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緊急通報用電話番号

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
国際電気通信連合は、2012年に世界標準の緊急通報用電話番号を設定していない国に、アメリカで使われる911番とヨーロッパなどで使われる112番英語版を使うようにとした[1][2]、その他の番号についても世界地図で示す。
  112
  911
  112と911
  その他の番号、リダイレクト番号なし

緊急通報用電話番号(きんきゅうつうほうようでんわばんごう、: Emergency telephone number)とは、犯罪事案発生時や災害発生などの緊急時に、当地の警察消防などの緊急対応機関に通報するための電話番号である。国によって番号は異なる。

概要

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多くの場合、緊急通報用電話番号は緊急時のみに使用されるものである。緊急通報用電話番号に目的外通話やイタズラ電話をかけること(スワッティングも参照)は、受信業務に支障を生じるために、犯罪日本では偽計業務妨害罪)とされることもある。事態の切迫度に応じて、異なる電話番号を用いるケースもある。例えば、イングランドウェールズでは、緊急時には999英語版警察消防救急)を用い、救急でない医療事案に対しては、0845-46-47を用いている。アメリカ合衆国カナダの多くの地域においても、緊急時には911を用い、緊急時以外警察などに連絡する際は311若しくは地元の相談センター用番号(フィラデルフィアでは231-3131)を用いる。

日本では電気通信番号計画第4で、110番警察機関(→日本の警察)、118番海上保安機関(→海上保安庁)、119番消防機関(→日本の消防)への「緊急通報番号」(電話番号)だと定められている[3]

歴史

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電話の交換業務が手動で行われていた時代にあっては、電話交換手が緊急事態に対する一部の受信業務をこなしていた。その後、電話交換業務が電話交換機に取って代わられると、発信者は警察や消防などを呼ぶ際には関係機関の長い電話番号をダイヤルしなくてはならなくなった。そのため米国カナダ英国では、 0 にダイヤルすると緊急通報専門の電話交換手につながり、煩わしいダイヤル操作をせずに緊急通報ができるような体制をとっていた。北アメリカの多くの国においては、この体制は1970年代まで続いた。

1926年1月20日、東京中央電話局の京橋分局で自動交換機が導入され、同局に収容されている加入者の電話機がダイヤル式に変わった。この時に火災報知用電話の電話番号として 112 が定められた。しかし自動交換システムの仕様上で誤接続が多発したため、1927年10月1日より 119 に改められた。また1936年1月20日、警視庁消防部に新設された救急隊でも 119 を使い始めた。

1937年6月30日にロンドンで使用開始された緊急通報システムは、 999 の電話番号が掛けられると同時にブザーが鳴り、赤ランプが点灯し、交換手の注意を引くというものであった。このシステムは次第にイギリス全土に広がったが、すべての電話交換設備がこのシステムに対応するようになったのは1970年代後半のことであった。

北アメリカにおける最初の緊急通報用電話番号は 911で、1959年よりカナダのマニトバ州ウィニペグなど、一部の都市で使用されるようになった。この911緊急通報システムは、1968年にアラバマ州で米国において初めて使用開始され、1972年にはカナダもそれに変更した。ただし、緊急通報用電話番号の911への変更は秩序だったものではなく、北米電話番号計画に参加している国や地域のほとんどにおいて、911の使用が一般化したのは1980年代のことであった。

パリでは1928年に、電話交換業務時間外に掛ってくる緊急通報も電話交換手が接続をしなければならないことがあり、1929年には1万人未満というごく限られたパリ市民に対してのみ、自動接続システムを導入することで 18 を緊急通報用電話番号とした消防隊への緊急通報を常時可能にするサービスを提供できるようになった。このサービスがフランス全土に普及したのは1970年代のことだった。

極東アジア地域では、初めて本格的な電話網の整備を開始したのが日本であり、その日本の統治下にあった台湾、南樺太朝鮮半島関東州南洋諸島も日本の手によって電話網が整備された。この為 119 はこれらの地域でも使われていた。
日本では電話交換網の整備途上で自動交換が導入され、それと同時に緊急通報電話番号も制定されたため、北米やヨーロッパと違い返って緊急通報電話番号のシステムは一般加入回線逓信省電気通信省電々公社NTTの交換網)の開通とともにほとんど混乱なく導入された。唯一、米軍統治時代に電話網の復旧・拡大と自動交換化が進められた沖縄県の一部のみ119の導入が遅れた。詳細は119番#ワンクッションコールを参照
大戦後、南洋諸島は米軍統治下に置かれたため、北米共通の911に変更された。台湾と朝鮮半島では引き続き119が使われたが、朝鮮戦争後の朝鮮民主主義人民共和国では復興に際して旧COMECON加盟国で採用していた 消防01・救急02・警察03 に変更された。日本において警察への緊急通報番号(110)を定めたのは終戦後の1948年だったため台湾や大韓民国では採用されていなかった。韓国は 112 を採用し、台湾では日本に倣って110を採用した。

ヨーロッパでは、1972年にCEPTが緊急通報用電話番号として 112 の使用を推奨し、1991年7月29日にはEUもそれを採用した。このため、ヨーロッパでは従来の自国・地域の緊急通報用電話番号に加えて欧州共通の112を併用している国や地域も多い。

2008年1月には、IETFIPネットワークにおける緊急通報に関するRFCを公表した。

  • RFC 5012
  • RFC 5031
  • RFC 5069

各国の緊急通報用電話番号

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アジア

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警察 救急 消防 備考 脚注
アラブ首長国連邦の旗 アラブ首長国連邦 999, 112 998, 999 997
イスラエルの旗 イスラエル 100 101 102 携帯電話から:112
イランの旗 イラン 110 115 125 携帯電話から:112
インドの旗 インド 100 102 101 交通警察:103、携帯電話から:112
インドネシアの旗 インドネシア 110 118, 119 113 捜索および救助:115、自然災害:129、電気:123、携帯電話および衛星電話から:112
オマーンの旗 オマーン 9999
カタールの旗 カタール 999
大韓民国の旗 韓国 112 119 非緊急:110韓国、その他の電話番号一覧 [4]
朝鮮民主主義人民共和国の旗 北朝鮮 市内番号のみ [5]
キプロスの旗 キプロス 112, 199
クウェートの旗 クウェート 777
サウジアラビアの旗 サウジアラビア 999 997 998 交通警察:993、救助:911, 112, 08
シンガポールの旗 シンガポール 999 995 携帯電話から:112, 911、SMSによる警察への通報:71999 SMS 71999]”. Singapore Police Force. 2024年4月8日閲覧。
スリランカの旗 スリランカ 119 110 111 事故:11-2691111
タイ王国の旗 タイ 191 1669 199 バンコクEMS指令センター(バンコク都内のみ):1646観光警察:1155
中華人民共和国の旗 中国 110 120 119 交通事故:122、SMSによる通報(一部地域):12110
トルコの旗 トルコ 155 112 110 ジャンダルマ: 156沿岸警備隊:158
中華民国の旗 台湾 110 119 女性と子供の保護:113
海上での事故・事件 (海巡署):118
[警 1]
日本の旗 日本 110 119 海上での事故・事件 (海上保安庁):118
児童虐待児童相談所):189
警察 (緊急を要しない場合): #9110[6]
道路緊急ダイヤル (道路の異状を発見した場合): #9910[6]
ロードサービス業者の一例(JAF):#8139[6]

悪徳商法:188

[警 2][警 3][救 1][消 1]
ネパールの旗 ネパール 100, 103 101
パキスタンの旗 パキスタン 15, 1122 115 16 携帯電話から:112
フィリピンの旗 フィリピン 117 携帯電話から:112, 911、ロードサービス:136、児童虐待:163
 ベトナム 113 115 114
香港の旗 香港 999 FAXおよび身体障害を持つ電話加入者からのSMS:992、携帯電話から:112 [警 4]
マカオの旗 マカオ特別行政区 999
マレーシアの旗 マレーシア 999 民間防衛:991、消防:999, 994、携帯電話から:112
ミャンマーの旗 ミャンマー 199
モンゴルの旗 モンゴル 102 103 101
レバノンの旗 レバノン 112 140 175

アフリカ

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警察 救急 消防 備考 脚注
ウガンダの旗 ウガンダ 999
 エジプト 122 123 180 観光警察:126、交通警察:128、電気:121、天然ガス:129
ガーナの旗 ガーナ 191,999 193, 999 192, 999
ザンビアの旗 ザンビア 999 991 993 携帯電話から:112
ジブチの旗 ジブチ 17 18
ジンバブエの旗 ジンバブエ 995, 999 994, 999 993, 999
チャドの旗 チャド 17 18
チュニジアの旗 チュニジア 197 190 198 国家警備隊:193
マリ共和国の旗 マリ 17 15 18
南アフリカ共和国の旗 南アフリカ共和国 10111 10177 10111 携帯電話から:112
モロッコの旗 モロッコ 都市部:19
地方:177
15 15
ルワンダの旗 ルワンダ 112

ヨーロッパ

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警察 救急 消防 備考 脚注
アイスランドの旗 アイスランド 112 レイキャビク警察(緊急を要しない場合):4441000
アイルランドの旗 アイルランド 112, 999
アルバニアの旗 アルバニア 19 17 18
イギリスの旗 イギリス 999, 112 2006年より緊急を要しない場合の警察への通報先として、イングランドとウェールズの一部地域で 101 が供用開始された。ガス漏れ:0800 111 999NHSダイレクト(医療相談):08 45 46 47

999を押した後に無言だとサイレントソリューションによって切断されるため、声を出せない状況では咳をするか、受話口を軽く叩くか、55番を続けて入力することでオペレーターにつなげることができる[7]

イタリアの旗 イタリア 112, 113 112, 118 112, 115, 1515 カラビニエリ国家憲兵):112、国家警察:113、財務警察:117、森林警備隊(山火事):1515、救急・山岳救助:118
 ウクライナ 02, 102, 112 03, 103, 112 01, 101, 112 ガス漏れ:04, 104, 112
 エストニア 112, 110
 オーストリア 112, 133 112, 144 112, 122 山岳救助:140、児童相談:147
オランダの旗 オランダ 112 警察(緊急を要しない場合):0900-8844
ギリシャの旗 ギリシャ 100, 112 166, 112 199, 112 森林火災:191、沿岸警備隊:108、麻薬対策:109
クロアチアの旗 クロアチア 92 94,112 93, 112 ロードサービス:987
コソボの旗 コソボ 911
スイスの旗 スイス 117, 112 144, 112 118, 112 毒:145、ロードサービス:140、心理相談(無料・匿名):143、子ども心理相談(無料・匿名):147航空救助隊(REGA):1414 または 超短波無線 161.300 MHz、航空救助隊(Air Glaciers):1415ヴァレー州のみ)
 スウェーデン 112 警察(緊急を要しない場合):11414
スペインの旗 スペイン 国家警察 091, 112
地方警察 092, 112
061, 112 080, 085, 112 グアディア・シビル(軍警察):062、カタルーニャ警察:088
スロバキアの旗 スロバキア 158, 112 155, 112 150, 112
スロベニアの旗 スロベニア 113 112
セルビアの旗 セルビア 92, 112 94, 112 93, 112
 チェコ 112, 158 112, 155 112, 150 地方警察:156
 デンマーク 112 最寄りの警察署(緊急を要しない場合):114
ドイツの旗 ドイツ 110, 112 112
 ノルウェー 112 113 110 警察(緊急を要しない場合):02800
 ハンガリー 107, 112 104, 112 105, 112
 フィンランド 112 112
フランスの旗 フランス 17, 112 重傷 15, 112
軽傷 18, 112
18, 112 112番通報は通報者の居場所により、15 もしくは 18 どちらかのオペレーターが応答する。ホームレス:115
 ブルガリア 166, 112 150, 112 160, 112 2008年現在、ブルガリアでは 112 の導入が進められている。
 ベラルーシ 102 103 101 ガス漏れ:104
ベルギーの旗 ベルギー 101, 112 100 または 112 迷子:110、心理相談・自殺防止:106
ポーランドの旗 ポーランド 997, 112 999, 112 998, 112 地方監視員:986、天然ガス・LPガス:992
ボスニア・ヘルツェゴビナの旗 ボスニア・ヘルツェゴビナ 122 124 123 携帯電話から:112 または 911、地方の緊急通報全般:08
ポルトガルの旗 ポルトガル 112 森林火災:117
北マケドニア共和国の旗 北マケドニア 192, 112 194, 112 193, 112
マルタの旗 マルタ 112
モルドバの旗 モルドバ 902 903 901 2010年までに 112 の導入が完了する予定。
 ラトビア 02, 112 03, 112 01, 112 ガス漏れ:04
 リトアニア 02, 102, 022, 112 03, 103, 033, 112 01, 101, 011, 112 112 以外の番号は地域ごとに異なるために、112 が共通の緊急通報用番号として使用されている。
 ルーマニア 112
ルクセンブルクの旗 ルクセンブルク 112, 113 112
ロシアの旗 ロシア 02 03 01 ガス漏れ:04(旧COMECON参加国の共通番号でもある)
すべての緊急通報:112(EUに合わせるかたちで2008年に導入された。旧番号は2012年頃までに廃止するとされていたが、現在も運用されている。日本の外務省では渡航者に対して旧番号を推奨している)

オセアニア

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警察 救急 消防 備考 脚注
オーストラリアの旗 オーストラリア 000 携帯電話から:112000 または 08、テキストフォン・TTY(テレタイプライター)から:106(National Relay Service)
ニュージーランドの旗 ニュージーランド 111 携帯電話から:112 または 911 または 08、すべての緊急通報(FAX):0800 161610
バヌアツの旗 バヌアツ 112
フィジーの旗 フィジー 911 9170

北アメリカ

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警察 救急 消防 備考 脚注
アメリカ合衆国の旗 アメリカ 911 緊急を要しない場合(一部地域):311、携帯電話から:112 地方の一部では911サービスが不十分な地域も存在する。
カナダの旗 カナダ 911 緊急を要しない場合(一部地域):311 地方の一部では911サービスが不十分な地域も存在する。
サンピエール島・ミクロン島 17 15 18
メキシコの旗 メキシコ 066, 060, 080 一部の地域では 911 は適当な番号に転送される。

中央アメリカ

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警察 救急 消防 備考 脚注
エルサルバドルの旗 エルサルバドル 911
ケイマン諸島の旗 ケイマン諸島 911
コスタリカの旗 コスタリカ 911
ジャマイカの旗 ジャマイカ 119 110
ドミニカ共和国の旗 ドミニカ共和国 911
トリニダード・トバゴの旗 トリニダード・トバゴ 999 990
パナマの旗 パナマ 911
バルバドスの旗 バルバドス 211 511 311

南アメリカ

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警察 救急 消防 備考 脚注
アルゼンチンの旗 アルゼンチン 101 107 100 ブエノスアイレス市およびブエノスアイレス州のみ:911
ウルグアイの旗 ウルグアイ 911
ガイアナの旗 ガイアナ 911 913 912
 コロンビア 123(衛星電話は除く) 交通事故:127、警察GAULA(誘拐対策):165、陸軍GAULA(誘拐対策):147
112 132 119
スリナムの旗 スリナム 115
 チリ 133 131 132
パラグアイの旗 パラグアイ 911
ブラジルの旗 ブラジル 190 192 193 連邦高速道路警察:191、連邦警察:194、市民警察:197、州高速道路警察:198、民間防衛:199、人権:100MERCOSUR地域向け緊急通報用番号:128、携帯電話からの 112190 に転送される。 911190 へ転送される。
ベネズエラの旗 ベネズエラ 171
ペルーの旗 ペルー 105 117 116
ボリビアの旗 ボリビア 110 118

脚注

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出典
警察
  1. ^ 110報案”. 内政部警政署. 2012年5月24日閲覧。(繁体字中国語)
  2. ^ 警察の情報通信 - 4 通信指令システム”. 警察庁. 2012年5月24日閲覧。(日本語)
  3. ^ 海の「もしも」は118番”. 海上保安庁. 2012年5月24日閲覧。(日本語)
  4. ^ 聯絡我們 - 警察熱線”. 香港警務処. 2012年5月24日閲覧。 (繁体字中国語)
救急
  1. ^ 119番の正しいかけ方”. 総務省消防庁. 2012年5月24日閲覧。(日本語)
消防
  1. ^ 救急車利用マニュアル A guide for ambulance services”. 総務省消防庁. 2021年1月29日閲覧。(日本語)(英語)(朝鮮語)(簡体字中国語)

関連項目

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外部リンク

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