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自然アルミニウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
自然アルミニウム
分類 元素鉱物
銅 - クパライト族
シュツルンツ分類 10th: 1.AA.05
08th: 1/A.03-05
Dana Classification 08th: 1.1.1.5
07th: 1.1.22.1
化学式 Al
結晶系 等軸晶系
対称 H-M記号: (4/m 3 2/m)
空間群: F m3m,P m3m
単位格子 a = 4.0494 Å
Z = 4
V = 65.94 Å3
モル質量 26.98 g/mol
晶癖 粒状・板状・鱗片状
へき開 無し
粘靱性 柔らかい
モース硬度 1.5 - 3
光沢 金属光沢
淡灰色・白色
条痕 白色
透明度 不透明
密度 測定値: 2.72 g/cm3
理想値: 2.70 g/cm3
融点 660 ℃
可融性 にも塩基にも可融
溶解度 水に不溶
変質 空気中で表面が酸化され、Al2O3不動態を形成
文献 [1][2][3][4]
プロジェクト:鉱物Portal:地球科学
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自然アルミニウム (Aluminium・Native Aluminium) とは、銅 - クパライト族に属する元素鉱物の1つ。結晶系等軸晶系。理想的な化学組成Al [1][2][3]

成分・種類

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自然アルミニウムは、天然に産出するアルミニウム単体である。元素鉱物は種類の似ている別の元素との合金状態で産出する場合が多いが、自然アルミニウムは以下に示す通り、ほぼ純粋なアルミニウムで構成されていることを特徴としている[3]

自然アルミニウムの組成[3]
元素 ロシア
トルバチク山
中華人民共和国
Getang Au-Sb deposit
アルミニウム 99.99 - 100.0 97.81

アルミニウムは原子番号13の元素であり、金属元素の中では一番若い原子番号を持つ元素鉱物である[注釈 1]。また、第13族元素の中で元素鉱物が発見されているのは自然アルミニウムと自然インジウム (Indium) のみである[5][注釈 2][6]

産出地

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自然アルミニウムは、地球上の計26地点で産出が報告されている[1]

その他ブルガリアイタリアウズベキスタンで産出が報告されている[1]

地球外では、ソビエト連邦月探査機ルナ20号1972年サンプルリターンしたの土壌からも検出されている[1]。また、隕石の内部からも発見されている[3]

性質・特徴

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自然アルミニウムは1978年に現在のロシアサハ共和国の2ヶ所で発見されたのが最初の報告である。自然アルミニウムは等軸晶系であり、劈開はない。新鮮なものは金属光沢を有するが、表面が酸化され、灰色を帯びている場合もある。モース硬度は1.5から3の極めて柔らかい鉱物である[1][2][3][4]

アルミニウムは地殻において金属の中では最も多い8.3重量%を構成するが、自然アルミニウムは極めて稀な鉱物である[注釈 3]。アルミニウムは塩基の両方に反応する両性金属であり、酸化されやすい金属元素である。そのため、天然では長石角閃石輝石といったアルミノケイ酸塩化合物に多く存在し、造岩鉱物の主成分となっている。資源的にもギブス石 (Gibbsite) やダイアスポア (Diaspore) のような水酸化アルミニウムを主成分とするボーキサイトと呼ばれる鉱石が使われている。逆に、アルミニウムは酸素との結合が強く、酸素を切り離すには大量のエネルギーを導入しなければならないため、「電気の缶詰」と言われることがある[4]

自然アルミニウムは、このような酸化環境とは切り離された環境に存在する。多くの自然アルミニウムは、特定の火山における火山岩火山泥のような、低酸素分圧環境においてアルミニウムの鉱物から還元され、単体アルミニウムが生成される[4]。この環境は非常に特殊であるため、例えば産地の1つであるロシアトルバチク山では、自然鉛 (Lead) 、自然スズ (Tin) 、自然ケイ素 (Silicon) 、自然チタン (Titanium) 、自然タングステン (Tungsten) といった他では見られない非常に稀な元素鉱物が産出する[7]。この作用によって生成された自然アルミニウムは、大きくて1mmの粒状、もしくは板状や鱗状の薄い金属片として産出する[3]

また、もうひとつの生成方法として、テトラヒドロキシドアルミン酸イオン (tetrahydroxoaluminate・Al(OH)4-) がバクテリアの作用で還元され生成されるものである。これは南シナ海北東部の大陸斜面に存在する冷水湧出帯で見られるものである。この作用によって生成された自然アルミニウムは、粒の集合体である不定形をしている。大きさは1mm以下である[8][注釈 4]

自然アルミニウムは自然銅 (Copper) 、自然鉄 (Iron) 、磁鉄鉱 (Magnetite) 、赤鉄鉱 (Hematite) 、黄鉄鉱 (Pyrite) 、チタン鉄鉱 (Ilmenite) 、鉄明礬石 (Jarosite) といったの鉱物と共に産出する。また、自然アンチモニー (Antimony) 、自然亜鉛 (Zinc) 、自然カドミウム (Cadmium) 、自然スズ、自然鉛、モアッサン石 (Moissanite) といった珍しい元素鉱物と共に産出することもある[4]。特に自然スズ、自然鉛とは混ざり合った状態で産出する場合がある[9]

用途・加工法

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自然アルミニウムは極めて特殊な環境で生成される稀な鉱物であるため、資源的な価値やその他の用途はない[4]

サイド・ストーリー

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稀に自然アルミニウムとされる標本が販売されている事があるが、そのほとんどは人工的に沸騰したアルミニウムを蒸着された人造物であり、天然の物ではないとされている[4]

注釈

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  1. ^ 非金属元素鉱物で最も若い原子番号を持つのは石墨 (Graphite) やダイヤモンド (Diamond) などの炭素の各種多形である。
  2. ^ ルナ24号からサンプルリターンした土壌中に自然ホウ素 (Boron) があるという報告があるが、鉱物として認められていない。
  3. ^ 一般に元素の量と元素鉱物としての単体の産出は、元素の性質から比例関係にない。気体である酸素を除くと、次に多いケイ素の単体である自然ケイ素 (Silicon) は自然アルミニウム以上に稀な存在である。アルミニウムの次に多い元素であるで構成される自然鉄 (Iron) は両者と比べれば多く存在するがやはり稀であり、多量に産出する金属元素の元素鉱物は、クラーク数では25番目ので構成された自然銅 (Copper) が最初である。
  4. ^ 通常、生物が生成に直接関与して生成されるものは鉱物とは見なされない。しかし、生物が活動した結果、副次的に生じた副産物であるならば、認められる傾向もある。冷水湧出帯ではイカ石 (Ikaite) のような、生物が関与している可能性のある鉱物はいくつか発見されている。

出典

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  1. ^ a b c d e f Aluminium mindat.org
  2. ^ a b c Aluminum Mineral Data Mineralogy Database
  3. ^ a b c d e f g Aluminium Al Handbook of Mineralogy
  4. ^ Indium mindat.org
  5. ^ Boron mindat.org
  6. ^ Tolbachik volcano mindat.org
  7. ^ Characteristics and possible origin of native aluminum in cold seep sediments from the northeastern South China Sea ScienceDirect
  8. ^ Tin, Lead, Aluminium mindat.org

関連項目

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