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絵画論 (レオナルド)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Trattato della pittura、1651年版の扉。

絵画論』(かいがろん、イタリア語: Trattato della pittura)は、レオナルド・ダ・ヴィンチが「絵画について」という見出しでノートに記した文章を集めた文集。手稿はレオナルドがミラノルドヴィーコ・スフォルツァに仕えていた頃から書き始められ、後に彼の相続人となったフランチェスコ・メルツィによって取りまとめられた。この論文は、1632年フランスで最初に出版されたが、メルツィによるバージョンがバチカン図書館で再発見された後、現在知られる形で1817年に改めて出版された。

この論文のおもな目的は、絵画が科学のひとつであることを論じることにあった[1][2]。表現や人物造形に関するレオナルドの鋭い洞察力は、笑いと泣きについての彼の比較論からも明らかであり、そこで彼はこれら二つの感情の唯一の違いは「表情の動き」という意味では「眉の波立ちにあり、泣いている時にはこれが加わるが、笑っているときは眉はもっと高く広がっている」と述べている[3]

1937年マックス・エルンストは、『カイエ・ダール (Cahiers d'Art)』誌への寄稿で、壁の染みの研究についてのレオナルドの助言が元で、「耐えがたい視覚的強迫観念」に襲われたと述べた[4]

この論文のすべてのエディションは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校エルマー・ベルト英語版・ダ・ヴィンチ図書館 (Elmer Belt Library of Vinciana) に所蔵されている[5]

歴史

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手稿はレオナルドがミラノルドヴィーコ・スフォルツァに仕えていた1482年から1499年の間に書き始められ、レオナルドの人生最後の25年間にわたって書き継がれた[6]。後にこの文集に収められた記述は、レオン・バッティスタ・アルベルティチェンニーノ・チェンニーニ英語版からの引用が含まれている。レオナルドは死に際して、ノート類を弟子で相続人となったフランチェスコ・メルツィに託し[7]、出版するよう指示したが、取り上げられた対象の広がりや、レオナルドの特異な書体のために、その作業は困難を極めた[8]。メルツィは『絵画論』を成す文章を18冊のノート(そのうち3分の2は現存しない)から集めた[9]1570年にメルツィが死去すると、コレクションは息子で法律家のオラツィオ (Orazio) に遺されたが、彼はこの日誌類にほとんど興味を示さず[7]、その結果それらは散逸してしまった[10][11]

1632年フランスでこの論文のバージョンが出版された[12]1651年には、フランス語イタリア語による抄録版が、ラファエロ・ドゥ・フレスネ (Raffaelo du Fresne) によって『絵画論』として出版された。その後、メルツィのバージョンがバチカン図書館で再発見され、この論文は現在知られる形で1817年に初めて出版された[4]

脚注

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  1. ^ Science: Science of Painting”. Britannica. 2013年5月6日閲覧。
  2. ^ Clement Greenberg; John O'Brian (1986). The Collected Essays and Criticism: Affirmations and refusals, 1950-1956. p. 259. ISBN 9780226306230. https://books.google.com/books?id=ygU6MRiXBN8C 2013年5月6日閲覧。 
  3. ^ Chapter CLXXII, trans. Rigaud. https://archive.org/details/davincionpainting00leon
  4. ^ a b Wallace 1972, p. 171.
  5. ^ UCLA Library”. UCLA Library. 5 June 2019閲覧。
  6. ^ Wallace 1972, pp. 57, 169.
  7. ^ a b Wallace 1972, p. 169.
  8. ^ Keele, Kenneth D. (1964). “Leonardo da Vinci's Influence on Renaissance Anatomy”. Med Hist 8 (4): 360–70. doi:10.1017/s0025727300029835. PMC 1033412. PMID 14230140. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1033412/. 
  9. ^ Wallace 1972, p. 170.
  10. ^ Major, Richard Henry (1866). Archaeologia: Or Miscellaneous Tracts Relating to Antiquity, Volume 40, Part 1. London: The Society. pp. 15–16. https://books.google.com/books?id=HlBIAAAAYAAJ&pg=PA15 
  11. ^ Calder, Ritchie (1970). Leonardo & the Age of the Eye. New York, NY: Simon and Schuster. p. 275 
  12. ^ Arasse, Daniel (1998). Leonardo da Vinci. Konecky & Konecky. ISBN 978-1-56852-198-5 

参考文献

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  • Wallace, Robert (1972). The World of Leonardo: 1452–1519. New York: Time-Life Books 

関連文献

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  • Leonardo da Vinci, Treatise on Painting, [Codex Rurbinas Latinus, translated and annotated by P. Philip McMachon, Princeton University Press 1956

外部リンク

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