板谷広長

板谷 広長（いたや ひろなが、宝暦10（1760年）誕生日不明 - 文化11年4月17日（1814年6月5日））は、日本の江戸時代中期から後期に活躍した、江戸幕府の御用絵師。大和絵の一派・住吉派から別れた板谷派の2代目。号は慶意、のち桂意。そのため板谷慶意（桂意）とも、板谷家は桂意と桂舟を交互に名乗ったため、4代目や6代目と区別する意味を込めて板谷慶意（桂意）広長とも呼ばれる。

略伝

板谷広当の次男として生まれる。兄は住吉廣行、弟に慶珉がいる。天明5年（1785年）部屋住の身分でお目見え。寛政4年（1792年）兄・広行に随行し京阪寺社の宝物調査を行い、古画を模写する。寛政8年（1796年）剃髪し、慶意の号を桂意に改名。翌年父が亡くなると跡を継ぎ、寛政10年（1798年）新規扶持方五人扶持を付与され、翌年奥御用を仰せつかる。文化元年（1804年）菅原道真九〇〇年遠忌に際し、松平定信ら武家寄合で発願した「天満宮伝記絵」を奉納（京都・北野天満宮蔵）。文化8年（1811年）第11回朝鮮通信使来日の際には、贈朝屏風一双を担当している。文化11年4月17日死去。享年55歳。戒名は延乗院歓誉桂意居士。

兄・廣行と共にやまと絵を積極的に描き、古典復興に努めた。作品には「住吉広長」落款が多いとされる。息子に3代目となった板谷広隆、駿河台狩野家に養子入りした狩野洞益春信がいる。

作品

作品名	技法	形状・員数	寸法（縦x横cm）	所有者	年代	落款	印章	備考
夕顔之巻図	紙本著色	1幅	47.0x68.0	東京国立博物館		桂意広長筆	「広長」朱文円内方印
大原御幸図		1幅	37.5x47.2	センチュリーミュージアム
伊勢物語図	絹本著色	2幅	112.0x44.0（各）	根津美術館		慶意藤原広長画	「広長」白文方印
源氏物語 裏藤葉図				徳川美術館
源氏物語画帖	紙本淡彩	1帖	17.5x17.2	土佐山内家宝物資料館		桂意住吉広長筆	「板谷」白文方印
在原業平像	絹本著色	1幅	117.5x47.4	徳島市立徳島城博物館		慶意藤原広長画	「板谷広長」白文方印
源氏物語初音図雛屏風	紙本金地著色	六曲一双	右隻：50.0x164.0 左隻：50.0x163.6	個人		桂意広長画	「藤広長印」白文方印
野遊図	絹本著色	1幅	101.5x38.5	ボストン美術館	18世紀後半
蓬萊山図	絹本著色	1幅	47.0x73.7	ライデン民族学博物館		桂意筆	「広長」朱文大円印
関羽図	絹本著色	1幅	111.3x74.4	大英博物館		桂意広長筆	「広長之印」白文方印
武将図	絹本著色	1幅	96.1x35.5	大英博物館		慶意藤原広長画	「広長之印」朱文方印
住吉詣図	絹本著色	1幅	129.0x68.0	大英博物館		桂意住吉広長筆	「桂意」白文方印
百鬼夜行図	絹本著色	1巻	35.0x1012.1	大英博物館		以古図　桂意藤原広長筆	「板谷広長」白文方印
源氏物語図／浜千鳥図屏風	紙本著色／資本金地墨画	六曲一双	表：145.5x329.8 裏：157.9x342.0	松戸市戸定歴史館		表：桂意広長画 裏：桂意画	表：「広長之印」白文方印 裏：「広長」朱文円印
浜千鳥図	絹本著色	1幅	48.5x86.7	個人		桂意藤原広長筆	「慶意」朱文円印
浜富士遠望図	絹本著色	1幅	70.3x97.0	個人		桂意筆	「広長」朱文円内方印
樹下迦陵頻迦四人舞図	絹本著色	1幅	70.3x97.0	個人		桂意筆	「広長之印」白文方印
昔噺桃太郎図	絹本著色	1幅	99.4x34.7	個人		住吉広長筆	「広長」朱文円内方印
富士遠望河原祓図	紙本墨画淡彩	1幅	36.1x54.3	個人		桂意筆	「広長」朱文円内方印
松に旭日図	紙本著色	1幅	102.2x28.4	個人		桂意筆	「広長之印」白文方印
木賊図	絹本著色	1幅	59.0x78.1	個人		住吉慶舟画	「和画之一流」朱文方印
昇龍図	絹本墨画	1幅	116.7x55.6	個人		桂意広長筆	「広長之印」白文方印
寿老人・夏冬山水図	絹本著色	3幅	99.4x29.1（各）	個人		桂意広長筆	「広長之印」白文方印
菊図	絹本著色	襖2面	67.2x29.1（各）	善光寺大勧進		桂意広長画	「以必以必」白文方印	善光寺行在所上段の間所在。廣行、廣尚（廣行の子）との合作。
須磨図	絹本著色	襖4面	24.4x43.5（各）	善光寺大勧進		桂意画	「藤原」朱文方印	善光寺行在所次の間所在。廣行との合作。

参考文献

• 田沢裕賀研究代表 東京国立博物館編集・発行 『板谷家を中心とした江戸幕府御用絵師に関する総合的研究 平成23～27年度科学研究費補助金研究成果報告書 課題番号23242013』 2016年3月31日