繫留訓練艦
繫留訓練艦(けいりゅうくんれんかん、Moored training ship (MTS))とは、アメリカ海軍において、原子炉運転員のための訓練船に転換された原子力潜水艦。海軍原子力訓練コマンド隷下の原子力学校原子力訓練隊(Nuclear Power Training Unit: NPTU、サウスカロライナ州グースクリーク)のために、チャールストン海軍基地(サウスカロライナ州チャールストン)に繫留されている。
繫留訓練艦は退役した原子力潜水艦で、原子力潜水艦とその原子炉の運用と保守にあたる人員を訓練するために、用途転換されたものである。初の繫留訓練艦は、旧ジェームズ・マディソン級弾道ミサイル原子力潜水艦サム・レイバーン(USS Sam Rayburn, SSBN/MTS-635)で、1989年に転換されるにあたって、船体番号をSSBN-635からMTS-635に再指定された。さらに一年後にはラファイエット級弾道ミサイル原子力潜水艦ダニエル・ウェブスター(USS Daniel Webster, SSBN/MTS-626)が転換・再指定された。これら2隻の潜水艦は、チャールストン海軍工廠にて改修工事および繫留のために、推進軸が生む推進力を吸収させる装置を組み込まれた[1]ほか、弾道ミサイル区画を撤去し、かわって訓練生のための区画や新たな緊急安全装置を含むあらたな区画を追加された[2]。
サム・レイバーンおよびダニエル・ウェブスターに搭載されたS5W原子炉はすでに旧式であるだけでなく、炉心命数が尽きつつあることから、海軍は、退役が進みつつあるロサンゼルス級(フライトⅠ)原子力潜水艦から、ラホーヤ(USS La Jolla, SSN-701)[3]およびサンフランシスコ(USS San Francisco, SSN-711)[4]を繫留訓練艦に追加する計画を立てた。これら2隻のうち、ラホーヤは2014年10月16日に退役した後、ノースカロライナ州のノーフォーク海軍工廠で艦体を3分割する改装作業を行い[5]、2017年8月にチャールストン海軍基地で繫留訓練艦となった。サンフランシスコも2016年11月4日の退役後、やはりノーフォーク海軍工廠にて2ヶ年をかけて改造工事を受けたのちチャールストンへ移管され、2040年まで繫留訓練艦として、原潜乗員の訓練にあたる[5][6]。
繫留訓練艦
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サム・レイバーン (SSBN-635)
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ノーフォーク海軍工廠に入渠中のダニエル・ウェブスター (SSBN/MTS-626)
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ラホーヤ (SSN-701)
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サンフランシスコ (SSN-711)
脚注
[編集]- ^ “MTS”. globalsecurity.org. 6 January 2018閲覧。
- ^ Peter Lobner. “60 Years of Marine Nuclear Power:1955 – 2015 Part 2: United States” (PDF). Lynceans Group of San Diego. p. 19/280. 2021年3月11日閲覧。
- ^ “SSN-701”. nvr.navy.mil. 6 January 2018閲覧。
- ^ “SSN-711”. nvr.navy.mil. 6 January 2018閲覧。
- ^ a b “US Navy's Norfolk shipyard undocks USS La Jolla submarine”. naval-technology.com (6 December 2017). 6 January 2018閲覧。
- ^ 「米原潜サン・フランシスコが引退」、『世界の艦船』(2017年2月)、海人社 p. 162