膜型表面応力センサ
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膜型表面応力センサ(まくがたひょうめんおうりょくセンサ)とは、MEMSを応用してさまざまな化学物質を検出可能なセンサである。
概要
[編集]特定の化学物質を吸着する機能性薄膜を利用して化学物質を検出し、識別する[1]従来の検出にレーザーを使用するカンチレバー型センサーとは異なり、レーザーが不要なので大幅な小型化が可能となり、感度が約100倍に向上した[1]。呼気に含まれる特定の揮発性有機化合物を識別し、悪性腫瘍を検出できる[2][3]。
原理
[編集]一種の歪みゲージを備えており、特定の化学物質を吸着する感応膜を塗布することによって圧電素子に生じた歪による圧抵抗効果を経て、抵抗値の変化から化学物質の吸着の有無を検出する[1]。検出対象の化学物質の種類に応じ、感応膜を用意する必要がある[1]。ただし、吸着の困難な希ガスの検出は困難である。
特徴
[編集]- 高感度
- 小型化、集積化が可能
- 室温動作
- 廉価
- 高信頼性
- 高速応答
- 低消費電力
開発の経緯
[編集]2011年に物質・材料研究機構 (NIMS) の国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (MANA) の吉川博士のチームと、走査型トンネル電子顕微鏡の開発で1986年にノーベル物理学賞を受賞したハインリッヒ・ローラー博士やスイス連邦工科大学ローザンヌ校の共同で開発された[4]。
主な用途
[編集]- 健康診断
- 化学分析
- 有害物質の検出
脚注
[編集]- ^ a b c d “意外と難しいニオイのデジタル化 日本の嗅覚センサー「MSS」が世界標準を目指す”. DG Lab Haus (2018年2月15日). 2019年1月25日閲覧。
- ^ “実用化せまる嗅覚IoTセンサー・MSS 期待される想定用途とは?”. DG Lab Haus (2018年11月2日). 2019年1月25日閲覧。
- ^ Loizeau, Frédéric, et al. "Piezoresistive membrane-type surface stress sensor arranged in arrays for cancer diagnosis through breath analysis." Micro Electro Mechanical Systems (MEMS), 2013 IEEE 26th International Conference on. IEEE, 2013.
- ^ “MSSについて”. MSSフォーラム. 2019年1月25日閲覧。
参考文献
[編集]- 吉川元起. "超小型・高感度 ナノメカニカル膜型表面応力センサー (MSS): 医療・環境・セキュリティーへの応用に向けて." Molecular electronics and bioelectronics 23.3 (2012): 185-190.
- 吉川元起. "ナノメカニカル膜型表面応力センサー (MSS)." 表面科学学術講演会要旨集 第 33 回表面科学学術講演会. 公益社団法人 日本表面科学会, 2013.
- 吉川元起, 「次世代呼気診断/血液検査に向けたナノメカニカル膜型表面応力センサ(MSS)の開発」『表面科学』 35巻 10号 2014年 p.571-576, doi:10.1380/jsssj.35.571
- Guerrero, Ricardo Jose S., Francis Nguyen, and Genki Yoshikawa. "Real-time gas identification on mobile platforms using a nanomechanical membrane-type surface stress sensor." EPJ Techniques and Instrumentation 1.1 (2014): 9.
- 矢ヶ部太郎, 今村岳, 吉川元起, 板倉明子, 「膜型表面応力センサを用いた水素ガス検出」『表面科学学術講演会要旨集』 2017年 37巻 2017年真空・表面科学合同講演会, セッションID:3Da01, p.271-, doi:10.14886/sssj2008.37.0_271
- 吉川元起, 「ニオイを測る:ナノメカニカルセンサ(MSS, AMA)と産学官連携による標準化」『表面科学学術講演会要旨集』 2017年 37巻 2017年真空・表面科学合同講演会, セッションID:2Cp08, p.156-, doi:10.14886/sssj2008.37.0_156
- 南皓輔, et al. "6. 嗅覚 IoT センサ 「膜型表面応力センサ (MSS)」 とヘルスケア・医療分野への応用可能性." 電気化学 86.Summer (2018): 123-128.