「スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ」の版間の差分
42行目: | 42行目: | ||
『戦争は女の顔をしていない』は舞台化や映画化をされており、劇はソ連各地で上演され、映画は[[ソヴィエト連邦国家賞]]を、[[ライプツィヒ国際ドキュメンタリー映画祭]]では銀の鳩賞を受賞した。『チェルノブイリの祈り』は、[[講談師]]の[[神田香織]]によって講談作品となっている。 |
『戦争は女の顔をしていない』は舞台化や映画化をされており、劇はソ連各地で上演され、映画は[[ソヴィエト連邦国家賞]]を、[[ライプツィヒ国際ドキュメンタリー映画祭]]では銀の鳩賞を受賞した。『チェルノブイリの祈り』は、[[講談師]]の[[神田香織]]によって講談作品となっている。 |
||
1992年には『アフガン帰還兵の証言』の内容をめぐり、一部の帰還兵やその母親から、戦争に従軍した兵士の英雄的名誉を毀損したとして政治裁判に訴えられたが、海外の著名知識人の弁護により一時中断となった。『死に魅入られた人びと』では[[ソ連崩壊]]からの急激な体制転換期に生きる支えを失って自殺を試みた人々を取材している。 |
1992年には『アフガン帰還兵の証言』の内容をめぐり、一部の帰還兵やその母親から、戦争に従軍した兵士の英雄的名誉を毀損したとして政治裁判に訴えられたが、海外の著名知識人の弁護により一時中断となった。『死に魅入られた人びと』では[[ソビエト連邦の崩壊]]からの急激な体制転換期に生きる支えを失って自殺を試みた人々を取材している。 |
||
『[[チェルノブイリの祈り]]』は、ロシアの[[大勝利賞]]、ライプツィヒの[[ヨーロッパ相互理解賞]]、ドイツの[[最優秀政治書籍賞]]を受賞したが、ベラルーシでの出版は独裁政権による言論統制のために取り消された。1996年[[スウェーデン]][[国際ペンクラブ|PENクラブ]]より[[クルト・トゥホルスキー]]賞受賞。2005年、第30回[[全米批評家協会賞]]ノンフィクション部門受賞。2013年[[フランクフルト・ブックフェア|ドイツ出版協会平和賞]]受賞。 |
『[[チェルノブイリの祈り]]』は、ロシアの[[大勝利賞]]、ライプツィヒの[[ヨーロッパ相互理解賞]]、ドイツの[[最優秀政治書籍賞]]を受賞したが、ベラルーシでの出版は独裁政権による言論統制のために取り消された。1996年[[スウェーデン]][[国際ペンクラブ|PENクラブ]]より[[クルト・トゥホルスキー]]賞受賞。2005年、第30回[[全米批評家協会賞]]ノンフィクション部門受賞。2013年[[フランクフルト・ブックフェア|ドイツ出版協会平和賞]]受賞。 |
2020年12月26日 (土) 00:24時点における版
スヴェトラーナ・アレクサンドロヴナ・アレクシエーヴィッチ Светлана Александровна Алексиевич | |
---|---|
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ (2016年4月6日) | |
誕生 |
1948年5月31日(76歳) ソビエト連邦 ウクライナ・ソビエト社会主義共和国、スタニスラフ |
職業 | 作家、ジャーナリスト |
言語 | ロシア語 |
国籍 | ベラルーシ |
主題 | ノンフィクション |
主な受賞歴 |
全米批評家協会賞ノンフィクション部門(2005) ドイツ出版協会平和賞(2013) メディシス賞エッセイ部門(2013) ノーベル文学賞(2015) |
デビュー作 | 『戦争は女の顔をしていない』 |
公式サイト | Voices from Big Utopia |
ウィキポータル 文学 |
|
スヴェトラーナ・アレクサンドロヴナ・アレクシエーヴィッチ(ロシア語: Светла́на Алекса́ндровна Алексие́вич, ベラルーシ語: Святла́на Алякса́ндраўна Алексіе́віч, 英語: Svetlana Alexandrovna Alexievich, Svyatlana Alyaksandrawna Alyeksiyevich、1948年5月31日 - )は、ベラルーシの作家、ジャーナリスト。「スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ」、「スベトラーナ・アレクシエービッチ」表記もある。2015年ノーベル文学賞受賞。
略歴・人物
ウクライナ・ソビエト社会主義共和国に生まれる。ベラルーシ人の父とウクライナ人の母をもつ。父親が第二次世界大戦後に軍隊を除隊すると、ベラルーシ・ソビエト社会主義共和国に移住し、両親は教師となった。
ベラルーシ大学でジャーナリズムを専攻し、卒業後はジャーナリストとして活動。聞き書きを通して、大事件や社会問題を描く。
第1作『戦争は女の顔をしていない』では、第二次世界大戦に従軍した女性や関係者を取材。第2作『ボタン穴から見た戦争』では、第二次世界大戦のドイツ軍侵攻当時に子供だった人々の体験談を集めた。1988年にはソヴィエト連邦の介入下にあるアフガニスタンを取材し、『アフガン帰還兵の証言』でアフガニスタン侵攻に従軍した人々や家族の証言を集めたが、一般のソヴィエト国民に隠されていた事実が次々と明らかにされ、軍や共産党の新聞はアレクシエーヴィッチを一斉に攻撃した。『チェルノブイリの祈り』では、チェルノブイリ原子力発電所事故に遭遇した人々の証言を取り上げているが、ベラルーシでは未だに事故に対する言論統制が敷かれている。2003年に来日し、チェルノブイリを主題に講演を行なった。
『戦争は女の顔をしていない』は舞台化や映画化をされており、劇はソ連各地で上演され、映画はソヴィエト連邦国家賞を、ライプツィヒ国際ドキュメンタリー映画祭では銀の鳩賞を受賞した。『チェルノブイリの祈り』は、講談師の神田香織によって講談作品となっている。
1992年には『アフガン帰還兵の証言』の内容をめぐり、一部の帰還兵やその母親から、戦争に従軍した兵士の英雄的名誉を毀損したとして政治裁判に訴えられたが、海外の著名知識人の弁護により一時中断となった。『死に魅入られた人びと』ではソビエト連邦の崩壊からの急激な体制転換期に生きる支えを失って自殺を試みた人々を取材している。
『チェルノブイリの祈り』は、ロシアの大勝利賞、ライプツィヒのヨーロッパ相互理解賞、ドイツの最優秀政治書籍賞を受賞したが、ベラルーシでの出版は独裁政権による言論統制のために取り消された。1996年スウェーデンPENクラブよりクルト・トゥホルスキー賞受賞。2005年、第30回全米批評家協会賞ノンフィクション部門受賞。2013年ドイツ出版協会平和賞受賞。
プーチンやルカシェンコには批判的で特にベラルーシではその著書は独裁政権誕生以後、出版されず圧力や言論統制を避けるため、2000年にベラルーシを脱出し、西ヨーロッパを転々としたが、2011年には帰国した。日本では福島第一原子力発電所事故発生後に起こった脱原発の流れの中、『チェルノブイリの祈り』が岩波現代文庫として再刊されたことをきっかけに名が知られるようになった。
2015年、ジャーナリストとして初めてノーベル文学賞を受賞した[1]。ロシアによるウクライナへの干渉やクリミア併合を批判しているためロシアでは非難する声が強いが、ウクライナへの干渉はルカシェンコは賛同していないことやベラルーシ唯一のノーベル賞受賞者であることから受賞には政府は祝辞を送った。
2020年8月9日の大統領選挙直後からルカシェンコに対する退陣要求デモが続く中、8月26日にはアレクシエーヴィッチにも捜査当局が出頭を要請し、約40分間の事情聴取を実施した。事情聴取前にはルカシェンコが反政府側との対話に応じるよう、ロシアを含めた世界に対して協力を要請した[2]。
2020年9月28日、アレクシエーヴィッチがドイツに向けて出国した。同国メディアがアレクシエーヴィッチの秘書の話として伝えた[3]。
主要著書
2015年10月時点で群像社から出版された日本語訳書3冊(3冊の累計で約1万部を発行)については出版権切れのため増刷が不可能となっていたが[4][5]、このうち『戦争は女の顔をしていない』『ボタン穴から見た戦争』の2冊は2016年2月に岩波書店から岩波現代文庫として再刊された[6]。日本経済新聞社の『アフガン帰還兵の証言』も既に出版権切れで重版の予定はない[5]。唯一出版権を保持し続けていた岩波書店の『チェルノブイリの祈り』は10月19日に文庫第4刷の重版分の出庫を開始し[5]、2015年12月時点で文庫第7刷、5万部を発行[7]。日本語訳が公刊されていなかった新作『セカンドハンドの時代』は2016年9月に岩波書店から刊行。
- У ВОЙНЫ НЕ ЖЕНСКОЕ ЛИЦО (1984) - 日本語訳『戦争は女の顔をしていない』 三浦みどり訳、群像社、2008年。
- ПОСЛЕДНИЕ СВИДЕТЕЛИ (1985) - 日本語訳『ボタン穴から見た戦争』 三浦みどり訳、群像社、2000年。 - 原題は『最後の生き証人』。
- ЦИНКОВЫЕ МАЛЬЧИКИ (1991) - 日本語訳『アフガン帰還兵の証言』 三浦みどり訳、日本経済新聞社、1995年。 - 原題は『亜鉛の少年たち』。
- Зачарованные смертью (1994) - 日本語訳『死に魅入られた人びと―ソ連崩壊と自殺者の記録』 松本妙子訳、群像社、2005年。
- ЧЕРНОБЫЛЬСКАЯ МОЛИТВА. ХРОНИКА БУДУЩЕГО (1997) - 日本語訳『チェルノブイリの祈り』 松本妙子訳、岩波書店、1998年(2011年、岩波現代文庫に収録)。
- Время секонд хэнд (2013) - 日本語訳『セカンドハンドの時代 「赤い国」を生きた人びと』 松本妙子訳、岩波書店、2016年
映像化作品
- 『戦争は女の顔をしていない』
- 『亜鉛の少年たち』
ほか
参照
- ^ The Nobel Prize in Literature 2015 Svetlana Alexievich
- ^ “ベラルーシ ノーベル賞作家も事情聴取「世界の助けが必要」”. NHK NEWSWEB. NHK. (2020年8月27日) 2020年8月28日閲覧。
- ^ “ノーベル賞作家、ベラルーシ出国 ドイツへ:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞. (2020年9月29日)
- ^ 塩原賢「ノーベル文学賞なのに訳書増刷できず 横浜の出版社」、朝日新聞デジタル、2015年10月24日 16:17。
- ^ a b c “ノーベル賞・ベラルーシ作家の作品 版権消滅で入手困難に”. 東京新聞、2015年10月27日朝刊. オリジナルの2015年11月23日時点におけるアーカイブ。 2015年11月23日閲覧。
- ^ “入手困難のノーベル賞作家訳書、岩波現代文庫で再刊へ”. 朝日新聞. (2015年12月12日) 2015年12月13日閲覧。
- ^ 市川真人 (2015年12月27日). “チェルノブイリの祈り—未来の物語 [著]スベトラーナ・アレクシエービッチ”. BOOK.asahi.com. 2016年3月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月17日閲覧。
外部リンク
- 「とあるユートピアの物語」~アレクシェービッチ講演(OurPlanet-TV、2016年11月28日の東京外国語大学での講演)
- チェルノブイリの祈り(神田香織サイト内)
- アレクシエーヴィチへの問いかけ、あるいは、変化の兆し(チェチェン総合情報 チェチェン紛争に関する情報を発信し続けている)