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筑井甚吉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
筑井 甚吉
生誕 1926年1月31日
日本の旗 日本東京都
死没 (2010-03-05) 2010年3月5日(84歳没)
国籍 日本の旗 日本
研究機関 (機関)大阪大学
成蹊大学
亜細亜大学
東京経済大学
研究分野 理論経済学
母校 中央大学学士
一橋大学博士
実績 ターンパイク定理の研究と応用
受賞 日経・経済図書文化賞 (1980年)
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筑井 甚吉(つくい じんきち、1926年1月31日 - 2010年3月5日)は、日本経済学者大阪大学名誉教授。東京経済大学助教授・成蹊大学教授・大阪大学教授を歴任。

人物・経歴・業績

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東京吉祥寺生まれ。1942年東京都立第二商業学校卒業。1952年中央大学入学資格認定試験合格・入学[注釈 1]。1956年中央大学経済学部を優等の成績で卒業。1958年一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。同年東京経済大学助手に着任[1]。1961年一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。指導教官は山田雄三[2]。同年、一橋大学経済学博士[3]

1961年東京経済大学専任講師に昇格。ハーバード大学経済研究所研究員[4]を経て、1964年東京経済大学助教授。1967年成蹊大学政治経済学部教授。1968年成蹊大学経済学部教授。1970年から1972年まで理論計量経済学会理事。1972年大阪大学社会経済研究所教授。1974年から1975年まで大阪大学社会経済研究所所長。1982年から1983年まで再び大阪大学社会経済研究所所長。この間,東北大学経済学部,早稲田大学大学院経済学研究科講師を兼任した。1989年大阪大学定年退官、大阪大学名誉教授。1987年から山田勇(一橋大学名誉教授)の後任として亜細亜大学客員教授を務め、大阪大学定年退官後の1989年から亜細亜大学教授となり、1996年定年退職[1]

最適多部門動学モデルの構築及び日本経済成長への応用などを行い、1980年 "Turnpike Optimality in Input-Output Systems: Theory and Application for Planning[5]" で日経・経済図書文化賞受賞[6][7]。また、1989年には一橋の先輩にあたる中山素平(元経済同友会代表幹事)ら財界の協力を得て、環太平洋産業連関分析学会設立に尽力した[7]

ハーバード大学滞在中,David Simpsonと日米欧各国の産業連関表について,独自に開発したアルゴリズムを用い,ブロック三角性(投入産出行列の分解性)を同定し,異なる経済に共通する「生産の基本的構造 (a fundamental structure of production)」の存在を見出した[8].この論文は世界中の数多くの研究で引用されている[注釈 2].例えば,産業エコロジー分野(特にマテリアルフロー分析)で用いられる製品の組成推定法に応用されている[9].これと並び,筑井の業績として国際的に広く認知されているのが,多部門成長モデル(動学産業連関モデル)に関わるターンパイク定理の理論的研究とデータを用いた世界初の実装である[10][11][12][13].筑井自身の言葉に依れば[14]『「2000年の日本」[15]等の政府の長期見通し作業にも使われているターンパイク・モデルは,その基礎理論からモデルの構築と経済企画庁を中心とした実用化研究[16]に至るまで,我が国で開発された数少ない国産の経済分析手法である』.大阪大学退職後も精力的に研究活動を行い,「投入産出の基本的構造」[8]が持つ含意(投入産出行列の分解性 decomposability)を踏まえたターンパイク定理の拡張を行っている[17]

子に筑井麻紀子(東京国際大学商学部教授)がある。ヨットに関する造詣が深く、大学進学前にヨットの設計に携わり、造船学者元良誠三と研究論文を執筆している[18]

脚注

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  1. ^ a b 加藤寿延「筑井甚吉先生を送るの辞」『亜細亜大学経濟學紀要』第20巻2・3、亜細亜大学経済学会、1996年7月、7-11頁、CRID 1520853834556968064ISSN 03854604 
  2. ^ 「本年度学位授与論文および単位修得論文」 『一橋研究』 7号, 1961年, p.66-70, doi:10.15057/6770
  3. ^ 「動学的投入産出体系における産出量の変動径路の分析」 一橋大学 , 経済学博士 , [報告番号不明] , 1961-09-30, NAID 500000457241
  4. ^ 筑井甚吉. "1962-64 年の HERP." 産業連関 9.1 (1999): 10-12.
  5. ^ Tsukui, Jinkichi, and Yasusuke Murakami. Turnpike optimality in input-output systems: Theory and application for planning. Vol. 122. North-Holland, 1979.
  6. ^ [1]日本経済研究センター
  7. ^ a b 宍戸駿太郎「筑井甚吉教授を偲ぶ」『産業連関』第19巻第2号、環太平洋産業連関分析学会、2011年、3-4頁、doi:10.11107/papaios.19.2_3ISSN 1341-9803NAID 130005096343 
  8. ^ a b Simpson, David; Tsukui, Jinkichi (1965). “The Fundamental Structure of Input-Output Tables, An International Comparison”. The Review of Economics and Statistics 47 (4): 434–446. doi:10.2307/1927773. ISSN 0034-6535. https://www.jstor.org/stable/1927773. 
  9. ^ Nakamura, Shinichiro; Nakajima, Kenichi; Kondo, Yasushi; Nagasaka, Tetsuya (2007-10). “The Waste Input‐Output Approach to Materials Flow Analysis” (英語). Journal of Industrial Ecology 11 (4): 50–63. doi:10.1162/jiec.2007.1290. ISSN 1088-1980. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1162/jiec.2007.1290. 
  10. ^ Tsukui, Jinkichi (1966). “Turnpike Theorem in a Generalized Dynamic Input-Output System”. Econometrica 34 (2): 396–407. doi:10.2307/1909940. ISSN 0012-9682. https://www.jstor.org/stable/1909940. 
  11. ^ Tsukui, J. (1967-01-01). “The Consumption and the Output Turnpike Theorems in a von Neumann Type of Model--A Finite Term Problem”. The Review of Economic Studies 34 (1): 85–93. doi:10.2307/2296572. ISSN 0034-6527. https://doi.org/10.2307/2296572. 
  12. ^ Tsukui, Jinkichi (1968). “Application of a Turnpike Theorem to Planning for Efficient Accumulation: An Example for Japan”. Econometrica 36 (1): 172–186. doi:10.2307/1909611. ISSN 0012-9682. https://www.jstor.org/stable/1909611. 
  13. ^ 筑井甚吉, 村上泰亮 (1979). Turnpike optimality in input-output systems : theory and application for planning. Contributions to economic analysis. North-Holland and Sole distributors in the U.S.A. and Canada, Elsevier/North-Holland. ISBN 0444852212. https://lccn.loc.gov/79000613 
  14. ^ 筑井甚吉「長期経済見通しのためのターンパイク・モデル」『Input-Output Analysis』第2巻第1号、環太平洋産業連関分析学会、1991年、58-64頁、CRID 1390001205234007808doi:10.11107/papaios.2.1_58ISSN 1341-9803 
  15. ^ 経済企画庁総合計画局編『図説2000年の日本: 日本経済21世紀への挑戦 』1982, 日経BPM(日本経済新聞出版本部)
  16. ^ 筑井甚吉、村上泰亮、時子山和彦、時子山ひろみ、高島忠、西藤冲、日水俊夫、小林良邦、近藤誠『ターンパイク・モデル(多部門最適化モデル)』東京経済研究センター〈経済企画庁経済研究所研究シリーズ 第28号〉、1973年3月。
  17. ^ Móczár, József; Tsukui, Jinkichi (1992-01). “Balanced and Unbalanced Growth Paths in a Decomposable Economy: Contributions to the Theory of Multiple Turnpikes” (英語). Economic Systems Research 4 (3): 211–222. doi:10.1080/09535319200000019. ISSN 0953-5314. http://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/09535319200000019. 
  18. ^ 元良誠三, 筑井甚吉「可動ステップによる船体抵抗の減少」『生産研究』第3巻第3号、誠文堂新光社、1951年3月、78-81頁、CRID 1050564289069896448hdl:2261/29489ISSN 0037105X 

注釈

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  1. ^ 大学進学が遅れたのは家業を継ぐ事を要請されていたため。
  2. ^ Google Scholarに依れば,2024年5月における引用数は約290本である.