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「トランス排除的ラディカルフェミニスト」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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'''ターフ'''({{Lang-en-short|'''''TERF'''''}})は、'''トランス排除的ラディカルフェミニスト'''({{Lang-en-short|'''''Trans-exclusionary radical feminist'''''}})を指す[[頭字語]]である。この用語においてトランスとは[[トランスジェンダー]]のことを差す
'''トランス排除的ラディカルフェミニスト'''({{Lang-en-short|'''''Trans-exclusionary radical feminist'''''}})は[[トランスジェンダー]]に対して排除、排斥的な立場を採る[[ラディカル・フェミニズム|ラディカル・フェミニスト]]のこと。頭文字からTERF(ターフ)とも


2008年に作られた言葉で<ref name="Smythe 2018">Smythe, Viv (28 November 2018). [https://www.theguardian.com/commentisfree/2018/nov/29/im-credited-with-having-coined-the-acronym-terf-heres-how-it-happened "I'm credited with having coined the word 'Terf'. Here's how it happened"]. ''The Guardian''. 2020年2月20日閲覧. 引用和訳:「2008年に投稿したいくつかのブログにおいて、私たちとは違い、トランス女性をシスターとして認めない自称ラディカルなフェミニスト達のグループの事を初めてターフ(Terf)と名付けたと言う事を後になって言われるようになった」.</ref>、フェミニズムにおいて[[トランスフォビア|トランスフォビック]](トランス差別的)だと受け取られる意見を支持する[[フェミニスト]]を表現する言葉である。
2008年に作られた言葉で<ref name="Smythe 2018">Smythe, Viv (28 November 2018). [https://www.theguardian.com/commentisfree/2018/nov/29/im-credited-with-having-coined-the-acronym-terf-heres-how-it-happened "I'm credited with having coined the word 'Terf'. Here's how it happened"]. ''The Guardian''. 2020年2月20日閲覧. 引用和訳:「2008年に投稿したいくつかのブログにおいて、私たちとは違い、トランス女性をシスターとして認めない自称ラディカルなフェミニスト達のグループの事を初めてターフ(Terf)と名付けたと言う事を後になって言われるようになった」.</ref>、フェミニズムにおいて[[トランスフォビア|トランスフォビック]](トランス差別的)だと受け取られる意見を支持する[[フェミニスト]]を表現する言葉である。
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特に、トランス女性を[[女性]]とみなさなかったり、女性の身体や女性性を保護する目的で設置された[[女性専用空間]](女性用トイレ、更衣室、女風呂、レイプクライシスセンターやDVシェルターなどの女性専用避難所)へのトランスの立ち入りや利用を、「女性の[[生存権]]」を根拠に拒否するフェミニストと、トランスジェンダーの権利の法制化に対して反対意見を主張するフェミニストのことを差す<ref name="山田 2019">山田, 秀頌 (16 February 2019). [https://wezz-y.com/archives/63653 "「女性専用スペースからトランス女性を排除しなければならない」という主張に、フェミニストやトランスはどう抵抗してきたか"]. WEZZY. 2020年2月22日閲覧. 「言説の内容は女子大の問題をはるかに超え、トイレをはじめあらゆる女性専用スペースからトランス女性を排除しなければならない、というものになっていた。しかも、そうした排除は、フェミニズムがフェミニズムである以上、当然の帰結だと主張されていた。トランス女性は〈男体持ち〉か、単に「男性」であるのだから、トランスの権利と(シス)女性の権利は決して両立しない。したがって『女性の権利』を守るフェミニズムは、トランス女性を排除する資格を持つ、というわけだ。」</ref>。
特に、トランス女性を[[女性]]とみなさなかったり、女性の身体や女性性を保護する目的で設置された[[女性専用空間]](女性用トイレ、更衣室、女風呂、レイプクライシスセンターやDVシェルターなどの女性専用避難所)へのトランスの立ち入りや利用を、「女性の[[生存権]]」を根拠に拒否するフェミニストと、トランスジェンダーの権利の法制化に対して反対意見を主張するフェミニストのことを差す<ref name="山田 2019">山田, 秀頌 (16 February 2019). [https://wezz-y.com/archives/63653 "「女性専用スペースからトランス女性を排除しなければならない」という主張に、フェミニストやトランスはどう抵抗してきたか"]. WEZZY. 2020年2月22日閲覧. 「言説の内容は女子大の問題をはるかに超え、トイレをはじめあらゆる女性専用スペースからトランス女性を排除しなければならない、というものになっていた。しかも、そうした排除は、フェミニズムがフェミニズムである以上、当然の帰結だと主張されていた。トランス女性は〈男体持ち〉か、単に「男性」であるのだから、トランスの権利と(シス)女性の権利は決して両立しない。したがって『女性の権利』を守るフェミニズムは、トランス女性を排除する資格を持つ、というわけだ。」</ref>。


元々は[[ラディカル・フェミニズム|ラディカル・フェミニスト]]の一派を指したが、現在は必ずしもラディカル・フェミニズムに関連しているわけではない<ref name="Lewis 2019">Lewis, Sophie (7 February 2019). [https://www.nytimes.com/2019/02/07/opinion/terf-trans-women-britain.html "Opinion | How British Feminism Became Anti-Trans"]. The New York Times. ISSN 0362-4331. 2020年2月20日閲覧. 引用和訳:「もしトランスフォビックなハラスメントがフェミニズムの範疇に含まれている事が驚きならば、それはあなただけではない。…時と共に、ターフはラディカルであるかどうかに関わらず、反トランスジェンダーなフェミニスト全体を指す言葉となった。」</ref><ref name="Miller 2018">Miller, Edie (5 November 2018). [https://theoutline.com/post/6536/british-feminists-media-transphobic?zd=1&zi=nb4ezbal "Why Is British Media So Transphobic?"]. The Outline. 2020年2月20日閲覧. 引用和訳:「正直に言うと、イギリスの保守派はいつでもトランスフォビックな主張をすることはできるけれどもその必要もなかった。左派の中の一部が彼らの代わりにヘイトを広めているからだ。悲しい事に、その中でも最も積極的なヘイトはラディカルフェミニストの内輪から来ている。イギリスのフェミニズムのターフ問題は深刻になりつつある。ターフという用語は今では、ラディカルフェミニズムとの関連性に限らず、典型的なターフの論理を使ったトランス排除的な主張をする人を呼ぶ用語となった。」 .</ref>。フェミニズム(女性の権利)の観点から、トランス女性の排除が目立つが、トランス男性やその他の[[性同一性]]、トランスジェンダー全体に対する差別が含まれる事もある。
元々はラディカル・フェミニストの一派を指したが、現在は必ずしもラディカル・フェミニズムに関連しているわけではない<ref name="Lewis 2019">Lewis, Sophie (7 February 2019). [https://www.nytimes.com/2019/02/07/opinion/terf-trans-women-britain.html "Opinion | How British Feminism Became Anti-Trans"]. The New York Times. ISSN 0362-4331. 2020年2月20日閲覧. 引用和訳:「もしトランスフォビックなハラスメントがフェミニズムの範疇に含まれている事が驚きならば、それはあなただけではない。…時と共に、ターフはラディカルであるかどうかに関わらず、反トランスジェンダーなフェミニスト全体を指す言葉となった。」</ref><ref name="Miller 2018">Miller, Edie (5 November 2018). [https://theoutline.com/post/6536/british-feminists-media-transphobic?zd=1&zi=nb4ezbal "Why Is British Media So Transphobic?"]. The Outline. 2020年2月20日閲覧. 引用和訳:「正直に言うと、イギリスの保守派はいつでもトランスフォビックな主張をすることはできるけれどもその必要もなかった。左派の中の一部が彼らの代わりにヘイトを広めているからだ。悲しい事に、その中でも最も積極的なヘイトはラディカルフェミニストの内輪から来ている。イギリスのフェミニズムのターフ問題は深刻になりつつある。ターフという用語は今では、ラディカルフェミニズムとの関連性に限らず、典型的なターフの論理を使ったトランス排除的な主張をする人を呼ぶ用語となった。」 .</ref>。フェミニズム(女性の権利)の観点から、トランス女性の排除が目立つが、トランス男性やその他の[[性同一性]]、トランスジェンダー全体に対する差別が含まれる事もある。


==語源と用法==
==語源と用法==


=== 語源 ===
=== 語源 ===
ターフという言葉は、[[シスジェンダー]]女性でトランス・インクルーシブなラディカル・フェミニストであるヴィブ・スミスが2008年にブログで使った事により一般的になったというのが通説である<ref name="Smythe 2018"/>。そのブログにおいてスミスはミシガン州にある女性のための[[音楽祭]]が、トランス女性の参加を拒否していることに対して、一般的なラディカル・フェミニストとトランス女性を排除するラディカル・フェミニスト(ターフ)を区別する必要性を説いた。スミスはターフが[[侮蔑|蔑称]]であるとの批判に対しインタビューで「ターフは本来、フェミニストの一部の派閥を中立的で正確に描写する用語であった」と語っている<ref name="Williams 2016">{{cite journal |title=Radical Inclusion: Recounting the Trans Inclusive History of Radical Feminism |journal=TSQ: Transgender Studies Quarterly |volume=3 |issue=1–2 |pages=254–258 |date=1 May 2016 |publisher=Duke University Press |last=Williams |first=Cristan|language=en|doi=10.1215/23289252-3334463 }} {{要購読}}</ref>。
トランス排除的ラディカルェミニストという言葉は、[[シスジェンダー]]女性でトランス・インクルーシブなラディカル・フェミニストであるヴィブ・スミスが2008年にブログで使った事により一般的になったというのが通説である<ref name="Smythe 2018"/>。そのブログにおいてスミスはミシガン州にある女性のための[[音楽祭]]が、トランス女性の参加を拒否していることに対して、一般的なラディカル・フェミニストとトランス女性を排除するラディカル・フェミニスト(トランス排除的ラディカルェミニスト)を区別する必要性を説いた。スミスはトランス排除的ラディカルェミニストが[[侮蔑|蔑称]]であるとの批判に対しインタビューで「トランス排除的ラディカルェミニストは本来、フェミニストの一部の派閥を中立的で正確に描写する用語であった」と語っている<ref name="Williams 2016">{{cite journal |title=Radical Inclusion: Recounting the Trans Inclusive History of Radical Feminism |journal=TSQ: Transgender Studies Quarterly |volume=3 |issue=1–2 |pages=254–258 |date=1 May 2016 |publisher=Duke University Press |last=Williams |first=Cristan|language=en|doi=10.1215/23289252-3334463 }} {{要購読}}</ref>。


=== 用法についての議論 ===
=== 用法についての議論 ===
主に[[1960年代]]から[[1980年代|80年代]]に主流であった[[フェミニズム#第二波フェミニズム|第二波フェミニズム]]では、トランスジェンダーはしばしば排除されてきた。しかし[[インターセクショナリティ]]の概念が重要となった第三波フェミニズムを始め、特に第四波フェミニズムにおいてはトランスジェンダーの権利はフェミニズムにおける重要なテーマとなった<ref name="grady_vox">{{cite news|last=Grady|first=Constance|url=https://www.vox.com/2018/3/20/16955588/feminism-waves-explained-first-second-third-fourth|title=The waves of feminism, and why people keep fighting over them, explained|work=[[Vox (website)|Vox]]|date=20 June 2018|accessdate=26 April 2019}}</ref><ref name=":0" />。現代において、{{仮リンク|全米女性同盟|en|National Organization for Women|label=}}<ref name="NowTweet">{{Cite tweet|number=1112464442720219136|user=@NationalNOW|title=Trans women are women. Trans men are men. Trans rights are human rights. This is not up for debate. #TransDayOfVisibility|access-date=2020-08-03|trans-title=en|date=2019-03-31}}</ref><ref name=":0">{{Cite web|url=https://now.org/blog/why-transphobia-is-a-feminist-issue/|title=Why Transphobia Is a Feminist Issue|accessdate=2020-08-03|publisher=National Organization for Women|author=Terry O'Neill|date=2014-09-08}}</ref><ref name="fmf_policy">{{Cite web|url=https://now.org/about/conference-resolutions/2018-national-now-resolutions/|title=2018 National NOW Resolutions {{!}} National Organization for Women|website=now.org|access-date=13 April 2019}}</ref>や[[プランド・ペアレントフッド]]<ref name="PPTweet">{{Cite tweet|number=1270455101828759553|user=@PPact|title=Trans women are women|access-date=2020-08-03|trans-title=en|date=2020-06-09}}</ref><ref name="pp_policy">{{cite web|url=https://www.plannedparenthood.org/learn/sexual-orientation-gender/trans-and-gender-nonconforming-identities/what-do-i-need-know-about-trans-health-care|title=What do I need to know about trans health care?|work=Planned Parenthood|accessdate=10 May 2019}}</ref>など多くの主要なフェミニスト団体においては、「トランス女性は女性である」という認識が一般的となっている<ref name="grady_vox" /><ref>{{Citation|last=Cattapan|first=Alana|title=Open Arms and Crossed Legs? Subjectivity and Trans-Inclusion in Canadian Feminist Organizations|date=2008|url=https://www.cpsa-acsp.ca/papers-2008/Cattapan.pdf}}</ref>。その考えを否定し<ref name="Flaherty 2018">Flaherty, Colleen (29 August 2018). [https://www.insidehighered.com/news/2018/08/29/philosophers-object-journals-publication-terf-reference-some-feminists-it-really "'TERF' War – Philosophers object to a journal's publication 'TERF,' in reference to some feminists. Is it really a slur?"]. Inside Higher Ed. 2020年2月20日閲覧. 引用和訳(一部意訳):「オンライン上で暴力的に使われる事から、ターフという用語の適切性は徐々に物議を醸している。元来、フェミニストの中でも、シス女性の問題とトランス女性の問題は交差しないという主張をするグループを評する単語であった。…主張の中には『シスのレズビアンがトランス女性に対して性的指向を持たない事はトランスフォビアには当たらない』というものや、『女性の抑圧は割り当てられた性に基づいている』という考え方がある。」</ref><ref name="Williams 2013">{{cite web |url=http://www.transadvocate.com/you-might-be-a-terf-if_n_10226.htm |title=You might be a TERF if&nbsp;... |date=24 September 2013 |publisher=The TransAdvocate|language=en |last=Williams |first=Cristan|accessdate=21 February 2020 }}</ref><ref name="Dalbey 2018">{{cite news |last1=Dalbey |first1=Alex |title=TERF wars: Why trans-exclusionary radical feminists have no place in feminism |url=https://www.dailydot.com/irl/terf-meaning/ |language=en |accessdate=21 February 2020 |work=The Daily Dot |date=12 August 2018}}</ref> 、トランスジェンダーの権利をフェミニズムの問題と捉えず、また女性専用空間や、女性団体からのトランス女性の排除を主張する立場はトランス排除的と表現される<ref name="O'Connell 2019">{{cite news |url=https://www.irishtimes.com/life-and-style/health-family/transgender-for-beginners-trans-terf-cis-and-safe-spaces-1.3769653 |title=Transgender for beginners: Trans, terf, cis and safe spaces |last1=O'Connell |first1=Jennifer |newspaper=[[The Irish Times]] |language=en |date=26 January 2019 |accessdate=21 February 2020}}</ref> 。
主に[[1960年代]]から[[1980年代|80年代]]に主流であった[[フェミニズム#第二波フェミニズム|第二波フェミニズム]]では、トランスジェンダーはしばしば排除されてきた。しかし[[インターセクショナリティ]]の概念が重要となった第三波フェミニズムを始め、特に第四波フェミニズムにおいてはトランスジェンダーの権利はフェミニズムにおける重要なテーマとなった<ref name="grady_vox">{{cite news|last=Grady|first=Constance|url=https://www.vox.com/2018/3/20/16955588/feminism-waves-explained-first-second-third-fourth|title=The waves of feminism, and why people keep fighting over them, explained|work=[[Vox (website)|Vox]]|date=20 June 2018|accessdate=26 April 2019}}</ref><ref name=":0" />。現代において、{{仮リンク|全米女性同盟|en|National Organization for Women|label=}}<ref name="NowTweet">{{Cite tweet|number=1112464442720219136|user=@NationalNOW|title=Trans women are women. Trans men are men. Trans rights are human rights. This is not up for debate. #TransDayOfVisibility|access-date=2020-08-03|trans-title=en|date=2019-03-31}}</ref><ref name=":0">{{Cite web|url=https://now.org/blog/why-transphobia-is-a-feminist-issue/|title=Why Transphobia Is a Feminist Issue|accessdate=2020-08-03|publisher=National Organization for Women|author=Terry O'Neill|date=2014-09-08}}</ref><ref name="fmf_policy">{{Cite web|url=https://now.org/about/conference-resolutions/2018-national-now-resolutions/|title=2018 National NOW Resolutions {{!}} National Organization for Women|website=now.org|access-date=13 April 2019}}</ref>や[[プランド・ペアレントフッド]]<ref name="PPTweet">{{Cite tweet|number=1270455101828759553|user=@PPact|title=Trans women are women|access-date=2020-08-03|trans-title=en|date=2020-06-09}}</ref><ref name="pp_policy">{{cite web|url=https://www.plannedparenthood.org/learn/sexual-orientation-gender/trans-and-gender-nonconforming-identities/what-do-i-need-know-about-trans-health-care|title=What do I need to know about trans health care?|work=Planned Parenthood|accessdate=10 May 2019}}</ref>など多くの主要なフェミニスト団体においては、「トランス女性は女性である」という認識が一般的となっている<ref name="grady_vox" /><ref>{{Citation|last=Cattapan|first=Alana|title=Open Arms and Crossed Legs? Subjectivity and Trans-Inclusion in Canadian Feminist Organizations|date=2008|url=https://www.cpsa-acsp.ca/papers-2008/Cattapan.pdf}}</ref>。その考えを否定し<ref name="Flaherty 2018">Flaherty, Colleen (29 August 2018). [https://www.insidehighered.com/news/2018/08/29/philosophers-object-journals-publication-terf-reference-some-feminists-it-really "'TERF' War – Philosophers object to a journal's publication 'TERF,' in reference to some feminists. Is it really a slur?"]. Inside Higher Ed. 2020年2月20日閲覧. 引用和訳(一部意訳):「オンライン上で暴力的に使われる事から、ターフという用語の適切性は徐々に物議を醸している。元来、フェミニストの中でも、シス女性の問題とトランス女性の問題は交差しないという主張をするグループを評する単語であった。…主張の中には『シスのレズビアンがトランス女性に対して性的指向を持たない事はトランスフォビアには当たらない』というものや、『女性の抑圧は割り当てられた性に基づいている』という考え方がある。」</ref><ref name="Williams 2013">{{cite web |url=http://www.transadvocate.com/you-might-be-a-terf-if_n_10226.htm |title=You might be a TERF if&nbsp;... |date=24 September 2013 |publisher=The TransAdvocate|language=en |last=Williams |first=Cristan|accessdate=21 February 2020 }}</ref><ref name="Dalbey 2018">{{cite news |last1=Dalbey |first1=Alex |title=TERF wars: Why trans-exclusionary radical feminists have no place in feminism |url=https://www.dailydot.com/irl/terf-meaning/ |language=en |accessdate=21 February 2020 |work=The Daily Dot |date=12 August 2018}}</ref> 、トランスジェンダーの権利をフェミニズムの問題と捉えず、また女性専用空間や、女性団体からのトランス女性の排除を主張する立場はトランス排除的と表現される<ref name="O'Connell 2019">{{cite news |url=https://www.irishtimes.com/life-and-style/health-family/transgender-for-beginners-trans-terf-cis-and-safe-spaces-1.3769653 |title=Transgender for beginners: Trans, terf, cis and safe spaces |last1=O'Connell |first1=Jennifer |newspaper=[[The Irish Times]] |language=en |date=26 January 2019 |accessdate=21 February 2020}}</ref> 。


そのようなフェミニズムにおいてトランスジェンダー差別と認識される思想<ref name="Lewis 2019" /><ref name="Miller 2018" /><ref name="Dastagir 2017">{{cite news|last1=Dastagir|first1=Alia|url=https://www.usatoday.com/story/news/2017/03/16/feminism-glossary-lexicon-language/99120600/|title=A feminist glossary because we didn't all major in gender studies|language=en|work=[[USA Today]]|date=16 March 2017|accessdate=21 February 2021|quote=TERF: The acronym for 'trans exclusionary radical feminists,' referring to feminists who are transphobic.}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.lgbtqnation.com/2018/12/famous-lesbian-site-taken-anti-trans-feminists-now-lesbian-media-standing/|title=Famous lesbian site taken over by anti-trans 'feminists'. Now lesbian media is standing up.|last=Bollinger|first=Alex|date=19 December 2018|language=en|website=www.lgbtqnation.com|accessdate=21 February 2021}}</ref> を持つ少数派のフェミニスト<ref>{{cite journal|last=Kim|first=Dorothy|last2=MW Bychowski|first2=Gabrielle|date=2019|title=Visions of Medieval Trans Feminism: An Introduction. (PDF)|url=https://ir.uiowa.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=2185&context=mff|journal=Medieval Feminist Forum: A Journal of Gender and Sexuality.|volume=55|issue=1|publisher=Society for Medieval Feminist Scholarship|language=en|access-date=21 February 2021}}</ref><ref>{{Cite news|url=https://www.newyorker.com/magazine/2014/08/04/woman-2|title=What Is a Woman?|last=Goldberg|first=Michelle|date=2014-07-28|access-date=21 February 2021|language=en|issn=0028-792X}}</ref>で、特にラディカルフェミニストを称する用語であったが、現在はより広義において、トランスジェンダー排除的、差別的な意見を持つ人を指す言葉として使われることもあり、必ずしも[[ラディカルフェミニズム|ラディカルフェミニズム]]との関連性はない<ref name="Lewis 2019" /><ref name="Miller 2018" /> 。トランス排除的でフェミニストではない人のことをトランスフォビアを語源とする「トランスフォーブ」と呼ぶこともある。
そのようなフェミニズムにおいてトランスジェンダー差別と認識される思想<ref name="Lewis 2019" /><ref name="Miller 2018" /><ref name="Dastagir 2017">{{cite news|last1=Dastagir|first1=Alia|url=https://www.usatoday.com/story/news/2017/03/16/feminism-glossary-lexicon-language/99120600/|title=A feminist glossary because we didn't all major in gender studies|language=en|work=[[USA Today]]|date=16 March 2017|accessdate=21 February 2021|quote=TERF: The acronym for 'trans exclusionary radical feminists,' referring to feminists who are transphobic.}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.lgbtqnation.com/2018/12/famous-lesbian-site-taken-anti-trans-feminists-now-lesbian-media-standing/|title=Famous lesbian site taken over by anti-trans 'feminists'. Now lesbian media is standing up.|last=Bollinger|first=Alex|date=19 December 2018|language=en|website=www.lgbtqnation.com|accessdate=21 February 2021}}</ref> を持つ少数派のフェミニスト<ref>{{cite journal|last=Kim|first=Dorothy|last2=MW Bychowski|first2=Gabrielle|date=2019|title=Visions of Medieval Trans Feminism: An Introduction. (PDF)|url=https://ir.uiowa.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=2185&context=mff|journal=Medieval Feminist Forum: A Journal of Gender and Sexuality.|volume=55|issue=1|publisher=Society for Medieval Feminist Scholarship|language=en|access-date=21 February 2021}}</ref><ref>{{Cite news|url=https://www.newyorker.com/magazine/2014/08/04/woman-2|title=What Is a Woman?|last=Goldberg|first=Michelle|date=2014-07-28|access-date=21 February 2021|language=en|issn=0028-792X}}</ref>で、特にラディカルフェミニストを称する用語であったが、現在はより広義において、トランスジェンダー排除的、差別的な意見を持つ人を指す言葉として使われることもあり、必ずしもラディカルフェミニズムとの関連性はない<ref name="Lewis 2019" /><ref name="Miller 2018" /> 。トランス排除的でフェミニストではない人のことをトランスフォビアを語源とする「トランスフォーブ」と呼ぶこともある。


トランス排除的な主張をする多くの人は、ターフと呼ばれる事を[[侮蔑|蔑称]]だとして拒否し、自らを''ジェンダークリティカル''と称する事もある<ref name="Vasquez 2014">Vasquez, Tina (17 February 2014). [https://www.bitchmedia.org/post/the-long-history-of-transgender-exclusion-from-feminism "It's Time to End the Long History of Feminism Failing Transgender Women"]. Bitch. Bitch Media. 2020年2月20日閲覧. . 引用和訳:「"[Cathy] Brennan、Elizabeth Hungerfordを含む現代のフェミニスト達の一部はトランス女性を女性専用空間に許容すべきがどうか継続して疑問を呈している。このようなフェミニストは自らをラディカルフェミニストやジェンダークリティカルフェミニストと呼ぶ。2008年ごろから、トランスジェンダーコミュニティやトランスジェンダーの権利を支持する人たちがそのようなフェミニストのことをトランス排外主義ラディカルフェミニストもしくはTERFと呼ぶようになった。Brennanはこの言葉は蔑称だと主張する。」 </ref>。 ターフという用語が[[侮蔑|蔑称]]であるとする根拠について、ターフという用語が侮蔑的な誹謗中傷として使われ、時に暴力的な文脈や[[ミソジニー|女性蔑視]]的に使われると主張する<ref name="BennettBullies">Bennett, Catherine (19 November 2017). [https://www.theguardian.com/society/commentisfree/2017/nov/19/bullies-everywhere-take-delight-in-coming-up-with-new-insults "Bullies everywhere delight in coming up with new insults"]. ''The Guardian''. 2020年2月20日閲覧. 引用和訳:「ターフという用語を支持する人達はイジメの道具としてその言葉を使い、言論や、もしかすると研究さえも抑え込む事に成功している。例としてugly terf, fucking terf scum」</ref><ref name="Heuchan 2017">Heuchan, Claire (6 October 2017). [https://www.theguardian.com/commentisfree/2017/oct/06/feminist-linda-bellos-women-trans-male-violence "If feminist Linda Bellos is seen as a risk, progressive politics has lost its way"]. ''The Guardian''.2020年2月20日閲覧. 引用和訳:「ターフはトランス排外主義ラディカルフェミニストの略である。オンライン上ではターフに対する暴力を示唆する攻撃的な文脈で使われる事も多い。このような言論はジェンダーを構造的なシステムの一部という考えに批判的な女性の人間性を否定する事だ。」</ref><ref name="Allen et al.">Allen, Sophie R.; Finneron-Burns, Elizabeth; Leng, Mary; Lawford-Smith, Holly; Jones, Jane Clare; Reilly-Cooper, Rebecca; Simpson, R. J. (24 September 2018). [https://philpapers.org/archive/ALLOAA-3.pdf "On an Alleged Case of Propaganda: Reply to McKinnon"] (PDF). </ref><ref name="Flaherty 2018" /> 。ターフが蔑称であるかどうかの学術的な[[コンセンサス]]は現在得られていない<ref name="Allen et al." /><ref name="Flaherty 2018" /><ref name="McKinnon2018">McKinnon, Rachel (7 March 2018). [https://storage.googleapis.com/wzukusers/user-32241190/documents/5bf5e044e681bCc43WKe/16%20Rachel%20McKinnon%20-%20The%20Epistemology%20of%20Propaganda.pdf "The Epistemology of Propaganda"] (PDF). Philosophy and Phenomenological Research. 96 (2): 483–489. doi:10.1111/phpr.12429. 引用和訳:「現代のターフの多くは、トランス女性がターフという用語を発明したと責め、『ターフは女性に対するミソジニーだ』という馬鹿げた主張をする。…どうやら、ターフという用語は女性を批判する事に使われているからミソジニーな蔑称だという考えである。しかしこれは、差別的な蔑称の根本的な性質から考えるとナンセンスである。」</ref>。
トランス排除的な主張をする多くの人は、トランス排除的ラディカルェミニストと呼ばれる事を蔑称として拒否し、自らを''ジェンダークリティカル''と称する事もある<ref name="Vasquez 2014">Vasquez, Tina (17 February 2014). [https://www.bitchmedia.org/post/the-long-history-of-transgender-exclusion-from-feminism "It's Time to End the Long History of Feminism Failing Transgender Women"]. Bitch. Bitch Media. 2020年2月20日閲覧. . 引用和訳:「"[Cathy] Brennan、Elizabeth Hungerfordを含む現代のフェミニスト達の一部はトランス女性を女性専用空間に許容すべきがどうか継続して疑問を呈している。このようなフェミニストは自らをラディカルフェミニストやジェンダークリティカルフェミニストと呼ぶ。2008年ごろから、トランスジェンダーコミュニティやトランスジェンダーの権利を支持する人たちがそのようなフェミニストのことをトランス排外主義ラディカルフェミニストもしくはTERFと呼ぶようになった。Brennanはこの言葉は蔑称だと主張する。」 </ref>。 トランス排除的ラディカルェミニストという用語が蔑称であるとする根拠について、トランス排除的ラディカルェミニストという用語が侮蔑的な誹謗中傷として使われ、時に暴力的な文脈や[[ミソジニー|女性蔑視]]的に使われると主張する<ref name="BennettBullies">Bennett, Catherine (19 November 2017). [https://www.theguardian.com/society/commentisfree/2017/nov/19/bullies-everywhere-take-delight-in-coming-up-with-new-insults "Bullies everywhere delight in coming up with new insults"]. ''The Guardian''. 2020年2月20日閲覧. 引用和訳:「ターフという用語を支持する人達はイジメの道具としてその言葉を使い、言論や、もしかすると研究さえも抑え込む事に成功している。例としてugly terf, fucking terf scum」</ref><ref name="Heuchan 2017">Heuchan, Claire (6 October 2017). [https://www.theguardian.com/commentisfree/2017/oct/06/feminist-linda-bellos-women-trans-male-violence "If feminist Linda Bellos is seen as a risk, progressive politics has lost its way"]. ''The Guardian''.2020年2月20日閲覧. 引用和訳:「ターフはトランス排外主義ラディカルフェミニストの略である。オンライン上ではターフに対する暴力を示唆する攻撃的な文脈で使われる事も多い。このような言論はジェンダーを構造的なシステムの一部という考えに批判的な女性の人間性を否定する事だ。」</ref><ref name="Allen et al.">Allen, Sophie R.; Finneron-Burns, Elizabeth; Leng, Mary; Lawford-Smith, Holly; Jones, Jane Clare; Reilly-Cooper, Rebecca; Simpson, R. J. (24 September 2018). [https://philpapers.org/archive/ALLOAA-3.pdf "On an Alleged Case of Propaganda: Reply to McKinnon"] (PDF). </ref><ref name="Flaherty 2018" /> 。トランス排除的ラディカルェミニストが蔑称であるかどうかの学術的な[[コンセンサス]]は現在得られていない<ref name="Allen et al." /><ref name="Flaherty 2018" /><ref name="McKinnon2018">McKinnon, Rachel (7 March 2018). [https://storage.googleapis.com/wzukusers/user-32241190/documents/5bf5e044e681bCc43WKe/16%20Rachel%20McKinnon%20-%20The%20Epistemology%20of%20Propaganda.pdf "The Epistemology of Propaganda"] (PDF). Philosophy and Phenomenological Research. 96 (2): 483–489. doi:10.1111/phpr.12429. 引用和訳:「現代のターフの多くは、トランス女性がターフという用語を発明したと責め、『ターフは女性に対するミソジニーだ』という馬鹿げた主張をする。…どうやら、ターフという用語は女性を批判する事に使われているからミソジニーな蔑称だという考えである。しかしこれは、差別的な蔑称の根本的な性質から考えるとナンセンスである。」</ref>。


トランスジェンダー活動家・研究者のクリスタン・ウィリアムズは自身のウェブサイトでターフの定義について「[[本質主義]]への固執による{{仮リンク|生物学的決定論|en|Biological determinism}}をもとに、トランスジェンダーの人々の[[存在]]・[[人権]]・参加を積極的に否定するラディカルフェミニストの一派」とした<ref name="Williams 2013" /><ref name="Dalbey 2018" />。
トランスジェンダー活動家・研究者のクリスタン・ウィリアムズは自身のウェブサイトでトランス排除的ラディカルェミニストの定義について「[[本質主義]]への固執による{{仮リンク|生物学的決定論|en|Biological determinism}}をもとに、トランスジェンダーの人々の[[存在]]・[[人権]]・参加を積極的に否定するラディカルフェミニストの一派」とした<ref name="Williams 2013" /><ref name="Dalbey 2018" />。


スミスによると、本来ターフは「トランス女性をシスターとして認めない自称ラディカルなフェミニスト達」の呼称であったが、今はそれに加えて否定的な意味を含む様になったと認めた。また、時として一部の人を攻撃する武器として、[[排外主義]]者だけでなくインクルーシビティを唱える人たちにも使われる様になった<ref name="Smythe 2018" />。その事により、ターフという用語の使用については賛否両論あるものの、現代のフェミニズムをめぐる議論において一般的な概念となっている<ref>{{cite journal|first1=Sally|last1=Hines|title=The feminist frontier: on trans and feminism|journal=Journal of Gender Studies|date=17 February 2019|issn=0958-9236|pages=145–157|volume=28|issue=2|doi=10.1080/09589236.2017.1411791|language=en}} {{要購読}}
スミスによると、本来トランス排除的ラディカルェミニストは「トランス女性をシスターとして認めない自称ラディカルなフェミニスト達」の呼称であったが、今はそれに加えて否定的な意味を含む様になったと認めた。また、時として一部の人を攻撃する武器として、[[排外主義]]者だけでなくインクルーシビティを唱える人たちにも使われる様になった<ref name="Smythe 2018" />。その事により、トランス排除的ラディカルェミニストという用語の使用については賛否両論あるものの、現代のフェミニズムをめぐる議論において一般的な概念となっている<ref>{{cite journal|first1=Sally|last1=Hines|title=The feminist frontier: on trans and feminism|journal=Journal of Gender Studies|date=17 February 2019|issn=0958-9236|pages=145–157|volume=28|issue=2|doi=10.1080/09589236.2017.1411791|language=en}} {{要購読}}
* Also published in {{cite book|first1=Tasha|last1=Oren|first2=Andrea|last2=Press|title=The Routledge Handbook of Contemporary Feminism|url=https://books.google.com/?id=MuyYDwAAQBAJ&pg=PT129&dq=%22TERF%22#v=onepage&q=%22TERF%22&f=false|publisher=Routledge|date=16 May 2019|isbn=978-1-317-54263-6 |language=en|via=Google Books}}</ref>。
* Also published in {{cite book|first1=Tasha|last1=Oren|first2=Andrea|last2=Press|title=The Routledge Handbook of Contemporary Feminism|url=https://books.google.com/?id=MuyYDwAAQBAJ&pg=PT129&dq=%22TERF%22#v=onepage&q=%22TERF%22&f=false|publisher=Routledge|date=16 May 2019|isbn=978-1-317-54263-6 |language=en|via=Google Books}}</ref>。


==脚注==
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2022年1月10日 (月) 13:24時点における版

トランス排除的ラディカルフェミニスト: Trans-exclusionary radical feminist)はトランスジェンダーに対して排除、排斥的な立場を採るラディカル・フェミニストのこと。頭文字からTERF(ターフ)とも。

2008年に作られた言葉で[1]、フェミニズムにおいてトランスフォビック(トランス差別的)だと受け取られる意見を支持するフェミニストを表現する言葉である。

特に、トランス女性を女性とみなさなかったり、女性の身体や女性性を保護する目的で設置された女性専用空間(女性用トイレ、更衣室、女風呂、レイプクライシスセンターやDVシェルターなどの女性専用避難所)へのトランスの立ち入りや利用を、「女性の生存権」を根拠に拒否するフェミニストと、トランスジェンダーの権利の法制化に対して反対意見を主張するフェミニストのことを差す[2]

元々はラディカル・フェミニストの一派を指したが、現在は必ずしもラディカル・フェミニズムに関連しているわけではない[3][4]。フェミニズム(女性の権利)の観点から、トランス女性の排除が目立つが、トランス男性やその他の性同一性、トランスジェンダー全体に対する差別が含まれる事もある。

語源と用法

語源

トランス排除的ラディカルフェミニストという言葉は、シスジェンダー女性でトランス・インクルーシブなラディカル・フェミニストであるヴィブ・スミスが2008年にブログで使った事により一般的になったというのが通説である[1]。そのブログにおいてスミスはミシガン州にある女性のための音楽祭が、トランス女性の参加を拒否していることに対して、一般的なラディカル・フェミニストとトランス女性を排除するラディカル・フェミニスト(トランス排除的ラディカルフェミニスト)を区別する必要性を説いた。スミスはトランス排除的ラディカルフェミニストが蔑称であるとの批判に対しインタビューで「トランス排除的ラディカルフェミニストは本来、フェミニストの一部の派閥を中立的で正確に描写する用語であった」と語っている[5]

用法についての議論

主に1960年代から80年代に主流であった第二波フェミニズムでは、トランスジェンダーはしばしば排除されてきた。しかしインターセクショナリティの概念が重要となった第三波フェミニズムを始め、特に第四波フェミニズムにおいてはトランスジェンダーの権利はフェミニズムにおける重要なテーマとなった[6][7]。現代において、全米女性同盟英語版[8][7][9]プランド・ペアレントフッド[10][11]など多くの主要なフェミニスト団体においては、「トランス女性は女性である」という認識が一般的となっている[6][12]。その考えを否定し[13][14][15] 、トランスジェンダーの権利をフェミニズムの問題と捉えず、また女性専用空間や、女性団体からのトランス女性の排除を主張する立場はトランス排除的と表現される[16]

そのようなフェミニズムにおいてトランスジェンダー差別と認識される思想[3][4][17][18] を持つ少数派のフェミニスト[19][20]で、特にラディカルフェミニストを称する用語であったが、現在はより広義において、トランスジェンダー排除的、差別的な意見を持つ人を指す言葉として使われることもあり、必ずしもラディカルフェミニズムとの関連性はない[3][4] 。トランス排除的でフェミニストではない人のことをトランスフォビアを語源とする「トランスフォーブ」と呼ぶこともある。

トランス排除的な主張をする多くの人は、トランス排除的ラディカルフェミニストと呼ばれる事を蔑称として拒否し、自らをジェンダークリティカルと称する事もある[21]。 トランス排除的ラディカルフェミニストという用語が蔑称であるとする根拠について、トランス排除的ラディカルフェミニストという用語が侮蔑的な誹謗中傷として使われ、時に暴力的な文脈や女性蔑視的に使われると主張する[22][23][24][13] 。トランス排除的ラディカルフェミニストが蔑称であるかどうかの学術的なコンセンサスは現在得られていない[24][13][25]

トランスジェンダー活動家・研究者のクリスタン・ウィリアムズは自身のウェブサイトでトランス排除的ラディカルフェミニストの定義について「本質主義への固執による生物学的決定論英語版をもとに、トランスジェンダーの人々の存在人権・参加を積極的に否定するラディカルフェミニストの一派」とした[14][15]

スミスによると、本来トランス排除的ラディカルフェミニストは「トランス女性をシスターとして認めない自称ラディカルなフェミニスト達」の呼称であったが、今はそれに加えて否定的な意味を含む様になったと認めた。また、時として一部の人を攻撃する武器として、排外主義者だけでなくインクルーシビティを唱える人たちにも使われる様になった[1]。その事により、トランス排除的ラディカルフェミニストという用語の使用については賛否両論あるものの、現代のフェミニズムをめぐる議論において一般的な概念となっている[26]

脚注

  1. ^ a b c Smythe, Viv (28 November 2018). "I'm credited with having coined the word 'Terf'. Here's how it happened". The Guardian. 2020年2月20日閲覧. 引用和訳:「2008年に投稿したいくつかのブログにおいて、私たちとは違い、トランス女性をシスターとして認めない自称ラディカルなフェミニスト達のグループの事を初めてターフ(Terf)と名付けたと言う事を後になって言われるようになった」.
  2. ^ 山田, 秀頌 (16 February 2019). "「女性専用スペースからトランス女性を排除しなければならない」という主張に、フェミニストやトランスはどう抵抗してきたか". WEZZY. 2020年2月22日閲覧. 「言説の内容は女子大の問題をはるかに超え、トイレをはじめあらゆる女性専用スペースからトランス女性を排除しなければならない、というものになっていた。しかも、そうした排除は、フェミニズムがフェミニズムである以上、当然の帰結だと主張されていた。トランス女性は〈男体持ち〉か、単に「男性」であるのだから、トランスの権利と(シス)女性の権利は決して両立しない。したがって『女性の権利』を守るフェミニズムは、トランス女性を排除する資格を持つ、というわけだ。」
  3. ^ a b c Lewis, Sophie (7 February 2019). "Opinion | How British Feminism Became Anti-Trans". The New York Times. ISSN 0362-4331. 2020年2月20日閲覧. 引用和訳:「もしトランスフォビックなハラスメントがフェミニズムの範疇に含まれている事が驚きならば、それはあなただけではない。…時と共に、ターフはラディカルであるかどうかに関わらず、反トランスジェンダーなフェミニスト全体を指す言葉となった。」
  4. ^ a b c Miller, Edie (5 November 2018). "Why Is British Media So Transphobic?". The Outline. 2020年2月20日閲覧. 引用和訳:「正直に言うと、イギリスの保守派はいつでもトランスフォビックな主張をすることはできるけれどもその必要もなかった。左派の中の一部が彼らの代わりにヘイトを広めているからだ。悲しい事に、その中でも最も積極的なヘイトはラディカルフェミニストの内輪から来ている。イギリスのフェミニズムのターフ問題は深刻になりつつある。ターフという用語は今では、ラディカルフェミニズムとの関連性に限らず、典型的なターフの論理を使ったトランス排除的な主張をする人を呼ぶ用語となった。」 .
  5. ^ Williams, Cristan (1 May 2016). “Radical Inclusion: Recounting the Trans Inclusive History of Radical Feminism” (英語). TSQ: Transgender Studies Quarterly (Duke University Press) 3 (1–2): 254–258. doi:10.1215/23289252-3334463.  (Paid subscription required要購読契約)
  6. ^ a b Grady, Constance (20 June 2018). “The waves of feminism, and why people keep fighting over them, explained”. Vox. https://www.vox.com/2018/3/20/16955588/feminism-waves-explained-first-second-third-fourth 26 April 2019閲覧。 
  7. ^ a b Terry O'Neill (2014年9月8日). “Why Transphobia Is a Feminist Issue”. National Organization for Women. 2020年8月3日閲覧。
  8. ^ @@NationalNOW (2019年3月31日). "Trans women are women. Trans men are men. Trans rights are human rights. This is not up for debate. #TransDayOfVisibility" [en]. X(旧Twitter)より2020年8月3日閲覧
  9. ^ 2018 National NOW Resolutions | National Organization for Women”. now.org. 13 April 2019閲覧。
  10. ^ @@PPact (2020年6月9日). "Trans women are women" [en]. X(旧Twitter)より2020年8月3日閲覧
  11. ^ What do I need to know about trans health care?”. Planned Parenthood. 10 May 2019閲覧。
  12. ^ Cattapan, Alana (2008), Open Arms and Crossed Legs? Subjectivity and Trans-Inclusion in Canadian Feminist Organizations, https://www.cpsa-acsp.ca/papers-2008/Cattapan.pdf 
  13. ^ a b c Flaherty, Colleen (29 August 2018). "'TERF' War – Philosophers object to a journal's publication 'TERF,' in reference to some feminists. Is it really a slur?". Inside Higher Ed. 2020年2月20日閲覧. 引用和訳(一部意訳):「オンライン上で暴力的に使われる事から、ターフという用語の適切性は徐々に物議を醸している。元来、フェミニストの中でも、シス女性の問題とトランス女性の問題は交差しないという主張をするグループを評する単語であった。…主張の中には『シスのレズビアンがトランス女性に対して性的指向を持たない事はトランスフォビアには当たらない』というものや、『女性の抑圧は割り当てられた性に基づいている』という考え方がある。」
  14. ^ a b Williams, Cristan (24 September 2013). “You might be a TERF if ...” (英語). The TransAdvocate. 21 February 2020閲覧。
  15. ^ a b Dalbey, Alex (12 August 2018). “TERF wars: Why trans-exclusionary radical feminists have no place in feminism” (英語). The Daily Dot. https://www.dailydot.com/irl/terf-meaning/ 21 February 2020閲覧。 
  16. ^ O'Connell, Jennifer (26 January 2019). “Transgender for beginners: Trans, terf, cis and safe spaces” (英語). The Irish Times. https://www.irishtimes.com/life-and-style/health-family/transgender-for-beginners-trans-terf-cis-and-safe-spaces-1.3769653 21 February 2020閲覧。 
  17. ^ Dastagir, Alia (16 March 2017). “A feminist glossary because we didn't all major in gender studies” (英語). USA Today. https://www.usatoday.com/story/news/2017/03/16/feminism-glossary-lexicon-language/99120600/ 21 February 2021閲覧. "TERF: The acronym for 'trans exclusionary radical feminists,' referring to feminists who are transphobic." 
  18. ^ Bollinger, Alex (19 December 2018). “Famous lesbian site taken over by anti-trans 'feminists'. Now lesbian media is standing up.” (英語). www.lgbtqnation.com. 21 February 2021閲覧。
  19. ^ Kim, Dorothy; MW Bychowski, Gabrielle (2019). “Visions of Medieval Trans Feminism: An Introduction. (PDF)” (英語). Medieval Feminist Forum: A Journal of Gender and Sexuality. (Society for Medieval Feminist Scholarship) 55 (1). https://ir.uiowa.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=2185&context=mff 21 February 2021閲覧。. 
  20. ^ Goldberg, Michelle (2014年7月28日). “What Is a Woman?” (英語). ISSN 0028-792X. https://www.newyorker.com/magazine/2014/08/04/woman-2 21 February 2021閲覧。 
  21. ^ Vasquez, Tina (17 February 2014). "It's Time to End the Long History of Feminism Failing Transgender Women". Bitch. Bitch Media. 2020年2月20日閲覧. . 引用和訳:「"[Cathy] Brennan、Elizabeth Hungerfordを含む現代のフェミニスト達の一部はトランス女性を女性専用空間に許容すべきがどうか継続して疑問を呈している。このようなフェミニストは自らをラディカルフェミニストやジェンダークリティカルフェミニストと呼ぶ。2008年ごろから、トランスジェンダーコミュニティやトランスジェンダーの権利を支持する人たちがそのようなフェミニストのことをトランス排外主義ラディカルフェミニストもしくはTERFと呼ぶようになった。Brennanはこの言葉は蔑称だと主張する。」
  22. ^ Bennett, Catherine (19 November 2017). "Bullies everywhere delight in coming up with new insults". The Guardian. 2020年2月20日閲覧. 引用和訳:「ターフという用語を支持する人達はイジメの道具としてその言葉を使い、言論や、もしかすると研究さえも抑え込む事に成功している。例としてugly terf, fucking terf scum」
  23. ^ Heuchan, Claire (6 October 2017). "If feminist Linda Bellos is seen as a risk, progressive politics has lost its way". The Guardian.2020年2月20日閲覧. 引用和訳:「ターフはトランス排外主義ラディカルフェミニストの略である。オンライン上ではターフに対する暴力を示唆する攻撃的な文脈で使われる事も多い。このような言論はジェンダーを構造的なシステムの一部という考えに批判的な女性の人間性を否定する事だ。」
  24. ^ a b Allen, Sophie R.; Finneron-Burns, Elizabeth; Leng, Mary; Lawford-Smith, Holly; Jones, Jane Clare; Reilly-Cooper, Rebecca; Simpson, R. J. (24 September 2018). "On an Alleged Case of Propaganda: Reply to McKinnon" (PDF).
  25. ^ McKinnon, Rachel (7 March 2018). "The Epistemology of Propaganda" (PDF). Philosophy and Phenomenological Research. 96 (2): 483–489. doi:10.1111/phpr.12429. 引用和訳:「現代のターフの多くは、トランス女性がターフという用語を発明したと責め、『ターフは女性に対するミソジニーだ』という馬鹿げた主張をする。…どうやら、ターフという用語は女性を批判する事に使われているからミソジニーな蔑称だという考えである。しかしこれは、差別的な蔑称の根本的な性質から考えるとナンセンスである。」
  26. ^ Hines, Sally (17 February 2019). “The feminist frontier: on trans and feminism” (英語). Journal of Gender Studies 28 (2): 145–157. doi:10.1080/09589236.2017.1411791. ISSN 0958-9236.  (Paid subscription required要購読契約)

関連項目