「花と乙女に祝福を」の版間の差分
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2011年には中国語翻訳版が制作され{{R|zh_top}}、2015年から2018年頃にかけては[[iOS (Apple)|iOS]]/[[Android (オペレーティングシステム)|Android]]版のサービスも提供されていた{{R|sgi_20150402|4g_20150714}}。 |
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2021年5月23日 (日) 04:01時点における版
花と乙女に祝福を | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ジャンル | 学園ラブコメ、女装[注 1] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ゲーム:花と乙女に祝福を | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ゲームジャンル | AVG(PC)[2] 恋愛ノベルゲーム(iOS/Android)[3] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
対応機種 | Microsoft Windows 2000/XP/Vista[4][注 2] (その後7/8/8.1/10にも対応[6][7]) iOS[8][3] Android[8][3] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
必要環境 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
開発元 | ensemble〈ウィル〉[10] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
発売元 | ウィル→ウィルプラス(PC[10]/DLsite[3]) 未来数位(PC中国語版)[11] ウィルプラス[8]→イーキューブ[12](Mobage) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ディレクター | じんべい[9] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
キャラクターデザイン | 武藤此史[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
プロジェクト起案・原案 | じんべい[13] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シナリオ | じんべい、籐太[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
音楽 | BGM:ミリオンバンブー[9] 主題歌: 片霧烈火「Maiden's Garden」[10] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
メディア | DVD-ROM[4]、ダウンロード[14] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ディスクレス起動 | 可 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アクチベーション | なし(その後の版はあり[7]) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
プレイ人数 | 1人 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
発売日 | 2009年5月29日(PC)[4] 2011年2月18日(PC中国語版)[11] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
稼動時期 | 2015年4月2日[8] - 2018年4月27日[15](Mobage) 2015年7月14日[3] - 不明[16](DLsite) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
レイティング | EOCS:18禁(PC)[14] EOCS:全年齢(iOS/Android)[3][12] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
キャラクター名設定 | 不可[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
エンディング数 | 8[注 3] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
セーブファイル数 | 通常セーブ90/オート5/クイック5[18] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
画面サイズ | 800x600以上の解像度 ハイカラー[9] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
全画面表示モード | あり[10] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
音楽フォーマット | Ogg Vorbis[10] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
キャラクターボイス | フルボイス[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
その他 | CGモード:あり[2] 音楽モード:あり[2] 回想モード:あり[2] メッセージスキップ:全文/既読[2] オートモード:あり[2] 初回限定版付録:オリジナルサウンドトラック[19] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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関連作品 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
テンプレート - ノート |
『花と乙女に祝福を』(はなとおとめにしゅくふくを、繁: 花與乙女的祝福)は、株式会社ウィル(現ウィルプラス)のゲームブランドensembleより2009年5月29日に発売された18禁恋愛アドベンチャーゲーム[4]。公式略称は「花乙女」(はなおと)[48][49]。ensembleの処女作であり[4]、病弱な双子の妹に成り代わりお嬢様学園に通う女装少年のドタバタ生活を描いて[4][35][30]、後年まで続く「乙女シリーズ」の端緒となった。
2010年1月29日には続編『花と乙女に祝福を ロイヤルブーケ』が発売された[49][20]。同年7月8日には登場人物とシナリオを追加し、続編の要素も取り入れた『花と乙女に祝福を〜春風の贈り物〜』がPlayStation 2版として発売された[50][35][51]。2011年10月27日には『花と乙女に祝福を -春風の贈り物- portable』としてPlayStation Portableに移植された[30][28]。
2011年には中国語翻訳版が制作され[11]、2015年から2018年頃にかけてはiOS/Android版のサービスも提供されていた[8][3]。
歴史
- 2009年
- 2010年
- 2011年
- 2012年2月6日 - 『花と乙女に祝福を ロイヤルブーケ』の繁体字中国語版が発売[24]。
- 2013年4月26日 - 『乙女達の恋物語 ensemble3本+1セット』発売。Windows 7/8に動作対応[6]。
- 2015年
- 2016年4月14日 - Mobageでのサービス提供を終了[54]。
- 2017年2月27日 - Mobageでのサービス提供を再開(発売元は株式会社イーキューブ)[12]。
- 2018年4月27日 - Mobageでのサービス提供を再び終了[15]。
- 2019年12月20日 - 『ensemble10周年記念 乙女シリーズ13本セット』発売。Windows 8.1/10に動作対応[7]。
2010年8月より本作を含む株式会社ウィルのアダルトゲーム事業は株式会社ウィルプラスに引き継がれている(ウィルプラスの項を参照)。
製品構成
製品毎の搭載内容を次表に示す。ここに、PC:Windows版『花と乙女に祝福を』 / RB:Windows版『花と乙女に祝福を ロイヤルブーケ』 / PS2:PlayStation 2版 / PSP:PlayStation Portable版 の、それぞれ略称とする。
内容 | PC | RB | PS2 | PSP | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
原作シナリオ | PS2/PSP版は一部展開がPC版と異なり、性的描写は存在しない。 | ||||
アフターストーリー | — | △ | △ | PS2/PSP版には「#兄さんは私の下僕?」シナリオのみ収録されている[35]。 | |
追加シナリオ | — | — | |||
新オープニング | — | — | #PS2版オープニングを巡るトラブルも参照。 |
システム
本作は、マウスクリックなどでテキストを読み進め、途中表示される選択肢から主人公(月丘彰)の行動を選んでいくことで物語が分岐・進行する、オーソドックスな恋愛アドベンチャーゲームである[17][35]。
一度クリアするとタイトル画面の「おまけ[注 5]」メニューが開放される。「CG鑑賞」「シーン回想」機能でゲーム中で一度表示されたイベントCG・エッチシーンをいつでも鑑賞できるようになるほか、ゲーム中の楽曲を「音楽鑑賞[注 6]」機能で聴けるようになる[10][23][注 7]。PSP版では「プレイングログ」機能が新たに導入されており、ゲームの進行状況を随時確認できるようになっている[32]。
- 花と乙女に祝福を(春風の贈り物)
- マルチエンディング形式。いわゆる攻略可能なヒロインは6人(PS2/PSP版では8人)[35]用意されており、加えてバッドエンドも2種存在する[17]。ロックが掛けられているルート[注 8]が存在し、対応する別のヒロインを先に攻略することで進行できるようになる[17]。物語の時期は5月7日から6月6日までの1か月。さらにその後日を描いた「おまけシナリオ」が3つ(PS2/PSP版では4つ[注 9])用意されており、特定のエンディング[注 10]を見た後にプレイできる[17][55]。
- ロイヤルブーケ
- 5本の後日譚シナリオから任意に選んでプレイする形式[23]。物語の時期は主に夏。
あらすじ
月丘晶子(つきおか あきこ)は生来病弱で、今度の入院も長引いていた[56]:21[4][57]。出席日数が足りなくなり、学園からは留年を勧められるが、留年するくらいなら退学すると言って家族を困らせる[56]:21[4]。晶子の双子の兄である月丘彰(つきおか あきら)は晶子を退学させないため、晶子に成りすまして名門お嬢様学園「聖ルピナス学園」に通うことにする[56]:18[4][57]。
ルピナスの門をくぐった晶子(彰)は薔薇園で道に迷い、一人の上級生と出会う[58]:36。この上級生は財閥令嬢で生徒会長の宝生聖佳(ほうしょう せいか)[58]:34。物怖じせず自分に話しかけてきた晶子(彰)に興味を持つ[58]:34[35]。一方、晶子と同じ園芸部に所属し、兄妹の幼馴染でもある名木城都(なぎしろ みやこ)はその日のうちに彰の女装を見破ると理由を聞く[59]:24[4]。都は以前から彰に想いを寄せており[13]:104、学園生活のサポートを引き受ける[59]:24[4]。
毎年6月に行われる「立藤(たてふじ)の会」は間近に迫っていた[4][57]。立藤の会では保護者・卒業生・学園関係者を招いて、茶話会で交流を図るほか、その年のテーマとなる花「プルミエール・フルール」にちなんだイベントが庭園や温室で開催される[35]。全校集会の席上、聖佳はその実行委員長に晶子を指名する[58]:37[4]。立藤の会の実行委員長とは次期生徒会長のことであり、驚いた都は晶子には無理だと聖佳に反抗する[59]:24-25[58]:36-37。学園長の仲裁の結果[60]:86、園芸部と生徒会は来る立藤の会でそれぞれのプルミエール・フルールを決めてイベントを催し、晶子を賭け集客数で勝負することになる[59]:24[58]:36[4]。
名前 | 学級 | 身長 | B-W-H | 出典 | |
---|---|---|---|---|---|
PC PS2 |
名木城 都 | 2年桜組 | 158 | 80-54-82 | [59]:22[35] |
宝生 聖佳 | 3年椿組 | 160 | 84-55-86 | [58]:34[35] | |
鹿島 志鶴 | 2年桜組 | 156 | 88-56-87 | [61]:46[35] | |
佐上 薫 | 3年椛組 | 165 | 82-59-85 | [62]:58[35] | |
藍那 祈 | 1年柚組 | 147 | 72-52-74 | [63]:64[35] | |
山本 眞弥子 | 1年柚組 | 147 | 82-52-78 | [64][35] | |
PS2 | 獅堂 沙織 | 3年椛組 | 159 | 85-54-84 | [35] |
朝霧 七緒 | 1年桜組 | 150 | 75-54-74 | [35] |
(以下、大きく「園芸部ルート」と「生徒会ルート」に分かれる[17]。)
園芸部ルート
園芸部は聖佳との対決を回避したい上級生達が部を去り、都と部長の沙枝だけになっていた[59]:24。晶子(彰)は後輩2人と共に園芸部の活動を手伝う[59]:25。プルミエール・フルールの選定に難航するが、全校生徒の好きな花をアンケートで調べた晶子(彰)が、回答にあった花を全部使うことを提案する[59]:25-26。園芸部のプルミエール・フルールは題して「花と乙女の物語」[59]:26。生徒たちの好きな花を、思い出と共に紹介することに決まる[59]:26。
- 名木城都ルート
- 立藤の会の準備が進む中、都の母親の弥生が病気で倒れたとメイドの山内が報せてくる[59]:27[4]。実家の近い都が寮生活をしているのには理由があった。都は子供の頃に世話をしてくれていたばあやの影響で園芸を好きになった[59]:26。ばあやは都のために立派な百合の花壇を作ってくれた[59]:27。ところが、弥生はその花を全て切り落とした上、ばあやを屋敷から追い出したのだと都は主張する[59]:27。弥生の病状は悪化していくが、都は屋敷に帰ろうとしない[59]:27[57]。
- ついに弥生が重篤に陥ったとき、ばあやが現れて真相を語る[59]:27-28。実は都は重度の百合アレルギーで、ばあやの作った花壇のため命の危機に瀕したことがあり、責任を感じたばあやは自ら屋敷を去ったのだという[59]:28。百合アレルギーは園芸家としては致命的なもので、園芸に本気で打ち込んでいた都に、弥生はそのことを告げられなかったのだ。真実を突きつけられた都はショックを受けるが、アレルギーと共存しながら改めて園芸の道を目指す決意を示す[59]:27-28。立藤の会当日、都はアレルゲンとなる花粉を落とした百合の展示スペースに立ち、母親との思い出を語っていく[59]:28。親子は和解を果たし、弥生の手術は成功する[59]:28-29。彰と都は恋人になる[59]:29。
- (おまけシナリオ「とらぶる☆でーと」が解放される[17]。)
- 藍那祈・山本眞弥子共通ルート
- 藍那祈(あいな いのり)は友達ができず孤独だったが、晶子(彰)と出会ったことで山本眞弥子(やまもと まやこ)という無二の親友を手に入れる[63]:66-67[4][57]。園芸部に参加した2人は、都から入部祝いとして日々草の苗を贈られる[63]:67-68。花言葉は「生涯の友情」[63]:68[注 11]。2人は喜び合い、一緒に花畑を作ることを約束する[63]:68。そんなある日、祈の父親が祈の対人恐怖症を治すため専門家を連れてこようとする[67]。それをお見合いと勘違いした眞弥子は、双子の兄に祈の恋人役を演じてもらえないものかと晶子(彰)に相談する[63]:68。見合い話は杞憂に終わったが、眞弥子が彰に一目惚れしてしまい、一時退院した晶子と祈、彰と眞弥子でダブルデートをすることになる[63]:68。大好きな晶子とのデートで幸せ一杯の祈だったが、晶子と彰が入れ替わっていることに気付いてしまう[63]:68-69。
- (以下分岐)
- 藍那祈ルート
- 晶子(彰)を親友の眞弥子に取られそうになる展開に祈は激しく動揺するが、彰が気持ちを告げたのは眞弥子ではなく祈だった[63]:69。晶子の正体を知った眞弥子も親友と三角関係になったことで落ち込むが[63]:69[4]、祈が身を引こうとすると激しく怒り、「友達ならこの意味がわかるはずだ」と日々草の苗を祈に渡す[63]:70[4]。祈は友情の証を突き返されたと嘆くが、それは入部祝いに贈られたものではなく、眞弥子が自分で殖やしたものだと気付く[63]:70。眞弥子は2人の小さな約束をずっと覚えていてくれたのだ[63]:70。眞弥子に祝福され、祈は彰と恋人になる[63]:71。
- 山本眞弥子ルート
- 彰は眞弥子の告白に応える。ところが、眞弥子には本物の見合い話が持ち上がっていた[68]:76[4][57]。茶道家元山本家の娘である眞弥子の見合い相手は財閥御曹司の三船千里(みふね ちさと)[68]:77。見合い会場に乗り込んだ彰は立藤の会で千里と利き茶対決をすることになる[68]:77[4][57]。そして、眞弥子の出すサインで辛くも勝利を収める[68]:78。ところが、眞弥子の婚約者としてルピナスにやって来た千里の本当の目的は別にあった[60]:87。千里は、ルピナスの学園生で財閥令嬢の天法院綾音(てんほういん あやね)に結婚を申し込んでその場を驚かせる[69]。ともあれ落着し、千里に勝利した彰は山本家から認められる[68]:79。
- (おまけシナリオ「3人が一番!」が解放される[17]。)
生徒会ルート
生徒会長の聖佳は学園で絶大なカリスマを誇っていたが、生徒会は活気がなかった[58]:37。聖佳が自分にも他人にも完璧を求めるあまり、つい厳しい態度を取ってしまうためだった[58]:37。聖佳は庭園を大量の薔薇の造花で埋め尽くし、その中に潜ませた一輪の本物を探す「百万本の薔薇」イベントを立案する[58]:37[57]。晶子(彰)の勧めもあり笑顔を振りまく聖佳のところへ、全校生徒が造花を作って運んでくる[58]:38。
- 宝生聖佳ルート
- 生徒会の仕事を手伝う晶子(彰)に聖佳は信頼を寄せていく[4]。晶子(彰)もまた変わるため努力を始めた聖佳に、憧れ以上の気持ちを抱くようになる[58]:38。しかし、本物の薔薇の景品が宝生家招待券に決まると、学園内の聖佳ファンの中から景品を狙って不正をはたらく者が現れる[58]:38。激怒して犯人にきつく当たってしまった聖佳は、結局変われていなかったと自己嫌悪する[58]:38-39。さらに、逆恨みした犯人が聖佳の悪い噂を流したせいで、生徒達は聖佳を恐れて遠ざかっていく[58]:38-39[4][57]。造花が集まらなくなり、立藤の会も絶望的になる中、晶子(彰)は誤解を解くため中傷も恐れず奔走を続ける[58]:39[4]。見かねた聖佳が止めようとした拍子に、ウィッグが外れてしまい、正体が露見した晶子(彰)は生徒会を去る[58]:39-40。
- 数日後、立藤の会を諦めていた聖佳が庭園に足を運ぶとそこには百万本の薔薇が咲いていた[58]:40。晶子(彰)は聖佳のために一生懸命造花を集め続けていたのだ[58]:40。聖佳は2年の教室へ急ぐが、そこにいたのは「晶子」ではなく退院した妹だった[58]:40。そして迎えた立藤の会。「百万本の薔薇」は盛況だったが一番いて欲しい「晶子」の姿だけがなかった。聖佳が薔薇園で悲しみに暮れていると、「実は道に迷ったみたいで……」と出会った日のように彰が現れる[58]:39-40。
- (おまけシナリオ「聖佳さまのご褒美?」が解放される[17]。)
- 鹿島志鶴ルート
- 晶子(彰)と一緒に生徒会を手伝うことになった鹿島志鶴(かしま しづる)は晶子の匂いが以前と違っていることに戸惑っていた[61]:48。画家でもある彼女は晶子(彰)に絵のモデルを依頼し、うたた寝している間にその唇を奪う[61]:48。また晶子(彰)の汗を拭いたハンカチから性的刺激を得て自慰行為に及ぶ[61]:48。到頭我慢できなくなり晶子(彰)を美術室に呼び出すと、自分は汗の匂いで興奮してしまう特殊な性癖なのだと告白し、下半身をまさぐりにかかる[61]:48。すると入れ替わりが判明し、疑問も氷解してすっきりする[61]:48。
- 肉体関係を持ってしまった彰は、なし崩しに志鶴の恋人になり、男の姿で街をデートする[61]:49[4][57]。翌日登校すると晶子は男だという噂が流れており[61]:49[4][57]、スクープを狙う新聞部員まで現れる[61]:49。噂が消えないことに業を煮やした聖佳は本物の薔薇の景品を「晶子を自由に調べられる権利」に定め、直接体を確かめさせようとする[61]:50。立藤の会で本物の薔薇が新聞部員の手に渡ってしまい、晶子(彰)は絶体絶命の危機に陥るが、男装して彰となった晶子が助けに現れたことで疑惑は晴れ、一件落着となる[61]:50。
- 佐上薫ルート
- (聖佳ルート攻略後に聖佳ルートから分岐[17])
- 生徒会副会長の佐上薫(さがみ かおる)は京都の西陣織の元締めの家に生まれ、将来は後継者となることが定められている[62]:61。ルピナスでは中性的な顔立ちと抜群の運動神経で人気を集め[4]、下級生との過剰なスキンシップで現実から逃避する日々を送っていた[62]:61。晶子(彰)に対してもスキンシップを図るが、跳ね返された腕力の意外な強さに疑念を抱き、これが後日の女装露見に繋がる[62]:60。やがて薫ファンの下級生が2つの勢力に分かれて抗争を始めると、騒動を知った京都の祖母が薫を連れ戻しにやって来る[62]:60-61。
- 飄々と振る舞いつつ影から生徒会を支えていた薫を見直していた晶子(彰)は[57]、自分が薫を更生させると薫の祖母に宣言する[62]:61。薫もその熱意に打たれ、学園に残りたいという意思を持ち始める[64]。2人は造花集めに難航していた生徒会を再び軌道に乗せ、立藤の会を成功へと導く[62]:61。一部始終を見届けた祖母は薫の人生を伝統の犠牲にする必要はないと考え直すが、薫はたこだらけの手を恋人が褒めてくれたと言い、西陣織の後継者であることを誇れるようになったと答えるのだった[62]:61。
春風の贈り物
(PS2/PSP版ではエッチシーンがカットされている都合上、原作と展開の異なる箇所があり、たとえば志鶴ルートでは、志鶴が彰のことを好きになる理由が匂いではなく目つきになるなどの改変がなされている[70]。追加ヒロインは園芸部ルートと生徒会ルートに1人ずつ配置されており、それぞれ次のような展開となる。)
- 獅堂沙織ルート
- (園芸部ルートから分岐[29])
- 上級生の抜けた園芸部を、沙枝の友人の獅堂沙織(しどう さおり)が手伝うようになる。生徒会の青い薔薇に対抗するため、晶子(彰)が恋の話に関係した花を飾ることを提案し、学園生から恋の話を募ったところ、恋愛小説の若手作家「姫野くるみ」の作品が寄せられ、園芸部の催しは俄に注目を集める[71]。
- 姫野くるみには、作品の舞台や登場人物がルピナスに似ていることから、ルピナスの現役学園生だという噂があった。投稿された作品に晶子(彰)と沙織しか知らないことが書かれていたことから、晶子(彰)はくるみの正体を知ってしまう。沙織は生徒会に勝つために使えるものなら何でも使おうと思ったのだと釈明するが、投稿したのは姫野くるみの名を騙る偽者だと主張するファンの生徒が現れると色を失う[71]。
- 沙織は本当の恋をまだ知らなかった。本から得た知識で恋愛小説を書いてきた。偽物だと痛い所を突かれて筆を折ろうとするが、晶子(彰)がくるみの原稿をコピーして全校に配ると校内はくるみの作品に対する絶賛で溢れる。沙織は全校生徒を前に、自分こそが姫野くるみであると公表し、導いてくれた晶子に対する感謝の気持ちをスピーチする。立藤の会で本物の晶子から入れ替わっていた事実を教えられた沙織は、ルピナスを去ろうとしていた彰に追いつく。姫野くるみは本当の恋の物語を書き続けていく[71]。
- 朝霧七緒ルート
- (生徒会ルートから分岐[29])
- 1年生の朝霧七緒(あさぎり なお)は、自分の親友に辛く当たった聖佳を嫌っていた。すると晶子(彰)から聖佳を誤解しないでほしいと頼まれ、生徒会室に誘われる。聖佳の発案になる生徒会のプルミエール・フルールは題して「幸せの架け橋」。七色の加工品種の薔薇で庭園に虹を架けるという企画だった。生徒会活動に参加するようになった七緒は晶子(彰)に惹かれていく[72]。
- 他方、七緒は別居中の両親のことで悩んでいた。昔、七緒の母親は青いカーネーションで立藤の会を飾って父親のハートを射止めた。しかし、その後2人は不仲になっており、今度の立藤の会で久しぶりに会うことになっているのだった。それを知った晶子(彰)は、加工品種の薔薇に加えて、密かに青いカーネーションも準備する[72]。
- そんなある日、寮のラウンジを訪れた七緒は、晶子(彰)が男の口調で電話しているのを聞いてしまう。学園を休み、晶子が入院していたという病院へ向かうと、果たしてそこには本物の晶子がいて、彰との仲を応援される。そして立藤の会。青いカーネーションの演出に七緒は驚き、「幸せの架け橋」に来場した七緒の両親は仲直りに向けて一歩を踏み出す。七緒は黙って去ろうとする晶子(彰)を引き留めると勇気を振り絞る。青いカーネーションの咲く庭園で、若い2人も恋人になる[72]。
ロイヤルブーケ
- 夏だ! プールだ! お祭りだ!! 〜都のとても長い一日〜
- (名木城都アフター)
- 彰と都は名木城邸のプールで泳いだ後[20]、神社の縁日で遊ぶ。帰り道、本当は彰を家に呼びたくなかったと都が打ち明ける。日本有数の名家である名木城家の婿になれば重圧やしがらみも付いてくる。プールのあるような豪邸を見て想像してしまったのではないかと都が不安いっぱいに尋ねると、彰はそんな問題があることは今知ったと白状し、都は力が抜ける[73]。
- 兄さんは私の下僕? 〜月丘晶子の優雅な一日〜
- (バッドエンドのアフター)
- ルピナスの生徒会長にしてしまったお詫びとして、彰は街へ出かける晶子の供をする[20]。買い物やボーリング・ラーメン屋など、夜遅くまでデートを楽しんだ2人はルピナス寮の晶子の部屋に泊まる。一緒に入浴し、同じベッドで眠りながら、彰はこれからも晶子を見守っていこうと胸に誓うのだった[74]。
- 彰・漢化計画 〜性を取り戻せ!〜
- (宝生聖佳アフター)
- 生徒会が勝利してひと月。彰から女装していた頃の癖が中々抜けず[20]、聖佳は恋人を「男の中の漢(おとこ)」に戻そうと、肉体改造や電気ショックを施していく。彰はついに怒り出すが、偶然出会った眞弥子から「仲直りができるお茶」(実は媚薬)を貰い、2人は仲直りする。聖佳は行為のときの彰を男らしかったと褒める[75]。
- 心は女。体は男?! 〜天法院綾音 華麗なる軌跡〜
- (山本眞弥子アフター)
- 物語は、心と体の性の不一致に苦しんできた天法院綾音が、初めてルピナスの制服に袖を通すところから始まる。周囲の友人に隠し続けたまま2年目の立藤の会を迎え[76]、三船千里からプロポーズされた綾音はどうすればいいのか迷う[77]。
- 会って話すことを薫・志鶴から勧められ、千里とデートする。デートの終わりに携帯電話をプレゼントされ、毎日メールを交換するようになる。やがて千里に惹かれていくのを自覚した綾音は、嘘をつき続けることに耐えられず、ついに全てを告白する。千里は少し考えさせて欲しいと答えるが、本当に自分のことを女性だと思っているのか綾音に確認する。3か月後、南半球の島には婚約式を挙げる綾音と千里の姿があった[76]。
- 連夜連闘? 名木城家、愛のお泊まり会
- (本編にはないハーレムストーリー[49])
- 都・志鶴・祈・眞弥子ら新生徒会メンバーがお泊まり会を開く。晶子は当日体調を崩してしまい、彰が入れ替わりで参加する[20]。ところが匂いで志鶴にばれてしまい、志鶴の喘ぎ声を聞かれて都にもばれ、さらに祈・眞弥子にもばれて次々に体を求められる。お泊まり会は連夜連闘の様相を呈していく[77][78]。
キャスト
※声はPC版 / PS2(PSP)版の順。
主人公ヒロイン
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PS2版追加ヒロインサブキャラクター
|
スタッフ
- 花と乙女に祝福を
- ロイヤルブーケ
- 春風の贈り物
主題歌
PC版の主題歌は全て音楽家のロドリゲスのぶ(笹原ノブスケ[82]、笹原延介[83]。2019年から横浜マリンエフエム代表取締役社長[84]。)が楽曲を提供し、片霧烈火が歌唱を担当したものである[10][23]。その中で「Maiden's Garden」は作中で都が歌う場面があり、「まさか本当に歌うとは思っていなかった」都役の風音は、収録時最も印象に残ったこととして挙げている[85][注 13]。PS2版の主題歌は喜多村英梨と今井麻美により当時結成されたばかりのユニット「ARTERY VEIN」の曲であり、所属先の5pb.からアルケミストに持ち込まれ、採用されたものである[87]。これらの曲の扱いを巡って後述の#トラブルが発生している[88][89]。
一覧
映像外部リンク | |
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『花と乙女に祝福を』OPムービー - YouTube(アップテンポな曲で作品の楽しい雰囲気が伝わるムービー[90]。「Maiden's Garden」の1番。) | |
『花と乙女に祝福を ロイヤルブーケ』OPムービー - YouTube(「Bloom of your dream」の1番。) |
- オープニングテーマ「Maiden's Garden」
- 作詞 - 不詳[注 14] / 作曲 - ロドリゲスのぶ / 編曲 - da2 / 歌 - 片霧烈火[10]
- エンディングテーマ「ひみつのストーリー」
- 作詞 - 秋元凛 / 作曲・編曲 - ロドリゲスのぶ / 歌 - 片霧烈火[10][23]
- ロイヤルブーケオープニングテーマ「Bloom of your dream」
- 作詞 - kimotto / 作曲 - ロドリゲスのぶ / 編曲 - da2 / 歌 - 片霧烈火[23]
- 春風の贈り物(PS2版)オープニングテーマ「Splendid Flowers」
- 作詞 - Eb/B / 作曲 - MAKIKO / 編曲 - 悠木真一 / 歌 - ARTERY VEIN[91]
収録メディア
「Maiden's Garden」「ひみつのストーリー」は本作初回限定版付録の#サウンドトラックに収められた[19]。「Bloom of your dream」は『ロイヤルブーケ』の購入者を対象にダウンロードで配信された[92]。2020年現在ではほかのアルバム[注 15]にも収録されている。
「Splendid Flowers」はARTERY VEINのデビューシングル『Confutatisの祈り』のカップリング曲である。
サウンドトラック
初回限定版にはオリジナルサウンドトラック「花と乙女にサントラを」が付録として同梱された。以下のとおり[19]、音楽CD1枚に主題歌2曲とBGM20曲が収められている[94]。
ミリオンバンブーとは、ロドリゲスのぶが様々な分野の作詞家・作曲家・編曲家・演奏家を集めて結成した音楽制作チームである[82]。美少女ゲーム専門の音楽制作ブランドを標榜していた時期もあり[95]、ウィルプラスは2021年現在その主要な取引先に社名を連ねている[83]。
# | タイトル | 作曲 | 時間 |
---|---|---|---|
1. | 「Maiden's Garden」(歌:片霧烈火) | ロドリゲスのぶ | |
2. | 「山百合祝歌」 | ミリオンバンブー | |
3. | 「野薔薇の午後」 | ミリオンバンブー | |
4. | 「START DASH!」 | ミリオンバンブー | |
5. | 「ごきげんいかが?」 | ミリオンバンブー | |
6. | 「深緑」 | ミリオンバンブー | |
7. | 「急カーブ急ブレーキ急ストップ」 | ミリオンバンブー | |
8. | 「朝鳥におはよう」 | ミリオンバンブー | |
9. | 「Daily life」 | ミリオンバンブー | |
10. | 「瞼を閉じて」 | ミリオンバンブー | |
11. | 「小春日和と忘れ物」 | ミリオンバンブー | |
12. | 「どっちに行けばいいの!?」 | ミリオンバンブー | |
13. | 「夕焼け雲を眺めながら」 | ミリオンバンブー | |
14. | 「雨、冷たくなって」 | ミリオンバンブー | |
15. | 「Solitude」 | ミリオンバンブー | |
16. | 「アンビバレンツ」 | ミリオンバンブー | |
17. | 「沈黙の時間」 | ミリオンバンブー | |
18. | 「Crystal Garden」 | ミリオンバンブー | |
19. | 「花と乙女の祝日」 | ミリオンバンブー | |
20. | 「エンゲージ」 | ミリオンバンブー | |
21. | 「ずっと、ずっと……」 | ミリオンバンブー | |
22. | 「ひみつのストーリー」(歌:片霧烈火) | ロドリゲスのぶ | |
合計時間: |
制作・広報(PC版)
開発タイムライン | |
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2008年1月 | 『花と乙女に祝福を』企画開始[13]:102 |
2008年2〜3月頃 | 原画担当に武藤の起用を決定[96]:94 |
2008年5〜6月頃 | 武藤が作業に着手[96]:94 |
2008年11月21日 | 公式サイトを開設[48] |
2008年12月28日 | コミックマーケット75でCM動画を発表[48] |
2009年3月30日 | 発売予定日の延期を告知[52] |
2009年4月24日 | (当初の発売予定日)[52] |
2009年5月13日 | マスターアップ[94] |
2009年5月29日 | 『花と乙女に祝福を』発売 |
2009年9月18日 | 『ロイヤルブーケ』制作発表[97] |
2009年10月2日 | 公式サイトを開設[92] |
2009年12月29日 | コミックマーケット77でCM動画を発表[98] |
2010年1月18日 | マスターアップ[92] |
2010年1月29日 | 『ロイヤルブーケ』発売 |
企画
本作のアイデアは、シナリオライターの「じんべい」(この時期の代表作には『AYAKASHI』などがあった。)が、双子の入れ替わりを題材として何か面白いことができないかと、2007年以前から長期間温め続けていたものである[13]:102。株式会社ウィルの夏月[注 16]に提案したところ、好感触が得られたことから、2008年の年明けに本作企画として正式に立ち上がった[13]:102。夏月は「ウィルの中に無いものをやりたい」とじんべいに話した[13]:102。いわゆる「萌え」中心の作品が業界に増えていた中、当時のウィルには萌えを売りとするブランドがまだなかったことが背景にあった[13]:102。そこで、萌えを扱う新ブランドを設立し、本作をその処女作として発表する運びとなった[13]:102。
じんべいが念頭に置いていたのはあくまで双子の入れ替わりであったが、入れ替わるシチュエーションの中で何か面白いことができないか検討を重ねた結果、「妹になるなら女学園に行ったほうが楽しい」と女装もののアイデアに偶然的に辿り着いた[13]:102。女装ものは既にメジャーなジャンルであったが、じんべいは当時著名だった『処女はお姉さまに恋してる』の存在すら把握しておらず、女装して女学園に通う作品は初めてだろうとさえ考えていた[13]:102。
舞台となる学園のモデルには、少女小説『マリア様がみてる』のリリアン女学園が選ばれた[13]:103。お嬢様学園を舞台とした理由は、せっかく女学園に通うなら、普通の学園よりも箱入りのお嬢様が通う学校にしたほうが萌えると考えたためであった[13]:102。さらに「お嬢さまといえば花だろう」という連想から園芸が物語の題材に選ばれた[13]:103[注 17]。ただメインは女の子の話であるため、園芸に関しては深くは掘り下げないようにしたという[13]:103。当初のアイデアはこうして、ヒロイン毎に花との繋がりを見せていく「花と乙女の物語」へと纏まっていく[13]:103。
ブランドの命名者となったのは本作シナリオライターの籐太である[13]:102。籐太はじんべいとは『AYAKASHI』で共作するなどしており[99]、正式開始に先立つ2007年の12月頃には、既にじんべいから声を掛けられていた[13]:102。じんべいが籐太に向かい「ブランド名」と口にしたとき、籐太は何を相談されるかピンときたという[13]:102。一般に美少女ゲームのブランド名は音楽用語から取ることが多かったといい、「何にする?」とじんべいが尋ね終わったときには、籐太は「ensemble」を思いついていたという[13]:102。
開発
企画が立ち上がった時点でエンディングまでの明確なプロットが存在したのは聖佳だけであった[13]:103。主人公の正体を知っていて協力者となる存在が要請され、都が加えられた[13]:103。次いで志鶴が入り、さらに祈・薫・眞弥子と、キャラクター配分は素直に決まっていった[13]:103。
夏月とじんべいは2人で原画家候補を出し合っていたが、最終的に本作の柔らかい世界観と絵柄の親和性を考慮し、武藤此史の起用を夏月が決断した[96]:94。武藤にとって本作は2度目の美少女ゲームの仕事であり、メイン原画を担当した初めての作品となった[96]:94。2008年の3月頃までに依頼を受けた武藤は6月頃までに着手し、およそ1年に渡って本作の制作に携わった[96]:94。
じんべいのプロットが遅れたことから、シナリオ執筆における籐太の受け持ち分は当初予定より大幅に増えた[13]:102。じんべいと籐太の最終的な分担は、じんべいが導入部・園芸部共通ルート、籐太が生徒会共通ルート・個別全ルート、両者の比率としては大体2:8となった[13]:102。籐太は、双子の入れ替わり・女装潜入という、本作の2つの側面から執筆方針を検討し、地の文(彰の心理描写)を増やす方針をとった[57]。
ユーザーさんの視点、神の視点から見ている人に共感してもらえる主人公を作っていくと、必ず人間ではないキャラクターになるんですよ。そうじゃなくて、(彰が変装した)晶子は晶子でいいんだよって。晶子が聖佳とか都の悩みをわかってあげて、常に男らしい行動をするのは、何か違うような気がしません?
— 籐太、『ビジュアルファンブック』104頁
ただ、都シナリオに限っては、ユーザーに疑問を抱かせないようにするため、地の文を減らしてテンポを上げたとしている[13]:103-105。
キャラクターメイキング
以下に、PC版登場人物の開発コンセプトをスタッフインタビューを元に説明する。
- 月丘晶子(彰)
-
- 上述したとおり、籐太は等身大の主人公を指向すべく、彰を超人としては描かなかった[13]:104。「何の取り柄もないやつが一生懸命頑張っている」(籐太)「行き当たりばったり、何も考えずに生きているところがある」(じんべい)が、そのキャラクター造形の要点であった[13]:104。こうした方向性には、女装ものにおける主人公はヒロインの一人でもあるため、可愛らしさを表現したいという側面もあった[13]:104。
- 妹の晶子は精神的には彰より大人だが、「所詮は彰の妹」としてデザインされている[13]:104。兄には口うるさいが内弁慶というキャラクターで、じんべいの好みのタイプであった[13]:104。執筆に当たった籐太は、攻略ヒロインよりも妹の晶子の方が可愛いと感じるときがあったといい、これはまずいと思ったと述べている[13]:104。
- 晶子(彰)のデザインコンセプトは「地味」[56]:19。女装ゲームのプレイ経験がなかった武藤は、主人公に対するプレイヤーの感情移入の度合いを推し測れなかったため、無難に目立たない外見を採用した[56]:19。当初は兄妹を描き分けるつもりだったが、予想よりも彰は女々しく、晶子はしっかりしているキャラクターだと分かったため、同じように描いた[56]:19。女装もののエッチシーンでは主人公がカメラに入ってくるが、ヒロイン同様可愛らしく見せる工夫に頭を悩ませたという[61]:47[57]。また、女装時の彰はたとえエッチの最中であっても絶対に下着を見せないというルールがじんべいにより制定され、スタッフはこれを遵守した[96]:99[注 18]。グッズなどでも、イラストに描かれているのが女装した彰なのか本物の晶子なのか区別できないというのは夏月・武藤らが意図したものである[96]:99。
- 名木城都
-
- 都は彰の事情を知る唯一の人物であり、女装生活の協力者だが、あまり協力的でも面白くないとじんべいは考えた。そこで性格を少し曲げて、彰のことが好きという設定になった[13]:104。籐太は「奇をてらわない、わかりやすいツンデレ」が都であるとしている[13]:104。最初の企画書ではメインのヒロインは聖佳になっていたが、その後都に変わる[13]:104。#都シナリオのプロットは難航したが[57]、ポイントとなる百合アレルギーという設定は、じんべいの弟がキウイアレルギーであったことに着想を得たという[13]:105。
- 武藤は都のデザインから着手したが[59]:23、その過程でじんべいからは何度かリテイクが出された[96]:95。最終的なデザインは、武藤がイラストを担当していたライトノベルのキャラクターが元になっている[59]:23。
- 宝生聖佳
-
- 聖佳ありきで本作を企画したじんべいにとっては、聖佳のキャラクターコンセプトは『花と乙女に祝福を』という作品そのものであった[13]:105。晶子が彰として出会いを再現する#聖佳シナリオのラストシーンは構想の段階で固まっていた[13]:105。籐太の解説によれば、彰と聖佳との出会いにより「晶子の物語」が晶子に扮した「彰の物語」になるとされている[13]:105。
- じんべいはユーザーが引くくらいの綺麗なキャラクターを武藤に要求したという[58]:35。デザインコンセプトは誰の目にも「わかりやすいお嬢様」[58]:35。武藤は一貫して幻想的に描くことを心がけたというが[96]:98、おまけシナリオでは遊びで眼鏡キャラクターにしている[96]:95-96。
- 鹿島志鶴
- 佐上薫
- 藍那祈
-
- キャラクターコンセプトは「妹」[13]:107。聖佳と晶子の関係を姉と妹に喩えるとすれば、祈と晶子はその逆の関係になる[13]:107。籐太によれば、祈は無口なキャラクターであるため、主人公と2人きりの状況を書くのが難しかったという[13]:107。じんべいは大人しめのヒロインから好意を持たれる状況に萌えるとしつつ、籐太の指摘した点は考慮してあり、無口な祈と元気な眞弥子は当初からセットで考えていたと述べている[13]:107。
- 初期デザインのイメージは感情表現の乏しい少女[注 19]であった趣旨を武藤は述べている[63]:65。しかし、無口というよりは弱気なキャラクターとの印象を受けたことから、やや垂れ目に描き直したという[63]:65。
- 山本眞弥子
-
- 祈と対になる元気なヒロインとして考案された[13]:107。じんべいは眞弥子と彰を普通のカップルにしてみようと考えた[13]:107。ほかのヒロインには彰と晶子の入れ替わりがいずれ必ずばれることになるが、眞弥子シナリオでは途中で彰本人を登場させ、眞弥子をそちらに一目惚れさせることで、例外的に女装がばれない展開が実現されている[13]:107。本作のお笑い担当とされており、ヒロインの中では唯一個別ルートに花が絡んでこない[57]。イメージの花(ヒマワリ)は一応設定されている[13]:103。
- 武藤は「和服」と「元気」のイメージを初めの頃繋げられずにいたが、(物語後半になり)和服姿を描いたところ思いのほかしっくりきたため、結果的には苦労のなかったキャラクターだったとしている[68]:75。
収録
ビジュアルファンブックには声優のインタビューコメントが掲載されている。その中からいくつかを以下に紹介する。
- 名木城都を演じた風音は、ツンデレの都を演じる上で心がけたこととして、「彰のことは好きなので、会話も、あまり厳しい言い方にならないように気をつけました」と語っている[86]:109。
- 藍那祈を演じた綾部凜は、自身の演技について、「無口な子なのですが、感情が抑えめなのではなくて、伝えたいことがあるのに言えない、自信がなくて口に出せない、そんな祈ちゃんのもどかしさが伝わるように心がけました」と説明している[86]:110。
広報
本作の情報は、2008年11月21日発売のアダルトゲーム月刊誌『TECH GIAN』2009年1月号[100]、および同日開設されたensembleのブランドサイトで公開された[48]。スタッフ日記では「花乙女」(はなおと)という略称が用いられた[48]。12月に入り、サブキャラクターを担当したigulの作画による4コマ漫画の連載が公式サイトで始まる。そして、12月28日から30日にかけて行われたコミックマーケット75において、宣伝動画が発表された[48]。
広報において一貫していたウィルの姿勢は、女装ゲームの購買層に確実に訴求するということであった[96]:99。女装ゲームはジャンルとして当時既に確立しており、一定量の需要が期待できる状況であった[96]:99。一方、百合もの(主人公は女性。エッチシーンは女性同士となる)は女装もの(主人公はあくまで男性)と性質を異にし、両者のユーザーは普通重複しない[96]:99。そのため、夏月は本作が百合であるというイメージの払拭に努めた[96]:99。女性同士にも見えるエッチシーン(#晶子のキャラクターデザインも参照)のサンプルを出すのは極力遅らせ、校正に上がってきたゲーム雑誌の記事に百合という言葉があれば消させるなど対策を徹底した[96]:99。
2009年3月6日、左右のパーツに分割された応援バナーが配布された。ユーザーが自由に組み合わせて遊べる作りになっており、情報サイトの「うらあきば.じぇいぴ〜」により、かなり変わったものとして取り上げられた[101]。3月11日にオープニングムービー[94]、3月13日にエッチシーンを含まない体験版が公開された[102][94]。また夏月は、個別ルートのあらすじを発売に先駆けて公表するというかなり異例の手段をとった[94][64][注 20]。しかし一方では開発が遅れ、3月30日に発売延期の告知を出すに至っている[52]。
4月21日からはエッチシーンボイスの公開が始まった。5月1日には宣伝動画第2弾が発表され、その動画中でエンディング曲の一部も披露された[94]。エッチシーンのサンプルCGは、公式サイトには5月8日になりようやく登場した[94]。そして5月29日の発売日を迎えた。
続編
2009年9月18日に、ブランド第2作となる『花と乙女に祝福を ロイヤルブーケ』の制作が発表された[92]。原作に対する位置付けとしては、ファンディスクではなく、「アフターストーリー集のようなもの」という説明がなされた[92]。アダルトゲーム月刊各誌(『TECH GIAN』[104]『電撃姫』[49]『BugBug』[105][77]『PUSH!!』[20])も「アフターストーリー集」という呼称を用いている。
じんべいは、スタッフ日記の中で、「個人的に得意としているコメディタッチのシナリオ」であるとし、「楽しくコミカルに、そしてエロく仕上がっています」と新作の予告を行った[92]。シナリオ担当からは籐太が外れ、じんべい・ANTENNAの体制に移行した[20]。原画は引き続き武藤此史が担当した[20]。
10月2日に開設された公式サイトでは、画像が変わる宣伝バナーや、各種のミニゲーム・コンテンツがユーザーに提供され、2010年1月29日の発売以降は声優のサイン色紙プレゼントが実施された[92]。
制作・広報(PS2版)
2010年3月26日、美少女ゲームの家庭用ゲーム機への移植版の販売を多く手掛けていた[106]アルケミストの新作として、本作のPS2への移植が各媒体で一斉に発表された[50][35][79]。この時点では仮題とされ、タイトルは未定であった[50][35][79]。その後、正式に『花と乙女に祝福を〜春風の贈り物〜』と告知された[注 21]。
シナリオ・CGは、2人の新ヒロインの追加に合わせて大幅に増量された[35]。新規シナリオの執筆はシナリオライター集団「企画屋」が新たに担当したが、プロットはじんべいが作成し、監修を行った[35]。メイン原画も武藤が手掛けている[33]。
新オープニングテーマにはARTERY VEINの「Splendid Flowers」が選ばれた[注 22]。アルケミストの松原プロデューサーによれば、この頃、コミックマーケットのイベントで会った5pb.の担当者からARTERY VEIN結成の話を聞かされていたという[87]。松原が相乗りしたい意向を伝えたところ、5pb.から同曲の提案があり、松原は社内に諮った[87]。『春風の贈り物』の担当プロデューサーが「『花と乙女に祝福を』は、タイトルも絵もギャルゲーっぽい感じだけど」としながらも、「ちょっとカッコいい歌も合うかなと考えているんです」とARTERY VEINのコンセプトに歩み寄ったため、タイアップが決定したとされている[87]。
なお、結果として、『春風の贈り物』はPS2向けとしては最後のアルケミストのタイトルとなる[107]。2013年になり、ゲーム総合情報サイト「Gamer」のインタビューに答えた広報担当の中川滋は、PS2からPSPへのハード移行が進んでいた2010年当時の状況を振り返って、「そろそろ閉じかけているかなという時期でしたが、ギャルゲーだとこの頃はまだPS2の市場が確かにありましたね」としつつ、「この頃からギャルゲーは携帯機でコッソリ遊びたいというユーザーさんの隠れたニーズが表面化してきたようなが気がします」とも述べている[107][注 23]。『春風の贈り物』が発売された2010年は、PSPがシェアを伸ばす一方[40]:46-47[39]:66、PS2は新規タイトルが前年から半減するなど縮小の一途をたどっていた年であった[40]:48。
収録
PS2版発売に際して再びインタビューが実施されている。その中からいくつかを以下に紹介する。
- PS2版で彰・晶子の月丘兄妹を演じたやなせなつみは、収録時「彰が、男の子モードでも、しっかりしすぎないように、晶子が、入院中でも、弱くならないように〔ママ〕」という指示が出されたといい、そのような普通とは逆のパターンを面白いと感じた旨を語っている[108]。
- 新規ヒロインの獅堂沙織を演じた井上麻里奈は、難い口調のキャラクターで演じるのに苦労したとしつつ、「接する人によって見え方が変わる人なのかな」と思ったとし、「心の距離感を意識して演じるよう心がけました」と語った[108]。
- 佐藤利奈は、新規ヒロインの朝霧七緒について、きっぱりと物を言う子という第一印象を受けたとしながら、「本来持っている少し抜けている部分や、脆い部分を隠して一生懸命明るく振る舞う様子が徐々に見え始めてからは、愛らしい子だなぁと思いました」と感想を述べている[109]。
販促活動
PS2版『春風の贈り物』の発売(2010年7月8日)に際しては、同年にアルケミストから出された女装ゲーム
- 乙女はお姉さまに恋してる Portable(2010年4月29日)
- 恋する乙女と守護の楯 Portable(2010年7月29日)
とのコラボレーション「男の娘ゲーム・キャンペーン」が実施され[110]、「DreamParty東京2010春」[111]、「DreamParty大阪2010春」[112]などでチラシが配布された。『春風の贈り物』を含む3作品を全て買うと、各作品の主人公が互いの制服を交換したポートレートイラスト集が漏れなく当たるという企画であった[110]。
反響
コンピュータソフトウェア倫理機構による2009年度(2009年4月1日〜2010年3月31日)のパッケージソフト審査本数は1,238本である[113]。本作はそのような状況において、発売月(2009年5月)の各種売り上げ調査で軒並み上位一桁に食い込む(以下を参照。)ヒット商品となり[105]、高い評価を受けた[114]。続編の『ロイヤルブーケ』も好成績を収め(以下を参照。)、ensembleの女装ゲームはその後シリーズ化された。
売り上げ
- 花と乙女に祝福を
- 本作は発売月(2009年5月)の売り上げにおいて、PCpressの集計では4位[115][注 24]、Getchu.comの集計では3位[116][注 25]、プロップ通販の集計では2位[118][注 26]、『TECH GIAN』の集計では4位[120]、『BugBug』の集計では3位[121]、『PUSH!!』の集計では3位[122]を記録した。発売年(2009年)においては、Getchu.comの集計では上半期11位[123]・年間19位[124]であり、『BugBug』の集計では年間上位20位の圏外[125]であった。なお、これらの集計において販売本数は明らかにされていない。
- ロイヤルブーケ
- 続編の『ロイヤルブーケ』は、その発売月(2010年1月)の売り上げにおいて、PCpressの集計では7位[126][注 27]、Getchu.comの集計では2位[127]、プロップ通販の集計では2位[128][注 28]、『TECH GIAN』の集計では1位[104]、『BugBug』の集計では1位[105]、『PUSH!!』の集計では2位[129]を記録した。『PUSH!!』誌では事前予想でノーマークであった旨が語られている[129]。Amazon.co.jpの集計では上位10位の圏外[104]であった。発売年(2010年)においては、Getchu.comの集計では上半期16位[130]・年間36位[131]であり、『BugBug』の集計では年間上位20位の圏外[132]であった。これらの集計において販売本数は明らかにされていない。
- 春風の贈り物
- 『春風の贈り物』の販売実績は、シンクタンク「メディアクリエイト」が発行した『2011テレビゲーム産業白書』によれば、初週3,447本[注 29]、2010年期(2010年1月4日〜2011年1月2日)では累計6,079本販売され、家庭用ゲーム全体では年間の874位であったとされている[40]:119。『ファミ通ゲーム白書2011』によれば、2010年期(2009年12月28日〜2010年12月26日)では累計7,685本発売され、家庭用ゲーム全体では年間の744位であったとされている[39]:418。
- 前述したGamerのインタビューにおいて、アルケミストの中川は、この時期男の娘を特色としたタイトルが連続して出たことは偶然であったと断りつつ、「主人公が男の娘」というのは、各作品の世界観や雰囲気はまったく異なるものであったながら、共通してわかりやすいセールスポイントになったと述べている。『乙女はお姉さまに恋してる Portable』に関して答えている中では、#販促活動の効果があったとしている[107]。
- PSP版は、その発売週(2011年10月24日〜10月30日)の売り上げにおいて、メディアクリエイトの全体集計では上位50位の圏外であった[134]。
人気投票
部門名 | Getchu.com | TECH GIAN | BugBug |
---|---|---|---|
総合 | 圏外/15位 | 圏外/20位 | 31位/40位 |
シナリオ | 圏外/10位 | 圏外/10位 | 28位/30位 |
グラフィック | 圏外/10位 | 圏外/10位 | 部門なし |
音楽 | 圏外/10位 | 圏外/10位 | 圏外/20位 |
システム | 圏外/10位 | 圏外/10位 | 圏外/30位 |
ヴォイス | 部門なし | 部門なし | 圏外/20位 |
ムービー | 圏外/10位 | 部門なし | 部門なし |
エッチ | 圏外/10位 | 圏外/10位 | 圏外/40位 |
キャラクター | 0人/10位 | 0人/10位 | 0人/40位 |
- 花と乙女に祝福を
- 本作は発売月(2009年5月)のユーザー人気投票において、Getchu.comの2位[135]を獲得した。発売年(2009年)の人気投票においては、Getchu.comでは全部門で圏外[136]、『TECH GIAN』では全部門で圏外[137]、『BugBug』では総合31位[125]・シナリオ部門28位[125]を獲得し、その他の部門では圏外[125]であった(表:「2009年の美少女ゲーム人気投票における本作の位置」に一覧を示す。)。また、『PUSH!!』の読者アンケートの集計では上位10位の圏外であった[138]。
- ロイヤルブーケ
- 続編の『ロイヤルブーケ』は、その発売月(2010年1月)のユーザー人気投票において、Getchu.comの4位[139]を獲得した。発売年(2010年)の人気投票においては、Getchu.comでは全部門で圏外[140]、『TECH GIAN』では全部門で圏外[141]、『BugBug』では全部門で圏外[132]であった(一覧表は省略する。)。『PUSH!!』の読者アンケートの集計では上位10位の圏外であった[142]。
批評
専門家による批評
- 花と乙女に祝福を
- iNSIDEなどでテキストアドベンチャーゲームのレビュー記事を執筆している「いりえ」[143]が、本作PS2版のレビューを2020年に行っている[144]。
- いりえは、主人公が単に女性として入学するのではなく、既に在籍している双子の妹と入れ替わるという状況設定が、多くの女装潜入作品から本作を区別していると指摘する。中身が入れ替わることで周囲には雰囲気が違ったように感じられるだろうため、突如として人望を集め出す展開を合理的に説明していると分析し、双子の設定が巧みに活かされていると評している。一方、「あまりにも女性としての振る舞いに馴れすぎている点に若干の物足りなさはある」とも指摘している[144](#籐太の執筆方針も参照)。
- システム面に関しては、特に目新しい試みはないとしているが、発売後約10年が経過した段階でのレビューとなったため、「ちゃんと選択肢が存在」し、「しっかり考え」なければならないゲーム性がある点に新鮮な感動を覚えた趣旨を述べている。また、本作にはどの答えを選んでも展開が変化しない選択肢があるが、最近(2020年)はこうした開発サイドの「遊び」を全く見なくなったと嘆いている[144]。
- シナリオ面では、主人公が噂話に翻弄される展開を否定的に評価している。本作の舞台は女子校であるため、生徒達は噂話を好むものとして描かれる。いりえは、多くのルートで終盤は極端な噂に振り回されたと感想し[注 30]、ハッピーエンドになるのはわかっていても単調なプレイにならざるを得なかったと指摘している[144]。
- 総合的には、本作の女装設定には確実に意味があるとし、先が読めてしまうベタな結末もあるものの、それはそれで女装作品の王道展開でもあるため不満には感じず、良作であったと評価したものである[144]。
- ロイヤルブーケ
- 『BugBug』2010年4月号に『ロイヤルブーケ』のレビューが掲載された[77]。『ロイヤルブーケ』は本編エンド後を描くアフターストーリー集であり、主人公の彰が女装する本来の理由は既に失われている。レビューはまずこの点について触れ、彰は『ロイヤルブーケ』でも色々な理由で再び女装させられることになるため、引き続き女装主人公ものの楽しさを味わえると注意している[77]。
- レビュアーは、お泊まり会に参加できなくなった晶子の代わりに彰が参加する「#愛のお泊まり会」シナリオにおける、本物の晶子だと思って接してくるヒロイン達とのスキンシップ・入浴などスリリングの連続が、女装ものとしての本作の見所であった趣旨の感想を述べている。このシナリオでは正体のばれた彰が女の子達から攻めを受ける展開になるが、マゾ気質のあるプレイヤーにはたまらないともしている[77]。
- またレビュアーは、本編眞弥子ルートの後日譚「#心は女。体は男?!」において、性同一性障害の綾音が立藤の会で千里に告白されて答えを出すまでの葛藤が、彼女の過去を回想しながら描かれている点を評価している[77]。
- 春風の贈り物
- 「いりえ」のレビューは、PS2版の追加要素にも触れている。新規ヒロインと出会う選択をしてしまうと、その後選択肢が一切表示されなくなり、延々と読み進めていくだけになってしまう点を起伏がないと指摘し、減点対象であると評している[144]。
- ファミ通のクロスレビュー[39]:418などは未実施。
ユーザーの感想
前述の#広報(PC版)の方針の結果としては、ユーザーからは「思ったより百合ものだった」という感想が多く寄せられ、女装ゲームの購買層に正確にアピールできていたことが確認されたという[96]:100。百合色が濃いという意見に対し夏月は、女装ものを欲したユーザーが結果としてそのような感想を抱くのは問題なく、狙いに対する否定的な意見としては受け止めていないとしている[96]:100。
また、籐太の危惧したとおり(#晶子のキャラクターデザインを参照)、発売後のキャラクター人気投票「ルピナスのヒロインは私よ! 選手権」ではヒロイン達を差し置いて晶子が1位を獲得している。2位は彰であった[94]。ひたすら地味に描いたという武藤にとっては、この結果は意外なものであった[56]:19。
受賞
本作は2009年度の萌えゲーアワードに参加しているが[145]、ノミネート・受賞には至らなかった[146]。『ロイヤルブーケ』もまた2010年度のアワードに参加し[147]、ノミネートを逃している[148]。
シリーズ化
2009 | 花と乙女に祝福を |
---|---|
2010 | |
2011 | |
2012 | 乙女が紡ぐ恋のキャンバス |
2013 | 桜舞う乙女のロンド |
2014 | 乙女が奏でる恋のアリア |
2015 | |
2016 | 乙女が彩る恋のエッセンス |
2017 | 想いを捧げる乙女のメロディー |
2018 | 乙女が結ぶ月夜の煌めき |
本作と本作に続くensembleの女装ゲームは後に乙女シリーズを形成し、発展していった。「乙女シリーズ」の呼称は遅くとも2013年の時点で使用が確認できる[149]。
シリーズ累計の販売本数は2016年の『乙女が彩る恋のエッセンス』の時点で8万本を突破[150]。2020年現在、本編作品としては本作を含む7作品が制作されており(表:「乙女シリーズ」を参照。)、ファンディスク・派生作品まで含めると15作品を数えている。『とんがりギャルゲー紀行』を著しているライターの松田ゆのじは、2019年の同連載記事において、これらの各作品は『処女はお姉さまに恋してる』にシナリオ面で及ばないとしながらも、継続的に女装主人公作品の供給を続けるensembleは、このジャンルを愛好するユーザーにとっては貴重なブランドであると評価している[151]。
「ensembleが求められているもの」ですが、まずは「女装モノ」だと思います。 — ensemble、『PUSH!!』2014年2月号[152]
本作が処女作となって誕生したensembleブランド全体では、2021年4月現在、合計26作品[注 31]が制作されている。
また、2019年に姉妹ブランドのensemble SWEETから発売された『乙女騎士♥いますぐ私を抱きしめて』は、本作広報の夏月がディレクターを務めた作品だが、その内容は、月丘彰・晶子の従弟である主人公が、病弱な双子の姉のため女装して女学園に通うというものであった。
トラブル
PS2版オープニングを巡るトラブル
映像外部リンク | |
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『花と乙女に祝福を〜春風の贈り物〜』OPムービー - YouTube(インサイド&Game*Spark動画チャンネルより。) |
2010年6月11日、アルケミストにより、新規ヒロイン2人の切ない想いをイメージしたというPS2版のオープニングムービーが公開されたが[91][36]、曲調はシリアスであり[153]、原作PC版のオープニングとは雰囲気の違うものになっていた[36][153][89][注 32]。同日、ensembleは「コンシューマ版『花と乙女に祝福を〜春風の贈り物〜』OP曲とOPムービーについて」と題し、要旨次のとおり声明を発表した[88][153]。
- PS2版『花と乙女に祝福を〜春風の贈り物〜』のオープニング曲・同ムービーは、ensembleが監修したものではない。
- 作品イメージから大きく乖離しており、PS2版の形で世に出てしまうのは残念である。
翌6月12日、デビューシングル発売を控えたARTERY VEINのインタビュー記事がファミ通に掲載された[87]。オープニングテーマの「Splendid Flowers」に関し、同席したアルケミストの松原プロデューサー(前述)が、「とらえかたによっては、ゲームのイメージと違うのかなと思われるかもしれませんが、僕らはそのギャップも含めて非常に気に入っていて、このインパクトをプロモーションビデオでお伝えできればいいかなと思っていました。」[87][89]と説明したことで対立の存在がいよいよ明らかとなった[89]。同曲について問われた今井麻美は、「ゲームがどういう内容になるか知らなかったので、歌うまではハラハラしました。『花と乙女』というタイトルなのに、私たちで大丈夫ですか?と(笑)。実際にどうだったんだろうと思いました。」と答えている[87][89]。
この件を報じたガジェット通信は、ensembleの改善要望をアルケミスト側が受け入れなかったことに起因するごたつきと推定し[88]、同じく報じたにゅーあきば.こむは「〔喜多村・今井との〕タイアップ優先で曲が選ばれた結果、作品のイメージとマッチせず、ensemble側から不興を買った」という見解を、2ちゃんねる利用者大勢の意見として伝えた[89]。
なお、本作PSP版はアルケミストではなく、かつてのウィルの子会社で当時ウィルプラスの親会社となっていたアスガルド(リンク先の項を参照)の新ブランド「BOOST ON」により移植・発売された[30]。PSP版では原作のオープニング「Maiden's Garden」に再び戻されている。
関連商品
書籍
ファンブック
2009年11月26日に彩文館出版から『花と乙女に祝福を ビジュアルファンブック』が刊行された。内容は以下のとおり[53]。
- 版権イラストギャラリー
- 未公開ラフギャラリー
- キャラクター&ストーリーガイド
- クリエイターインタビュー
小説
2009年11月30日にハーヴェスト出版から『花と乙女に祝福を 短編集』が発売された。著者は歌鳥、イラストはひなたもも・蜜キング[44]。以下の4話からなる短編集で、原作都ルートの後日譚[注 33]として描かれている。
- 花と乙女に声援を
- 立藤の会から数か月。青雲祭(一般の学校でいう秋の運動会)のグラウンドを花で飾ることになり、園芸部が作業にかり出される。生徒会の仕事もあり「体がふたつ欲しい」と愚痴をこぼす晶子に、都は彰を呼ぼうと提案する[154]。
- 夜の窓辺にともしびを
- 学生の身ながらプロの画家として数々の賞を受賞している志鶴の個人展が開かれた。魚好きの祈は、志鶴の個性的な魚の絵にショックを受け、魚恐怖症にかかってしまう[155]。
- 名残の頬にくちづけを
- 薫は下級生との付き合い方を聖佳から窘められるが、聖佳もまた晶子目当てで生徒会室に足繁く通っていた。次の標的を晶子に定めた薫が、寮の空き部屋に引っ越してくる[156]。
- 花の乙女に花束を
- ルピナスでは毎年10月、生徒会主催で演劇のチャリティー公演を行っている。晶子も生徒会長として出演することになったが疲労で倒れてしまい、入れ替わりで彰がやってくる。その彰が本番の舞台で滑稽を演じ、復帰した晶子はしばらくからかわれ続ける[157]。
ドラマCD
2009年8月14日にドラマCD「緊急開催! ルピナス・貧乳サミット!」[46]が、同年12月29日に同「限界突破!? 志鶴さんの我慢デート」[47]が発売された。また、録り下ろしドラマCDとして「部長の本気!? 名探偵宇佐見の挑戦!」[38]・「サクラソウの出会い 〜志鶴を変えた晶子の言葉〜」[42]が制作されている。
# | 発売日 | 収録作品(表題作は太字) | 収録時間 | 規格品番 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 2009年8月14日 | 緊急開催! ルピナス・貧乳サミット! | 24:07 | Will-219D | コミックマーケット76[46] |
祈と眞弥子の、華麗なるカレーな御礼 | 29:42 | ||||
2 | 2009年12月29日 | 限界突破!? 志鶴さんの我慢デート | 24:07 | Will-219D2 | コミックマーケット77[47] |
宝生聖佳の恋のレッスン | 23:51 | ||||
3 | 2010年7月8日 | 部長の本気!? 名探偵宇佐見の挑戦! | 59:32 | — | PS2版録り下ろし |
4 | 2011年10月27日 | サクラソウの出会い 〜志鶴を変えた晶子の言葉〜 | 40:30 | — | PSP版録り下ろし |
その他
メディア外部リンク | |
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画像 | |
聖ルピナス学園制服(コスプレ衣装メーカー「kiss」) - ウェイバックマシン(2009年7月22日アーカイブ分) | |
映像 | |
『乙女が彩る恋のエッセンス』付属ミニゲームの冒頭プレイ動画 - YouTube(乙女シリーズ歴代の女装主人公達と交流する月丘晶子。彰と晶子は後年の作品にも登場し続ける。) |
上述した小説・ファンブックやドラマCDのほかに、以下のグッズが製作されている。
- 聖ルピナス学園制服(コスプレ衣装メーカー「kiss」が製作・販売)[94]
- 月丘さん抱き枕カバー[46]
- 名木城都抱き枕カバー[158]
- おっぱいマウスパッドセット(鹿島志鶴&月丘さん)[158][注 34]
- 花と乙女に祝福をA1タペストリー[159]
- 花と乙女に祝福を ロイヤルブーケA1タペストリー[159]
また、以下のウィルプラス作品には本作主人公の月丘晶子(彰)が登場する。
- 輝光翼戦記 銀の刻のコロナ(2011年、ETERNAL)
- 桜舞う乙女のロンド(2013年、ensemble)
- 乙女が奏でる恋のアリア(2014年、ensemble)
- 乙女が彩る恋のエッセンス(2016年、ensemble)
- 乙女が結ぶ月夜の煌めき(2018年、ensemble)
- 乙女騎士♥いますぐ私を抱きしめて(2019年、ensemble SWEET)
- シャイニー・シスターズ〜女装主人公アイドルプロジェクト〜(2019年、ensemble)
また、ウィルプラスも版権提供元として名を連ねた、ジー・モードのシミュレーションRPG『メガミエンゲイジ!』には、本作ヒロインを描いたカードが登場した[160]。
脚注
注釈
- ^ Getchu.com商品ページの「カテゴリ」を参照した[1]。
- ^ 中国語版は7にも対応[5]。
- ^ a b バッドエンド2つを含む[17]。
- ^ 別の統計では6,079本[40]:119。
- ^ PS2・PSP版では「ギャラリー」[41][32]。
- ^ PSP版では「ミュージック」[32]。
- ^ シーン回想機能は、PS2版では「映像鑑賞」機能となり、ゲーム中のムービーを再生するようになっている[41]。PSP版ではCG鑑賞と映像鑑賞の機能が統合され「アルバム鑑賞」機能となっている[32]。
- ^ 佐上薫ルート[17]。
- ^ 『ロイヤルブーケ』から「兄さんは私の下僕?」シナリオが加わる。
- ^ 名木城都、宝生聖佳、藍那祈・山本眞弥子[17]、バッドエンド(PS2/PSP版のみ)[55]。
- ^ 「生涯の友情」のほかには「楽しい追憶」「優しい」など[66]。
- ^ ゲーム中では「みずき」と発音されており一貫しない。
- ^ 『花と乙女に祝福を ビジュアルファンブック』のインタビューの中でも収録時こぼれ話として触れている[86]:109。カラオケのシーンを録る時、スタジオのテンションはマックスでした。皆のあの顔、私は忘れません……。 — 風音、『ビジュアルファンブック』109頁
- ^ スタッフロールやユーザーズマニュアル、アルバムのブックレットなどにクレジットの記載がない。
- ^ 「10th anniversary ensemble OP festival」[93]など。
- ^ 出典では「夏目」となっているが誤植と思われる。以下の本文中では「夏月」と記す。
- ^ じんべいの母親が園芸をやっていた縁もあった[13]:103。
- ^ なお、乙女シリーズの後年の作品では必ずしも徹底されていない。
- ^ 「最初は長●有●のつもりで描きました〔ママ〕」[63]:65。
- ^ 後年、シリーズ第2作の『乙女が紡ぐ恋のキャンバス』の発売に際し、夏月は「前回、色々な人に「あれはやりすぎじゃない?」って言われました」と打ち明け、『キャンバス』のあらすじはオブラートに包んだと述べている[103]。
- ^ 4月5日時点では『春風の贈り物』の副題が確認できる[29]。
- ^ ファミ通の記事では、オープニングテーマではなくエンディングテーマとされている[87][89]。にゅーあきば.こむは、これは誤記か、またはインタビュー後にオープニングテーマに変更されたものという見方を示している[89]。
- ^ 2010年、家庭用ゲーム機におけるアドベンチャーゲームの販売本数は、前年から85万本減少し、規模としては89.30%と落ち込んだが、PSPタイトルはシェアを30%以上拡大し好調であった[40]:50。
- ^ 翌6月は26位、翌々7月は38位[115]。
- ^ 翌6月は18位[117]。
- ^ 翌6月は17位[119]。
- ^ 翌2月は33位。1月度では本編同梱版も21位にランクインしている[126]。
- ^ 本編同梱版は22位[128]。
- ^ 全体の38位(PS2タイトルでは2位)[133]。
- ^ この点は籐太も認識しており、ビジュアルファンブックのインタビューで志鶴ルートにおける噂の伝播速度が異常であったと反省の弁を述べている[13]:105。
- ^ ミニファンディスクや、グッズなどに付属するミニゲームは含まない。
- ^ オープニングが再生される箇所は2つあるが、ここではゲーム起動時のオープニングを指す。
- ^ ただしその内容は著者による独自の発想・解釈であり、公式の見解ではない旨の注意書きがなされている[43]。
- ^ 鹿島志鶴は高さ約25mmの立体マウスパッド。月丘さんは高さ約3mmの平面マウスパッド。
出典
(18歳未満閲覧禁止のサイトを含みます)
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参考資料
ゲーム
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- 『懐かしパーフェクトガイド Vol.9』裏ネタJACK 増刊11月号、ダイアプレス、2019年10月11日。
- 冨島宏樹「今はなき美少女ゲーム移植メーカーの足跡」、28-29頁。
書籍
- 若林健太、大用尚宏、清瀬大輝、塔下太朗 著、クリエンタ 編『花と乙女に祝福を ビジュアルファンブック』彩文館出版〈CREATIVE SERIES〉、2009年11月26日。ISBN 978-4-7756-0451-9。
- 歌鳥『花と乙女に祝福を 短編集』ハーヴェスト出版〈なごみ文庫〉、2009年11月30日。ISBN 978-4-434-13791-4。
- 『2011テレビゲーム産業白書』メディアクリエイト、2011年4月7日。ISBN 978-4-944180-23-3。
- 『ファミ通ゲーム白書2011』エンターブレイン、2011年5月23日。ISBN 978-4-04-727315-3。
ウェブページ
脚注に記載した。
関連項目
外部リンク
- 『花と乙女に祝福を』公式サイト 🔞
- 『花と乙女に祝福を ロイヤルブーケ』公式サイト 🔞
- ensemble公式 (@will_ensemble) - X(旧Twitter)
- 『花と乙女に祝福を〜春風の贈り物〜』公式サイト - ウェイバックマシン(2016年3月11日アーカイブ分)
- 『花と乙女に祝福を -春風の贈り物- portable』公式サイト - ウェイバックマシン(2017年4月20日アーカイブ分)
- iPhone/Android版サイト(にじよめ) - ウェイバックマシン(2016年6月2日アーカイブ分)