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イード・アル=アドハー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
犠牲祭から転送)
中国でのイード・アル=アドハー

イード・アル=アドハーアラビア語: عيد الأضحى‎ ʿīd al-ʾaḍḥā、Eid al-Adha)は、イスラム教で定められた宗教的な祝日イブラーヒーム(アブラハム)が進んで息子のイスマーイール(イシュマエル)をアッラーフへの犠牲として捧げようとした事[1]を世界的に記念する日。ムスリムの巡礼月の10日に行われるイード(祝祭)である、イード・アル=フィトルと同様に、イード・アル=アドハーは短い説教をともなう祈祷フトゥバ)から始まる。イード・アル=フィトルより長期間にわたるため、「大イード」などとも呼ばれる。また、日本では「犠牲祭」と意訳され、ロシアを筆頭とする(中央アジア地域も含む)旧ソ連構成国では「ウラザバイラムロシア語: Курбан-байрам)」と呼ばれている[2]

イード・アル=アドハーはヒジュラ暦12月10日から4日間にわたって行なわれる。この日は世界中のムスリムによるサウジアラビアメッカへの毎年恒例の巡礼においてアラファト山を降りる日の翌日にあたり、すなわちハッジの最終日である。また、巡礼に参加しているムスリムはもちろん、巡礼に参加していないムスリムも経済的能力があれば動物を(羊の場合は1人分、ラクダおよび牛の場合は最大7人まで)贄として捧げ、この日を祝う。

別名

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イード・アル=アドハーは、イスラム世界で広く使われる別名も持っている。以下に例を挙げる。

その他の地域

タバスキ…セネガルニジェールモロッコベナンなど西・中央アフリカ諸国。

イード・アル・カビール(アラビア語:عيد الكبير `Īd al-Kabīr大祭) アラブ文化圏…イエメンシリア北アフリカ諸国、マグレブ フランス語…マグレブからの移民の影響。

歴史と現状

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老若男女を問わず、イードに参加する全てのムスリムは正装を着用してモスクに集うよう求められる。また、所有するヒツジラクダウシヤギなどの家畜から生贄を供出することもできる。供出された動物はウドヒヤ(udhiya、アラビア語でأضحية)またはカルバニと呼ばれ、年齢や品質の基準を満たしたものだけが適格とされる。一般的には、4歳以上で26ストーン(163.8kg)より重いものがふさわしい。生贄に捧げる際にはアッラーフの名を復唱し、ムハンマドと同じように嘆願を述べる。コーランによれば、肉の大部分は飢えた貧しい人々に与えられるべきであり、これらの人々はイード・アル=アドハーの宴会に参加できる。残りは家族にお祝いの食事として分けられ、親族や友人を招いてこれを食べる。貧しくないムスリムは捧げられた食物に手をつけない事で協力し、イード・アル=アドハー期間中のイスラム社会における慈善が実践される。イスラム社会においては、イード・アル=アドハーを通じて倫理的な実践が強く確認される。また、人々は、期間中に両親、家族・友人の順番に親族などを訪問する。

初日と最終日にタクビールを唱える(「アッラーフ・アクバル」と唱える)事と同様に、肉をふるまう事はイード・アル=アドハーにおける不可欠な要素とみなされる。

グレゴリオ暦との関係

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太陰暦に基づくイスラム暦においてイード・アル=アドハーは毎年同じ日付に行なわれるが、一般的な太陽暦を採用しているグレゴリオ暦では年ごとに日付が異なる。また、年によってはグレゴリオ暦で相当する日付が2種類になる場合もある。具体例は以下の通り。

  • 2005年:1月21日
  • 2006年:1月10日および12月31日[4]
  • 2007年:12月19日
  • 2008年:12月8日
  • 2009年:11月27日
  • 2010年:11月16日
  • 2011年:11月6日
  • 2012年:10月26日
  • 2013年:10月15日
  • 2014年:10月4日
  • 2015年:9月23日
  • 2016年:9月12日
  • 2017年:8月31日
  • 2018年:8月20日
  • 2019年:8月10日
  • 2020年:7月31日
  • 2021年:7月20日
  • 2022年:7月9日

脚注

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  1. ^ イサクの燔祭のこと。『クルアーン』ではイブラーヒーム(アブラハム)は息子を犠牲に捧げようとしたとされているが、それがイスハーク(イサク)の方か、イスマーイール(イシュマエル)の方かは明確に示されていない。キリスト教シーア派ではイサクを犠牲にしようとしたとされるが、スンナ派の大多数ではイスマーイールの方を犠牲にしようとしたとされている。
  2. ^ 「断食月ラマダン終了 世界各地で祝祭(2020年5月25日, 21:55)」(スプートニク日本版)
  3. ^ エッセイ・コミックス「トルコで私も考えた」シリーズ「ジェネレーションズ」収録「ケナン・トルコへ行く 2017」内「◆③トルコ再入国◆」149頁(著:高橋由佳利、出版:集英社2018年6月30日、ISBN978-4-08-792030-7)
  4. ^ The Umm al-Qura Calendar of Saudi Arabia

外部リンク

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