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総合国力

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

総合国力(そうごうこくりょく、中国語: 综合国力ピン音: zōnghé guólì、Comprehensive National Power, CNP)は、1980年代以降、中華人民共和国で盛んに議論されている国家の推定総合力。具体的な定義があるわけではないが、軍事力(ハードパワー)と経済・文化力(ソフトパワー)に考察の重点が置かれる場合が多い。その価値観は現代欧米のものともマルクス・レーニン主義とも、さらには1980年代以前の中国のものとも異なる独自性を持っている。中国政府の狙いは総合国力を世界最高にすることであるが、ソビエト連邦が軍事偏重で崩壊した轍を踏むことが無いように、市場経済などにも配慮を見せている。

内容

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「総合国力」という言葉は1980年代になって作られたものではなく、日本では1940年の『基本国策要綱[1]、1946年の勅令『戦時行政職権特例廃止ノ件』や[2]、1947年の『経済審議庁設置法』中でも使われており[3]、現代でも使われる場合がある[4]

一方、中華人民共和国では1980年代から使われ始めた[5]1992年に前中国共産党中央軍事委員会主席の鄧小平改革開放を進める一環として「総合国力」を重視する旨を表明してさらに注目度が上がり、以後人民日報などで取り上げられる件数が増え続けている[6]。鄧小平の後を継いだ江沢民も「総合国力」を重視し、2002年中国共産党第十六回全国代表大会中国語版で発表した政治報告の中で、総合国力について数回言及している[7]

「総合国力」として重視されることが多い項目は、経済力、軍事力、科学技術力などである[4]中華人民共和国副主席曽慶紅は、経済力、科学技術力、国防力、民族の凝集力と定義している[8]。政府の統制力などが考慮される場合もある[9]。総合国力は、中国国内の調査機関などによって、先進国同士のランキングの形で表される事が多い。1998年中国現代国際関係研究院が発表した時点では、アメリカ合衆国が1位、中国は7か国中の7位だった[10]

中国政府が資金提供して作られたシンクタンク中国社会科学院は独自に算出した主要国の総合国力ランキングをたびたび発表している。アメリカ合衆国が常に1位とされているが、算出基準が決められていないため、2位以下の順位は年によって大きく変動がある。例を挙げると次の通り。

順位 2003年[11] 2006年[9] 2006年点数 2009年[12]
1 アメリカ合衆国の旗 アメリカ アメリカ合衆国の旗 アメリカ 90.62 アメリカ合衆国の旗 アメリカ
2 日本の旗 日本 イギリスの旗 イギリス 65.04 日本の旗 日本
3 中華人民共和国の旗 中国 ロシアの旗 ロシア 63.03 ドイツの旗 ドイツ
4 ドイツの旗 ドイツ フランスの旗 フランス 62.00 カナダの旗 カナダ
5 イギリスの旗 イギリス ドイツの旗 ドイツ 61.93 フランスの旗 フランス
6 フランスの旗 フランス 中華人民共和国の旗 中国 59.10 ロシアの旗 ロシア
7 ロシアの旗 ロシア 日本の旗 日本 57.84 中華人民共和国の旗 中国
8 ノルウェーの旗 ノルウェー カナダの旗 カナダ 57.09 イギリスの旗 イギリス
9 カナダの旗 カナダ 大韓民国の旗 韓国 53.20 インドの旗 インド
10 オーストラリアの旗 オーストラリア インドの旗 インド 50.43 ブラジルの旗 ブラジル

上は総合順位であるが、個別要素についても発表されており、中国の軍事力が日本よりも下位であるとされている場合も多い[4]。上は中国社会科学院の見解だが、調査によっては、中国の総合国力はすでに米国に次いで2位であるとされる場合もある[8]

参考文献

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  1. ^ 国立国会図書館 基本国策要綱”. 2012年6月24日閲覧。
  2. ^ 国立公文書館 アジア歴史資料センター 収蔵資料一覧”. 2012年6月22日閲覧。
  3. ^ 法なび 法令検索経済審議庁設置法”. 2012年6月22日閲覧。
  4. ^ a b c 川勝千可子胡錦濤政権の外交政策」『防衛研究所紀要』第7巻2・3、東京 : 防衛省防衛研究所、2005年3月、53-73頁、ISSN 13441116NDLJP:12826512024年3月29日閲覧。「国立国会図書館デジタルコレクション」 
  5. ^ 张伯里. “毛泽东国力思想与当代综合国力研究”. 2012年6月22日閲覧。
  6. ^ 村田忠禧. “デジタル時代の中国研究法 6”. 2012年6月22日閲覧。
  7. ^ 江泽民在中国共产党第十六次全国代表大会上的报告” (2008年8月1日). 2012年6月22日閲覧。
  8. ^ a b 高橋克秀「中国GDP統計の信頼性 未完の移行期,MPS体系とSNA体系の接合と矛盾」『神戸大學經濟學研究年報』第51巻、神戸大学大学院経済学研究科、2004年、35-53頁、CRID 1390290699901840768doi:10.24546/00422427hdl:20.500.14094/00422427ISSN 028633402024年3月29日閲覧 
  9. ^ a b 社会科学院「米国は世界最強、中国第6位、日本第7位」”. サーチナ (2006年1月6日). 2012年6月23日閲覧。
  10. ^ 光盛史郎「1F08 科学技術と国際関係 : アジアの宇宙開発の進展が地域の安定に及ぼす影響に関する考察(科学技術のグローバリゼーション,一般講演,第22回年次学術大会)」『年次大会講演要旨集』第22巻、研究・イノベーション学会、2007年、214-217頁、CRID 1390282681106442624doi:10.20801/randi.22.0_214hdl:10119/7248ISSN 2432-7131 
  11. ^ 中国の総合国力は世界3位 「30年に日本抜く」”. 共同通信 (2008年1月30日). 2012年6月23日閲覧。
  12. ^ 社科院、世界国力順位発表:中国7位、日本2位”. チャイナネット (2009年12月25日). 2012年6月23日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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