マリア崇拝
マリア崇拝(マリアすうはい、Mariolatry、Marianismo)とは、聖母マリアを崇拝する宗教的行為。欧州古代の多神教的信仰、特に女神崇拝が形を変えて引き継がれたものにも見え、キリスト教では禁じられている。
これは、カトリック教会でもマリア崇敬とは区別し、禁じている[1]。しかし、一部のプロテスタントの教派は、カトリック教会におけるマリア崇敬を「崇拝」していると捉え、批判している[2][3][4][5]。
「マリア崇拝」(Mariolatry)の用語
[編集]18世紀及び19世紀において、様々なプロテスタント教派が「マリア崇拝」(Mariolatry[6])という用語を使い始めた。この用語はカトリック教会におけるマリア崇敬、聖公会のアングロ・カトリック主義、そして東方正教会における聖母マリアへの信心業の実践について言及したものである。この用語を使用するプロテスタント各教派の見解によると、マリアに対して極端に注意を払うことは、神に対する崇拝から道を逸っているばかりでなく、実際に偶像崇拝に接触するものだとしている[7][8]。
この傾向は、時と共に様々な方向に向かっていき、その間に一部のプロテスタント教派は、マリアに注意に対する彼らの態度を時々和らげ、その他の教派は、21世紀において、マリアへの態度について、ますます反対の立場を強めていった。その例として、2006年5月のイギリスにおける「ウォルシンガムの聖母」の祝典の間、聖公会とカトリック教会は、「聖母行列」を行ったが、これにプロテスタントは、「カトリック教会は、偶像崇拝とマリア崇拝(Mariolatry)」と書かれた看板を持ち、野次を飛ばした[9][10][11]。
カトリック教会
[編集]ローマ教皇を最高指導者とするカトリック教会は、以下のように分類し、三位一体の神に捧げられる礼拝(ラトレイア・Latria 神礼拝)を、聖母マリアに対して捧げる事はマリア崇拝として禁じている。
フェミニズム
[編集]フェミニズムにおいては、女性の至高性の表現として肯定的に見られている[12]。
一方、中南米では、聖母マリアを理想の女性に掲げることにより、性役割意識が強化された(マリアニスモ)。
[13]。
シモーヌ・ド・ボーヴォワールは、「第二の性」の中で、「聖母マリア崇拝は男らしさの最高の勝利の象徴である」と述べており、女性に従順・母性・純潔を求める規範であることで男性の利益にかなう存在だとの見方を示している。
脚注
[編集]- ^ ジョン A.ハードン『現代カトリック事典』エンデルレ書店
- ^ ジャン・カルヴァン『キリスト教綱要』改革派教会
- ^ チャールズ・ホッジ『カトリックとは何ぞや』聖書図書刊行会
- ^ H.M.カーソン著『夜明けか黄昏か-現代ローマ・カトリック-』聖書図書刊行会
- ^ 『プロテスタントとカトリックの団結ですか?』ICM出版
- ^ この語は、オックスフォード・リビング・ディクショナリーによると、「乙女マリアを偶像崇拝すること」となっていることから、ここでは「崇拝」と訳した。Oxford Living Dictionaries: Mariolatry
- ^ History of the Christian Church by Philip Schaff 1960 ISBN 0-8028-8049-5 pages 411 and 422
- ^ Keegan, Matthew C. (2011, April 27). Book Review: The Virgin Mary in the Light of the Word of God. WordJourney Magazine, Retrieved from http://www.wordjourney.com
- ^ The Everything Jesus Book: His Life, His Teachings by Jon Kennedy 2006 ISBN 1-59337-712-6 page 7
- ^ Walsingham in Literature and Culture from the Middle Ages to Modernity by Dominic Janes, Gary Fredric Waller 2010 ISBN 0-7546-6924-6 pages 12-13
- ^ 稲垣良典『カトリック入門』ちくま新書、第1刷、2016年10月10日。221頁。ISBN 978-4-480-06914-6。
- ^ ジャネット・K. ボールズ『フェミニズム歴史事典』明石書店 ISBN 4750313254
- ^ 『リウスの現代思想学校―マンガによる1 フェミニズム』 晶文社 ISBN 9784794919915