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{{Otheruses|トクサ亜綱として定義される化石植物も含む分類群|現生のトクサ類を含むより範囲の狭い分類群|トクサ目}}
{{生物分類表
{{生物分類表
|色 = lightgreen
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|名称 = トクサ綱 {{Sname||Equisetopsida}}
|名称 = トクサ
|画像 = [[ファイル:Equisetum hyemale.jpg|250px|''Equisetum hyemale'']]
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|分類体系 =
|画像キャプション2 = [[ヤチスギナ]] {{snamei||Equisetum pratense}} の輪生する枝
|分類体系 = [[PPG I]] (2016){{refn|group="注釈"|分類体系としては {{Harvtxt|PPG I|2016}} に準拠しているが、PPG I (2016) では綱以下が定められているため、それより上の分類も含め実際は{{Harvtxt|巌佐ほか|2013}} による。}}
|界 = [[植物界]] {{Sname||Plantae}}
|界 = [[植物界]] {{Sname||Plantae}}
|門 = [[シダ植物]] {{Sname||Pteridophyta}}
|門 = [[陸上植物]]上門 {{sname||Embryophyta}}
| = '''トクサ綱''' {{Sname||Equisetopsida}}
| = [[維管束植物]]門 {{sname||Tracheophyta}}
|亜門 = [[大葉植物]]亜門 {{sname||Euphyllophytina}}
|学名 = {{Sname||Equisetopsida}}<br /> {{AU|C. Agardh}}
|綱 = [[大葉シダ綱]] {{sname||Polypodiopsida}}
|タイプ種 = <!-- {{Snamei||}} -->
|亜綱 = '''トクサ亜綱''' {{sname||Equisetidae}}
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|シノニム =
* {{sname||Arthrophyta}}
* {{Sname||Equisetophyta}} {{small|{{AU|Cronquist}}, {{AU|Takht.}} & {{AUY|W.Zimm.|1966|bio=bot}}}}{{Sfn|Cronquist|Takhtajan|Zimmermann|1966|pp=129–134}}
* {{sname||Equisophyta}} {{small|{{AUY|Boivin|1956|bio=bot}}}}{{Sfn|Cronquist|Takhtajan|Zimmermann|1966|pp=129–134}}
* {{Sname||Sphenophyta}} {{small|{{AUY|W.Zimm.|1959|bio=bot}}}}{{Sfn|Zimmermann|1959|p=217}}
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* {{sname||Calamophytina}}
* {{Sname||Equisetopsida}} {{small|{{AUY|C. Agardh|1825|bio=bot}}}}{{Sfn|Bomfleur ''et al.''|2013|pp=1–17}}
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|和名 = トクサ亜綱
|英名 = [[:en:horsetails|horsetails]]
|下位分類名 = [[目 (分類学)|目]]
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|下位分類 =
* [[トクサ目]] {{Sname||Equisetales}}
* [[トクサ目]] {{Sname||Equisetales}}
* [[プセウドボルニア目]] {{Sname||Pseudoborniales}}
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* [[スフェノフィルム目]] {{Sname||Sphenophyllales}}
}}
}}
'''トクサ類'''(トクサるい)は、[[大葉シダ植物]]に含まれる分類群の1つである。現在学術的に広く用いられる[[PPG I]] (2016) による[[シダ植物]]の分類体系では、'''トクサ亜綱 {{sname||Equisetidae}}'''と[[亜綱]]の分類階級に置かれるが{{Sfn|PPG I|2016|pp=563–603}}、[[分岐分類学]]による解析および[[分子系統解析]]が進む以前は維管束植物内の系統関係に諸説あり、様々な階級に置かれてきた{{Sfn|村上|2012|pp=67–73}}。現生種は1目1科1属(つまり、トクサ目とトクサ科は[[単型]])からなり、[[トクサ属]] {{snamei||Equisetum}} に15種のみが含まれる{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}{{Sfn|PPG I|2016|pp=563–603}}{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}{{Sfn|Smith ''et al.''|2007|pp=705–731}}。'''有節類'''{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}(ゆうせつるい)、'''有節植物'''(ゆうせつしょくぶつ、{{sname||Articulatae}}){{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|海老原|2016|p=282}}、'''スフェノプシダ'''<!-- 『岩波生物学辞典 第5版』(2013) による表記。トクサ綱に置き換えるのは× -->({{sname||Sphenopsida}}{{refn|group="注釈"|なお、語尾 {{lang|la|-opsida}} は綱の階級を示す語尾である{{Sfn|ICN|2018|loc=Article 16.3}}。同様に、本項で示される階級の語尾 {{lang|la|-phyta}}、{{lang|la|-phytina}}、{{lang|la|-idae}} はそれぞれ[[門 (分類学)|門]]、亜門、[[亜綱]]の語尾である{{Sfn|ICN|2018|loc=Article 16.3}}。}}){{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}、'''楔葉類'''(けつようるい、{{sname||Calamophytina}}){{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|海老原|2016|p=282}}、トクサ植物{{Sfn|西田|2017|p=160}}などとも呼ばれた。ただし、楔葉類はその中のスフェノフィルム目 {{sname||Sphenophyllales}} を指すこともある{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}。
'''トクサ綱'''(トクサこう、[[学名]]:{{Sname|Equisetopsida}})は、[[植物]]の分類群。葉の形から楔葉類などとも呼ばれる。[[シダ植物]]の一群で、[[シダ植物門]]の下位分類となる。なお、以前にはトクサ植物門 {{Sname|Equisetophyta}} として独立門を置いていたが、近年では[[シダ植物門]]内に含めるよう変わってきている。


== 特徴 ==
== 分類階級 ==
植物の最初の[[リンネ式階層分類体系|階層的分類体系]]は[[カール・フォン・リンネ]]の『{{仮リンク|植物種誌|en|Species Plantarum}}』(''{{lang|la|Species Plantarum}}''、[[1753年]]) で提示され、トクサ類は[[シダ類]] {{Sname||Filices}} に含まれていた{{Sfn|Linnaeus|1753|p=1061}}。[[アウグスト・アイヒラー]] (1883) による分類体系では、楔形の葉や特異な節構造を持つ茎の形態から{{Sfn|海老原|2016|p=282}}、[[シダ植物]]の中でも独立の[[トクサ綱]] {{sname||Equisetineae}} に置かれ、ほかの[[シダ類]]が含まれる[[シダ綱]] {{sname||Filicineae}} および現在の[[小葉類]]が含まれる[[ヒカゲノカズラ綱]] {{sname||Lycopodineae}} とは分けられた{{Sfn|Core|1955|pp=52–53}}。エドワード・ジェフレーは初めて維管束植物に小葉類 {{Sname||Lycopsida}} と大葉類 {{Sname||Pteropsida}} の2系統があることを認識したが、そのうちトクサ類は小葉類に含まれると考えた{{Sfn|Jeffrey|1903|pp=119–120}}{{Sfn|西田|2017|p=91}}。1920年代以降、[[デボン紀]]の化石シダ植物の研究が進み、シダ植物の各綱の差異は[[シダ類]]と[[裸子植物]]の差異よりも大きいと考えられるようになった{{Sfn|田川|1959|p=1}}。例えば、アメリカの植物学の教科書に広く受け入れられた {{Harvtxt|Tippo|1942}} の分類体系では、トクサ類は楔葉植物亜門 {{sname||Sphenopsida}} として[[維管束植物門]] {{sname||Tracheophyta}} に置かれ、[[種子植物]]や[[シダ類]]を含む[[大葉植物亜門]] {{sname||Pteropsida}} および[[小葉植物亜門]] {{sname||Lycopsida}} とは分けられていた{{Sfn|Core|1955|pp=52–53}}。その後、[[シダ植物]]は[[マツバラン類]](無葉類)、ヒカゲノカズラ類(小葉類)、トクサ類(楔葉類)、シダ類(大葉類)の4群に大別されるというのが定説とされ{{Sfn|村上|2012|pp=67–73}}{{Sfn|伊藤元己|2012|pp=116–118}}、各群は研究者によって門や亜門、綱、目などさまざまな高次の分類階級に置かれてきた{{Sfn|村上|2012|pp=67–73}}。初期の分子系統解析では、小葉類以外の3分類群が種子植物の姉妹群として[[単系統群]](大葉シダ植物)をなすことが示され、トクサ類は中でも基部で分岐した系統であることが示唆されたが、一方で他の真嚢シダ類との系統関係は未解明であった{{Sfn|海老原|2016|p=282}}{{refn|group=注釈|例えば {{Harvtxt|Pryer ''et al.''|2004}} や {{Harvtxt|Lehtonen|2011}} では[[リュウビンタイ科]]と姉妹群をなす{{Sfn|Pryer ''et al.''|2004|pp=1582–1598}}{{Sfn|Lehtonen|2011|pp=1–6}}。}}。その後、DNAの情報量を増やした分子系統解析により[[大葉シダ類]]の中で最も基部に分岐する(残りの姉妹群となる)ことが示され{{Sfn|Wickett ''et al.''|2014|pp=E4859-E4868}}{{Sfn|Puttick ''et al.''|2018|pp=1–13}}{{Sfn|海老原|2016|p=282}}、現在では[[大葉シダ植物|大葉シダ綱]] {{sname||Polypodiopsida}} ({{sname||Monilopsida}}) の下位に置かれ'''トクサ亜綱''' {{sname||Equisetidae}} とする{{Sfn|海老原|2016|pp=26–27}}{{Sfn|PPG I|2016|pp=563–603}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1642}}{{Sfn|Christenhusz|Chase|2014|pp=571–594}}{{refn|group="注釈"|化石植物の文脈では {{sname||Sphenopsida}} というクレード名で呼ばれることが多い{{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}{{Sfn|Escapa|Cúneo|2005|pp=1–14}}{{Sfn|Neregato|Hilton|2019|pp=811–833}}。}}。
現生の種はトクサ綱[[トクサ目]][[トクサ科]][[トクサ属]] {{Snamei||Equisetum}} の15種のみである。世界的に広く分布するが、中心は北半球の温帯である。オーストラリアには分布がない。[[トクサ]]、[[スギナ]]などを含む。


以下に[[階級 (生物学)|階級]]と名称、及び採用した分類体系の例を示す。
湿地に生育するものが多い。植物体は、根・茎・葉が分化する。地下に匍匐茎を伸ばし、地上に直立する茎を出す。茎にははっきりとした節があり、節間の茎は中空である。茎が緑色で、光合成の主力はここである。種によっては節から細長い三角形(または癒合して「はかま」状)の[[葉]]、あるいは中空の茎(さらに分岐することもある)が輪生するものもある。茎の先端に胞子葉が集まって球果様の「胞子穂」を形成し、ここに[[胞子]]を生じる。胞子穂のつく「胞子茎」はその他の「栄養茎」と別になっていることもある。この胞子茎は分岐しないことが多く、またスギナの胞子茎であるいわゆるツクシのように、[[光合成]]しないものもある。胞子はほとんどが両性であるが、スギナでは雌雄の区別(大胞子、小胞子)がある。


;門 - {{lang|la|divisio}} {{Sname|Equisetophyta}}
高さは多くは0.2-1.5 mであるが {{Snamei||Equisetum telmateia|E. telmateia}} は 2.5 m に達し、{{Snamei||Equisetum giganteum|E. giganteum}} は 5 m、{{Snamei||Equisetum myriochaetum|E. myriochaetum}} は 8 m にもなる。
:{{Harvtxt|Cronquist|Takhtajan|Zimmermann|1966}} による。{{lang|la|phylum}} {{sname|Calamophyta}} {{small|{{AUY|Bessey|1907|bio=bot}}}} および {{lang|la|divisio}} {{sname||Equisophyta}} {{small|{{AUY|Boivin|1956|bio=bot}}}} を[[シノニム]]とした{{Sfn|Cronquist|Takhtajan|Zimmermann|1966|pp=129–134}}。下位に {{lang|la|classis}} {{sname||Hyeniatae}}、{{lang|la|classis}} {{sname||Sphenophyllatae}}、{{lang|la|classis}} {{sname||Equisetatae}} の3綱を設立した{{Sfn|Cronquist|Takhtajan|Zimmermann|1966|pp=129–134}}{{refn|group="注釈"|なお、自動的にタイプ指定される学名では著者名および日付を変更せずに訂正される{{Sfn|ICN|2018|loc=Article 16.1}}ため、 これらの学名はそれぞれ{{sname||Hyeniopsida}} {{small|{{AUY|Cronquist, Takht. & W.Zimm.|1966|bio=bot}}}}、{{sname||Sphenophyllopsida}} {{small|{{AUY|Cronquist, Takht. & W.Zimm.|1966|bio=bot}}}}、{{sname||Equisetopsida}} {{small|{{AUY|Cronquist, Takht. & W.Zimm.|1966|bio=bot}}}} として引用される。}}。
;門 - トクサ門 {{Sname|Sphenophyta}}
: {{Harvtxt|ギフォード|フォスター|2002}} による。[[プセウドボルニア目]] {{sname||Pseudoborniales}}、[[スフェノフィルム目]] {{sname||Sphenophyllales}}、[[トクサ目]] {{Sname||Equisetales}} からなるとする{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}。[[ロボク目]] {{sname||Calamitales}} はトクサ目のシノニムとする{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}。
;門 - トクサ門 {{Sname|Calamophyta}}
: {{Harvtxt|田川|1959}} による。{{sname||Sphenopsida}}、{{sname||Articulatae}}、{{sname||Equisetinae}} を[[シノニム|同義]]とし、[[ヒエニア綱]] {{sname||Hyeniopsida}}([[ヒエニア目]] {{sname||Hyeniales}})、[[プセウドボルニア綱]] {{sname||Pseudoborniopsida}}([[プセウドボルニア目]] {{sname||Pseudoborniales}})、[[スフェノフィルム綱]] {{sname||Sphynophyllopsida}}([[スフェノフィルム目]] {{sname||Sphenophyllales}}、[[ケイロストロブス目]] {{sname||Cheirostrobales}})、[[トクサ綱]] {{sname||Equisetosida}}([[カラミテス目]] {{sname||Calamitales}}、[[トクサ目]] {{sname||Equisetales}})の4綱6目を置いた{{Sfn|田川|1959|pp=2, 4}}。
;門 - 有節植物門 {{sname||Arthrophyta}}{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}
: 茎の連結構造に注目した名称{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}。
;亜門 - 有節植物亜門 {{sname||Sphenophytina}}
: {{Harvtxt|岩槻|1975}} による。下位に有節植物綱 {{sname||Sphenophyllopsida}} 1綱を置き、その中に[[ヒエニア目]] {{sname||Hyeniales}}、[[プセウドボルニア目]] {{sname||Pseudoborniales}}、[[スフェノフィルム目]] {{sname||Sphenophyllales}}、[[ロボク目]] {{sname||Calamitales}}、[[トクサ目]] {{Sname||Equisetales}} の5目を含む{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}。
;綱 - トクサ綱(有節植物綱{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}) {{sname||Articulatae}}
: {{Harvtxt|伊藤洋|1972}} による。下位に[[トクサ科]] {{sname||Equisetaceae}} を置いた{{Sfn|伊藤洋|1972|p=165}}。学名及び有節植物綱の名は茎の連結構造に注目した名称{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}。
;綱 - トクサ綱 {{sname||Sphenopsida}}
: {{Harvtxt|田村|1992}} による。下位に[[トクサ目]] {{Sname||Equisetales}}、[[スフェノフィルム目]] {{sname||Sphenophyllales}}、[[ロボク目]] {{sname||Calamitales}} の3目を置いた{{Sfn|田村|1992|pp=69–71}}。なお、{{sname||Articulatae}} も併記されている{{Sfn|田村|1992|pp=69–71}}。
;綱 - トクサ綱 {{sname||Equisetopsida}}
: {{Harvtxt|西田|2017}} による。下位に[[プセウドボルニア目]] {{sname||Pseudoborniales}}、[[スフェノフィルム目]] {{sname||Sphenophyllales}}、[[トクサ目]] {{Sname||Equisetales}} の3目を置く{{Sfn|西田|2017|p=294}}。


== 系統関係 ==
トクサ類の他のグループには、[[化石]]としてのみ知られる[[ロボク]]があり、[[石炭紀]]に栄えた。ロボク(属名、カラミテス {{Snamei||Calamites}})は、高さ10mにも達する高木であった(現生トクサ類でも数mになるものもあるが木ではなく草に分類される)。現生のトクサ科に属する種は、[[ペルム紀]]後期にロボク科から分岐したと考えられている。他の植物群では[[マオウ]]や[[モクマオウ]]は外見上よく似ているが、系統上の関係を示唆するものとは考え難い。また、ロボクと同様に化石シダ植物として知られる[[フウインボク]]や[[リンボク (化石植物)|リンボク]]は、現生種ではトクサ科ではなく[[ヒカゲノカズラ科]]に近縁である。
{{Harvtxt|Wickett ''et al.''|2014}}、{{Harvtxt|Puttick ''et al.''|2018}} による分子系統解析の結果に、{{Harvtxt|Kenrick|Crane|1997}}、{{Harvtxt|Elgorriaga ''et al.''|2018}}などによる化石植物の系統樹を加えた維管束植物の系統樹は次のようになる{{Sfn|長谷部|2020|pp=1–4}}{{Sfn|Wickett ''et al.''|2014|pp=E4859-E4868}}{{Sfn|Puttick ''et al.''|2018|pp=1–13}}{{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}。


トクサ類を含む大葉シダ類は[[種子植物]]を含むクレードである[[木質植物]] {{sname||Lygnophyta}} とともに[[大葉植物]] {{Sname||Euphyllophytina}} にまとめられ、[[トリメロフィトン類]] {{sname||Trimerophytopsida}} を[[ステムグループ]]とする{{Sfn|長谷部|2020|p=143}}。かつてトクサ類として分類されていた化石植物に、[[ヒエニア]] {{snamei||Hyenia}} や[[カラモフィトン]] {{snamei||Calamophyton}} があり、これらは現在は[[クラドキシロン類]]とされる。例えば、[[デボン紀]]の[[ヒエニア目]]は、トクサ類の形質をやや不規則に備えているため、かつてはこれが特殊化を重ねて進化し、[[ロボク類]](ロボク科 {{Sname||Calamitaceae}})と[[スフェノフィルム類]](スフェノフィルム目 {{Sname||Sphenophyllales}})へと分岐したと考えられていた{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}。
== 系統 ==
トクサ類は従来、形態が全く異なることから[[シダ植物門]](狭義のシダ)とは別に分類されてきた。しかし現生種による[[分子系統解析]]データからは、トクサ類はシダ植物門の系統に入り、[[リュウビンタイ科]]に前後して分化したと推定されている(トクサ植物とリュウビンタイ科との関係はまだ確定的でない)。


{{clade
== 分類 ==
|style=width:85em;font-size:100%;line-height:100%
† は化石種のみ<ref>[[加藤雅啓]]編集、「植物の多様性と系統」、1997年10月</ref><ref>杉竜一編 「岩波生物学辞典 第4版」、1996年</ref>。
|label1=[[維管束植物]]
* トクサ綱 {{Sname||Equisetopsida}}
|sublabel1={{sname||Tracheophyta}}
** [[ヒエニア目]] {{Sname||Hyeniales}}
|1={{clade
** [[トクサ目]] {{Sname||Equisetales}}
*** [[アルカエオカラミテス科]] {{Sname||Archaeocalamitaceae}}
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*** [[ロボク科]] {{Sname||Calamitaceae}}†
*** [[トクサ科]] {{Sname||Equisetaceae}}
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|label2= [[木質植物]]
|sublabel2= {{sname||Lygnophyta}}
|2=[[種子植物]] {{Sname||Spermatophyta}}
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}}
}}
}}

== 形態 ==
トクサ類の[[胞子体]]では[[根]]・[[茎]]・[[葉]]が分化している{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|伊藤元己|2012|p=125}}{{Sfn|田川|1959|pp=22–25}}。顕著な[[共有派生形質]]は楔葉(輪生葉)と胞子嚢床である{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。

=== 茎 ===
{{See also|トクサ目#通気組織}}
[[File:Equisetum ramosissimum (subsp. ramosissimum) sl10.jpg|thumb|200px|[[イヌドクサ]] {{Snamei||Equisetum ramosissimum}} の茎の断面図。中央に大きな髄腔、その周りに小さな通水道、その周りにそれより少し大きな通気孔がある。]]
茎は匍匐性の根茎(地下茎)と直立する地上茎があり、ともにはっきりした節構造をもっている{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}{{Sfn|田村|1992|pp=69–71}}。根茎には節ごとに節部から根と鱗片状の小葉を輪生する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}。地上茎では基部の数節から不定根が輪生し{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}、それより上の直立する茎は一般に中空で節があり、節から小葉および小枝が輪生する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}{{Sfn|伊藤元己|2012|p=125}}。地上茎に分岐するものとしないものとがある{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}。茎は緑色で[[光合成]]を行う{{Sfn|伊藤元己|2012|p=125}}。

茎の[[維管束]]は[[原生中心柱]]または[[管状中心柱]]で、特殊な腔所があって独特の配列をしている{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|田川|1959|pp=22–25}}。[[葉隙]]は持たない{{Sfn|田川|1959|pp=22–25}}。[[道管|導管]]のあるものもあるが、これは節間に限られている{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}。節部では維管束が輪になり、それから枝へ入る維管束や[[葉跡]]が分出する{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}。茎葉の表皮細胞壁には[[ケイ酸]]質を含む{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}。

化石種の中には、[[維管束形成層]]による二次肥大成長が顕著なものもある{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}。[[スフェノフィルム目]]と[[ロボク科]]では[[一次木部]]の周りに[[維管束形成層]]が形成され、内側に[[二次木部]]、外側に[[二次篩部]]を形成する{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。[[大葉シダ植物]]の共通祖先では維管束は中原型放射原生中心柱であったが、スフェノフィルム目の茎は中実で、[[外原型]]の3箇所の[[原生木部]]を頂点とする三角形の一次木部が分化し、その周囲に二次木部が少し発達する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。[[アルカエオカラミテス]]では中心柱は中原型の環状で、二次木部は形成するが中央に髄腔がなく、通水道と通気孔のみをもつ{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。[[ロボク科]]は、トクサを大形にした外見を示し、茎は髄腔と通水道を持ち中空で節部だけ中実となり、[[二次組織]]が発達して高さ10 m{{small|([[メートル]])}}に達する高木となる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。また、ロボク科とトクサ科では原生木部が[[内原型]]に進化した{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。スフェノフィルム目および次に示すロボク科ではともに維管束形成層を形成し、二次成長を行うため、トクサ類の共通祖先で両面維管束形成層が進化したと推定される{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。[[種子植物]]を含む[[木質植物]]でも両面維管束形成層を進化させており、トクサ類以外の[[大葉シダ植物]]でこれを二次的に消失した可能性もある{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。

[[トクサ科]]では'''髄腔'''、'''通水道'''、'''通気孔'''(通気腔)からなる通気組織が発達し、地上茎が中空である{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。維管束内と皮層にも穴が開いている{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。髄腔および通水道はロボク科ももち、それらの共通祖先で獲得したと考えられている{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。髄腔は茎の中央にある空洞で、通水道は原生木部周辺にある大きな穴である{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。通気孔のある部分と無い部分では茎の成長が異なり、茎の表面では維管束のある部分が出っ張り、通気孔のある部分がへこんでいる{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。これらの構造は円柱のように軽く丈夫である{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。トクサ属ではロボク科とは異なり両面維管束形成層を持たないため、それを二次的に消失したと考えられている{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。

=== 根 ===
トクサ属の[[一次根]]は短命である{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}。それ以外の根は[[不定根]]で、全て茎の節から生じる{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}{{Sfn|田村|1992|pp=69–71}}。

[[根端分裂組織]]は1つの頂端細胞(四面体細胞)からなる{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}。頂端細胞は四つの切断面をもち、最も外側のものが[[根冠]]を生み出す{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}。頂端細胞の側方の分裂により基部方向に娘細胞が形成され、順に[[維管束]]、[[皮層]]、[[表皮]]の起源細胞となる{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}。頂端細胞は活動を静止しておらず、核内[[倍数体]]にもなっていない{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}。

根の皮層外層は厚い[[細胞壁]]を持ち、内層では細胞壁は薄くなる{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}。根の[[木部]]は[[三原型]]または[[四原型]]で、[[細根]]では[[二原型]]となることもある{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}。皮層から[[分化]]する[[内皮 (植物)|内皮]]および[[内鞘]]の細胞は同放射線状に接して生じており、同一起源である{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}。[[側根]]は[[内皮 (植物)|内皮]]に起源する{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}。

=== 葉 ===
{{multiple images
|direction = horizontal
|align = center
|width1 = 212
|image1 = Sphenophyllum reconstrucción.png
|caption1 = スフェノフィルムの復元図。楔葉が輪生する。
|width2 = 210
|image2 = Equisetum hyemale kz03.jpg
|caption2 = [[トクサ]] {{snamei||Equisetum hyemale}} の輪生葉。袴状の葉鞘を形成する。
|width3 = 176
|image3 = Equisetum ramosissimum (subsp. ramosissimum) sl18.jpg
|caption3 = <div style="white-space:nowrap;">[[イヌドクサ]] {{Snamei|en|Equisetum ramosissimum|E. ramosissimum}}</div>の輪生葉。下には小枝が輪生する。
|width4 = 170
|image4 = Equisetum arvense subsp. arvense sl17.jpg
|caption4 = [[スギナ]] {{snamei|en|Equisetum arvense|E. arvense}} の胞子茎に見られる袴状の輪生葉。光合成を行わない。
}}
葉は'''{{Vanchor|楔葉}}'''(けつよう、{{lang|en|sphenophyll}}、{{Vanchor|輪葉}}{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}、輪生葉{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}})といわれ、節に輪生し、葉跡は1本であるが、古い時代のものでは脈が又状分岐するのもある{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|加藤|1999|pp=28–29}}。[[プセウドボルニア]] {{snamei||Pseudobornia}} では2回[[二又分枝]]した軸に細かい葉片が鳥の羽状につく{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。[[スフェノフィルム類]]では楔形の1–2 cm{{small|([[センチメートル]])}}の葉を輪生する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}。[[ロボク科]]は節部に癒着して鞘状になった小形の葉を形成する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}。ロボク科の葉にはへら型の[[アンヌラリア]] {{Snamei||Annularia}} と先細りの[[アステロフィリテス]] {{Snamei||Asterophyllites}} があり、長さ数 mm から数 cm になり、葉脈は1本である{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。

構造が単純化したトクサ属のものは[[葉緑体]]を持たず、[[小葉植物#小葉|小葉]]のように退化して[[光合成]]は行わない{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。葉の基部が隣同士で融合して[[袴]]状の[[葉鞘]]を作るものがある{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|伊藤元己|2012|p=125}}。現生[[トクサ属]]の輪生葉では[[四面体]]の茎頂端幹細胞から3面で順次細胞が切り出され、[[葉原基]]が作られる{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。個々の娘細胞形成にはタイムラグがあるが、葉原基形成時は同調する{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。

=== 生殖器官 ===
{{See also|胞子嚢穂#トクサ類}}
[[File:Equisetum arvense fertile spore-bearing stem - Keila.jpg|thumb|150px|スギナの胞子茎に頂生する胞子嚢穂。それぞれの胞子嚢床の先端に胞子嚢をつける。]]
胞子は[[球果]]状の[[胞子嚢穂]]につく{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}{{Sfn|伊藤元己|2012|p=125}}{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}{{Sfn|田川|1959|pp=22–25}}。胞子嚢穂はふつう栄養成長を行う茎の先端に付くが、[[スギナ]] {{snamei||Equisetum arvense}} では胞子嚢穂をつける胞子茎が栄養茎と分化しており、特に[[ツクシ]]と呼ばれる{{Sfn|伊藤元己|2012|p=126}}。胞子嚢穂は'''{{Vanchor|胞子嚢床}}'''{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}(胞子嚢托{{Sfn|田川|1959|pp=22–25}}{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}{{Sfn|田村|1992|pp=69–71}}、{{lang|en|sporangiophore}})と呼ばれる枝状の構造に分かれ、[[胞子嚢]]はこれに頂生する。胞子嚢床が他の植物のどの器官と相同であるかには様々な説があり、胞子嚢をつける枝や胞子葉であるという説がある<ref>{{Cite journal|last=Page|first=C. N.|date=1972-10|title=An interpretation of the morphology and evolution of the cone and shoot of ''Equisetum''|url=https://doi.org/10.1111/j.1095-8339.1972.tb02279.x|journal=Botanical Journal of the Linnean Society|volume=65|issue=4|pages=359–397|doi=10.1111/j.1095-8339.1972.tb02279.x|issn=0024-4074}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Tomescu|first=Alexandru M. F.|last2=Escapa|first2=Ignacio H.|last3=Rothwell|first3=Gar W.|last4=Elgorriaga|first4=Andrés|last5=Cúneo|first5=N. Rubén|date=2017-02-24|title=Developmental programmes in the evolution of ''Equisetum'' reproductive morphology: a hierarchical modularity hypothesis|url=https://doi.org/10.1093/aob/mcw273|journal=Annals of Botany|volume=119|issue=4|pages=489–505|doi=10.1093/aob/mcw273|issn=0305-7364|pmid=28365757|pmc=5458719}}</ref>。ほとんどの場合に胞子嚢床はかぎ型に曲がっているので胞子嚢の先端は茎の方を向いている{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。[[ロボク科]]はトクサ科によく似た胞子嚢穂を生ずるが{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}、[[スフェノフィルム類]]および[[ロボク科]]では胞子嚢床の間に[[托葉]]状の葉(苞葉{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}})が加わってそれを保護し、[[胞子嚢穂]]をつくるが、その構造が極めて複維になっているものもある{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。スフェノフィルム類では胞子嚢床が1枚の苞葉の上側に2個作られ、それぞれ二又分枝後に胞子嚢を頂生する{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。現生のトクサ属では胞子嚢床を形成する生殖部には苞葉は形成されず、胞子嚢床の先端が盾状に広がり胞子嚢を保護している{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}。[[アルゼンチン]]で見つかっている[[ペルム紀]]の {{snamei||Crucitheca}} の胞子嚢穂では栄養葉の生じる節間に胞子嚢床が数層輪生し、この構造が数回繰り返される{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。現生のトクサ属ではこの胞子嚢穂が一つだけになり、胞子嚢床の間に栄養葉を欠くと考えられている{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。胞子嚢穂は外見上節として輪生しているが、発生的には節間に繰り返される[[生殖単位]] ({{lang|en|reproductive phytomer}}) だと考えられている{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。

[[胞子]]には[[同形胞子性]]のものも[[異形胞子性]]のものも知られており{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|田川|1959|pp=22–25}}、ロボク科の一部で異形胞子性が進化した{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}{{Sfn|田村|1992|pp=69–71}}。現生の[[トクサ科]]および[[ロボク科]]の[[ポトキテス]] {{snamei||Pothocites}} では同形胞子性で、胞子外壁に層状構造を持ち、胞子壁の表面が剥がれて4本のリボン状になり、胞子散布に役立つ弾糸が付着する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}{{Sfn|長谷部|2020|pp=153–157}}{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。異形胞子性のロボク科には北米の[[後期石炭紀]]に見られる[[カラモカルポン]] {{snamei||Calamocarpon}} があり、この長さ3 mm{{small|([[ミリメートル]])}}になる大胞子嚢内には大胞子が1個だけ成熟し、大配偶体が形成される{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。[[小葉植物]]の[[レピドカルポン]] {{snamei||Lepidocarpon}} や[[被子植物]]の真の[[種子]]とは異なり、大胞子嚢を包み込む小葉や[[テローム]]群に当たる構造がトクサ類にはなかったため、種子様器官の形成には至らなかった{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。

=== 配偶体 ===
[[配偶体]](前葉体)は現生のトクサ属について知られており、緑色の[[葉状体]]で、扁平な構造をもっている{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}。下面には[[根毛]]をつけ、上面には中央に大きく発達した中褥のまわりに数個の光合成を営む板状突起(裂片)を出す{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}。雌雄性があり、それぞれ[[造卵器]](頸卵器)と[[造精器]]を生ずる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}。頸卵器は絨毯組織 ({{lang|en|cushion}}) につき、頸部が突出する{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}。造精器は絨毯組織に埋まっていることが多く、かなり大きくて、多数の[[精子]]を放出する{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}。精子は[[螺旋]]状に巻き、多数の[[鞭毛]]をもっている{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}。[[受精卵]]の第一分裂は頸卵器の軸と直角の面で行なわれ、[[胚]]は[[胚柄]]をもたず、外向的に発生し頸卵器の外側に向けて生長していく{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}。[[胚発生]]の初期のどの細胞からどの組織が導かれるかは決まっていない{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}。

== 進化と多様性 ==
[[File:Outlines of comparative physiology touching the structure and development of the races of animals, living and extinct - for the use of schools and colleges (1870) (14780502024).jpg|thumb|500px|石炭紀の森林の様子。<hr />[[ネウロプテリス]] {{snamei||Neuropteris}} や[[ペコプテリス]] {{snamei||Pecopteris}}([[シダ種子植物]])、[[ナンヨウスギ属]] {{snamei||Araucaria}}([[裸子植物]])、[[リンボク (化石植物)|リンボク]] {{snamei||Lepidodendron}}([[小葉植物]])、[[モクマオウ属]] {{snamei||Casuerina}} ([[被子植物]])などとともにトクサ類の[[アステロフィリテス]] {{snamei||Asterophyllites}} や[[ロボク]] {{snamei||Calamites}} が生える。]]
[[File:Equisetum giganteum, habitus, Manie van der Schijff BT.jpg|thumb|200px|現生の巨大な {{snamei||Equisetum giganteum}}。[[プレトリア大学]]にて。]]

トクサ類の祖先的な植物として[[イビカ]] {{snamei||Ibyka}} が挙げられている{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}{{Sfn|加藤|1999|pp=28–29}}。イビカは[[中期デボン紀]]の化石植物で、主軸から側軸が比較的等間隔で3回[[単軸分枝]]を行い、最終分枝は4回程度[[二又分枝]]を行って[[胞子嚢]]を[[頂生]]する{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。胞子嚢をつけた軸は反転するため、[[テローム説]]において「反転」によるトクサ類の胞子嚢托の起源を示すように見え、節間が規則的なことからトクサ類との類縁が示唆された{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。ただし、形態が大きく異なるため分類としては[[クラドキシロン綱]][[イリドプテリス科]]とされることもある{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。

トクサ類の化石は[[デボン]]紀から知られているが、最古のものではトクサ類の特徴を不規則にもっており、やがて明瞭な特徴をもったものに置きかわってくる{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}。[[後期デボン紀]]では、[[プセウドボルニア目]]の[[プセウドボルニア]] {{snamei||Pseudobornia}} が出現する{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。プセウドボルニアは高さ20 m、太さ60 cm、枝も3 m になり、[[スピッツベルゲン]]と[[アラスカ]]から発見されている{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。

=== 石炭紀の森林 ===
トクサ類は[[石炭紀]]に非常に多様化した{{Sfn|伊藤元己|2012|p=125}}。石炭紀から[[ペルム紀]]にかけての湿地性大[[森林]]はトクサ類が主要素の一つとなっていた{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}。そのため、トクサ科は[[小葉植物]]の[[ヒカゲノカズラ科]]や[[イワヒバ科]]と同様、2億年以上も存続している系統である{{Sfn|岩槻|1992|pp=58–61}}。

[[スフェノフィルム類]] {{Sname||Sphenophyllales}} は小形の[[草本]]または[[つる植物]]、ときに[[水生植物|水生]]で、後期デボン紀に出現し、石炭紀には全世界に広がってペルム紀に絶滅してゆき、[[日本]]を含む[[アジア]]で[[三畳紀]]まで残った{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。石炭紀の林床あるいは林縁植物として繁栄した{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。

ロボク科ともされる[[アルカエオカラミテス科]]の[[アルカエオカラミテス]] {{snamei||Archaeocalamites}} は、後期デボン紀から見つかっており、[[後期石炭紀]]後期に一旦記録が途絶えるが[[前期ペルム紀]]まで存続した{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。ロボク科の[[ロボク]](蘆木、カラミテス){{Sname||Calamites}} は石炭紀からベルム紀末まで生存した{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。ロボクには材の特徴により3つの形態属が認められる{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。

=== トクサ科につながる系統 ===
現生の[[トクサ属]]に形態的に類似したものは[[エキセティテス]] {{snamei||Equisetites}} と呼ばれ、最初は[[後期石炭紀]]後期から、そして多くは[[中生代]]初期から見つかっている{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。[[スキゾネウラ]] {{snamei||Schizoneura}} はペルム紀の[[ゴンドワナ大陸]]で現れ、[[三畳紀]]から[[ジュラ紀]]にかけ[[欧米]]や[[アジア]]でも見られる{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。中生代にはこれら以外のトクサ科もみられ、[[三畳紀]]から[[ジュラ紀]]になると、[[ロボク]] {{snamei||Calamites}} によく似て、いっそうトクサ属に近い形をもつ小形の草本の[[ネオカラミテス]] {{snamei||Neocalamites}} が現れた{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1001a}}{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。ネオカラミテスはトクサとは違いその葉はロボク科の[[アンヌラリア]] {{snamei||Annularia}} のように長く、葉鞘を作らないこともある{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。

現生のトクサ属とはっきり認識できるものは[[始新世]]から出現する{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。現生のものは[[トクサ属]]15種だけであるが、[[オーストラリア]]を除く全世界の[[温帯]]の[[湿地]]や[[渓流沿い植物|渓流沿い]]に分布する{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|伊藤元己|2012|p=125}}{{Sfn|田川|1959|pp=22–25}}{{Sfn|岩槻|1992|pp=58–61}}。[[北半球]]の温帯が分布の中心で、[[熱帯]]より温帯のほうが種数が多い{{Sfn|岩槻|1992|pp=58–61}}。内部には通気孔が通ると同時に気孔が落ち込み、クチクラのような表面の保護層が発達しており、湿地性でありながら乾生植物にみられるような特徴を兼ね備えている{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|田村|1992|pp=69–71}}。現生最大の種は[[ギガンテウム]] {{snamei||Equisetum giganteum}} で、そのままでも5–6 m、寄りかかれば12 m にもなる{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。

== 下位分類 ==
{{multiple images
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|image1 = Calamites 3535.JPG
|caption1 = ロボクの化石。[[スコットランド]]の[[ノース・エアシャー]]から。
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|caption2 = [[アンヌラリア]] {{snamei||Annularia}} 型の葉をつけるロボクの復元図。
}}
[[File:Stevenston - Horsetail (Equisetum) fossil.JPG|thumb|250px|トクサ属の化石。[[スコットランド]]の[[ノース・エアシャー]]から。]]
以下に属までのトクサ亜綱の分類を示す{{Sfn|PPG I|2016|pp=563–603}}{{Sfn|西田|2017|p=294}}{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}{{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}。現生種のみを含む{{Harvtxt|PPG I|2016}} の分類体系をもとに{{Sfn|PPG I|2016|pp=563–603}}、化石植物の下位分類についてはテイラーらの教科書をもとにした{{Harvtxt|西田|2017}} によるトクサ綱の分類および {{Harvtxt|Elgorriaga ''et al.''|2018}} による形態と現生種のDNAに基づく系統解析の結果を用いる{{Sfn|西田|2017|p=294}}{{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}。また、[[ヒエニア目]] {{sname||Hyeniales}} を置き、[[ヒエニア]] {{snamei||Hyenia}} と {{snamei||Protohyenia}} を含む[[ヒエニア科]] {{Sname||Hyeniaceae}} および[[カラモフィトン]] {{snamei||Calamophyton}} を含む[[カラモフィトン科]] {{sname||Calamophytaceae}} を置くこともあったが{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1642}}、現在これらは[[クラドキシロン目]] {{sname||Cladoxylales}} に含まれるとされる{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}{{Sfn|西田|2017|pp=133–134}}。ロボク科はその巨大さから単独の[[目 (分類学)|目]]とされたこともあった{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。なお、以下の表では[[アルカエオカラミテス科]]に置かれる[[アルカエオカラミテス]]は、{{Harvtxt|西田|2017}} ではロボク科に内包されている{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}。現在では化石種には†を、特に[[器官属]]については‡を付した。

* '''トクサ亜綱''' {{Sname||Equisetidae}} {{small|{{AU|Warm.}}}}{{Sfn|Christenhusz|Chase|2014|pp=571–594}}{{Sfn|PPG I|2016|pp=563–603}}
** †[[プセウドボルニア目]] {{Sname||Pseudoborniales}}{{Sfn|西田|2017|p=294}}{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}
*** †[[プセウドボルニア科]] {{Sname||Pseudoborniaceae}}{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}
**** †[[プセウドボルニア]] {{Snamei||Pseudobornia}} {{small|{{AUY|A.G. Nathorst|1902|bio=bot}}}}<ref>{{cite web|url=https://www.irmng.org/aphia.php?p=taxdetails&id=11907112|title=''Pseudobornia'' A.G. Nathorst, 1902 †|website=IRMNG|date=2018-02-28|author=Rees, Tony|accessdate=2021-09-08}}</ref>
** †[[スフェノフィルム目]] {{Sname||Sphenophyllales}} {{small|{{AUY|Seward|1898|bio=bot}}}}{{Sfn|Libertín ''et al.''|2008|pp=723–732}}{{Sfn|Huang ''et al.''|2017|pp=7–20}}
*** †[[スフェノフィルム科]] {{sname||Sphenophyllaceae}} {{small|{{AUY|H. Potonié|1893|bio=bot}}}}{{Sfn|Libertín ''et al.''|2008|pp=723–732}}{{Sfn|Huang ''et al.''|2017|pp=7–20}}
**** †[[スフェノフィルム]] {{Snamei||Sphenophyllum}} {{small|{{AUY|A.T. Brongniart|1828|bio=bot}}}}<ref>{{cite web|url=https://www.irmng.org/aphia.php?p=taxdetails&id=1323175|title=''Sphenophyllum'' A.T. Brongniart, 1828 †|website=IRMNG|date=2011-12-31|author=Rees, Tony|accessdate=2021-09-08}}</ref>
**** ‡[[ボウマニテス]]{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}} {{Snamei||Bowmanites}} {{small|{{AUY|Binney|1871|bio=bot}}}}{{Sfn|Libertín ''et al.''|2008|pp=723–732}}(スフェノフィルムの胞子嚢穂で、{{Snamei||Sphenophyllostachys}} とも呼ばれる{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}})
**** †{{snamei||Eviostachya}} {{small|{{AU|Stockm.}}}}{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}
**** †{{snamei||Xihuphyllum}} {{small|{{AUY|Chen|1988|bio=bot}} {{AU|emend.}} {{AU|Huang}} {{AUY|et al.|2017|bio=bot}}}}{{Sfn|Huang ''et al.''|2017|pp=7–20}}
*** †[[ケイロストロブス科]]{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}} {{sname||Cheirostrobaceae}} {{small|{{AUY|Boureau||1964|bio=bot}}}}{{Sfn|Neregato|Hilton|2019|pp=811–833}}
**** †[[ケイロストロブス]]{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}} {{snamei||Cheirostrobus}} {{small|{{AUY|D.H.Scott|1894|bio=bot}}}}{{Sfn|Neregato|Hilton|2019|pp=811–833}}
** [[トクサ目]] {{Sname||Equisetales}} {{small|{{AU|DC.}} {{AU|ex}} {{AU|Bercht.}} & {{AUY|J.Presl|1820|bio=bot}}}}{{Sfn|PPG I|2016|pp=563–603}}
*** †[[アルカエオカラミテス科]] {{sname||Archaeocalamitaceae}}{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}}{{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}
**** †[[アルカエオカラミテス]] {{Snamei||Archaeocalamites}} {{small|{{AUY|Stur|1875|bio=bot}}}}<ref>{{cite web|url=https://www.irmng.org/aphia.php?p=taxdetails&id=1119678|title=''Archaeocalamites'' Stur, 1875†|website=IRMNG|author=Rees, Tony|date=2018-02-28|accessdate=2021-09-08}}</ref>
**** ‡[[ポトキテス]]{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}} {{Snamei||Pothocites}} {{small|{{AUY|Paterson|1844|bio=bot}}}}<ref>{{cite web|url=https://irmng.org/aphia.php?p=taxdetails&id=1372212|title=''Pothocites'' Paterson, 1844 †|website=IRMNG|author=Rees, Tony|date=2018-03-02|accessdate=2021-09-08}}</ref>([[アルカエオカラミテス]]の胞子嚢穂{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}})
**** †{{snamei||Protocalamostachys}} {{small|{{AU|Walton}}}}{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}{{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}{{refn|group=注釈|{{Harvtxt|岩槻|1975}} ではロボク科に置かれる{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}。}}
**** †{{snamei||Peltotheca}} {{small|{{AU|Escapa}} & {{AUY|Cúneo|2005|bio=bot}}}}{{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}{{Sfn|Escapa|Cúneo|2005|pp=1–14}}
*** †"{{lang|en|Angaran-Gondwanan Clade}}"{{refn|group="注釈"|{{snamei||Koretrophyllites}} {{small|{{AU|Zalessky}}}}、{{snamei||Sendersonia}} {{small|{{AU|Meyen}} & {{AU|Menshikova}}}}、{{snamei||Tschernovia}} {{small|{{AU|Zalessky}}}}、{{snamei||Equisetinostachys}} {{small|{{AU|Rasskasova}}}} などはこのクレードの胞子嚢穂と似ているが、胞子体全体の様子がわかっていないため、系統解析に含められず不明{{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}。}}
****†{{snamei||Cruciaetheca}} {{small|{{AUY|Cúneo}} & {{AUY|Escapa||2006|bio=bot}}}}{{Sfn|Cúneo|Escapa|2006|pp=167–177}}{{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}
**** †{{snamei||Paracalamitina}} {{small|{{AUY|Zalessky|1934|bio=bot}}}}{{Sfn|Naugolnykh|2002|pp=377–385}}{{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}{{refn|group="注釈"|{{Harvtxt|Naugolnykh|2002}} では[[チェルノビア科]] {{Sname||Tchernoviaceae}} に置かれる{{Sfn|Naugolnykh|2002|pp=377–385}}。}}
*** †[[ロボク科]](カラミテス科) {{Sname||Calamitaceae}}
**** †[[ロボク]](カラミテス) {{Snamei||Calamites}} {{small|{{AUY|Brongniart|1828|bio=bot}}}}{{Sfn|Boyce1999|pp=311–316}}(髄の雄型化石を指すが、植物体全体を表すのにも用いられる{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}})
**** ‡[[アンヌラリア]]{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}} {{Snamei||Annularia}} {{small|{{AU|Sternb.}}}}{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}(ロボク科の葉で、へら型のもの{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}})
**** ‡[[アステロフィリテス]]{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}} {{Snamei||Asterophyllites}} {{small|{{AU|Brongn.}}}}{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}(ロボク科の葉で、先細りのもの{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}})
**** ‡[[カラモスタキス]]{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}} {{Snamei||Calamostachys}} {{small|{{AU|Schimp.}}}}{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}(胞子嚢穂の鉱化化石{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}})
**** ‡[[パラカラモスタキス]] {{Snamei||Paracalamostachys}}{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}(胞子嚢穂の印象化石・圧縮化石{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}})
**** ‡[[カラモカルポン]] {{Snamei||Calamocarpon}}{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}}(異形胞子を含む胞子嚢穂{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}})
**** ‡{{snamei||Arthropitys}}(石化した茎{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}})
**** ‡{{snamei||Calamodendron}}(石化した茎{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}})
**** †{{Snamei||Weissistachys}} {{small|{{AU|G.W. Rothwell}} & {{AUY|T.N. Taylor|1971|bio=bot}}}}{{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}<ref>{{cite web|url=https://irmng.org/aphia.php?p=taxdetails&id=1080608 |title=''Weissistachys'' G.W. Rothwell & T.N. Taylor, 1971 †|website=IRMNG|author=Rees, Tony|date=2018-03-04|accessdate=2021-09-08}}</ref>
**** †{{Snamei||Mazostachys}} {{small|{{AUY|Kosanke|1955|bio=bot}}}} {{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}<ref>{{cite web|url=https://irmng.org/aphia.php?p=taxdetails&id=1081132 |title=''Mazostachys'' Kosanke, 1955 †|website=IRMNG|author=Rees, Tony|date=2018-02-28|accessdate=2021-09-08}}</ref>
**** ‡{{Snamei||Palaeostachya}} {{small|{{AUY|C.E. Weiss|1876|bio=bot}}}} {{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}<ref>{{cite web|url=https://irmng.org/aphia.php?p=taxdetails&id=1106769 |title=''Palaeostachya'' C.E. Weiss, 1876 †|website=IRMNG|author=Rees, Tony|date=2018-02-28|accessdate=2021-09-08}}</ref>(稔性のない苞葉の葉腋に胞子嚢床が輪生する胞子嚢穂{{Sfn|ギフォード|フォスター|2002|pp=183–214}})
**** †{{Snamei||Pendulostachys}} {{small|{{AUY|C.W. Good|1975|bio=bot}}}} {{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}<ref>{{cite web|url=https://irmng.org/aphia.php?p=taxdetails&id=1078891 |title=''Pendulostachys'' C.W. Good, 1975 †|website=IRMNG|author=Rees, Tony|date=2018-03-04|accessdate=2021-09-08}}</ref>
*** †[[チェルノビア科]] {{Sname||Tchernoviaceae}} {{small|{{AUY|Meyen|1971|bio=bot}}}}{{Sfn|Naugolnykh|2002|pp=377–385}}
**** †[[チェルノビア]] {{Snamei||Tchernovia}} {{small|{{AUY|M.D.Zalessky|1930|bio=bot}}}}<ref>{{cite web|url=https://www.irmng.org/aphia.php?p=taxdetails&id=1079023|title=''Tchernovia'' M.D. Zalessky, 1930 †|website=IRMNG|author=Rees, Tony|date=2011-12-31|accessdate=2021-09-08}}</ref>
*** †[[ゴンドワノスタキア科]] {{Sname||Gondwanostachyaceae}}
**** †[[ゴンドワノスタキス]] {{Snamei||Gondwanostachys}} {{small|{{AUY|S.V. Meyen|1969|bio=bot}}}}<ref>{{cite web|url=https://www.irmng.org/aphia.php?p=taxdetails&id=1259741|title=''Gondwanostachys'' S.V. Meyen, 1969 †|website=IRMNG|author=Rees, Tony|date=2018-02-28|accessdate=2021-09-08}}</ref><!-- 西田 (2017) ではゴンドワノスタキア Gondwanostachya として引用されるがこれは誤り -->
*** [[トクサ科]] {{Sname||Equisetaceae}} {{small|{{AU|Michx.}} ex {{AUY|DC.|1804|bio=bot}}}}{{Sfn|PPG I|2016|pp=563–603}}
**** †[[スキゾネウラ]]{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}} {{snamei||Schizoneura}} {{small|{{AU|Schimper}} & {{AUY|Mougeot||1844|bio=bot}}}}{{Sfn|Bomfleur ''et al.''|2013|pp=1–17}}{{refn|group=注釈|{{Harvtxt|Zimmermann|1959}} では{{sname||Schizoneuraceae}} に置かれる{{Sfn|Zimmermann|1959|p=217}}。}}
**** †[[ネオカラミテス]]{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}} {{snamei||Neocalamites}} {{small|{{AUY|Halle|1908|bio=bot}}}}{{Sfn|Bomfleur ''et al.''|2013|pp=1–17}}{{refn|group=注釈|{{Harvtxt|Elgorriaga ''et al.''|2018}} ではトクサ科の姉妹群として置かれ、トクサ科には含まれない{{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}。}}
**** †{{snamei||Spaciinodum}} {{small|{{AU|Osborn}} & {{AUY|Taylor|1989|bio=bot}}}}{{Sfn|Osborn ''et al.''|2000|pp=225–235}}{{Sfn|Elgorriaga ''et al.''|2018|pp=1286–1303}}
**** †[[エキセティテス]]{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}} {{Snamei||Equisetites}} {{small|{{AU|Sternb.}}}}{{Sfn|岩槻|1975|pp=170–173}}(トクサ属の特徴を持つ[[形態属]]{{Sfn|西田|2017|pp=148–154}})
**** [[トクサ属]] {{Snamei||Equisetum}} {{small|{{AU|L.}}}}{{Sfn|PPG I|2016|pp=563–603}}{{Sfn|Christenhusz|Chase|2014|pp=571–594}}


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
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=== 注釈 ===
{{Reflist}}
{{Notelist}}
=== 出典 ===
{{Reflist|30em}}


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
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* [[トクサバモクマオウ]] {{snamei||Casuarina equisetifolia}} - トクサ類に似た枝を付ける被子植物


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トクサ類
Sphenophyllum miravallis Equisetum pratense
分類PPG I (2016)[注釈 1]
: 植物界 Plantae
上門 : 陸上植物上門 Embryophyta
: 維管束植物Tracheophyta
亜門 : 大葉植物亜門 Euphyllophytina
: 大葉シダ綱 Polypodiopsida
亜綱 : トクサ亜綱 Equisetidae
学名
Equisetidae
Warm.
タイプ属
Equisetum L. (1753)
シノニム
和名
トクサ亜綱
英名
horsetails

トクサ類(トクサるい)は、大葉シダ植物に含まれる分類群の1つである。現在学術的に広く用いられるPPG I (2016) によるシダ植物の分類体系では、トクサ亜綱 Equisetidae亜綱の分類階級に置かれるが[5]分岐分類学による解析および分子系統解析が進む以前は維管束植物内の系統関係に諸説あり、様々な階級に置かれてきた[6]。現生種は1目1科1属(つまり、トクサ目とトクサ科は単型)からなり、トクサ属 Equisetum に15種のみが含まれる[7][5][8][9]有節類[10](ゆうせつるい)、有節植物(ゆうせつしょくぶつ、Articulatae[11][12]スフェノプシダSphenopsida[注釈 2][10]楔葉類(けつようるい、Calamophytina[11][12]、トクサ植物[14]などとも呼ばれた。ただし、楔葉類はその中のスフェノフィルム目 Sphenophyllales を指すこともある[10]

分類階級

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植物の最初の階層的分類体系カール・フォン・リンネの『植物種誌』(Species Plantarum1753年) で提示され、トクサ類はシダ類 Filices に含まれていた[15]アウグスト・アイヒラー (1883) による分類体系では、楔形の葉や特異な節構造を持つ茎の形態から[12]シダ植物の中でも独立のトクサ綱 Equisetineae に置かれ、ほかのシダ類が含まれるシダ綱 Filicineae および現在の小葉類が含まれるヒカゲノカズラ綱 Lycopodineae とは分けられた[16]。エドワード・ジェフレーは初めて維管束植物に小葉類 Lycopsida と大葉類 Pteropsida の2系統があることを認識したが、そのうちトクサ類は小葉類に含まれると考えた[17][18]。1920年代以降、デボン紀の化石シダ植物の研究が進み、シダ植物の各綱の差異はシダ類裸子植物の差異よりも大きいと考えられるようになった[19]。例えば、アメリカの植物学の教科書に広く受け入れられた Tippo (1942) の分類体系では、トクサ類は楔葉植物亜門 Sphenopsida として維管束植物門 Tracheophyta に置かれ、種子植物シダ類を含む大葉植物亜門 Pteropsida および小葉植物亜門 Lycopsida とは分けられていた[16]。その後、シダ植物マツバラン類(無葉類)、ヒカゲノカズラ類(小葉類)、トクサ類(楔葉類)、シダ類(大葉類)の4群に大別されるというのが定説とされ[6][20]、各群は研究者によって門や亜門、綱、目などさまざまな高次の分類階級に置かれてきた[6]。初期の分子系統解析では、小葉類以外の3分類群が種子植物の姉妹群として単系統群(大葉シダ植物)をなすことが示され、トクサ類は中でも基部で分岐した系統であることが示唆されたが、一方で他の真嚢シダ類との系統関係は未解明であった[12][注釈 3]。その後、DNAの情報量を増やした分子系統解析により大葉シダ類の中で最も基部に分岐する(残りの姉妹群となる)ことが示され[23][24][12]、現在では大葉シダ綱 Polypodiopsida (Monilopsida) の下位に置かれトクサ亜綱 Equisetidae とする[25][5][26][27][注釈 4]

以下に階級と名称、及び採用した分類体系の例を示す。

門 - divisio Equisetophyta
Cronquist, Takhtajan & Zimmermann (1966) による。phylum Calamophyta Bessey (1907) および divisio Equisophyta Boivin (1956)シノニムとした[1]。下位に classis Hyeniataeclassis Sphenophyllataeclassis Equisetatae の3綱を設立した[1][注釈 5]
門 - トクサ門 Sphenophyta
ギフォード & フォスター (2002) による。プセウドボルニア目 Pseudobornialesスフェノフィルム目 Sphenophyllalesトクサ目 Equisetales からなるとする[8]ロボク目 Calamitales はトクサ目のシノニムとする[8]
門 - トクサ門 Calamophyta
田川 (1959) による。SphenopsidaArticulataeEquisetinae同義とし、ヒエニア綱 Hyeniopsidaヒエニア目 Hyeniales)、プセウドボルニア綱 Pseudoborniopsidaプセウドボルニア目 Pseudoborniales)、スフェノフィルム綱 Sphynophyllopsidaスフェノフィルム目 Sphenophyllalesケイロストロブス目 Cheirostrobales)、トクサ綱 Equisetosidaカラミテス目 Calamitalesトクサ目 Equisetales)の4綱6目を置いた[32]
門 - 有節植物門 Arthrophyta[8]
茎の連結構造に注目した名称[8]
亜門 - 有節植物亜門 Sphenophytina
岩槻 (1975) による。下位に有節植物綱 Sphenophyllopsida 1綱を置き、その中にヒエニア目 Hyenialesプセウドボルニア目 Pseudobornialesスフェノフィルム目 Sphenophyllalesロボク目 Calamitalesトクサ目 Equisetales の5目を含む[11]
綱 - トクサ綱(有節植物綱[8]Articulatae
伊藤洋 (1972) による。下位にトクサ科 Equisetaceae を置いた[33]。学名及び有節植物綱の名は茎の連結構造に注目した名称[8]
綱 - トクサ綱 Sphenopsida
田村 (1992) による。下位にトクサ目 Equisetalesスフェノフィルム目 Sphenophyllalesロボク目 Calamitales の3目を置いた[34]。なお、Articulatae も併記されている[34]
綱 - トクサ綱 Equisetopsida
西田 (2017) による。下位にプセウドボルニア目 Pseudobornialesスフェノフィルム目 Sphenophyllalesトクサ目 Equisetales の3目を置く[35]

系統関係

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Wickett et al. (2014)Puttick et al. (2018) による分子系統解析の結果に、Kenrick & Crane (1997)Elgorriaga et al. (2018)などによる化石植物の系統樹を加えた維管束植物の系統樹は次のようになる[36][23][24][28]

トクサ類を含む大葉シダ類は種子植物を含むクレードである木質植物 Lygnophyta とともに大葉植物 Euphyllophytina にまとめられ、トリメロフィトン類 Trimerophytopsidaステムグループとする[37]。かつてトクサ類として分類されていた化石植物に、ヒエニア Hyeniaカラモフィトン Calamophyton があり、これらは現在はクラドキシロン類とされる。例えば、デボン紀ヒエニア目は、トクサ類の形質をやや不規則に備えているため、かつてはこれが特殊化を重ねて進化し、ロボク類(ロボク科 Calamitaceae)とスフェノフィルム類(スフェノフィルム目 Sphenophyllales)へと分岐したと考えられていた[11]

維管束植物

小葉植物 Lycophytina

大葉植物

トリメロフィトン類 Trimerophytopsida

大葉シダ植物
トクサ亜綱

スフェノフィルム目 Sphenophyllales

トクサ目

アルカエオカラミテス科 Archaeocalamitaceae

ロボク科 Calamitaceae

トクサ科 Equisetaceae

Equisetales
Equisetidae

リュウビンタイ目 Marattiales

マツバラン目 Psilotales

ハナヤスリ目 Ophioglossales

薄嚢シダ亜綱 Polypodiidae

Polypodiopsida
木質植物

種子植物 Spermatophyta

Lygnophyta
Euphyllophytina
Tracheophyta

形態

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トクサ類の胞子体ではが分化している[11][38][39]。顕著な共有派生形質は楔葉(輪生葉)と胞子嚢床である[40]

[編集]
イヌドクサ Equisetum ramosissimum の茎の断面図。中央に大きな髄腔、その周りに小さな通水道、その周りにそれより少し大きな通気孔がある。

茎は匍匐性の根茎(地下茎)と直立する地上茎があり、ともにはっきりした節構造をもっている[11][7][34]。根茎には節ごとに節部から根と鱗片状の小葉を輪生する[10][11]。地上茎では基部の数節から不定根が輪生し[11]、それより上の直立する茎は一般に中空で節があり、節から小葉および小枝が輪生する[10][38]。地上茎に分岐するものとしないものとがある[11]。茎は緑色で光合成を行う[38]

茎の維管束原生中心柱または管状中心柱で、特殊な腔所があって独特の配列をしている[11][39]葉隙は持たない[39]導管のあるものもあるが、これは節間に限られている[11]。節部では維管束が輪になり、それから枝へ入る維管束や葉跡が分出する[11]。茎葉の表皮細胞壁にはケイ酸質を含む[10][8]

化石種の中には、維管束形成層による二次肥大成長が顕著なものもある[11]スフェノフィルム目ロボク科では一次木部の周りに維管束形成層が形成され、内側に二次木部、外側に二次篩部を形成する[40]大葉シダ植物の共通祖先では維管束は中原型放射原生中心柱であったが、スフェノフィルム目の茎は中実で、外原型の3箇所の原生木部を頂点とする三角形の一次木部が分化し、その周囲に二次木部が少し発達する[10][40]アルカエオカラミテスでは中心柱は中原型の環状で、二次木部は形成するが中央に髄腔がなく、通水道と通気孔のみをもつ[7]ロボク科は、トクサを大形にした外見を示し、茎は髄腔と通水道を持ち中空で節部だけ中実となり、二次組織が発達して高さ10 mメートルに達する高木となる[10][40]。また、ロボク科とトクサ科では原生木部が内原型に進化した[40]。スフェノフィルム目および次に示すロボク科ではともに維管束形成層を形成し、二次成長を行うため、トクサ類の共通祖先で両面維管束形成層が進化したと推定される[40]種子植物を含む木質植物でも両面維管束形成層を進化させており、トクサ類以外の大葉シダ植物でこれを二次的に消失した可能性もある[40]

トクサ科では髄腔通水道通気孔(通気腔)からなる通気組織が発達し、地上茎が中空である[7][40]。維管束内と皮層にも穴が開いている[7]。髄腔および通水道はロボク科ももち、それらの共通祖先で獲得したと考えられている[40]。髄腔は茎の中央にある空洞で、通水道は原生木部周辺にある大きな穴である[40]。通気孔のある部分と無い部分では茎の成長が異なり、茎の表面では維管束のある部分が出っ張り、通気孔のある部分がへこんでいる[40]。これらの構造は円柱のように軽く丈夫である[40]。トクサ属ではロボク科とは異なり両面維管束形成層を持たないため、それを二次的に消失したと考えられている[40]

[編集]

トクサ属の一次根は短命である[8]。それ以外の根は不定根で、全て茎の節から生じる[11][8][34]

根端分裂組織は1つの頂端細胞(四面体細胞)からなる[8]。頂端細胞は四つの切断面をもち、最も外側のものが根冠を生み出す[11][8]。頂端細胞の側方の分裂により基部方向に娘細胞が形成され、順に維管束皮層表皮の起源細胞となる[8]。頂端細胞は活動を静止しておらず、核内倍数体にもなっていない[8]

根の皮層外層は厚い細胞壁を持ち、内層では細胞壁は薄くなる[8]。根の木部三原型または四原型で、細根では二原型となることもある[8]。皮層から分化する内皮および内鞘の細胞は同放射線状に接して生じており、同一起源である[8]側根内皮に起源する[8]

[編集]
スフェノフィルムの復元図。楔葉が輪生する。
トクサ Equisetum hyemale の輪生葉。袴状の葉鞘を形成する。
の輪生葉。下には小枝が輪生する。
スギナ E. arvense の胞子茎に見られる袴状の輪生葉。光合成を行わない。

葉は楔葉(けつよう、sphenophyll輪葉[11]、輪生葉[40])といわれ、節に輪生し、葉跡は1本であるが、古い時代のものでは脈が又状分岐するのもある[11][41]プセウドボルニア Pseudobornia では2回二又分枝した軸に細かい葉片が鳥の羽状につく[7]スフェノフィルム類では楔形の1–2 cmセンチメートルの葉を輪生する[10]ロボク科は節部に癒着して鞘状になった小形の葉を形成する[10]。ロボク科の葉にはへら型のアンヌラリア Annularia と先細りのアステロフィリテス Asterophyllites があり、長さ数 mm から数 cm になり、葉脈は1本である[7]

構造が単純化したトクサ属のものは葉緑体を持たず、小葉のように退化して光合成は行わない[11][7]。葉の基部が隣同士で融合して状の葉鞘を作るものがある[11][38]。現生トクサ属の輪生葉では四面体の茎頂端幹細胞から3面で順次細胞が切り出され、葉原基が作られる[40]。個々の娘細胞形成にはタイムラグがあるが、葉原基形成時は同調する[40]

生殖器官

[編集]
スギナの胞子茎に頂生する胞子嚢穂。それぞれの胞子嚢床の先端に胞子嚢をつける。

胞子は球果状の胞子嚢穂につく[10][38][8][39]。胞子嚢穂はふつう栄養成長を行う茎の先端に付くが、スギナ Equisetum arvense では胞子嚢穂をつける胞子茎が栄養茎と分化しており、特にツクシと呼ばれる[42]。胞子嚢穂は胞子嚢床[11][40](胞子嚢托[39][7][34]sporangiophore)と呼ばれる枝状の構造に分かれ、胞子嚢はこれに頂生する。胞子嚢床が他の植物のどの器官と相同であるかには様々な説があり、胞子嚢をつける枝や胞子葉であるという説がある[43][44]。ほとんどの場合に胞子嚢床はかぎ型に曲がっているので胞子嚢の先端は茎の方を向いている[11][40]ロボク科はトクサ科によく似た胞子嚢穂を生ずるが[10]スフェノフィルム類およびロボク科では胞子嚢床の間に托葉状の葉(苞葉[7])が加わってそれを保護し、胞子嚢穂をつくるが、その構造が極めて複維になっているものもある[11][40]。スフェノフィルム類では胞子嚢床が1枚の苞葉の上側に2個作られ、それぞれ二又分枝後に胞子嚢を頂生する[7]。現生のトクサ属では胞子嚢床を形成する生殖部には苞葉は形成されず、胞子嚢床の先端が盾状に広がり胞子嚢を保護している[7][40]アルゼンチンで見つかっているペルム紀Crucitheca の胞子嚢穂では栄養葉の生じる節間に胞子嚢床が数層輪生し、この構造が数回繰り返される[7]。現生のトクサ属ではこの胞子嚢穂が一つだけになり、胞子嚢床の間に栄養葉を欠くと考えられている[7]。胞子嚢穂は外見上節として輪生しているが、発生的には節間に繰り返される生殖単位 (reproductive phytomer) だと考えられている[7]

胞子には同形胞子性のものも異形胞子性のものも知られており[11][39]、ロボク科の一部で異形胞子性が進化した[40][34]。現生のトクサ科およびロボク科ポトキテス Pothocites では同形胞子性で、胞子外壁に層状構造を持ち、胞子壁の表面が剥がれて4本のリボン状になり、胞子散布に役立つ弾糸が付着する[10][40][7]。異形胞子性のロボク科には北米の後期石炭紀に見られるカラモカルポン Calamocarpon があり、この長さ3 mmミリメートルになる大胞子嚢内には大胞子が1個だけ成熟し、大配偶体が形成される[7]小葉植物レピドカルポン Lepidocarpon被子植物の真の種子とは異なり、大胞子嚢を包み込む小葉やテローム群に当たる構造がトクサ類にはなかったため、種子様器官の形成には至らなかった[7]

配偶体

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配偶体(前葉体)は現生のトクサ属について知られており、緑色の葉状体で、扁平な構造をもっている[11][10]。下面には根毛をつけ、上面には中央に大きく発達した中褥のまわりに数個の光合成を営む板状突起(裂片)を出す[10][11]。雌雄性があり、それぞれ造卵器(頸卵器)と造精器を生ずる[10]。頸卵器は絨毯組織 (cushion) につき、頸部が突出する[11]。造精器は絨毯組織に埋まっていることが多く、かなり大きくて、多数の精子を放出する[11]。精子は螺旋状に巻き、多数の鞭毛をもっている[11][10]受精卵の第一分裂は頸卵器の軸と直角の面で行なわれ、胚柄をもたず、外向的に発生し頸卵器の外側に向けて生長していく[10][11]胚発生の初期のどの細胞からどの組織が導かれるかは決まっていない[11]

進化と多様性

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石炭紀の森林の様子。
ネウロプテリス Neuropterisペコプテリス Pecopterisシダ種子植物)、ナンヨウスギ属 Araucaria裸子植物)、リンボク Lepidodendron小葉植物)、モクマオウ属 Casuerina被子植物)などとともにトクサ類のアステロフィリテス Asterophyllitesロボク Calamites が生える。
現生の巨大な Equisetum giganteumプレトリア大学にて。

トクサ類の祖先的な植物としてイビカ Ibyka が挙げられている[7][41]。イビカは中期デボン紀の化石植物で、主軸から側軸が比較的等間隔で3回単軸分枝を行い、最終分枝は4回程度二又分枝を行って胞子嚢頂生する[7]。胞子嚢をつけた軸は反転するため、テローム説において「反転」によるトクサ類の胞子嚢托の起源を示すように見え、節間が規則的なことからトクサ類との類縁が示唆された[7]。ただし、形態が大きく異なるため分類としてはクラドキシロン綱イリドプテリス科とされることもある[7]

トクサ類の化石はデボン紀から知られているが、最古のものではトクサ類の特徴を不規則にもっており、やがて明瞭な特徴をもったものに置きかわってくる[11]後期デボン紀では、プセウドボルニア目プセウドボルニア Pseudobornia が出現する[7]。プセウドボルニアは高さ20 m、太さ60 cm、枝も3 m になり、スピッツベルゲンアラスカから発見されている[7]

石炭紀の森林

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トクサ類は石炭紀に非常に多様化した[38]。石炭紀からペルム紀にかけての湿地性大森林はトクサ類が主要素の一つとなっていた[11]。そのため、トクサ科は小葉植物ヒカゲノカズラ科イワヒバ科と同様、2億年以上も存続している系統である[45]

スフェノフィルム類 Sphenophyllales は小形の草本またはつる植物、ときに水生で、後期デボン紀に出現し、石炭紀には全世界に広がってペルム紀に絶滅してゆき、日本を含むアジア三畳紀まで残った[7]。石炭紀の林床あるいは林縁植物として繁栄した[7]

ロボク科ともされるアルカエオカラミテス科アルカエオカラミテス Archaeocalamites は、後期デボン紀から見つかっており、後期石炭紀後期に一旦記録が途絶えるが前期ペルム紀まで存続した[7]。ロボク科のロボク(蘆木、カラミテス)Calamites は石炭紀からベルム紀末まで生存した[10][7]。ロボクには材の特徴により3つの形態属が認められる[7]

トクサ科につながる系統

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現生のトクサ属に形態的に類似したものはエキセティテス Equisetites と呼ばれ、最初は後期石炭紀後期から、そして多くは中生代初期から見つかっている[8][7]スキゾネウラ Schizoneura はペルム紀のゴンドワナ大陸で現れ、三畳紀からジュラ紀にかけ欧米アジアでも見られる[7]。中生代にはこれら以外のトクサ科もみられ、三畳紀からジュラ紀になると、ロボク Calamites によく似て、いっそうトクサ属に近い形をもつ小形の草本のネオカラミテス Neocalamites が現れた[10][7]。ネオカラミテスはトクサとは違いその葉はロボク科のアンヌラリア Annularia のように長く、葉鞘を作らないこともある[7]

現生のトクサ属とはっきり認識できるものは始新世から出現する[7]。現生のものはトクサ属15種だけであるが、オーストラリアを除く全世界の温帯湿地渓流沿いに分布する[11][38][39][45]北半球の温帯が分布の中心で、熱帯より温帯のほうが種数が多い[45]。内部には通気孔が通ると同時に気孔が落ち込み、クチクラのような表面の保護層が発達しており、湿地性でありながら乾生植物にみられるような特徴を兼ね備えている[11][34]。現生最大の種はギガンテウム Equisetum giganteum で、そのままでも5–6 m、寄りかかれば12 m にもなる[7]

下位分類

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ロボクの化石。スコットランドノース・エアシャーから。
アンヌラリア Annularia 型の葉をつけるロボクの復元図。
トクサ属の化石。スコットランドノース・エアシャーから。

以下に属までのトクサ亜綱の分類を示す[5][35][7][28]。現生種のみを含むPPG I (2016) の分類体系をもとに[5]、化石植物の下位分類についてはテイラーらの教科書をもとにした西田 (2017) によるトクサ綱の分類および Elgorriaga et al. (2018) による形態と現生種のDNAに基づく系統解析の結果を用いる[35][28]。また、ヒエニア目 Hyeniales を置き、ヒエニア HyeniaProtohyenia を含むヒエニア科 Hyeniaceae およびカラモフィトン Calamophyton を含むカラモフィトン科 Calamophytaceae を置くこともあったが[11][26]、現在これらはクラドキシロン目 Cladoxylales に含まれるとされる[8][46]。ロボク科はその巨大さから単独のとされたこともあった[7]。なお、以下の表ではアルカエオカラミテス科に置かれるアルカエオカラミテスは、西田 (2017) ではロボク科に内包されている[7]。現在では化石種には†を、特に器官属については‡を付した。

脚注

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注釈

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  1. ^ 分類体系としては PPG I (2016) に準拠しているが、PPG I (2016) では綱以下が定められているため、それより上の分類も含め実際は巌佐ほか (2013) による。
  2. ^ なお、語尾 -opsida は綱の階級を示す語尾である[13]。同様に、本項で示される階級の語尾 -phyta-phytina-idae はそれぞれ、亜門、亜綱の語尾である[13]
  3. ^ 例えば Pryer et al. (2004)Lehtonen (2011) ではリュウビンタイ科と姉妹群をなす[21][22]
  4. ^ 化石植物の文脈では Sphenopsida というクレード名で呼ばれることが多い[28][29][30]
  5. ^ なお、自動的にタイプ指定される学名では著者名および日付を変更せずに訂正される[31]ため、 これらの学名はそれぞれHyeniopsida Cronquist, Takht. & W.Zimm. (1966)Sphenophyllopsida Cronquist, Takht. & W.Zimm. (1966)Equisetopsida Cronquist, Takht. & W.Zimm. (1966) として引用される。
  6. ^ 岩槻 (1975) ではロボク科に置かれる[11]
  7. ^ Koretrophyllites ZalesskySendersonia Meyen & MenshikovaTschernovia ZalesskyEquisetinostachys Rasskasova などはこのクレードの胞子嚢穂と似ているが、胞子体全体の様子がわかっていないため、系統解析に含められず不明[28]
  8. ^ Naugolnykh (2002) ではチェルノビア科 Tchernoviaceae に置かれる[53]
  9. ^ Zimmermann (1959) ではSchizoneuraceae に置かれる[2]
  10. ^ Elgorriaga et al. (2018) ではトクサ科の姉妹群として置かれ、トクサ科には含まれない[28]

出典

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参考文献

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関連項目

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