秋山薊二
秋山 薊二(あきやま けいじ、昭和22年(1947年) - )は、日本の社会学者、関東学院大学名誉教授。社会福祉援助技術、ソーシャルワーク論を専門にしている。
来歴
[編集]ランバス大学(メジャー・社会学)卒業。1977年ダルハウジー大学大学院修士課程修了、MSW。弘前学院短期大学を経て関東学院大学文学部現代社会学科教授、文学部長(2007.4〜2012.3)、2017年4月より関東学院大学名誉教授。ジェネラル・ソーシャルワークの立場から、ソーシャルワークの基礎理論研究を行っている。
ソーシャルワーク統合化とジェネラル・ソーシャルワーク
[編集]社会福祉の実践方法であるソーシャルワークは、従来のケースワーク、グループワーク、コミュニティ・オーガニゼーションの三方法の分立から、一般システム理論(ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィ)の影響を受け、ピンカスとミナハン(1973年)、秋山の恩師であるハワード・ゴールドシュタイン(1973年)、スペクトとビッケリー(1977年)、生態学的アプローチのジャーメインら(1980年)の業績により、現在はソーシャルワーク方法の統合化=統合ソーシャルワークの思考を導くに至っている。ジェネラル・ソーシャルワークは、統合ソーシャルワークとほぼ同義である。一方でジェネラリスト・ソーシャルワークという用語も知られている。
秋山によれば①ジェネラル・ソーシャルワークとジェネラリスト・ソーシャルワークは基本的には同じ概念であること、②ジェネラルは方法の統合を、ジェネラリストは分野の統合を基本的に指向していること、③現在では分野統合を基本にしたジェネラリスト・ソーシャルワークが定着しているという。そこで太田義弘、秋山薊二が方法の統合化に焦点をあてる意図を込めてジェネラル・ソーシャルワークと呼んでいる。
エビデンス・ベイスド・ソーシャルワーク
[編集]秋山は2005年オックスフォード大学(Oxford University, Department of Social Policy and Intervention)の客員研究員であった際に、英語圏諸国で普及が始まったエビデンス(証拠)に基づく実践(EBP)の原理・方法に関して「Evidence-Basedソーシャルワークの理論と方法」(下記論文参照)と題する論文を著した。これはエビデンスに基づくソーシャルワーク(EBSW)の概念、原理とその体系的思考方法を初めて日本に導入した論文である。これを契機に、斯界ではEBPやEBSWの検討や是非などについて言及する議論が始まっている。
レジリエンスとソーシャルワーク
[編集]2012年6月、第29回日本ソーシャルワーク学会大会(大会テーマ:「リジリエンスによるソーシャルワーク論とその実践」)が関東学院大学金沢文庫キャンパスで開催された。その際秋山は大会長として、世界的に著名なリジリエンスの研究者、マイケル・ウンガー(Michael Ungar)をカナダ・ダルハウジー大学・リジリエンス研究センター(RRC:Resilience Research Centre)より招聘し、ウンガ-が大会の主題講演を行った。リジリエンス概念の日本への導入に尽力している。なお、秋山もリジリエンス研究を行っており、リジリエンスに関する論文を発表している。2023年11月には『レジリエンス研究:レジリエンス思考に基づくソーシャルワーク』を刊行し、レジリエンス概念の整序と定義を提示し、レジリエンス思考を導き、そこから実践方法を提示しすることにより、レジリエンス思考の敷衍に努めている。
著書
[編集]- 『ソーシャル・ワークーその過程』(太田義弘らとの共著)海声社(1984年)
- 『ケースワーク』(共著)川島書店(1998年)
- 『ジェネラル・ソーシャルワーク』(太田義弘らとの編著)光生館(1999年)
- 『戦後社会福祉の総括と二一世紀への展望Ⅳ 実践方法と援助技術』(分担執筆) ドメス出版(2002年)
- 『教育研究とエビデンス -国際的動向と日本の現状と課題』(分担執筆) 明石書店(2012年)
- 『レジリエンス研究:レジリエンス思考に基づくソーシャルワーク』福村出版(2023年)
論文
[編集]- 『ソーシャルワークの理論モデル再考──統合モデルの理論的背景、実践過程の特徴、今後の課題』、ソーシャルワーク研究、vol.21, No3、(1995年、相川書房)
- 『ジェネラル・ソーシャルワークの基本的立場と方法』ソーシャルワーク研究vol.24, No1(1998年,相川書房)
- 『社会構成主義とナラティブ・アプローチ-ソーシャルワークの視点から-』人文科学研究所報第27号(2004年,関東学院大学)
- 『Evidence-Basedソーシャルワークの理念と方法』ソーシャルワーク研究vol.31, No2(2005年,相川書房:下記の秋山研究室HP参照)
- 「A comparison between Japanese and British research papers in key academic journals」International Social Work, 50(2), March 2007, pp.255-264(Ann BUCHANAN との共著).
- 「エビデンスに基づくソーシャルワーク(EBP、EPS)に対する誤解の諸相-EBPの実相とPBR-」『関東学院大学文学部紀要』第112号(2008年).
- 「エビデンスに基づく実践(EBP)からエビデンス情報に基づく実践(EIP)へ-ソーシャルワーク(社会福祉実践)と教育実践に通底する視点から-」『国立教育政策研究所紀要』 第140集, 2011年3月.
- 「自然災害に見るコミュニティのリジリエンスとソーシャルワーク」『関東学院大学人文学会紀要』2015年、第132号
- 「コミュニティ・レジリエンスと地域福祉-レジリエンスがもたらす生態、資源、資本を基盤にした地域福祉にむけて-」『地域福祉研究』No.50, 日本生命済生会, 2022年3月.
外部リンク
[編集]- Evidence-Basedソーシャルワークの窓(関東学院大学文学部秋山研究室)
- リジリエンス研究情報センター http://home.kanto-gakuin.ac.jp/~resile/index.html
- [1]関東学院大学文学部による教員紹介
- [2]関東学院大学文学部長によるあいさつ