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「廃止代替バス」の版間の差分

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こうした経緯で[[路線バス]]が廃止された場合、そのまま放置するか、代替交通手段を探すことになる。しかし不採算路線に自ら参入するバス事業者は非常にまれである。また放置された場合、バス路線の廃止が[[高齢者]]などマイカーを利用できない[[交通弱者]]の移動機会を奪い、さらなる過疎化に加え地域コミュニティの崩壊など深刻な事態に陥ることも想定できる。そのため「福祉事業」として市町村が自ら乗合バスを手がける事例がある。
こうした経緯で[[路線バス]]が廃止された場合、そのまま放置するか、代替交通手段を探すことになる。しかし不採算路線に自ら参入するバス事業者は非常にまれである。また放置された場合、バス路線の廃止が[[高齢者]]などマイカーを利用できない[[交通弱者]]の移動機会を奪い、さらなる過疎化に加え地域コミュニティの崩壊など深刻な事態に陥ることも想定できる。そのため「福祉事業」として市町村が自ら乗合バスを手がける事例がある。


自治体が乗合バス事業を始める場合、方式としては[[#21条バス|21条バス]]と[[#80条バス|80条バス]]の2つの方法がある。21や80{{efn|現行法は[[レンタカー]]関連の条文。}}という数字は2006年法改正前の[[道路運送法]]の該当する条文による。<br />[[2006年]]10月の道路運送法等の一部を改正する法律(平成18年5月19日法律第40号)による改正道路運送法の施行後は、下記のように21条による運行は一時的な輸送事業に限定され、従前の21条バスは原則廃止(4条=一般旅客自動車運送事業の許可に移行)、80条バスは、根拠規定が78・79条に移行し、許可制から登録制への変更が行われている。</br>道路運送法の改正に伴い、今までの21条・80条バスは4条規定の一般旅客自動車運送事業として存続したり、78・79条根拠による運行に切り替えたが、改正時期が[[日本の市町村の廃置分合#平成の大合併|全国的な自治体の大合併]]が行われた時期と一致していたため、統合先の自治体の路線バスに置き換わったり、合併を機に[[コミュニティバス]]の運行に踏み切った自治体もある。
自治体が乗合バス事業を始める場合、方式としては[[#21条バス|21条バス]]と[[#80条バス|80条バス]]の2つの方法がある。21や80{{efn|現行法は[[レンタカー]]関連の条文。}}という数字は2006年法改正前の[[道路運送法]]の該当する条文による。<br />[[2006年]]10月の道路運送法等の一部を改正する法律(平成18年5月19日法律第40号)による改正道路運送法の施行後は、下記のように21条による運行は一時的な輸送事業に限定され、従前の21条バスは原則廃止(4条=一般旅客自動車運送事業の許可に移行)、80条バスは、根拠規定が78・79条に移行し、許可制から登録制への変更が行われている。<br />道路運送法の改正に伴い、今までの21条・80条バスは4条規定の一般旅客自動車運送事業として存続したり、78・79条根拠による運行に切り替えたが、改正時期が[[日本の市町村の廃置分合#平成の大合併|全国的な自治体の大合併]]が行われた時期と一致していたため、統合先の自治体の路線バスに置き換わったり、合併を機に[[コミュニティバス]]の運行に踏み切った自治体もある。


昨今は、廃止路線の肩代わり以外に、新たにコミュニティバスを運行する自治体も増えており、道路運送法4条や78・79条を該当根拠とする開設方法を取ることがある。<br />なお、廃止代替バスを「'''自主運行バス'''」と呼ぶことがあるが、この場合も4条該当の運行形態と79条該当の運行形態がある。
昨今は、廃止路線の肩代わり以外に、新たにコミュニティバスを運行する自治体も増えており、道路運送法4条や78・79条を該当根拠とする開設方法を取ることがある。<br />なお、廃止代替バスを「'''自主運行バス'''」と呼ぶことがあるが、この場合も4条該当の運行形態と79条該当の運行形態がある。

2021年5月29日 (土) 00:02時点における版

廃止代替バス(はいしだいたいバス)とは、路線バス等の公共交通機関が廃止された場合、その代替として自治体市町村)などがバス事業者に替わり運行するバス(自治体バス)のことである。

運行目的

過疎地ではバス事業者だけでなく行政も利用促進や補助金により欠損補助を行うなど、バス路線維持のための努力を行っている。しかしもともと利用者が少ないことに加え、道路整備やモータリゼーションの進展、少子化過疎化の進行などにより、バス路線の維持はますます困難になっている。2002年2月には道路運送法が改正され、バス事業者の路線撤退が許可制から届出制になったこと、介護保険法の制定により介護の必要な高齢者は介護サービス事業者の有償移動サービスに利用者がシフトしたことなどが要因で、バス事業者が路線維持を断念し廃止を届け出るケースが増えている。さらに2008年の原油価格の異常高騰はバス会社に大きな打撃となり、不採算路線からの撤退を促進させる原因となった。

こうした経緯で路線バスが廃止された場合、そのまま放置するか、代替交通手段を探すことになる。しかし不採算路線に自ら参入するバス事業者は非常にまれである。また放置された場合、バス路線の廃止が高齢者などマイカーを利用できない交通弱者の移動機会を奪い、さらなる過疎化に加え地域コミュニティの崩壊など深刻な事態に陥ることも想定できる。そのため「福祉事業」として市町村が自ら乗合バスを手がける事例がある。

自治体が乗合バス事業を始める場合、方式としては21条バス80条バスの2つの方法がある。21や80[注釈 1]という数字は2006年法改正前の道路運送法の該当する条文による。
2006年10月の道路運送法等の一部を改正する法律(平成18年5月19日法律第40号)による改正道路運送法の施行後は、下記のように21条による運行は一時的な輸送事業に限定され、従前の21条バスは原則廃止(4条=一般旅客自動車運送事業の許可に移行)、80条バスは、根拠規定が78・79条に移行し、許可制から登録制への変更が行われている。
道路運送法の改正に伴い、今までの21条・80条バスは4条規定の一般旅客自動車運送事業として存続したり、78・79条根拠による運行に切り替えたが、改正時期が全国的な自治体の大合併が行われた時期と一致していたため、統合先の自治体の路線バスに置き換わったり、合併を機にコミュニティバスの運行に踏み切った自治体もある。

昨今は、廃止路線の肩代わり以外に、新たにコミュニティバスを運行する自治体も増えており、道路運送法4条や78・79条を該当根拠とする開設方法を取ることがある。
なお、廃止代替バスを「自主運行バス」と呼ぶことがあるが、この場合も4条該当の運行形態と79条該当の運行形態がある。

21条バス

21条バスの例:福島交通の21条バスは側面に依頼者(自治体名)が表記された車両もある。

2006年改正前の道路運送法による21条バスとは「貸切代替バス」ともよばれる。市町村が貸切バス事業者に当該路線の運行を委託し、路線維持を図ろうとするものであった。

法律上の定義(2006年改正前)

道路運送法第21条(禁止行為)
一般貸切旅客自動車運送事業者は、次の場合を除き、乗合旅客の運送をしてはならない。
  1. 災害の場合その他緊急を要するとき。
  2. 一般乗合旅客自動車運送事業者によることが困難な場合において、国土交通大臣の許可を受けたとき。
この第21条の除外規定を根拠に、貸切バス事業者が路線バスの運行を行う。道路運送法第21条に準拠するので「21条バス」と呼ばれる。

2006年改正後の法律上の扱い

改正後の第21条は、災害などの一時的な輸送事業を定義したもの[注釈 2]に改められた[注釈 3]
貸切形態の旧21条バスは4条の一般乗合旅客自動車運送事業(通常の路線バス)の許可形態に移行した。バス路線撤退の代替交通が必要な場合、一般乗合旅客自動車運送事業の許可を得た貸切バス(一般貸切旅客自動車運送事業)会社やタクシー会社(一般乗用旅客自動車運送事業)が廃止路線の肩代わりを行うか(双方とも自治体委託路線として実例あり)、市町村やNPO法人が旧80条に相当する改正後の第78・79条除外規定の登録を行って自家用バスを運行する形になる。

特徴

それまでのバス事業者が完全に撤退した後、系列下のバス事業者やタクシー業者に委託するだけでなく、一般乗合旅客自動車運送事業の許可を得た地元の貸切バス専業だった事業者やタクシー業者などに新たに委託されることがある。この場合は定期券・回数券、ICカード利用などのバスサービス内容が完全に一新される。

2006年の法改正以降、需要の少ない路線で中型免許で運行可能な車両を充てることも少なくない(例:浜松市自主運行バス北遠本線)。

法改正前は、それまで運行していたバス事業者の貸切事業部門に委託、あるいはそれまでのバス事業者の系列下の貸切バス事業者に委託されることが通例で、車両は貸切車として登録した車両を用いていた。必ずしも貸切バスタイプの車両を用いるわけではなく、一般路線バスタイプの車両を貸切登録して用いたこともあり、そのため21条バスに使われた車両に「貸切」の記載があった。

メリット

  • 路線や停留所、運行ダイヤなど、それまでのサービスを極力保った形で移行することも可能。移行前と同じ回数券・バスカード・ICカード乗車券が使用できる場合もある。
  • 限られた委託金で運行を請け負うため、受託事業者はコスト意識を発揮した運営が期待できる。また柔軟な対応も期待される。
  • 自治体は、ハード部分を抱え込まないで済む。(車両は貸切バス会社の保有なので営業用緑ナンバーになる)
  • 自治体と事業者の責任分担や運用の形態について、委託契約の文書の形で取り交わされるため、自治体と受託事業者とで役割分担関係が明確化される。

デメリット

  • 同一事業者の貸切部門または系列貸切バス事業者への移行の場合、一見して移行前とほとんど変わらないため利用者からも違和感は少ないが「マイバス」意識を高揚させる効果はあまり期待できない。
  • 路線・ダイヤ・運賃制度など、運営の根幹的な部分に、民間ならではの工夫や発想が入らない場合、不便なままのサービスが温存されるといったケースも考えられる。

80条バス

80条バスの例:邑南町営バス(スクールバス車両と兼用)

2006年改正前の道路運送法による80条バスとは、公共の福祉の一環として公共交通を自治体自らが手掛けるものである。形としては自家用バスを用いて旅客を輸送し、運賃を収受するものである。

法律上の定義(2006年改正前)

第80条(有償運送の禁止及び賃貸の制限)
自家用自動車は、有償で運送の用に供してはならない。ただし、災害のため緊急を要するとき、又は公共の福祉を確保するためやむを得ない場合であつて国土交通大臣の許可を受けたときは、この限りでない。

この第80条のただし書きを根拠に、自家用自動車による路線バスの運行を行なう。道路運送法第80条に準拠するので「80条バス」と呼ばれる。

法律上の定義(2006年改正後)

第78条(有償運送)
自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう。以下同じ。)は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。
  1. 災害のため緊急を要するとき。
  2. 市町村特別区を含む。以下この号において同じ。)、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、次条の規定により一の市町村の区域内の住民の運送その他の国土交通省令で定める旅客の運送(以下「自家用有償旅客運送」という。)を行うとき。
  3. 公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき。
第79条(登録)
自家用有償旅客運送を行おうとする者は、国土交通大臣の行う登録を受けなければならない。

78条の3.の規定に基づくものが「廃止代替バス」に該当する(同条2.の規定に基づくものは福祉有償運送)。

特徴

地方自治体(市町村)自らがバスを購入またはリースする。自家用バスのためナンバープレート白ナンバーである。

運転士は自治体職員の中で大型免許保有者を充てるが、需要の少ない路線では中型・普通免許で運行可能な車両を充てる(例:井川地区自主運行バス)。また車両管理や運転業務を外部委託する場合もある。

メリット

  • 地方自治体自らが運行するため、地域の利用者のニーズにあった運行体系・運行サービスを構築することができる。

デメリット

以下の理由から、当該市町村外からの観光等での利用に不便をきたすことが多い。

  • 地方自治体に移管と共に、全国版時刻表から掲載削除されるケースが多い。
  • 地域の利用者が想定利用の中心のため、土日祝日や日祝日に運休する路線や通学・通院時間帯の運行が中心となる路線が多い。

その他

  • かつては自治体自らが運行する80条バスが主だったが、近年ではバス運行管理のノウハウを持つバス事業者(21条バスへの移行)や地元のタクシー事業者(乗合タクシー)に委託するケースが多くなっている。また鉄道事業者に委託するケースもある(例:岩国市営錦バス(旧・錦町営バス)が錦川鉄道に委託)など。
  • 神奈川県藤野町が、いわゆる「平成の大合併」で相模原市へ編入されたことにより、編入前に町が運行していた80条バスが、再び民間事業者(津久井神奈交バス→神奈川中央交通西)の運営に戻ったというケースもある。

脚注

注釈

  1. ^ 現行法はレンタカー関連の条文。
  2. ^ 「国土交通大臣の許可を受けた」を「一時的な需要のために国土交通大臣の許可を受けて地域及び期間を限定して行う」に改正されたため、一時的なものに限定となった。
  3. ^ 改正後の適用例として、中国バスによる旧井笠鉄道の一部バス路線の暫定運行がある。

出典

関連項目