調査での人口は約6300万人で、過去最多を更新した。

現在の人口 

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地域ごとの分布 

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2011年国勢調査による地域ごとの人口密度
構成国ごとの人口(2020年)
構成国 人口
[11]
割合 (%) Area
(km2)[12]
Of total
area
(%)
Population
density
(per km2)
イングランド 56,550,138 84.3 84.3
 
130,309 53.7 434
スコットランド 5,466,000 8.2 8.2
 
77,911 32.1 70
ウェールズ 3,169,586 4.7 4.7
 
20,736 8.5 153
北アイルランド 1,895,510 2.8 2.8
 
13,793 5.7 137
イギリス 67,081,234 100 100
 
242,749 100 274
ロンドン都市圏の人口は1400万人に達し、経済・文化の両面で多大な影響力を持つ世界都市である。
ハイランドの風景。人口密度は9.2/km2である。

人口密度の全体的な傾向としては南高北低であり、総人口の3分の1が首都であり最大都市のロンドンとその周辺地域に住んでいる。スコットランド北部(ハイランド)は西ヨーロッパでも有数の人口希薄地帯である。

人口動態統計

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総人口 出生数 死亡数 自然増減数 1,000人あたり出生率 1,000人あたり死亡率 1,000人あたり自然増減率 合計特殊出生率
1900 41,154,600 1,089,487 695,867 393,620 26.5 16.9 9.6 3.53
1901 41,538,200 1,092,781 655,646 437,135 26.3 15.8 10.5 3.49
1902 41,892,700 1,103,483 636,650 466,833 26.3 15.2 11.1 3.44
1903 42,246,600 1,113,086 613,726 499,360 26.3 14.5 11.8 3.40
1904 42,611,400 1,109,542 651,301 458,241 26 15.3 10.8 3.35
1905 42,980,800 1,092,108 617,516 474,592 25.4 14.4 11 3.30
1906 43,361,100 1,098,475 629,955 468,520 25.3 14.5 10.8 3.24
1907 43,737,800 1,077,851 625,271 452,580 24.6 14.3 10.3 3.19
1908 44,123,800 1,102,345 621,427 480,918 25 14.1 10.9 3.14
1909 44,519,500 1,073,781 614,910 458,871 24.1 13.8 10.3 3.07
1910 44,915,900 1,051,240 578,091 473,149 23.4 12.9 10.5 2.99
1911 42,189,800 1,033,395 620,828 412,567 24.5 14.7 9.8 2.92
1912 42.373,600 1,025,828 580,977 444,851 24.2 13.7 10.5 2.90
1913 42,582,300 1,032,286 600,554 431,732 24.2 14.1 10.1 2.93
1914 42,956,900 1,032,734 611,970 420,764 24 14.2 9.8 2.88
1915 41,361,500 956,877 666,322 290,555 23.1 16.1 7 2.59
1916 40,536,300 922,085 599,621 322,464 22.7 14.8 8 2.60
1917 39,780,700 790,736 589,416 201,320 19.9 14.8 5.1 2.10
1918 39,582,000 787,427 715,246 72,181 19.9 18.1 1.8 2.03
1919 42,944,100 826,202 602,188 224,014 19.2 18.1 5.2 2.31
1920 43,646,400 1,126,849 555,326 571,523 19.2 14 13.1 3.08
1921 43,904,100 1,001,725 544,140 457,585 22.8 12.4 10.4 2.69
1922 44,331,500 924,740 579,480 345,260 20.9 13.1 7.8 2.44
1923 44,563,100 900,130 526,858 373,272 20.2 11.8 8.4 2.38
1924 44,885,600 865,329 563,891 301,438 19.3 12.6 6.7 2.28
1925 45,040,000 842,405 558,132 284,273 18.7 12.4 6.3 2.20
1926 45,217,600 825,174 536,411 288,763 18.2 11.9 6.4 2.15
1927 45,432,000 777,520 568,655 208,865 17.1 12.5 4.6 2.01
1928 45,622,200 783,052 543,664 239,388 17.2 11.9 5.2 2.01
1929 45,731,000 761,963 623,231 138,732 16.7 13.6 3 1.95
1930 45,888,900 769,239 536,860 232,379 16.8 11.7 5.1 1.95
1931 46,073,600 749,974 573,908 176,066 16.3 12.5 3.8 1.89
1932 46,335,000 730,079 567,986 162,093 15.8 12.3 3.5 1.83
1933 46,520,000 691,560 579,467 112,093 14.9 12.5 2.4 1.72
1934 46,666,000 711,483 558,072 153,411 15.2 12 3.3 1.76
1935 46,869,500 711,426 561,324 150,102 15.2 12 3.2 1.75
1936 47,081,300 720,129 580,942 139,187 15.3 12.3 3 1.77
1937 47,288,600 723,779 597,798 125,981 15.3 12.6 2.7 1.79
1938 47,494,100 735,573 559,598 175,975 15.5 11.8 3.7 1.84
1939 47,547,700 726,632 581,857 144,775 15.3 12.2 3.0 1.84
1940 46,026,200 701,875 673,253 28,622 15.2 14.6 0.6 1.74
1941 44,870,400 695,726 627,378 68,348 15.5 14.0 1.5 1.72
1942 44,323,000 771,851 562,356 209,495 17.4 12.7 4.7 1.93
1943 48,261,000 810,524 585,582 224,942 16.8 12.1 4.7 2.03
1944 48,261,600 878,298 573,570 303,728 18.2 11.9 6.3 2.25
1945 48,668,900 795,868 567,027 228,841 16.4 11.7 4.7 2.05
1946 48,987,800 955,266 573,361 381,905 19.5 11.7 7.8 2.47
1947 49,538,700 1,025,427 600,728[13] 424,699 20.7 12.1 8.6 2.69
1948 50,033,200 905,182 546,002 359,180 18.1 10.9 7.2 2.39
1949 50,331,000 855,298 589,876 265,422 17 11.7 5.3 2.26
1950 50,381,500[14] 818,421 590,136 228,285 16.2 11.7 4.5 2.08
1951 50,286,900 796,645 632,786 163,859 15.8 12.6 3.3 2.10
1952 50,429,200 792,917 573,806 219,111 15.7 11.4 4.3 2.15
1953 50,592,900 804,269 577,220 227,049 15.9 11.4 4.5 2.20
1954 50,764,900 794,769 578,400 216,369 15.7 11.4 4.3 2.26
1955 50,946,100 789,315 595,916 193,399 15.5 11.7 3.8 2.33
1956 51,183,500 825,137 597,981 227,156 16.1 11.7 4.4 2.40
1957 51,430,200 851,466 591,200 260,266 16.6 11.5 5.1 2.48
1958 51,652,500 870,497 604,040 266,457 16.9 11.7 5.2 2.55
1959 51,956,300 878,561 606,115 272,446 16.9 11.7 5.2 2.63
1960 52,372,500 918,286 603,328 314,958 17.5 11.5 6.0 2.71
1961 52,807,400 944,365 631,788 312,577 17.9 12.0 5.9 2.78
1962 53,291,800 975,635 636,051 339,584 18.3 11.9 6.4 2.87
1963 53,624,900 990,160 654,288 335,872 18.5 12.2 6.3 2.90
1964 53,990,800 1,014,672 611,130 403,542 18.8 11.3 7.5 2.95
1965 54,349,500 997,275 627,798 369,477 18.3 11.6 6.8 2.88
1966 54,642,700 979,587 643,754 335,833 17.9 11.8 6.1 2.80
1967 54,959,000 961,800 616,710 345,090 17.5 11.2 6.3 2.69
1968 55,213,500 947,231 655,998 291,233 17.2 11.9 5.3 2.61
1969 55,460,600 920,256 659,537 260,719 16.6 11.9 4.7 2.51
1970 55,632,200 903,907 655,385 248,522 16.2 11.8 4.5 2.44
1971 55,928,000 901,648 645,078 256,570 16.1 11.5 4.6 2.40
1972 56,096,000 833,984 673,938 160,046 14.9 12.0 2.9 2.20
1973 56,223,000 779,545 669,692 109,853 13.9 11.9 2.0 2.03
1974 56,235,000 737,138 667,359 69,779 13.1 11.9 1.2 1.92
1975 56,225,000 697,518 662,477 35,041 12.4 11.8 0.6 1.81
1976 56,216,000 675,526 680,799 -5,273 12.0 12.1 −0.1 1.74
1977 56,189,000 657,038 655,143 1,895 11.7 11.7 0.0 1.69
1978 56,178,000 686,952 667,177 19,775 12.2 11.9 0.4 1.75
1979 56,240,000 734,572 675,576 58,996 13.1 12.0 1.0 1.86
1980 56,329,000 753,708 661,519 92,189 13.4 11.7 1.6 1.90
1981 56,357,000 730,712 657,974 72,738 13.0 11.7 1.3 1.82
1982 56,290,000 718,999 662,081 56,918 12.8 11.8 1.0 1.78
1983 56,315,000 721,238 659,101 62,137 12.8 11.7 1.1 1.77
1984 56,409,000 729,401 644,918 84,483 12.9 11.4 1.5 1.77
1985 56,554,000 750,520 670,656 79,864 13.3 11.9 1.4 1.79
1986 56,683,000 754,805 660,735 94,070 13.3 11.7 1.7 1.78
1987 56,804,000 775,405 644,342 131,063 13.7 11.3 2.3 1.81
1988 56,916,000 787,303 649,178 138,125 13.8 11.4 2.4 1.82
1989 57,076,000 777,036 657,733 119,303 13.6 11.5 2.1 1.79
1990 57,237,500 798,364 641,799 156,565 13.9 11.2 2.7 1.83
1991 57,438,700 792,269 646,181 146,088 13.8 11.3 2.5 1.82
1992 57,584,500 780,779 634,238 146,541 13.6 11.0 2.5 1.79
1993 57,713,900 761,526 658,194 103,332 13.2 11.4 1.8 1.76
1994 57,862,100 750,480 626,222 124,258 13.0 10.8 2.1 1.74
1995 58,024,800 731,882 641,712 90,170 12.6 11.1 1.6 1.71
1996 58,164,400 733,163 638,879 94,284 12.6 11.0 1.6 1.73
1997 58,314,200 726,622 632,517 94,105 12.5 10.8 1.6 1.72
1998 58,474,900 716,888 627,592 89,296 12.3 10.7 1.5 1.71
1999 58,684,400 699,976 629,476 70,500 11.9 10.7 1.2 1.68
2000 58,886,100 679,029 610,579 68,450 11.5 10.4 1.2 1.64
2001 59,113,000 669,123 604,393 64,730 11.3 10.2 1.1 1.63
2002 59,365,700 668,777 608,045 60,732 11.3 10.2 1.0 1.63
2003 59,636,700 695,549 612,085 83,464 11.7 10.3 1.4 1.70
2004 59,950,400 715,996 584,791 131,205 11.9 9.8 2.2 1.77
2005 60,413,300 722,549 582,964 139,585 12.0 9.6 2.3 1.76
2006 60,827,100 748,563 572,224 176,339 12.3 9.4 2.9 1.82
2007 61,319,100 772,245 574,687 197,558 12.6 9.4 3.2 1.87
2008 61,823,800 794,383 579,697 214,686 12.8 9.4 3.5 1.96
2009 62,260,500 790,204 559,617 230,587 12.7 9.0 3.7 1.89
2010 62,759,500 807,721 561,666 246,055 12.9 8.9 3.9 1.92
2011 63,285,100 807,776 552,232 255,544 12.8 8.7 4.0 1.91
2012 63,705,000 812,970 569,024 243,946 12.8 8.9 3.8 1.92
2013 64,105,700 778,803 575,458 203,345 12.1 9.0 3.2 1.83
2014 64,596,800 776,352 570,341 206,011 12.0 8.8 3.2 1.82
2015 65,110,000 777,165 602,782 174,383 11.9 9.3 2.7 1.80
2016 65,648,100 774,835 595,659 179,176 11.8 9.1 2.7 1.79
2017 66,040,200 755,066 607,172 147,894 11.4 9.2 2.2 1.74
2018 66,435,600 731,213 616,014 115,199 11.0 9.3 1.7 1.68
2019 66,796,800 712,699 604,707 107,992 10.7 9.1 1.6 1.63
2020 67,081,234 683,181 688,086 −4,905 10.2 10.3 −0.1 1.56[15]
2021 693,853 666,491 27,362 10.3 9.9 0.4 1.54

人口密度

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イギリスの人口密度は、2020年の時点で274人/km2である。これは人口100万人以上のヨーロッパ諸国の中ではオランダベルギーに次いで高い。

イギリスでは21世紀以降、人口過密社会問題化しており、特にイングランドの人口密度は434人/km2と高い。中でも首都ロンドンを中心とする南東部は、水供給能力において世界180地域中161位とされた。また人口増加に伴い、年間20万〜30万の新築が必要とされているが不足がちであり、イギリスのホームレス人口は数十万人に達する。人口増加の原因が自然増ではなく移民流入によるものであるため、国内で移民への反発が強まっている原因のひとつともなっている。

人口過密は環境にも影響を及ぼしている。イギリスは国土に占める森林割合が1割強と世界各国の中でも低位であり、元々生態系に乏しいが、近年の人口増加が相まって「世界で最も自然が枯渇した国」のひとつに数えられた[16][17]

出生数と死亡数

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合計特殊出生率

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イギリスの合計特殊出生率は、1970年代以降一貫して人口置換水準(理論上、人口を横ばいで維持できる水準。イギリスのように、新生児の男女比が極端に偏っておらず乳幼児死亡率も低い国の場合は、おおよそ2.06~2.10)を下回っているものの、1.5を割った年は過去一度もなく、先進国としては比較的高出生率である。

出生数は1960年代のベビーブーム以降、年間65万人~80万人程度で安定している。しかし、新生児に占める非移民系の白人イギリス人の割合は年々低下しており、出生数の維持に貢献しているのは移民の子である。2020年、イングランドとウェールズ全体で613,905人の出生があったが、そのうち29.3%にあたる179,881人は英国外にルーツを持つ移民系の母親の子であり、2007年の23%と比較して大きく上昇している。さらに両親のどちらかが移民系である子の割合は34.8%に達する[18]。また合計特殊出生率も、イングランドとウェールズ全体の1.58に対し、非移民系が1.50、移民系が1.98と大きな開きがあり、21世紀以降の移民流入数の増加によってこの傾向は年々顕著になっている。

英国出身以外の母親の出身国の上位は、パキスタンルーマニアポーランドインドバングラデシュの順となっている。#移民・人種の欄も参照。

死亡数

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死亡数は20世紀以降、55万人〜70万人程度で安定している。前年比1割以上の死亡数増加を記録したのは、第一次世界大戦(1918年)、世界恐慌(1929年)、第二次世界大戦(1940年)、新型コロナウイルス感染症の世界的流行(2020年)である。

移民・人種

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イギリスは1950年代まで国民の99%以上を白人イギリス人が占めており、民族的に非常に均質な社会だった。しかし20世紀後半以降、人種的マイノリティの人口が急速に増えている。特に1997年、労働党政権によって移民制限が解除されたことで、この傾向はより顕著になっている。

1951年 1961年 1971年 1981年 1986年 1991年 1993年 1998年 2000年 2001年 2011年
人種的マイノリティの人口(万人) 5 40 137 209 247 302 320 370 404 464 811
総人口に占める割合 0.1% 0.8% 2.5% 3.9% 4.5% 5.5% 5.7% 6.5% 7.1% 7.88% 12.83%

人種別の人口割合の推移

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出身国別の外国生まれの人口

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順位 出身国 人口[19]
1 インドの旗 インド 863,000
2 ポーランドの旗 ポーランド 818,000
3 パキスタンの旗 パキスタン 547,000
4 ルーマニアの旗 ルーマニア 427,000
5 アイルランドの旗 アイルランド 360,000
6 ドイツの旗 ドイツ 289,000
7 バングラデシュの旗 バングラデシュ 260,000
8 南アフリカ共和国の旗 南アフリカ 252,000
9 イタリアの旗 イタリア 233,000
10 中華人民共和国の旗 中国 217,000
11 ナイジェリアの旗 ナイジェリア 215,000
12 フランスの旗 フランス 185,000
13 リトアニアの旗 リトアニア 168,000
14 ポルトガルの旗 ポルトガル 165,000
15 アメリカ合衆国の旗 アメリカ 161,000
16 スペインの旗 スペイン 159,000
17 オーストラリアの旗 オーストラリア 153,000
18 フィリピンの旗 フィリピン 153,000
19 ジンバブエの旗 ジンバブエ 128,000
20 ブルガリアの旗 ブルガリア 128,000
21 スリランカの旗 スリランカ 126,000
22 ジャマイカの旗 ジャマイカ 123,000
23 ケニアの旗 ケニア 121,000
24 ガーナの旗 ガーナ 114,000
25 ブラジルの旗 ブラジル 101,000
26 ソマリアの旗 ソマリア 99,000
27 ハンガリーの旗 ハンガリー 98,000
28 カナダの旗 カナダ 95,000
29 ラトビアの旗 ラトビア 89,000
30 アフガニスタンの旗 アフガニスタン 79,000
31 ネパールの旗 ネパール 76,000
32 イランの旗 イラン 72,000
33 スロバキアの旗 スロバキア 72,000
34 トルコの旗 トルコ 71,000
35 オランダの旗 オランダ 68,000
36 イラクの旗 イラク 67,000
37 ニュージーランドの旗 ニュージーランド 67,000
38 ギリシャの旗 ギリシャ 66,000
39 マレーシアの旗 マレーシア 61,000
40 ロシアの旗 ロシア 59,000
41 キプロスの旗 キプロス 57,000
42 タイ王国の旗 タイ 54,000
43 ウガンダの旗 ウガンダ 52,000
44 中華民国の旗 台湾 49,000
45 シリアの旗 シリア 48,000
46 アルバニアの旗 アルバニア 47,000
47 シンガポールの旗 シンガポール 44,000
48 チェコの旗 チェコ 44,000
49 スウェーデンの旗 スウェーデン 42,000
50 エジプトの旗 エジプト 39,000
51 日本の旗 日本 39,000
52 ウクライナの旗 ウクライナ 38,000
53 コロンビアの旗 コロンビア 38,000
54 ベルギーの旗 ベルギー 35,000
55 モーリシャスの旗 モーリシャス 34,000
56 サウジアラビアの旗 サウジアラビア 33,000
57 スーダンの旗 スーダン 33,000
58 コソボの旗 コソボ 29,000
59 ザンビアの旗 ザンビア 29,000
60 マルタの旗 マルタ 27,000
61 ベトナムの旗 ベトナム 27,000

将来予測

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オックスフォード大学の人口学者デイビッド・コールマンは、既に白人イギリス人の割合が5割未満となっているロンドンに続いて、バーミンガムが2020年代には同様の人口構成になると予測した。また2056年から2066年頃には、白人イギリス人の割合が国民の半数を下回ると予測した[20]

健康 

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平均寿命 

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OECD加盟国の平均寿命の推移

イギリスは先進国としては平均寿命が短い。2020年の統計では、アメリカ合衆国スロベニアに次いで下から3番目であった。

さらに2010年代以降、イギリスの平均寿命予測は下方修正が繰り返されている。2020年には新型コロナウイルス感染症の世界的流行も相まって、男女共に8年前の予測よりも約2歳低い水準まで下落した[21]。これは世界各国の中でも大きな下落幅である。これに加え、出生率も従来より低下していることを受け、ONS(国家統計局)は将来の総人口予測を大きく下方修正した[22]

地域格差 

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地域ごとの一人当たりGDP(2018年、ドル建て)

地域によって、健康の度合いには格差がある。平均寿命は大別すると南高北低の傾向があり、ロンドンイングランド南東部などの平均寿命が長い一方、スコットランドやイングランド北部は比較的短い[23]。これは一人当たりの豊かさと密接に関係している。特にグラスゴー西欧でもワーストクラスに短命な都市であり、「グラスゴー効果」として知られているほどである。

肥満 

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イギリスは肥満率が高い。2020年11月の調査によると、イングランドの成人の62.8%がBMI25以上の「太り気味」であった[24]。また、子どもの肥満が近年深刻化しており、2016年のWHOの調査によると、イギリスの5歳〜19歳の肥満率は31%に達しており、日本の14%などと比較して非常に高かった。低所得家庭の子どもたちは、脂肪糖分添加物が多く、高カロリー低栄養の安価なジャンクフードに頼らざるを得ないことが肥満増加の大きな原因となっている[25]

脚注

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注釈

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  1. ^ イギリス英語で単に「Asian(アジア人)」と言った場合は、南アジア人を指すのが一般的である。一方、アメリカ英語では東アジア人を指すのが一般的。アメリカ英語とイギリス英語で意味が異なる単語の一覧英語版を参照。

出典

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  1. ^ UK Population Estimates
  2. ^ 2011 Census – Built-up areas”. ONS. 20 August 2013閲覧。
  3. ^ Anne Lancashire (2002). London Civic Theatre: City Drama and Pageantry from Roman Times to 1558. Cambridge University Press. p. 19. ISBN 978-0-5216-3278-2. https://books.google.com/books?id=QajvxgbH59QC&pg=PA19 
  4. ^ Anglo-Saxon”. Britannica. 2022年7月15日閲覧。
  5. ^ Settlers”. Oxford Museum of Natural History. 2022年7月15日閲覧。
  6. ^ Wood, Michael. “Viewpoint: The time Britain slid into chaos”. BBC News. https://www.bbc.com/news/magazine-18159752 2022年7月15日閲覧。 
  7. ^ Life in the eleventh century”. Domesday Book Online. 2022年7月15日閲覧。
  8. ^ Statistics | Counting the Emigrants, Public Record Office of Northern Ireland
  9. ^ History and Lessons of Potato Late Blight Archived 9 May 2011 at the Wayback Machine., University of California
  10. ^ Early census-taking in England and Wales”. Office for National Statistics. 2022年7月15日閲覧。
  11. ^ Population Estimates for UK, England and Wales, Scotland and Northern Ireland: mid-2019”. Office for National Statistics. 2022年6月23日閲覧。
  12. ^ The Countries of the UK”. Office for National Statistics. 8 January 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。15 October 2017閲覧。
  13. ^ Polio outbreak. Smallman-Raynor, M. R.; Cliff, A. D. (2006). Poliomyelitis : a world geography: emergence to eradication. Oxford University Press. pp. 317–18. ISBN 019924474X 
  14. ^ UK Population Estimates 1851 to 2014 – Office for National Statistics”. Ons.gov.uk. 8 March 2022閲覧。
  15. ^ Vital statistics in the UK: births, deaths and marriages – Office for National Statistics”. Ons.gov.uk. 8 March 2022閲覧。
  16. ^ ブレグジットとは 英国のEU離脱、移民急増で関心高まる
  17. ^ overpopulation UK
  18. ^ Parents Country of Births England and Wales ONSによる統計
  19. ^ Office for National Statistics.
  20. ^ When Britain becomes “majority minority”
  21. ^ National life tables – life expectancy in the UK: 2018 to 2020
  22. ^ https://www.ft.com/content/70020670-9f45-451b-8612-0a785ac16a5e
  23. ^ https://www.health.org.uk/news-and-comment/charts-and-infographics/male-healthy-life-expectancy-from-birth
  24. ^ latest_Overweight_adults Published 25 June 2021
  25. ^ Fighting_Against_Obesity_Pandemic プロのシェフたちがつくる学校給食——「肥満のパンデミック」と向き合うイギリスの試み

参考文献

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  • Abstract (1833). Abstract of the Answers and Returns made pursuant to an act passed in the eleventh year of the reign of His Majesty King George IV intituled an act for taking an account of the population of Great Britain, and the increase and diminution thereof. Population Register Abstract 1831. British Parliamentary Papers, 38.
  • Arkell, T. (1992). An Examination of the Poll Taxes of the late Seventeenth Century, the Marriage Duty Act and Gregory King.
  • K. Schürer, & T. Arkell (eds.), Surveying the People: the interpretation and use of document sources for the study of population in the late seventeenth century (pp. 142–177). Oxford: Leopard's Hill Press.
  • Boulton, J. (1992). "The Marriage Duty Act and parochial registration in London, 1695–1706". In: K. Schürer, & T. Arkell (eds.), Surveying the People: the interpretation and use of document sources for the study of population in the late seventeenth century; pp. 222–252. Oxford: Leopard's Hill Press.
  • Boulton, J. (1993). "Clandestine marriage in London: an examination of the neglected urban variable", in: Urban History; 20, pp. 191–210.

関連項目

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外部リンク

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