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「ギリシア語」の版間の差分

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=== 前近代 ===
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ギリシア語は、おおよそ[[紀元前3千年紀]]後半には[[バルカン半島]]で話されていた。最も古い痕跡は、[[クレタ島]]の[[クノッソス]]宮殿内の「2頭立て馬車の粘土板の部屋」にある線文字Bの粘土板([[:en:Minoan chronology#Table of Minoan Chronology|LM IIIA]], [[紀元前1400年]]頃)に見出せる。ギリシア語が現在使用されている言語の中で世界最古に記録されたもののひとつとされる所以である。インド・ヨーロッパ語族の中で、記録を確認できる年代がギリシア語に匹敵する言語は、[[ヴェーダ語]]と[[ヒッタイト語]]([[死語 (言語)|死語]])のみである。
ギリシア語は、おおよそ[[紀元前3千年紀]]後半には[[バルカン半島]]で話されていた。最も古い痕跡は、[[クレタ島]]の[[クノッソス]]宮殿内の「2頭立て馬車の粘土板の部屋」にある線文字Bの粘土板([[:en:Minoan chronology#Table of Minoan Chronology|LM IIIA]], [[紀元前1400年]]頃)に見出せる。ギリシア語が現在使用されている言語の中で世界最古に記録されたもののひとつとされる所以である。インド・ヨーロッパ語族の中で、記録を確認できる年代がギリシア語に匹敵する言語は、[[ヴェーダ語]]と[[ヒッタイト語]]([[死語 (言語)|死語]])のみである。


後年のギリシア文字(線文字Bとの関連はない)は[[フェニキア文字]]に由来する。フェニキア文字は[[アブジャド]](単子音文字)であったため多少手が加えられ、これが今日でも使用されている。ギリシア語は慣例的に以下のように区分される。
後年のギリシア文字(線文字Bとの関連はない)は[[フェニキア文字]]に由来する。フェニキア文字は[[アブジャド]](単子音文字)であったため多少手が加えられ、これが今日でも使用されている。ギリシア語は慣例的に以下のように区分される。

2021年3月3日 (水) 22:00時点における版

ギリシア語
Ελληνικά
発音 IPA: [eˌliniˈka]
話される国 ギリシャの旗 ギリシャ
キプロスの旗 キプロス
アルバニアの旗 アルバニア南部
イタリアの旗 イタリア南部
北マケドニア共和国の旗 北マケドニア南部
 ブルガリア中央・南部
トルコの旗 トルコ
および周辺国
地域 バルカン半島
話者数 1200万人[1][2]
話者数の順位 第74位
言語系統
表記体系 ギリシア文字ギリシア点字
公的地位
公用語 ギリシャの旗 ギリシャ
キプロスの旗 キプロス
欧州連合の旗 欧州連合
統制機関 なし
言語コード
ISO 639-1 el
ISO 639-2 gre (B)
ell (T)
ISO 639-3 各種:
ell — 現代ギリシア語
gmy — ミケーネ語
grc — 古代ギリシア語
pnt — ポントス方言
cpg — カッパドキア方言
tsd — ツァコニア方言
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ギリシア語(ギリシアご、現代ギリシア語: Ελληνικά [eliniˈka], または Ελληνική γλώσσα [eliniˈki ˈɣlosa] ( 音声ファイル))はインド・ヨーロッパ語族ヘレニック語派(ギリシア語派)に属する言語。東地中海諸地域における共通言語の一つとして、3000年以上、日常言語として、さらには、文学作品・公式記録・外交文書の言語として、重要な役割を果たしてきた。単独でヘレニック語派(ギリシア語派)を形成する。ギリシア共和国キプロス共和国イスタンブールギリシア人居住区などで使用されており、話者は約1200万人[1][2]。また、ラテン語とともに学名専門用語にも使用されている。省略形は希語[3]

概要

ギリシア語は、インド・ヨーロッパ語族の中で最も古くから記録されている言語であり、その歴史は3400年にわたる[4]ギリシア文字で記されるようになったのは、ギリシアでは紀元前9世紀キプロスでは紀元前4世紀以後のことである。それ以前では、紀元前2千年紀半ばには線文字Bが、紀元前1千年紀前半にはキプロス文字が、それぞれ使われていた。

ギリシア語は今日においても、人類史上最も強い影響力を持った文明の言語、あるいは3千年間継承されてきた史上最も偉大な文学を生んだ言語のひとつとみなされ、広く尊敬の念を集めている。その語彙は学術用語として英語をはじめとする欧米諸言語に多数借用されており、英語の語彙のうちの12%がギリシア語由来であると推定される[2]。ギリシア語はまた、『新約聖書』原典を記すのに用いられた言語でもある。ヘレニズム時代には東地中海世界通商語として広まり、中世には東ローマ帝国領の大半にあたる広大な地域(中東北アフリカ・東南ヨーロッパアナトリア半島)に波及した。

使用地域

公用語として使用している国

その他に使用されている地域

欧米諸言語への影響

ギリシア語の語彙はヨーロッパの諸言語に広く借用されている。特に英語においては、数学(mathematics)・天文学(astronomy)・民主主義(democracy)・哲学(philosophy)・修辞学(rhetoric)・俳優(thespian)・陸上競技(athletics)・劇場(theater)などのほか、ギリシア語の単語やその要素は新たな造語の元にもなっている。人類学(anthropology)・写真(photography)・異性体(isomer)・生体力学(biomechanics)・映画(cinema)・物理学(physics)などがそれに当たる。また、ラテン語とともに国際的な学術用語の拠り所ともなっている。たとえば -logy(談話)で終わる語はすべてギリシア語由来である。ギリシア単語の多くが英語の派生語を有する一方、ギリシア語に起源を持つと推測される英語の語彙はその内の12%である[2]

歴史

前近代

ギリシア語は、おおよそ紀元前3千年紀後半にはバルカン半島で話されていた。最も古い痕跡は、クレタ島クノッソス宮殿内の「2頭立て馬車の粘土板の部屋」にある線文字Bの粘土板(LM IIIA, 紀元前1400年頃)に見出せる。ギリシア語が現在使用されている言語の中で世界最古に記録されたもののひとつとされる所以である。インド・ヨーロッパ語族の中で、記録を確認できる年代がギリシア語に匹敵する言語は、ヴェーダ語ヒッタイト語死語)のみである。

後年のギリシア文字(線文字Bとの関連はない)はフェニキア文字に由来する。フェニキア文字はアブジャド(単子音文字)であったため多少手が加えられ、これが今日でも使用されている。ギリシア語は慣例的に以下のように区分される。

ギリシア祖語 (Proto-Greek
確認されているすべてのギリシア語の、想定上の原型。実際の記録には残されていない。ギリシア祖語の話者は、おそらく紀元前2千年紀前半にギリシアへ移住してきた。以来、ギリシアでは絶え間なくギリシア語が話されてきた。
ミケーネ語
ミケーネ文明の言語。線文字Bで粘土板に書かれており、紀元前15世紀ないし14世紀にまで遡れる。
古代ギリシア語古代ギリシア語の方言英語版
古代ギリシア語に含まれる様々な方言は、古代ギリシア文明のアルカイック期 (Archaic Greeceと古典期の言語に分かれる。古代ギリシア語はローマ帝国中に広く知れ渡っていた。
コイネー
様々な古代ギリシア語方言と、古典期のアッティカ方言(アテナイの方言)の融合体。初の共通ギリシア語方言であり、東地中海と近東全域の通商語となった。コイネーはまず、マケドニア軍とアレクサンドロス大王の征服地にその足跡を辿ることができる。ヘレニズム時代に各地に植民都市が建設されたのちは、エジプトからインド周辺にまで到る地域で話されるようになった。共和政ローマによるギリシア征服後は、ローマ市内ではラテン語とギリシア語のダイグロシア(二言語併存)が定着し、ローマの領域全体でも第一言語または第二言語の地位を獲得した。しかしながら、中世になると西ヨーロッパでは廃れていった。
キリスト教の起源を明かにできるのもコイネーである。使徒伝道が、ギリシアやギリシア語圏で行われていたからであり、このときに用いられたコイネーは、『新約聖書』原典にも使用されたことから新約聖書ギリシア語と呼ばれるほか、アレクサンドリア方言後古典ギリシア語としても知られる。
中世ギリシア語 (Medieval Greek
東ローマ帝国で用いられた、コイネーの後継。とはいえ、すでに多くの点で現代ギリシア語に近づいていた日常の話し言葉から、古典期のアッティカ方言に倣った高度に学問的な文語までが含まれており、その意味するところは多岐にわたっている。「中世ギリシア語」とは、15世紀に帝国が終焉を迎えるまでのギリシア語全体を包括する用語と言える。帝国の公用語となった文語の多くは、文語コイネーの伝統に基づいて生まれた折衷的・中立的なものであった。コンスタンティノープルの陥落に伴ってギリシア人がイタリアに移住すると、ギリシア語は再び他のヨーロッパに紹介された。
現代ギリシア語 (Modern Greek
中世ギリシア語から派生しているため、語法の起源は東ローマ帝国時代(早ければ11世紀)に求めることができる。現代ギリシア語は、その名のとおり現代のギリシア人によって話されている言語である。標準語とは別にいくつかの方言が存在し、東ローマ帝国の時代から伝わる民間人の口語(デモティキ)と、公文書や文学・神学書等で用いられてきた古典ギリシア語に近い文語(擬古典語)を元にした「カサレヴサ」の間を揺れ動きながら成立してきた。

現代ギリシア語の成立

まず口語では、ソフィアノスのギリシアの文法書が初出である。しかし18世紀のヴルガリスは、擬古典語を堅持した。ミシオダクスは新しい共通語を基礎にと主張。カタルジスは学者として初めて口語民衆語を支持した。一方、アダマンティス・コライスは、コイネーを規範とし、口語を純化(カサレヴサ化)した古典的ギリシア語に基づく新しい規範的ギリシア語を作ることを最初に訴えた。

1833年ギリシャ王国が成立すると、新国王オソン1世とともに故国に帰った官僚は、コイネーを規範とする古典的カサレヴサを標準とすべきと主張した。一方では、口語に基づいた民衆語をギリシア語にするべきだという文学者ディオニシオス・ソロモスの主張[5]も存在した。

その後、永くフランスのパリで活躍したプシハリスが、民衆口語が通時言語学的に公用語として適切であり、現代ギリシア語は口語によるべきであることを国際的な学者・作家として初めて言語学的根拠をもって主張した。当時行政言語に主流であったカサレヴサは、通時言語学に反した復古的・人工的なもので、公用語でも文学語においても失当である旨を『わが旅』等で文学作品の中で実践してもいる。

しかしその「口語」は、数ある方言のうち「アテネ方言」のみを指称するもので、当時の方言をまとめるには、かつてのコイネーを基盤とするカサレヴサの方が、ギリシア全体の共通語として(方言をまとめるために)より一般化しやすい言語であった[6]。方言学者はどちらの陣営にも属さず、地域方言をその地域の「口語」として、教育言語に使用することを折衷案として唱えた。エーゲ海サモス島スミルナで女子校の運営にあたったレオンディアス・サッフォーは、学校教育においても方言を推奨し、言語論争に「方言」の重要性を提起した。「カサレヴサ」の長所と、アテネ方言の「デモティキ」との折衷言語よりも「民衆語である方言」の重要性を強調した。

20世紀後半に入ると、首相のエレフテリオス・ヴェニゼロスは新憲法にカサレヴサを公用語にすることを記載した。ただし初等教育については、トリアンダフィリデスの主宰する教育学会が文法書をデモティキで出版し、民衆口語(アテネ方言)化が公的に行われた。やがて、イオアニス・メタクサスの独裁政権の下ではカサレヴサではなくデモティキが正式な国語と制定され、またその後の政変で再度カサレヴサに戻された。1964年ゲオルギオス・パパンドレウ政府がカサレヴサとデモティキとをともに公用語(併用)とするも、軍政下ではカサレヴサが公用語に再度戻された。1974年7月24日の民主政回復を経て、最終的にコンスタンディノス・カラマンリス政府の下、1976年にデモティキが正式な公用語と定められ今に至る。

しかし、司法用語(たとえば民法)は依然カサレヴサのままで存続している。判例などもカサレヴサで起草・公示されており、大学学位論文、公的公報等でも用いられ続けている。このほか、正教会奉神礼用語もカサレヴサが正式な権威ある言語として依然と使用され続け、デモティキと並存しているのが現状である。

現代語話者と古典

「教養ある」現代語話者は古典を解することができる。その背景には古典と現代語の類似性だけでなく、教育が機能していることが挙げられる。『新約聖書』原典や七十人訳聖書に書かれたギリシア語であるコイネーは、現代の話者でも比較的理解しやすい。イギリスの歴史家ロバート・ブラウニングが言ったように「現代ギリシア語の話者にとって、紀元前7世紀に書かれたホメーロスの叙事詩は決して外国文学ではない。ギリシア語は、その最古の時代より現在に至るまで、連綿と受け継がれ、親しまれているのである」[7]

文法概要

文字と発音

大文字、小文字、現代の音価、慣用(古典期)の呼び名、現代の呼び名(慣用と同じ場合省略)、現代の綴りの順で記載。

  • Α α[a](アルファ)άλφα
  • Β β[v](ベータ;ヴィタ)βήτα
    紀元後数百年に [b] から変異。
  • Γ γ[ɣ](ガンマ;ガマ)γάμμα, γάμα
    [x] の有声音。ただし前舌母音の直前では [ʝ] と発音される。
  • Δ δ[ð](デルタ;ゼルタかデルテ)δέλτα
    [θ] の有声音。閉鎖音から摩擦音に紀元後数百年に変異。
  • Ε ε[e](エプシロン)έψιλον
    「単純なε」の意。
  • Ζ ζ[z](ゼータ;ズィタ)ζήτα
  • Η η[i](イータ;イタ)ήτα
    後1世紀より [ɛː] から変異。
  • Θ θ[θ](シータ;シタかティタ)θήτα
    英語の無声 th に同じ。
  • Ι ι[i](イオタ;ヨタ)ιώτα, γιώτα
    母音の直前では硬口蓋化し [j] と発音される。
  • Κ κ[k](カッパ;カパ)κάππα
    [i], [e] の直前では [c] と発音される。
  • Λ λ[l](ラムダ;ラムザ)λάμδα, λάμβδα
  • Μ μ[m](ミュー;ミ)μυ
  • Ν ν[n](ニュー;ニ)νυ
  • Ξ ξ[ks](クシー;クシ)ξι
  • Ο ο[o](オミクロン)όμικρον
    「小さなο」の意。
  • Π π[p](ヒー;ピ)πι
    [m] の直後では [b] と発音される。
  • Ρ ρ[r](ロー;ロ)ρω, ρο
  • Σ σ, ς[s](シグマ)σίγμα
    有声子音の前で [z] と発音される。ς は語末のみ。
  • Τ τ[t](タウ;タフ)ταυ
    [n] の直後では [d] と発音される。
  • Υ υ[i](ユプシロン;ウプシロン;イプシロン)ύψιλον
    「単純なυ」の意。後5世紀〜10世紀に [y] から変異。
  • Φ φ[f](ファイ;フィ)φι
    紀元後数百年に [pʰ] から変異。
  • Χ χ[x](カイ;キー;ヒ)χι
    前舌母音の直前では [ç] と発音される。紀元後数百年に [kʰ] から変異。
  • Ψ ψ[ps](プサイ;プスィ)ψι, ψί
  • Ω ω[o](オメガ)ωμέγα
    「大きなο」の意。

カナ転写と発音の問題

  • カタカナに現代ギリシア語を転写するとき、θ は主にサ行で表記・発音(θα を「サ」、θι を「シ」など)されている。
  • 同様に、δ は主にザ行で表記されている。
  • 現代ギリシア語では同じ子音字が2度綴られても発音が変わらない(長子音とならない)(ただしキプロスとポントスの方言では長子音は残存している)ので、そこに日本語の「」や「」を使う必要はない。たとえば、τέσσερα は「テセラ」であり、「テッセラ」とは読まれない。κόμμαは「コマ」であり、「コンマ」とは読まれない[8]
  • 多くの場合、現代ギリシア語のアクセントは長音記号「ー」で表されているが、ギリシア語のアクセントは強勢を示すものであり、長母音を示さない。たとえば、Μαρία は「マリーア」のように伸ばすより「マア(マリッア)」のように強く読むほうがいい。「マリーア」では、 Μαρίια に近くなってしまう。

記号

デモティキ(民衆口語)では、いわゆる「トーノス(τόνος)」の記号類は ΄ のみにモノトニコス(単強勢)化されている。気息記号(音韻上で無標である有気音 [h] を表す)や ᾿ などは廃され、` などは、΄ に統合され、有強勢(文法的に有標)の際にのみ記される。またこの強勢記号は語末から3番目の音節のうちに置かれる。カサレヴサでは古典語のテキスト表記に倣った古典式の記号・符号を維持している。

疑問符にはいわゆるセミコロン ; を用いる。Unicode ではこの記号に、U+003B の SEMICOLON とは別に U+037E に GREEK QUESTION MARK が割り当てられてはいるがU+003Bの方が好ましいとされる[9]。Windows のギリシア語 IME でもU+003B が出てくる。

現代ギリシア語の発音

母音 Φωνήεντα

単母音
便宜上、音価別に並べる。
  • [a] - α
  • [e] ([e], [ɛ]) - ε, αι
  • [i] - η, ι, υ, ει, οι, υι
  • [u] - ου 日本語のウより口をとがらして発音
  • [o] - ο, ω
現代ギリシア語では母音の長短の区別がない。
母音+子音
以下の3つは υ の発音が無声子音の前で無声音 [f] に、有声子音・母音の前で有声音 [v] になる。
  • αυ - [af], [av]
  • ευ - [ef], [ev]
  • ηυ, ιυ - [if], [iv] (現代語ではほとんど使われていない)

子音 Σύμφωνα

二重子音字
  • γγ - [ŋ], [i], [e], [ɛ] の前なら口蓋化する(ンギ、ンギェとなる)。
  • γκ - 語頭で [g]、それ以外で [ŋg][i], [e], [ɛ] の前なら口蓋化する(ンギ、ンギェとなる)。また、外来語では [g], [ŋk] の音も表される。
  • μπ - 語頭で [b]、それ以外で [mb](外来語では [b], [mp] の音も表される)。たとえば Ολυμπία の場合、国際的には「オリンピア」の発音で知られているが、外来語ではなくギリシアの固有語であるため、「オリンビア」と発音される。
  • ντ - 語頭で [d]、それ以外で [nd](外来語では [d], [nt] の音も表される)。
比較的古い外来語では b は β、d は δ、g は γ と転写された。外国の地名のギリシア語表記も原音の [b], [d], [g] をそれぞれ β, δ, γ と表記する例がかなり多い。

古典式発音との違い

同じ単語でも、古代ギリシア語と現代ギリシア語の発音は異なる。以下にその例を挙げる。なお、ここでいう「古典式発音」とは古代ギリシア語の諸方言中の古典期アッティカ方言(再建音)を指す。ギリシア語綴りに用いる記号は現代語のものである。

ギリシア語綴り 古典式発音 現代式発音
βάρβαροι バルバロイ ヴァルヴァリ
Βάκχος バッコス ヴァクホス
βασιλεία バシレイアー ヴァシリア
Δήλος デーロス ズィロス
Ευρώπη エウローペー エヴロピ
Ηρακλής ヘーラクレース イラクリス
Θεσσαλονίκη テッサロニーケー セサロニキ
Κρήτη クレーテー クリティ
Μουσική ムーシケー ムシキ
Οδύσσεια オデュッセイア オディシア
πολλοί ポッロイ ポリ
φιλοσοφία ピロソピアー フィロソフィア
φύσις ピュシス フィシス

現代ギリシア語文法

名詞は男性・女性・中性の3つのと、単数・複数の2つのと、主格呼格属格対格の4つのによって語尾が変化する。

動詞は単数・複数の2つの数と、一人称・二人称・三人称の3つの人称と、完結相・非完結相・完了相の3つのと、過去現在未来の3つの時制と、能動態受動態の2つのと、直説法接続法命令法の3つのから成る。また、他のバルカン言語連合と同様に不定詞が廃れている。辞書の見出し語は古代ギリシア語同様に直説法能動態一人称単数現在である。

古代ギリシア語からの変化として与格が消滅し、完結相と非完結相の分化が進み、迂言形が発達した。また語順に規制的な拘束性が増した。

定冠詞

単数 複数
男性 女性 中性 男性 女性 中性
主格 ο o η i το to οι oi οι oi τα ta
属格 του tou της tis του tou των ton των ton των ton
対格 τον ton την tin το to τους tous τις tis τα ta

不定冠詞

男性 女性 中性
主格 ένας enas μία mia ένα ena
属格 ενός enos μίας mias ενός enos
対格 έναν enan μία(ν) mia(n) ένα ena
  • 複数形は無標

※冠詞類について古代ギリシャ語と対比するにはギリシャ語の冠詞を参照。

名詞

男性名詞

-ος/-οι -ης/-ες -ας/-ες -εας/-εις -ας/-αδες -ων/-οντες -ωρ/-όρες
単数 複数 単数 複数 単数 複数 単数 複数 単数 複数 単数 複数 単数 複数
主格 -ος -os -οι -οi -ης -is -ες -es -ας -as -ες -es -έας -eas -είς -is -άς -as -άδες -ades -ων -on -οντες -ontes -ωρ -or -ορες -ores
属格 -ου -ou -ων -on -i -ών -on -a -ων -on -έα -ea -έων -eon -a -άδων -adon -όντων -onton -όντων -ontes -ορος -oros -όρων -oron
対格 -ο -o -ους -ous -i -ες -es -a -ες -es -έα -ea -είς -is -a -άδες -ades -οντα -onta -οντες -ontes -ορα -ora -ορες -ores
呼格 -e -i -a -έα -ea -a -ων -on -ωρ -or

女性名詞

-α/-ες -η/-ες -ος/-οι -η/-εις
単数 複数 単数 複数 単数 複数 単数 複数
主格 -a -ες -es -i -ες -es -ος -os -οι -οi -i -εις -is
属格 -ας -as -ών -on -ης -is -ών -on -ου -ou -ων -on -ης -is -εων -eon
対格 -a -ες -es -i -ες -es -ο -o -ους -ous -i -εις -is
呼格 -a -i -e -i

中性名詞

-ο/-α -ί/-ιά -α/-ατα -ος/-η -ο/-ατα
単数 複数 単数 複数 単数 複数 単数 複数 単数 複数
主格 -ο -o -a -i -ιά -ia -a -ατα -ata -ος -os -i -ο -o -ατα -ata
属格 -ου -ou -ων -on -ιού -iou -ίων -ion -ατος -atos -άτων -aton -ους -ous -ών -on -ατος -atos -άτων -aton
対格 -ο -o -a -i -ιά -ia -a -ατα -ata -ος -os -i -ο -o -ατα -ata


形容詞の活用語尾

  • 1:幹母音式曲用
男性 女性 中性
単数 複数 単数 複数 単数 複数
主格 -ος -os -οι -oi
-i
-a
-ες -es -ο -o -a
属格 -ου -ou -ων -on -ης
-ας
-is
-as
-ων -on -ου -ou -ων -on
対格 -ο -o -ους -ous
-i
-a
-ες -es -ο -o -a
呼格 -e
-i
-a
-ο -o


  • 2:無幹母音式曲用
-υς/-εια/-υ -υς/-ια/-υ -ης/-ες
男性 女性 中性 男性 女性 中性 男女 中性
単数 複数 単数 複数 単数 複数 単数 複数 単数 複数 単数 複数 単数 複数 単数 複数
主格 -υς -us -ιοι -ioi -εια -ia -ιες -ies -u -ια -ia -υς -us -εις -is -εια -ia -ειες -ies -u -εα -ea -ης -is -εις -is -ες -es -i
属格 -ιου -iou -ιων -ion -ιας -ias -ιων -ion -ιου -iou -ιων ion -εος -eos -εων -eon -ειας -ias -ειων -ion -εος -eos -εων -eon -ους -ous -ων -on -ους -ous -ων -on
対格 -u -ιους -ious -ια -ia -ιες -ies -u -ια -ia -u -εις -eis -εια -ia -ειες -ies -u -εα -ea -ης -is -εις -is -ες -es -i
呼格 -u -εια -ia -u -u -εια -ia -u -ης -is -ες -es



動詞組織

アオリスト語幹による、非完結相のアオリスト未来、アオリスト命令形が発達し、アオリストと同様頻繁に使用されコイネーの語幹がそのままの形で現在も存続している。

また、希求法は接続法に合流した。

未来時制はθα(tha)を動詞に前置させて表現し、掛かる動詞の幹によって完結相と非完結相を区別する。未来時制の語尾はどちらの相も本時制語尾が使用される。 過去時制には現在語幹に副時制語尾を接尾した未完了過去と、アオリスト語幹に副時制語尾を接尾したアオリストが存在する。この用法の体系はロマンス諸語の「半過去と点過去の対立」と類似する。

完了相である未来完了、現在完了、過去完了は、έχω(echo)+アオリスト語幹に-ει(-i)を接尾させた迂言形で表現される。 接続法は、να(na)を前置した迂言形で表現され、語幹は現在語幹+本時制語尾の非完結相とアオリスト語幹+本時制語尾の完結相が存在する。

条件法はθα(tha)を附した迂言形で語幹は現在語幹+第2次人称語尾形(継時相):アオリスト語幹+第2次人称語尾形(瞬時相)である。

本時制語尾

単数 複数
一人称 二人称 三人称 一人称 二人称 三人称 和訳
語尾
-o
-εις
-is
-ει
-i
-ουμε
-oume
-ετε
-ete
-ουν
-oun
第一変化 βλέπω
blepo
βλέπεις
blepis
βλέπει
blepi
βλέπουμε
blepoume
βλέπετε
blpete
βλέπουν
blepo
見る
第二変化α αγαπώ
agapo
αγαπάς
agapas
αγαπάει
agapai
αγαπάμε
agapame
αγαπάτε
agapate
αγαπάνε
agapane
愛する
第二変化ε οδηγώ
odigo
οδηγείς
odigis
οδηγεί
odigi
οδηγούμε
odigoume
οδηγείτε
odigite
οδηγούνε
odigoune
運転する

副時制称形

単数 複数
一人称 二人称 三人称 一人称 二人称 三人称 和訳
語尾
-a
-ες
-es

-e
-αμε
-ame
-ατε
-ate
-αν
-an
第一変化 έγραφα
egrapha
έγραφες
egraphes
έγραφε
egraphe
γράαφαμε
graphame
γράφατε
graphate
έγραφαν
egraphan
書く
第二変化α αγαπούσα
agapousa
αγαπούσες
agapouses
αγαπούσε
agapouse
αγαπούσαμε
agapousame
αγαπούσατε
agapousate
αγαπούσανε
agapousane
愛する
第二変化ε οδηγούσα
odigousa
οδηγούσες
odigouses
οδηγούσε
odigouse
οδηγούσαμε
odigousame
οδηγούσατε
odigousate
οδηγούναν
odigousan
運転する


動詞活用の基本形

語幹   過去 現在 命令法
非完結相 γραφ-(書く)  

一単
二単
三単
一複
二複
三複

 

未完了過去

έγραφα
έγραφες
έγραφε
γράφαμε
γράφατε
έγραφαν

英:I was writing
仏:j'écrivais
和:書いていた

現在形

γράφω
γράφεις
γράφει
γράφουμε
γράφετε
γράφουν

英:I write
英:I am writing
仏:j'écris
和:書く

現在命令形

 
γράφε
 
 
γράφετε
 

英:write! (継時的命令)
書いていろ

完結相 γραψ-  

一単
二単
三単
一複
二複
三複

 

アオリスト形

έγραψα
έγραψες
έγραψε
γράψαμε
γράψατε
έγραψαν

英:I wrote
仏:j'écrivis
和:書いた

接続法アオリスト(従属文中主観表明)

να γράψω
να γράψεις
να γράψει
να γράψουμε
να γράψετε
να γράψουν

英:that I write
仏:que j'écrive
和:書くと

アオリスト命令(一回限りの行動の命令)

 
γράψε
 
 
γράψτε
 

英:write!
仏:écris!

書け!

完了相    

一単
二単
三単
一複
二複
三複

 

過去完了

είχα γράψει
είχες γράψει
είχε γράψει
είχαμε γράψει
είχατε γράψει
είχαν γράψει

英:I had written
仏:j'avais écrit
和:書いたところだった

現在完了

έχω γράψει
έχεις γράψει
έχει γράψει
έχουμε γράψει
έχετε γράψει
έχουν γράψει

英:I have written
仏:j'ai écrit
和:書いたところだ

        現在分詞(副詞的/形容詞的なもので同文中の他の人称を有する動詞の「状況」を表現)

γράφοντας
英:writing
仏:écrivant

 
  条件法(過去に置かれた未来) 直説法(現在に置かれた未来)
非完結相未来. θα έγραφα
英:I would write
仏:j'écrirais
θα γράφω
英:I will write (continually)
仏:j'écrirai
完結相未来. θα έγραψα
英:I have probably written
仏:j'écrirais
θα γράψω
英:I will write (once)
仏:j'écrirai
完了相未来. θα είχα γράψει
英:I would have written
仏:j'aurais écrit
θα έχω γράψει
英:I will have written
仏:j'aurai écrit

命令法

二人称単数 二人称複数
本時制語尾
-e
-ετε
-ete
γράφε
graphe
γράφετε
graphete
副時制語尾
-e
-τε
-te
γράψε
grapse
γράψτε
grapste
  γράφομαι(書かれる・書き合う[中・受動態])
  過去 現在 命令法
現在のアスペクト(非完結相)(未完了過去)(現在形). γραφόμουν(書かれていた)
γραφόσουν
γραφόταν
γραφόμαστε
γραφόσαστε
γράφονταν(ε)
γράφομαι(書かれる・書き合う)
γράφεσαι
γράφεται
γραφόμαστε
γράφεστε
γράφονται
 

 
 

 
アオリストのアスペクト(完結相)(アオリスト形)(アオリスト接続法). γράφτηκα(書かれてしまった[過去の事行の瞬時形])
γράφτηκες
γράφτηκε
γραφτήκαμε
γραφτήκατε
γράφτηκαν
να γραφτώ(従属文中で「書かれたこと[瞬時形]...」[従属文中の主観的表明])
να γραφτείς
να γραφτεί
να γραφτούμε
να γραφτείτε
να γραφτούν
 
γράψου(書かれよ!)
 
 
γραφτείτε
 
    έχω γραφτεί(私は書かれている[結果が現在も存続している])  

中受動態

単数 複数
本時制 一人称 二人称 三人称 一人称 二人称 三人称
語尾 -ομαι
-ome
-εσαι
-ese
-εται
-ete
-ομαστε
-omaste
-εστε
-este
-ονται
-onde
第一変化 γράφομαι
graphome
γράφεσαι
graphese
γράφεται
graphete
γραφόμαστε
graphomaste
γράφεστε
grapheste
γράφονται
graphonde
第二変化α αγαπιέμαι
agapieme
αγαπιέσαι
agapiese
αγαπιέται
agapiete
αγαπιόμαστε
agapiomaste
αγαπιέστε
agapieste
αγαπιούνται
agapiounde
第二変化ε οδηγούμαι
odigoume
οδηγείσαι
odigise
οδηγείται
odigite
οδηγούμαστε
odigoumaste
οδηγείστε
odigiste
οδηγούνται
odigounde
副時制 語尾 -ομουν
-omoun
-οσουν
-osoun
-οταν
-otan
-ομαστε
-omaste
-οσαστε
-este
-ονταν
-onde
第一変化 γραφόμουν
graphomoun
γραφόσουν
graphosoun
γραφόταν
graphotan
γραφόμαστε
graphomaste
γραφόσαστε
graphosaste
γράφονταν
graphondan
第二変化α αγαπιόμουν
agapiomoun
αγαπιόσουν
agapiosoun
αγαπιόταν
agapiotan
αγαπιόμασταν
agapiomastan
αγαπιόσασταν
agapiosastan
αγαπιούνταν
agapioundan
第二変化ε οδηγούμουν
odigoumoun
οδηγούσουν
odigousoun
οδηγούνταν
odigoundan
οδηγούμασταν
odigoumastan
οδηγούσασταν
odigousastan
οδηγούνταν
odigoundan
  • 注:中・受動態の命令形の使用は極めて稀である。

その他の文法形態素

人称名詞

一人称 二人称 三人称
男性 女性 中性
単数 複数 単数 複数 単数 複数 単数 複数 単数 複数
強形 主格 εγώ
ego
εμείς
emis
εσύ
esu
εσείς
esis
αυτός
aftos
αυτοί
aftoi
αυτή
afti
αυτές
aftes
αυτό
afto
αυτά
afta
属格 εμένα
emena
εμάς
emas
εσένα
esena
εσάς
esas
αυτού
aftou
αυτών
afton
αυτής
aftis
αυτών
afton
αυτού
aftou
αυτών
afton
対格 εμένα
emena
εμάς
emas
εσένα
esena
εσάς
esas
αυτόν
afton
αυτούς
aftous
αυτήν
aftin
αυτές
aftes
αυτό
afto
αυτά
afta
弱形 主格 τος
tos
τοι
toi
τη
ti
τες
tes
το
to
τα
ta
属格 μου
mou
μας
mas
σου
sou
σας
sas
του
tou
τους
tous
της
tis
τους
tous
του
tou
τους
tous
対格 με
me
μας
mas
σε
se
σας
sas
τον
ton
τους
tous
την
tin
τες
tes
το
to
τα
ta

関係代名詞

カサレヴサの(冠詞)+οποίος(opoios);ο οποίος(o opoios) : η οποία(i opoia) : το οποίο(to opoio) (数・格・性は先行詞と一致)を用いるのが商業文・行政文・公的文書では普通である。πουも口語では用いられる。

前置詞

与格の代わりに、σε(se)+対格が用いられる。

  • ανά(ana)+対格 = の上で、によって(カサレヴサ)
  • από(apo)+対格 = から(受動態の行為者も示す)
  • άνευ(anef)+属格=無しに、以外に(カサレヴサ)
  • αντί(andi)+属格=代わりに(カサレヴサ)
  • δια(dia)+属格=を通じて、経由して(カサレヴサ)
  • δια(dia)+対格=の為に
  • εις(is)+対格=の中に(カサレヴサ)
  • έξω(exo)+対格=外に
  • έξω(exo)+σε)/(από))+対格=外に
  • κατά(kata)+属格=に対して
  • κατά(kata)+対格=によって、を通って(カサレヴサ)
  • κοντά(konda)+対格=近くに
  • κοντά(konda)+((σε)(se)/(από))(apo)+対格=近くに
  • μπροστά(brosta)+対格=対面に、向かいに
  • μπροστά(brosta)+σε(se)/(από(apo)+対格=対面に、向かいに
  • μέσα(mesa)+対格=内に
  • μέσα(mesa)+σε(se)/(από(apo)+対格=内に
  • μετά(meta)+属格=と共に
  • μετά(meta)+対格=の後に
  • πάνω(pano)+対格
  • πάνω(pano)+σε(se)/(από(apo)+対格=上に、上部に
  • πίσω(piso)+対格=後ろに、後に
  • πίσω(piso)+σε(se)/(από(apo)+対格=後ろに、後に
  • περί(peri)+属格=に関して
  • περί(peri)+対格=のまわりで
  • προ(pro)+属格=の前に(カサレヴサ)
  • υπέρ(uper)+属格=の為に
  • υπέρ(uper)+対格=の上に
  • υπό(upo)+属格=によって
  • υπό(upo)+対格=の下に
  • προς(pros)+属格=によって
  • προς(pros)+対格=に対して、向かって

(注:口語の前置詞は、全てAcc.支配である)

疑問詞
  • 「何が」は口語ではτι(ti)、が用いられ、また、方言では ίντα(inda) が広く用いられる。
  • 「誰が」はποιος(poios)、ποια(poia)、ποιο(poio)が用いられる。
  • 「いつ」は(πότε(pote)
  • 「どこ」はπού(pou)
否定
  • δεν(den)

語順

固定された語順

  1. 小辞(前置詞)+(被制辞となる)名詞句。
  2. 限定詞(冠詞)+名詞。
  3. (直接目的語の)人称代名詞(人称名詞)+動詞(但し、命令法と分詞の場合は転置)。
  4. 数詞+名詞群。
  5. 否定詞+動詞。
  6. (関係詞・接続詞)+(名詞句または動詞句)。(注:3は方言では転置される)

SVOが基本語順であるも、VSO、OVS(受動的な表現で)、VOS、OSV、SOV(格言の言いまわしにみられる)の全てが可能であり、許容される。

語彙形態素

ほとんどが、コイネーからの承継である。ギリシアの各地における方言に、その残渣がみられる。トルコ語の語彙素もかなりの頻度で用いられることが現代ギリシア語の特徴である。

文法形態素

カサレヴサの文法形態素は、古典ギリシア語と同一または類似(擬古形)である。口語については、上記・下掲を参照されたい。

方言

ツアコニア方言は、迂言法による動詞活用をおこなう。 εμι ορου,εσι ορου,ενι ορου,εμμε ορουντε,εττε ορουντε,εισι ορουντε(現在形「見る」の活用(3性変化:ορου,-α,-ντα))。

キプロス方言の文法要覧

活用例

a'kuo(1p/sg/praes), a'kuis(2p/sg/praes), a'kui(3p/sg/praes), a'kumen(1p/pl/praes), a'kuete(2p/pl/praes), a'kusin/a'kun(3p/pl/praes)(聞くの現在形)

  • 同中受動態形:IMPERFECTUM
    e'kuumun(1p/sg/praesIMPERFECTUM), e'kuesun(2p/sg/praesIMPERFECTUM), e'kuetun(3p/sg/praesIMPERFECTUM), eku'umastin(1p/pl/praesIMPERFECTUM), e'kuestun(2p/pl/praesIMPERFECTUM), e'kuuntan(3p/pl/praesIMPERFECTUM)(聞いていた)
  • 能動態アオリスト:Aoristus
    a'kuso(1p/sg/aor), a'kusis(2p/sg/aor), a'kusi(3p/sg/aor), a'kusumen(1p/pl/pl), a'kusete(2p/pl/aor), a'kusin/a'kusun(3p/pl/aor)
  • 能動態第2次人称語尾接尾の未完了過去:IMPERFECTUM
    'ekua(1p/sg/imperfectum), 'ekues(2p/sg/imperfectum), 'ekuen(3p/sg/imperfectum), e'kuamen(1p/pl/imperfectum), e'kuete(2p/pl/imperfectum), e'kuasin(3p/pl/imperfectum)
  • 「アオリスト」能動態
    (「聞いた」)'ekusa(1p/sg/aoristus), 'ekuses(2p/sg/aoristus), 'ekusen(3p/sg/aoristus), e'kusamen(1p/pl/aoristus), e'kusete(2p/pl/aoristus), e'kusasin(3p/pl/aoristus)
  • 中・受動態 現在形 基本形(第1次人称語尾形)
    a'kuume(1p/sg/praesens), a'kuese(2p/sg/praesens), a'kuete(3p/sg/praesens), aku'umastin(1p/pl/praesens), a'kueste(2p/pl/praesens), a'kuunte(3p/pl/praesens)

命令形:(現在)'aku(2p/sg/praesens), a'kute(2p/pl/praesens):(アオリスト) 'akuse(2p/sg/aoristus), a'kuste(2p/pl/aoristus)

語彙形態素(文法形態素)代用語(「誰、何」(pi'os))

  • Nominativus;(m.)'pcos (f.)'pca (n.)'inta
  • Accusativus;(m.)'pcon (f.)'pcan (n.)'inta

人称代名詞

  • Sg:Accsativus;(m.)ton (f.)tin (n.)to
  • Sg:Genetivus; (m.)tu (f.)tis (n.)tu
  • Pl:Accusativus;(m.)tus (f.)tes (n.)ta
  • Pl;Genetivus; (m)tus (f.)tus (n.)tus

人称名詞

  • 有強勢形;1人称;Nom/sg; e'jo(ni) Acc & Gen/sg; e'menan Nom/pl; e'mis Acc & Gen/pl;e'mas
    2人称;Nom/sg; e'su(ni) Acc & Gen/sg;e'senan Nom/pl; e'sis Acc & Gen/pl;e'sas
  • 無強勢形;1人称;Acc/sg;me Gen/sg;mu Acc & Gen/pl;mas
    2人称;Acc/sg;se Gen/sg;s Acc & Gen/pl;sas

南イタリアのギリシア方言

プッリャのオトラントと南カラブリアのBovaの方言

破擦音/t∫/、イタリア語と同様の重子音、子音連続の硬口蓋化、連続する子音の同化、喉音の発達、動詞中・受動態の未完了過去3人称単数人称語尾-ενο、アオリスト命令形-σο、アオリスト分詞の存続:-γραφοντας, φονασοντας、不定形の名詞的用法の保持;το κλαφει σου=το κλαμα σου, το απεσαει =το αποθανειν

その他の方言でも、音韻変化において閉鎖音から摩擦音への遷移過程(通時言語学的現象)、前舌化、上昇・閉音化、中音化(centralisation)の現象・シュー(/∫/)音化・/t∬/音化・躁音化・無声軟口蓋閉鎖音の硬口蓋閉鎖音化等さまざまの音韻変化が諸方言に分散し、古代ギリシア語からコイネーの時代を経て現代の各地域の方言・またコイネーからアテネ方言への推移をも通時言語学・共時言語学において論証することができる。

特に如上のキプロス方言、またクレタ方言等は現在も遡及の可能な多量の文献が存在するので、現代語の通時的推移・共時的視野を論証させてくれる。また、母音交替子音交替・語中音(γ)添加.語尾音(ν)の添加、ふるえ音化等のさまざまな音韻変化または交替現象・古典語からの伝統である音便νの保持など、現代の諸方言は、古典からコイネーを経て分散した各方言の通時・共時言語学上の貴重な音韻変化を現在も維持している。現代の現用言語(langue vivante)である「ギリシア語」は、古代からの継続言語であり、「現用言語のギリシア語」の完全な理解には古典ギリシア語の素養も不可欠である。

表現

カナ表記では太字を強く発音する。

  • こんにちは=καλημέρα σας カリラ サス
  • こんばんは(午後の挨拶)=καλησπέρα σας カリスラ サス
  • お元気ですか=Πώς είστε; ポス ステ? または Τι κάνετε; ティ ネテ?(; は疑問符)
  • はい=μάλιστα リスタ またはくだけた表現で ναι
  • いいえ=Όχι
  • いつ(何時)=πότε;
  • どこ(何処)=πού είναι;ネ?
  • だれ(何人)=(男性形:ποιός;)ピョス?(女性形:ποιά;)ピャ?
  • はい、元気です。で、あなたはいかがですか=Καλά, ευχαριστώ. Και εσείς;、エフハリス。ケ エス?
  • ようこそお越しくださいました=καλώς ήρθατεルサテ
  • お目にかかれて恐悦至極です=καλώς σας βρήκαス サス ヴカ または χαίρομαι που σας βλέπω ロメ プ サス ヴ
  • どうぞおはいりください=περάστε παρακαλώステ パラカ
  • どうもありがとうございます=ευχαριστώ πολύ エフハリス
  • どういたしまして=παρακαλώ パラカ
  • ほんとうにすみません=λυπάμαι πολύメ ポ
  • どうなさられたのですか=τι συμβαίνει; ティ シンヴェニ?
  • なんでもございません=τίποτε ティポテ または τίποτα ティポタ
  • ほんとうですか=αλήθεια;シア?
  • ちょっと手をかしてくれませんか=μπορείτε να με βοηθήσετε λίγο ;テ ナ メ ヴォイティシセテ
  • なにをお望みですか=τι θα θέλατε; ティ サ ラテ?
  • ちょっと待っていてください=περιμένετε λιγάκι παρακαλώ ペリネテ リキ パラカ または περιμένετε ένα λέπτο παρακαλώ ペリネテ ナ レプ
  • お会いできて嬉しい=χαίρω πολύ ヒェロ ポ
  • 知り合えて嬉しい=χαίρομαι που σας γνωρίζω ヒェロメ ポ プ サス グノ
  • 楽しいときをすごさせていただきました=περάσαμε ωραίαサメ ポ
  • ごちそうさま<特に決まったギリシア語の言い方はないが>=καλή χώνεψη!<が相当> カ ネプシ
  • いつでも来てください=ελάτε όποτε θέλετεポテ レテ
  • おいとまします(ごめんください)=Να με συγχωρείτε ナ メ シンホテ または αντίο σας!ディオ サス
  • またお会いしましょう=καλή αντάμωση アンモシ
  • よい旅をお祈りします=καλό ταξίδι タクディ
  • すみませんここを通してください=παρακαλώ, αφήστε με να περάσω パラカフィステ メ ナ ペ
  • 早く医者を呼んでください=καλέστε γρήγορα ένα γιατρόステ グゴラ ナ イァト
  • どうしたのですか=τι έχετε; ティ ヘテ?
  • 早く良くなってください=ελπίζω να γίνετε καλά σύντομα エルゾ ナ ネテ カ ンドマ または περαστικά! ペラスティ
  • ここに来てください!=ελάτε εδώ!テ エ
  • これはおいくらですか=ποσο κάνει αυτό; ニ アフ? または πόσο κοστίζει αυτό; ソ コスティズィ アフ
  • (我々は)とてもたのしかった=Περάσαμε ωραία!サメ オア!
  • (私は)とてもたのしかった=χάρηκα πολύ! リカ ポ
  • 同慶の至りです=συγχαρητήρια! シンハリティリア!
  • (年に1度のお祝い用の決まり文句)「御誕生日おめでとう:メリークリスマス:新年おめでとう」=Χρόνια Πολλά!ニャ ポ
  • 新年おめでとう!=Ευτυχισμένος ο καινούργιος χρόνος! エフティヒズノス オ ケリョス フノス!
  • 感謝をこめて!(ありがとうを感謝を込めて述べるとき)=Στα δυο χέρια σας! スタ ディョ リャ サス!
  • 乾杯!=Στην υγειά μας! スティン イ マス! または形式的表現では Στην υγειά σου! スティン イ ス!
  • 御成功を祈ります=Καλη επιτυχία! エピティ
  • 貴方のおかげです=σας είμαι υπόχρεος サス メ イフレオス
  • 1時にあの場所でお会いしましょう=Θα συναντηθούμε εκεί στη μία! サ シナンディメ エ スティ

脚注

注釈

出典

  1. ^ a b Modern Greek, UCLA Language Materials Project: Language Profiles, 2009年1月30日閲覧。
  2. ^ a b c d Greek language, Columbia Encyclopedia(オンライン版)”. 2008年4月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年1月30日閲覧。
  3. ^ 希臘語の略。なお、ヘブライ語(希伯来語)も「希語」と省略しうるが、現状では「希語」はギリシア語の意味で使われるのが普通である。
  4. ^ "Greek language", Encyclopædia Britannica (オンライン版)、2009年1月30日閲覧。
  5. ^ 民衆の口語がギリシアの言葉と考え、主としてイオニア諸島の方言から収集し口語民衆語を提唱した。『開放された自由人』を参照。
  6. ^ 西海沖の地域を除く東域の諸島・北ギリシア本土・小アジアの当時の人々には、現地語とカサレヴサしか解する言語はなく、アテネ方言はまったく通じなかった。
  7. ^ Robert Browning, Medieval and Modern Greek, Cambridge University Press, 2nd edition, 1983.
  8. ^ Arvaniti 1999, p. 2.
  9. ^ http://unicode.org/charts/PDF/U0370.pdf

参考文献

関連項目

外部リンク