「就職氷河期」の版間の差分
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日本、韓国、中国以外の国でも[[1990年代]]から[[2000年代]]のグローバリゼーションに遭遇した就職氷河期が存在する。 |
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折しも1991年の[[総量規制]]によるバブル崩壊と期を同じくして、世界情勢は1991年12月の'''[[ソ連崩壊]]'''による[[東西冷戦|冷戦]]の終結という歴史の転換点を迎え、経済面でも、旧共産圏が市場経済化するなどきわめて大きな変化がいくつも生じた。[[グローバリゼーション]]が進み、労働力の供給源が日本その他の先進工業国から、中国を初めとする新興諸国 ([[BRICs]]) へと大量に移動していったこともそのひとつである。 |
折しも1991年の[[総量規制]]によるバブル崩壊と期を同じくして、世界情勢は1991年12月の'''[[ソビエト連邦の崩壊]]'''による[[東西冷戦|冷戦]]の終結という歴史の転換点を迎え、経済面でも、旧共産圏が市場経済化するなどきわめて大きな変化がいくつも生じた。[[グローバリゼーション]]が進み、労働力の供給源が日本その他の先進工業国から、中国を初めとする新興諸国 ([[BRICs]]) へと大量に移動していったこともそのひとつである。 |
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解雇規制の厳しいヨーロッパにおいては、すでに職に就いている中高年層の解雇や賃金カットが難しいこともあって、若者が就職難に直面している。特に[[スペイン]]では若年層の失業率が極端に高く、25歳以下の失業率は43.8%(2009年11月)となっている。 |
解雇規制の厳しいヨーロッパにおいては、すでに職に就いている中高年層の解雇や賃金カットが難しいこともあって、若者が就職難に直面している。特に[[スペイン]]では若年層の失業率が極端に高く、25歳以下の失業率は43.8%(2009年11月)となっている。 |
2020年12月25日 (金) 23:51時点における版
就職氷河期(しゅうしょくひょうがき)は、社会的に就職難となった時期の通称。
就職氷河期に該当する世代は1970年(昭和45年)から1982年(昭和57年)[1][2][3]や1984年(昭和59年)[4]までに生まれた1990年代半ばから2000年代前半[5][6][7]に社会に出たり、2000年前後に大学を卒業[8]した、現在において40歳前後[9][10][11][12][13][14]や30代後半から40代後半[15][16][17][18][19][20]を迎える世代のことだとされる。
就職氷河期とはリクルート社の就職雑誌『就職ジャーナル』が1992年11月号で提唱した造語。1994年の第11回新語・流行語大賞で審査員特選造語賞[21]を受賞した。
日本(1993-2005年卒)
バブル崩壊後の就職が困難[22]であった時期(1993年から2005年卒が該当するとされる[23])を指す語。
経過
詳しい採用状況については#採用状況を参照
バブル崩壊前の就職状況
第1次石油危機後の1970年代半ばから1985年までは、日本の労働市場における新規求人倍率は 0.9倍から1倍、有効求人倍率は 0.6倍から0.7倍の間で推移していた。しかし1985年9月のプラザ合意と、それに伴う円高をきっかけに、日本経済は低金利政策で内需主導のバブル景気に入り、企業が過剰な設備投資と雇用をおこなったため、有効求人倍率は 1.4倍まで跳ね上がり、バブル景気が本格化した1988年から1992年まで1倍を上回る状況が起きた。
就職氷河期突入
詳しい経済状況については失われた10年などを参照
1990年1月より株価や地価などの暴落が起こり、「バブル崩壊」と呼ばれる様相を呈し、翌1991年2月を境に安定成長期(バブル期も含む)が終焉した。景気が後退するなかで、バブル期の過剰な雇用による人件費を圧縮するために、企業は軒並み新規採用の抑制を始めた。さらに、同時期の政界では短期間で枠組が著しく変動する大混乱のさなかにあったため、政府が景気対策に本腰を入れて取り組むことが困難な状況であった。
それでも、1993年を底として景気がゆるやかに回復し、1997年新卒の就職状況はいったんは持ち直したが、消費税引き上げなどの緊縮財政に加え、1997年夏のアジア通貨危機、不良債権処理の失敗から1997年下半期から1998年にかけて大手金融機関が相次いで破綻したことなどで景気が急速に冷え込んだため、再び就職状況が悪化した。この時期は、求人数の大幅削減のほかに、企業の業績悪化や新興国との競争激化によって新卒を企業人として育成する余裕がなくなり、現場に即投入できる「即戦力」を新卒に求める風潮が現れた。これにより、雇用のミスマッチが発生し、単純に求人数が増えても失業率が下がりにくくなり、収入と生活の安定を求めて本人の能力や専門知識とはかけ離れた職場に否応無く入らなければならなくなり、その様な環境下で短期間で解雇に追い込まれる状況が発生した。また、大卒者の就職についても、1996年に就職協定が廃止されて以後は企業が優秀な大学生を囲い込むべく青田買いが発生し、こうした環境の変化により多くの大学生に混乱と過重な心理的負担を与えることとなった。さらに1999年からトライアル雇用が始まり採用後、トライアル雇用期間中であればすぐに解雇しても違法にならず新卒でも即戦力にならないとすぐに解雇される新卒切りや新卒使い捨てが行われるようになった。
このような背景があり、有効求人倍率は1993年から2005年まで 1 を下回り、新規求人倍率は1998年に 0.9 まで下がった。また、バブル期に比べて、新卒者が困難な就職活動を強いられたため、フリーターや派遣労働といった社会保険の無い非正規雇用(プレカリアート)になる者が増加した[24][25]。
就職氷河期の一時終結と既卒者の就職状況
2000年代半ばの輸出産業の好転で、雇用環境は回復し、2005年には就職氷河期は一旦終結した。新卒者の求人倍率は上昇し、2006年から2008年の3年間は一転、売り手市場と呼ばれるようになり、有効求人倍率は2006年から2007年にかけて 1 を上回った。13年近くにわたる採用抑制の影響により、多くの企業で人手不足となっており、労働環境が苛酷になるブラック企業が増加した。
また、採用抑制の結果、従業員の年齢構成がいびつになったため、技術・技能の伝承が困難になっていた。このため、企業はそれまでの態度を覆し、こぞって新卒の大量採用に走り、求人倍率そのものは「バブル期並み、もしくはそれ以上」とも言われていた。
特に金融関係の採用意欲は強く、大手メガバンクの中には一度に数千人採用した例もあった。ただし、氷河期に比べれば採用基準は緩和されたものの、依然として厳選採用の傾向にあった。優秀な学生がいくつも内定を獲得した一方で、内定を一つ得るのに苦労した学生もおり、「内定格差」なる言葉も生まれた。
また新卒者の雇用環境が改善される一方で、既卒者の雇用環境は厳しいままであり、世代間による雇用機会の不均衡を指摘する声が強まった。日本の労働市場における採用慣行は「新卒一括採用」と「年功序列」に偏重しているため、既卒者(第二新卒など)の就職が著しく不利になっているから、卒業後すでに相当の年数が経った氷河期世代の求職者、特にそれまで正規雇用されたことがない者は、極めて不利な条件下に追い込まれている。
団塊の世代の定年退職による労働力減少への対応についても、大多数の企業は新卒者ないしは賃金の安い外国人労働者、定年退職者の再雇用によって補うことがあり、必ずしも氷河期世代の救済にはなっておらず、非正規雇用の割合は2008年まで上がり続けているという状況がある[26]。
採用状況
新卒採用
- 高卒
2005年3月高校・中学新卒者の就職内定状況等によれば、規模が500人以上の企業においての求人数は1992年の約34万人をピークに、2004年には約3万人にまで激減しており、また製造業での求人数も1992年の70万人であったのが2004年は8万人に激減した[27]。要因としてはいくつかいわれており、例えば、大手企業が大卒者等の高学歴化へのシフトなどが指摘されている[28]。 新卒時は好景気であった団塊ジュニアの高卒者もまた、1997年のアジア通貨危機や1999年の産業再生法施行後には人員削減により不安定雇用に追い込まれた者も少なくない[29]。高校に来る求人が大幅に減ったため学校側は、消費者金融やパチンコ屋といったかつては考えられなかった職種の求人も受け入れるようになった。
ただし、就職難を背景に次第に大学などへの進学率が増加し、高卒での就職率が減少した[30]こと、また、大学生などとは異なり、就職希望の高校生で就職できなかった者は、専門学校などへの進学に進路を変更した者も多かったため、大卒などの就職難に比べると、高校新卒者の就職難はあまり深刻視されなかったという面もある。
- 大卒
大卒者の雇用環境もこの時期に厳しく悪化した。リクルートワークスの調査によれば、1991年をピークに求人倍率は低下傾向で推移し、2000年にはついに1倍を下回った。多少の変動はあるものの、2002年を谷とする景気の回復に伴い求人数が増加するまで、長期間にわたって雇用環境は厳しい状況となった。
その結果就職率も惨憺たる状況となった。学校基本調査によれば、1991年の81.3%をピークに低下を続け、2003年には55.1%(専門学校の就職率は76%)と最低記録を更新し、就職氷河期の中でも最も就職率の低い時期となった。また、この1990年代以降には、幸運にも新卒や新卒相当で正社員の地位にありつけたとしても、たまたま求人があった全く畑違いの業種に飛び込まざるを得ない状況もあり、本人の志望や専門とはかけ離れ、大学の専門教育で身に付けた知識や能力が役に立つ機会があるとは到底思えない[31]、本意とは到底考え難い仕事しか選ぶ事ができなかった者や、総合職や専門職の新卒の正社員として就職できぬまま単純労働者や非正規雇用となった高学歴者が、様々な業種の末端で見られるようになった。就職難のため、大学卒業後に専門学校などの教育機関にさらに通う(ダブルスクール)者も増え[32]、意図的に大学卒業の手続きを取らずに留年して就職活動を継続する「就職留年」をする者もいる[33]。
中途採用
中途採用は新卒以上に厳しい状況となった。企業が「即戦力」を要求するために、新卒時に正社員へと就職できなかった者の多くが、その後も、正社員でない仕事に就職したり、非希望型ニートと呼ばれる就職活動自体を断念したりする者も現れた。離職者についても、十分なスキルを蓄積できなかった者は再就職が困難な状態となった。また、雇用政策は新卒に重点をおくために、中途採用の方の雇用対策まで手が回らないこともあり、さらに年齢や性別を理由に門前払いされるケースもある。
人手不足が深刻な企業や団体(農業や福祉業界など)では、特に、即戦力としてのスキルを持たない就職氷河期世代のフリーターやニートの雇用を行っている企業や団体も存在している。
有効求人倍率については、1993年以降徐々に減少していき、1999年には0.48を記録した。しかし、その後徐々に上昇し、2006年には1.06を記録するまでに回復した。しかし、その後急激な減少に転じ、2009年には、1999年に前回の就職氷河期で最低を記録した0.48をさらに下回る0.47となった。そして、2009年7月の完全失業率は国全体で5.7%に、有効求人倍率は0.42倍に下がった。そのなかでも、25歳-34歳(1975年-1984年生まれ)の完全失業率は6.1%に、15歳-24歳(1985年-1994年生まれ)の完全失業率は9.6%にのぼった(2009年4月)[34]。その後の求人倍率は上昇傾向であり、2011年は0.65であった。
就職氷河期後の新社会人の就職観の変化
バブル景気前後に生まれ、バブル崩壊後の不景気と日本(を含む先進諸国)の経済衰退という時代に少年期を送ったポスト氷河期世代は、就職難に直面する氷河期世代の後姿をみて育ったため、安定志向や大企業志向が強まっている[35]。そのため、中小企業は新卒が集まらない状況に直面している。2005年放送のNHK『日本の、これから』のスタジオ生討論においても、中小企業経営者らが、「町工場は人手がまったく足りない」、「求人を出している」と語っていた。また、大手や中堅企業でも飲食や介護など不人気業種は新卒の確保に苦戦している。
社会の構造と政治
プラザ合意からの円高で、バブル崩壊以前からすでに日本における労働力のコストは高騰していたが、日本企業はバブル景気による収益で高コスト体質による不利をカバーできていたため、旧来的な雇用形態を変えておらず、それゆえ高価な労働力を過剰に抱えていた。それがバブル崩壊を境にいよいよ維持できなくなったことで、リストラによる余剰人員の削減と雇用柔軟性の導入が必要となった。
この動きの一環として、1999年には、小渕恵三内閣によって派遣労働が製造業を除いて原則自由化され、企業が人員を削減する程法人税を減免する「産業再生法」が制定された。この「産業再生法」の背景が、1995年に日経連(当時)が発表した「新時代の『日本的経営』」だとの意見がある。この「新時代の『日本的経営』」では、労働者を「長期蓄積能力活用型グループ」「高度専門能力活用型グループ」「雇用柔軟型グループ」に分けており、派遣労働者やフリーターは「雇用柔軟型グループ」に当たる。
「新時代の『日本的経営』」を支えたとみられる政治思想として、小沢一郎の「普通の国」、小泉純一郎の「聖域なき構造改革」が挙げられる。これらの路線は、「アメリカ型社会の模倣」、「『わずかな強者が主導権を握り、大多数の弱者が貧困と死におびえる階層社会』となる[36]」などと批判されることがある。2004年3月1日には、小泉純一郎内閣によって製造業への派遣労働が解禁され、派遣労働者は爆発的に増大した。ただし、労働者派遣法の改正審議の当時、偽装請負が社会問題化のきざしをみせていた。派遣労働者激増の背景には、偽装請負業者が一般派遣へ流れ、それまで派遣労働者としてカウントされていなかった分の増加が相当の割合で寄与しているという面もある。
日本(2010-2013年卒)
ゆとり世代#就職活動も参照
2010年卒(就職活動は2008年)から2013年卒ごろは、リーマンショック後の特に大学の新卒者の就職が困難になった時期である[37]。
経緯と概要
詳しい経済状況については世界金融危機 (2007年-)#日本経済の状況などを参照
就職氷河期の終結後、数年間続いた「売り手市場」であったが、世界的金融危機やリーマンショック等の影響により景気は後退し、就職状況は一転した。
就活時期には売り手市場のはずであった2009年春卒業予定の学生の内定が取り消されるという事態が続出し[38]、さらに、2010年大学卒業者の就職率は前年卒を7.6%下回る60.8%まで減少し[39]、1948年の調査開始以来最大の下げ幅を記録した[40]。このように一時的な就職氷河期であったうえに、2014年になると有効求人倍率も1を超える売り手市場となったこともあり[41]、この期間の就職氷河期はあまり注目されず、日本政府も前述にある1993-2005年卒の就職氷河期の支援を重点課題にしている[42]。
就職状況
2008-2011年卒は就職氷河期であるといわれていたものの、前回の就職氷河期と比べれば、就職率や求人数、求人倍率も高いということもあり[43]、必ずしも就職氷河期だとは言い切れないという意見もある[44]。一方で、司法試験や公認会計士試験合格者の就職状況は1990年代の就職氷河期と比べても深刻であり、2010年には公認会計士試験合格者約2,000人のうち700人が就職できず、浪人比率は過去最悪の4割に達する程であった[45]。
人事担当者による調査によると、2008年から2011年卒までの就職状況では「超氷河期または氷河期」と答えている人が多かった。2012年末に第2次安倍内閣が成立し、アベノミクスを背景とした円安・株高が進むと、2014年卒の就職状況では「どちらでもない」と答える人が多くなり、就職状況が好転し[46]、2016年卒の就職活動は売り手市場といわれるほど回復した[47]。
なお、2012年卒から、正規雇用での就職や非正規雇用での就職に関する統計も集計を始めた。2012年卒(558692人)の統計結果では、就職者が357011人(63.9%)、正規雇用での就職者が335048人(60.0%)、非正規雇用での就職者が21963人(3.9%)であったが2018年卒は3.0%となり減少傾向である。
採用状況の変化
将来の成長性に限界のある日本(先進国)よりも海外の新興国に活路を求める企業は、グローバル戦略での海外への展開にあたって外国人労働者の採用を年々増加させており[48]、単なる求人数の減少のみならず、外国人との競争という前回の氷河期にはなかった逆風現象も起きている。その他にも大学進学率が5割を超え、大学新設などにより大学の数が増加して大学生の数が増加したこと、学生の大手志向により大企業に就職希望者が殺到していて逆に中小企業には就職希望者が集まらないこと、企業が優秀な学生を採用する厳選採用を方針としていることなどが上げられる[49]。
また、就職氷河期の影響で就職できなかった者の対策として、厚生労働省は卒業後3年以内を新卒扱いにする指針を打ち出した[50]。なお、2015年卒で既卒者の受付をした企業は全体の66.0%であり、実際に既卒者に内定を出した企業は14.2%であった[51]。
また、前回の氷河期から続いている採用活動の早期化が行き過ぎ、学業が疎かになりがちなことや海外留学などの活動に手を出しづらくなっていることへの反省から、日本貿易会が採用活動の開始時期を遅らせること検討したのを皮切りに[52]、経団連などでも同様の検討がなされた。経団連は、2011年卒以降時期を変更する措置をとり続けてきたが、採用難が続く現状ルールを徹底することが困難となり21年卒以降のルールの撤廃することとした[53][54]。
日本の就職に関する留意点
氷河期の中の売り手市場
就職氷河期であるからといって、全ての年、業種、全ての学部・学科で就職状況が厳しいわけではない。例えば、1倍を下回っていた2000年卒でも流通業は3.19倍もの求人があり[55]、流通業は売り手であった。また同年は文科系求人倍率が 0.83 だったのに対し、理科系求人倍率が1.26倍となっていた[56]。
また、1998年卒は10月1日時点で73.6%、12月1日時点で84.8%と団塊の世代の穴埋めで売り手市場と言われた年(2007年卒~2009年卒)よりも高い内定率を出している[57]。
高卒においては工業科の就職率が普通科や商業科と比べて高く、就職では優位にあった。[58]
氷河期出身者の中でも、セクター別に見通した場合、就職難を経験していない者も存在している。
大都市と地方
大都市よりも地方では有効求人倍率が低い傾向にあり、バブル景気の時期や就職氷河期が一時終結した時期でも、北海道や九州では有効求人倍率が 1 を上回らなかったという現状がある。
地域 | 1985年 | 1990年 | 1995年 | 2000年 | 2005年 | 2009年 |
---|---|---|---|---|---|---|
(全国) | 0.68 | 1.40 | 0.63 | 0.59 | 0.95 | 0.47 |
北海道 | 0.39 | 0.65 | 0.54 | 0.46 | 0.57 | 0.37 |
東北 | 0.46 | 1.22 | 0.73 | 0.59 | 0.68 | 0.35 |
南関東 | 0.80 | 1.57 | 0.48 | 0.55 | 1.11 | 0.53 |
北関東・甲信 | 1.26 | 2.33 | 0.91 | 0.86 | 1.09 | 0.45 |
北陸 | 0.84 | 1.92 | 1.04 | 0.70 | 1.06 | 0.50 |
東海 | 1.27 | 2.27 | 0.78 | 0.77 | 1.41 | 0.50 |
近畿 | 0.59 | 1.20 | 0.49 | 0.48 | 0.92 | 0.49 |
中国 | 0.75 | 1.74 | 0.88 | 0.72 | 1.10 | 0.58 |
四国 | 0.58 | 1.28 | 0.82 | 0.66 | 0.84 | 0.57 |
九州 | 0.35 | 0.93 | 0.54 | 0.46 | 0.67 | 0.40 |
求人倍率の数値と実状とのギャップ
就職氷河期である2000年卒を除けば、新卒の求人倍率は1倍以上を保っていたにもかかわらず、数十社回っても内定が一つも取れない学生が続出するという現象が起きていた(逆に一人で複数の内定を得る学生もいる)。この原因は、前述の“氷河期の中の売り手市場”と“大都市と地方”で触れられている事以外にも、“求人は出すが、応募者に厳しい要件をつける”いわゆる“厳選採用”の存在が上げられる[60]。さらに一部の中小企業などで営業職などで新卒者を大量採用して採用後、すぐに飛び込み営業や電話での勧誘をやらせ、契約が取れないあるいはノルマが達成できない人を解雇し僅かな売り上げ成績上位者だけを残す新卒切りあるいは新卒使い捨てが行われていた。
就職氷河期が再来した2010年卒の求人倍率は1.64倍であり、就職状況がよくなったといわれる2006年卒の1.60倍を上回っているにもかかわらず、2010年卒が就職難であると指摘されるのは、求人は出しても即戦力になり得る人材がいなければ採用者を出さない企業が増えているためだと考えられている[61]。また、企業の採用計画が軒並み出そろった後に急激な景気の変動が生じ、求人数と実際の採用数に乖離が出たためだと指摘する者もいる[62]。このような現状があるため、好況時と不況時とで単純に求人倍率の比較はできない。
内定率や就職率の数値
就職率に関するニュースなどで使われている新卒の就職内定率は、毎年90%を超えているが[57]、これは、就職を希望する人のうち内定が確定した人の割合だからである。そのため、大学院、就活塾、予備校等へ進学を希望した人や就職活動を諦めた人は母集団から除外され、内定率は90%以上になる[63]。なお、就職率は卒業者数のうち、就職したものの割合であるため、留年(就職留年も含む)したものは母集団に含まないが、卒業した人は、進学した人でも就職を諦めた人でも母集団に含まれる。
正社員・非正規社員の区分
学校基本調査(文部科学省)の統計では、2011年卒までは職に就いた者について、「就職者」と「一時的な仕事に就いた者」で区分されていた。しかし、2012年卒以降「就職者」を「正規の職員等」と「正規の職員等でない者」に区分されるようになった。なお、それぞれの区分は以下の通りになる[64]。
- 正規の職員等:雇用期間がない者
- 正規の職員等にない者:1年以上の雇用期間があり、一週間の所定の労働時間が30~40時間の者
- 一時的な仕事に就いた者:1年未満の雇用期間の者、または1年以上の雇用期間があるが一週間の所定の労働時間が30時間未満の者
- 就職者:正規の職員等と正規の職員等にない者の合計
資料
就職氷河期を挟んだ時期の雇用関連指標を以下に掲載する。
- ■ : 就職氷河期(1993年から2005年)
- ■ : 新就職氷河期(2010年から2013年)
求人倍率
年 | 有効求人倍率 | 有効求人数 | 有効求職者数 | 就職件数 |
---|---|---|---|---|
1991 | 1.40 | 1,805,631 | 1,290,153 | 106,709 |
1992 | 1.08 | 1,553,333 | 1,433,026 | 108,284 |
1993 | 0.76 | 1,275,820 | 1,669,074 | 111,747 |
1994 | 0.64 | 1,186,463 | 1,848,098 | 120,628 |
1995 | 0.63 | 1,233,449 | 1,954,365 | 126,684 |
1996 | 0.70 | 1,393,689 | 1,980,970 | 128,680 |
1997 | 0.72 | 1,493,094 | 2,070,944 | 132,306 |
1998 | 0.53 | 1,265,216 | 2,394,818 | 137,300 |
1999 | 0.48 | 1,206,889 | 2,529,993 | 144,177 |
2000 | 0.59 | 1,472,596 | 2,506,804 | 155,421 |
2001 | 0.59 | 1,534,182 | 2,597,580 | 157,206 |
2002 | 0.54 | 1,486,484 | 2,768,427 | 168,366 |
2003 | 0.64 | 1,670,065 | 2,596,839 | 176,143 |
2004 | 0.83 | 1,956,329 | 2,368,771 | 178,754 |
2005 | 0.95 | 2,163,164 | 2,271,675 | 176,954 |
2006 | 1.06 | 2,294,833 | 2,164,014 | 178,075 |
2007 | 1.04 | 2,179,802 | 2,094,404 | 170,598 |
2008 | 0.88 | 1,831,664 | 2,091,492 | 155,902 |
2009 | 0.47 | 1,308,885 | 2,762,480 | 166,554 |
2010 | 0.52 | 1,403,634 | 2,705,935 | 179,304 |
2011 | 0.65 | 1,674,223 | 2,593,291 | 180,328 |
2012 | 0.80 | |||
2013 | 0.93 | |||
2014 | 1.09 |
年卒 | 求人数 | 求職者数 | 求人倍率 |
---|---|---|---|
1991 | 840,400 | 293,800 | 2.86 |
1992 | 738,100 | 306,200 | 2.41 |
1993 | 617,000 | 323,200 | 1.91 |
1994 | 507,200 | 326,500 | 1.55 |
1995 | 400,400 | 332,800 | 1.20 |
1996 | 390,700 | 362,200 | 1.08 |
1997 | 541,500 | 373,800 | 1.45 |
1998 | 675,200 | 403,000 | 1.68 |
1999 | 502,400 | 403,500 | 1.25 |
2000 | 407,800 | 412,300 | 0.99 |
2001 | 461,600 | 422,000 | 1.09 |
2002 | 573,400 | 430,200 | 1.33 |
2003 | 560,100 | 430,800 | 1.30 |
2004 | 583,600 | 433,700 | 1.35 |
2005 | 596,900 | 435,100 | 1.37 |
2006 | 698,800 | 436,300 | 1.60 |
2007 | 825,000 | 436,900 | 1.89 |
2008 | 932,600 | 436,500 | 2.14 |
2009 | 948,000 | 443,100 | 2.14 |
2010 | 725,300 | 447,000 | 1.62 |
2011 | 581,900 | 455,700 | 1.28 |
2012 | 559,700 | 454,900 | 1.23 |
2013 | 553,800 | 434,500 | 1.27 |
2014 | 543,500 | 425,700 | 1.28 |
卒後の進路
年卒 | 卒業者数 | 大学院等 進学者数 |
就職者数 | 一時的な職に 就いた者の数 |
大学院等 進学率 |
就職率 | 一時的な職に 就いた者の割合 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1990 | 400,103 | 27,101 | 324,164 | 3,645 | 6.8 | 81.0 | 0.9 |
1991 | 428,079 | 30,028 | 347,862 | 3,482 | 7.0 | 81.3 | 0.8 |
1992 | 437,878 | 33,381 | 350,070 | 3,941 | 7.6 | 79.9 | 0.9 |
1993 | 445,774 | 37,318 | 339,901 | 5,494 | 8.4 | 76.2 | 1.2 |
1994 | 461,898 | 43,890 | 325,447 | 7,709 | 9.5 | 70.5 | 1.7 |
1995 | 493,277 | 46,329 | 331,011 | 9,280 | 9.4 | 67.1 | 1.9 |
1996 | 512,814 | 48,218 | 337,820 | 10,514 | 9.4 | 65.9 | 2.1 |
1997 | 524,512 | 47,906 | 349,271 | 10,738 | 9.1 | 66.6 | 2.0 |
1998 | 529,606 | 49,706 | 347,562 | 11,957 | 9.4 | 65.6 | 2.3 |
1999 | 532,436 | 54,023 | 320,119 | 16,023 | 10.1 | 60.1 | 3.0 |
2000 | 538,683 | 57,663 | 300,718 | 22,633 | 10.7 | 55.8 | 4.2 |
2001 | 545,512 | 58,662 | 312,471 | 21,514 | 10.8 | 57.3 | 3.9 |
2002 | 547,711 | 59,676 | 311,495 | 23,205 | 10.9 | 56.9 | 4.2 |
2003 | 544,894 | 62,251 | 299,987 | 25,255 | 11.4 | 55.1 | 4.6 |
2004 | 548,897 | 64,610 | 306,414 | 24,754 | 11.8 | 55.8 | 4.5 |
2005 | 551,016 | 66,108 | 329,125 | 19,507 | 12.0 | 59.7 | 3.5 |
2006 | 558,184 | 67,298 | 355,820 | 16,659 | 12.1 | 63.7 | 3.0 |
2007 | 559,090 | 67,175 | 377,776 | 13,287 | 12.0 | 67.6 | 2.4 |
2008 | 555,690 | 67,372 | 388,480 | 11,485 | 12.1 | 69.9 | 2.1 |
2009 | 559,539 | 68,422 | 382,434 | 12,991 | 12.2 | 68.4 | 2.3 |
2010 | 541,428 | 72,539 | 329,132 | 19,332 | 13.4 | 60.8 | 3.6 |
2011 | 552,358 | 70,465 | 340,143 | 19,107 | 12.8 | 61.6 | 3.5 |
2012 | 558,692 | 65,683 | 357,011 | 19,569 | 11.8 | 63.9 | 3.5 |
2013 | 558,853 | 63,334 | 375,859 | 16,736 | 11.3 | 67.3 | 3.0 |
2014 | 565,573 | 63,027 | 394,937 | 14,519 | 11.1 | 69.8 | 2.6 |
年卒 | 卒業者数 | 就職者数 | 正規職員等 就職者数 |
非正規職員等 就職者数 |
就職率 | 正規職員等 就職率 |
非正規職員等 就職率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 558,692 | 357,011 | 335,048 | 21,963 | 63.9 | 60.0 | 3.9 |
2013 | 558,853 | 375,859 | 353,125 | 22,734 | 67.3 | 63.2 | 4.1 |
2014 | 565,573 | 394,768 | 372,509 | 22,259 | 69.8 | 65.9 | 3.9 |
年卒 | 卒業者数 | 大学等 進学数 |
専修学校 進学数 |
就職数 | 大学等 進学率 |
専修学校 進学率 |
就職率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1990 | 35.3 | ||||||
1991 | 34.4 | ||||||
1992 | 1,807,175 | 591,520 | 296,249 | 599,072 | 32.7 | 16.4 | 33.1 |
1993 | 1,755,338 | 606,304 | 290,517 | 534,857 | 34.5 | 16.6 | 30.5 |
1994 | 1,658,949 | 598,959 | 275,562 | 459,280 | 36.1 | 16.6 | 27.7 |
1995 | 1,590,720 | 597,986 | 265,892 | 407,914 | 37.6 | 16.7 | 25.6 |
1996 | 1,554,549 | 605,619 | 262,404 | 377,619 | 39.0 | 16.9 | 24.3 |
1997 | 1,503,748 | 611,431 | 252,998 | 352,963 | 40.7 | 16.8 | 23.5 |
1998 | 1,441,061 | 611,841 | 236,841 | 327,672 | 42.5 | 16.4 | 22.7 |
1999 | 1,362,682 | 602,078 | 228,390 | 275,859 | 44.2 | 16.8 | 20.2 |
2000 | 1,328,902 | 599,747 | 228,672 | 247,074 | 45.1 | 17.2 | 18.6 |
2001 | 1,326,844 | 598,849 | 232,625 | 244,505 | 45.1 | 17.5 | 18.4 |
2002 | 1,314,809 | 589,674 | 236,791 | 224,692 | 44.8 | 18.0 | 17.1 |
2003 | 1,281,334 | 571,959 | 241,931 | 212,863 | 44.6 | 18.9 | 16.6 |
2004 | 1,235,012 | 559,732 | 237,264 | 208,903 | 45.3 | 19.2 | 16.9 |
2005 | 1,202,738 | 568,336 | 228,858 | 208,746 | 47.3 | 19.0 | 17.4 |
2006 | 1,171,501 | 578,094 | 213,096 | 210,439 | 49.3 | 18.2 | 18.0 |
2007 | 1,147,159 | 587,393 | 193,074 | 212,600 | 51.2 | 16.8 | 18.5 |
2008 | 1,088,170 | 574,990 | 167,010 | 206,588 | 52.8 | 15.3 | 19.0 |
2009 | 1,063,581 | 573,037 | 156,221 | 193,563 | 53.9 | 14.7 | 18.2 |
2010 | 1,069,129 | 580,578 | 170,182 | 168,673 | 54.3 | 15.9 | 15.8 |
2011 | 1,008,492 | 548,886 | 161,753 | 160,272 | 54.4 | 16.0 | 16.3 |
内定率
内定率とは、就職希望者数のうち、就職が決まった人の割合のことである。そのため、就職を希望しない者、諦めた者は母集団に入っていない。
年卒 | 10月1日 現在 |
12月1日 現在 |
2月1日 現在 |
4月1日 現在 |
---|---|---|---|---|
1996 | 69.8 | 82.0 | 93.5 | |
1997 | 69.9 | 83.5 | 94.5 | |
1998 | 73.6 | 84.8 | 93.3 | |
1999 | 67.5 | 80.3 | 92.0 | |
2000 | 63.6 | 74.5 | 81.6 | 91.1 |
2001 | 63.7 | 75.2 | 82.3 | 91.9 |
2002 | 65.0 | 76.7 | 82.9 | 92.1 |
2003 | 64.1 | 76.7 | 83.5 | 92.8 |
2004 | 60.2 | 73.5 | 82.1 | 93.1 |
2005 | 61.3 | 74.3 | 82.6 | 93.5 |
2006 | 65.8 | 77.4 | 85.8 | 95.3 |
2007 | 68.1 | 79.6 | 87.7 | 96.3 |
2008 | 69.2 | 81.6 | 88.7 | 96.9 |
2009 | 69.9 | 80.5 | 86.3 | 95.7 |
2010 | 62.5 | 73.1 | 80.0 | 91.8 |
2011 | 57.6 | 68.8 | 77.4 | 91.0 |
2012 | 59.9 | 71.9 | 80.5 | 93.6 |
2013 | 63.1 | 75.0 | 81.7 | 93.9 |
2014 | 64.3 | 76.6 | 82.9 | 94.4 |
就職戦線状況
下の表は、人事担当者が答えたその年の就職戦線の状況である。赤い部分がその年で多く答えた分類(氷河期、どちらでもない、売り手市場)である。
年卒 | 氷河期 | どちらでもない | 売り手市場 | ||
---|---|---|---|---|---|
超氷河期 | 氷河期 | まだ売り手市場 | かなり売り手市場 | ||
2010 | 16.9 | 48.7 | 30.5 | 3.6 | 0.3 |
2011 | 12.5 | 51.8 | 29.6 | 5.2 | 0.8 |
2012 | 11.7 | 51.8 | 30.9 | 4.7 | 0.8 |
2013 | 11.0 | 39.3 | 41.3 | 6.8 | 1.8 |
2014 | 7.1 | 37.8 | 46.6 | 6.6 | 1.9 |
2015 | 1.9 | 11.8 | 61.9 | 19.4 | 5.0 |
- 注意点
日本以外の就職氷河期
韓国
大韓民国ではアジア通貨危機(IMF経済危機)の1997年以後に景気が急激に悪化し、金大中政権による労働法制の改悪が追い討ちをかけ、不安定労働者(プレカリアート)が激増している。2007年時点の20代(1978年-1987年生まれ)は日本の同年代生まれと同じく就職難に遭遇し、契約社員や請負・派遣・アルバイト・パートなどの不安定雇用に泣き寝入りしている者が非常に多い。韓国で若者就職難を平均賃金88万ウォン(非正規職の平均賃金119万ウォンに20代の給料の平均比率74%をかけた20代の平均給料)、「88万ウォン世代」と呼ばれている。この世代の月収は日本円に換算して約68700円(2009年10月現在)に相当する[76]。
このような状況を揶揄してヘル朝鮮というスラングも登場している。
中華人民共和国
中華人民共和国では、2003年頃より大卒者の就職難が深刻化。就職率は7割前後に留まっているという[77]。また、地域によっても格差が激しい[78]。
中華人民共和国の要因
要因としては
- 高学歴者の増加
- 雇用のミスマッチ(企業が求めている人材と、大学を卒業する就職希望者とのニーズが一致していない)
が指摘されている[77]。
経済成長が続く中華人民共和国(2007年時点)では、全体的には人手不足感、それに伴う賃金上昇圧力が強まりつつある[79][80]が、大多数の企業では、低賃金で単純作業をこなす労働者を欲している一方で高学歴者の需要はそれほどではないため、高学歴者の増加に需要が追いついていない状況にある[77]。
中華人民共和国の就職氷河期の影響
高学歴者の供給超過は
- 就職難
- 賃金の低下圧力
という状況を作り出している[77]。
とくに、賃金低下はさらなる就職難を招く悪循環を引き起こしている。中華人民共和国の大学は年間2万元以上の学費等教育費を必要とする(2007年時点)が、これは農村の年収を超える額であり、農村出身の学生は借金をしながら通うことになる。そのため、卒業後に借金を返済しながら生活をするためには初任給に2500元以上が必要という[77]。
ところが、高学歴者の供給超過は初任給の低下を引き起こすようになる。
- 『2000年当時、北京の就職市場では一般に、「3・6・9」といわれた。学士の初任給が3,000元、修士6,000元、博士9,000元という意味である。だが、北京大学教育学院の2005年度の調査では、学士の平均初任給は1,549元、修士が2,674元、博士が2,917元に激減していたのだ。』[77]より引用
この結果、一定額以上の収入が必要な新卒者は就職を見送り、翌年、好条件の就職口を探そうとし、一方で、翌年は新たな新卒者が労働市場に供給されるため、さらなる供給超過、賃金低下におちいるという悪循環が形成されているという[77]。
その他の国
日本、韓国、中国以外の国でも1990年代から2000年代のグローバリゼーションに遭遇した就職氷河期が存在する。
折しも1991年の総量規制によるバブル崩壊と期を同じくして、世界情勢は1991年12月のソビエト連邦の崩壊による冷戦の終結という歴史の転換点を迎え、経済面でも、旧共産圏が市場経済化するなどきわめて大きな変化がいくつも生じた。グローバリゼーションが進み、労働力の供給源が日本その他の先進工業国から、中国を初めとする新興諸国 (BRICs) へと大量に移動していったこともそのひとつである。
解雇規制の厳しいヨーロッパにおいては、すでに職に就いている中高年層の解雇や賃金カットが難しいこともあって、若者が就職難に直面している。特にスペインでは若年層の失業率が極端に高く、25歳以下の失業率は43.8%(2009年11月)となっている。
フランスでは雇用を流動化させるために、新規雇用して2年間は理由がなくとも解雇ができる法律を2006年に制定したが、当の若者自身の反発(従来の手厚い雇用保障が受けられないなどの理由)より撤回に追い込まれている。ただし、フランスでは実習生制度(スタージュ、インターンシップと訳されることもある)を正式採用前に優秀な人材を選別するシステムとして運用している会社が多いが、実質的には解雇自由の状態で若者を働かせることができるシステムとして機能しており、若年層の解雇規制には抜け道がある。実習生は正社員と同じ仕事を長期にわたり続けているにも関わらず月給200ユーロ(約2万2000円)程度の極端な低賃金で雇われることもあり、社会問題となっている。
氷河期世代
日本では、就職氷河期時に就職活動を行った世代のことを「氷河期世代」と呼ぶ[81]。内閣府は2019年6月21日の閣議決定で、経済財政運営と改革の基本方針2019において[82]、「(2019年)現在、30 代半ばから 40 代半ば」と定義しており[83]、厚生労働省は、2019年8月30日の発表において、中心層は33 歳~44 歳と説明している[84]。2019年現在の30代半ばから40代半ばは、概ね1975年から1986年生まれ(但しそれは高校卒業時に就職した者を基準にした場合)に相当する。但し、大学卒業者の場合は4歳ほど上にずれるので、大卒の場合の氷河期世代の範囲は2019年現在で37歳~48歳(概ね1971年から1982年生まれ)となる。
その他、「貧乏くじ世代」(香山リカ)や「ロストジェネレーション」(『朝日新聞』が2006年8月及び2007年1月5日付28-29頁の特集で使用)、「棄民世代」などと呼ばれている。この氷河期世代には安定した職に就けず派遣労働やフリーターといった社会保険のない不安定労働者(プレカリアート)である者が非常に多い。『反貧困』の著者である湯浅誠によると、負傷で解雇された氷河期世代の派遣労働者は、「夢は自爆テロ」といい放ったという[85]。
氷河期世代の区分と時代背景
高度経済成長期の終盤から安定成長期にかけて生まれた世代で、概ね団塊ジュニア、ポスト団塊ジュニアに分かれる。団塊ジュニアは、昭和時代のうちに義務教育を終え、昭和の時代や冷戦の世界や好景気の時代を知っている。ポスト団塊ジュニアは、学齢期に冷戦終結や東欧革命、バブル崩壊に遭遇し、グローバリズムが世界を席巻し、好景気の時代を知らないまま「就職難は織り込み済み」の時代に育った。内閣府及び厚生労働省は、ポスト団塊ジュニア(2019年現在、35歳~44歳)を氷河期世代の中心層と捉えており、当世代に対し、就職氷河期世代支援プログラム(3年間の集中支援プログラム)を掲げている[86][87]。ただ、内閣府及び厚生労働省による氷河期世代の世代定義は高卒者を基準にしているため、大卒者との間には4年のタイムラグがある。
氷河期世代の社会問題
就職活動が長期化するうちに引きこもり状態になってしまったものもいる。労働力調査基本集計及び詳細集計(2018年平均)のによると、就労せず、家事も通学もしていない者が約40 万人(35 歳~44 歳人口の2.4%)にのぼる[87]。また、氷河期世代の職が不安定であったことによって、未婚化、晩婚化が起き[88]、20代の出産の減少[89]と30代の出産の増加[90]により分散されている。1980年代前半生まれは、収入に見合った消費をしない心理的な態度を持っていることから、嫌消費世代とも呼ばれている[91]。生活を親の年金に依存するパラサイト・シングルもおり、7040問題ともいわれている[92]。
氷河期世代の前後の世代
氷河期世代の前の世代であるバブル世代も、団塊ジュニアの高卒者と同様に、1997年のアジア通貨危機や1999年の産業再生法施行後による人員削減により不安定雇用に追い込まれた者も少なくない[29]。
氷河期世代の後の世代は、リーマンショック後及び東日本大震災後の一時期を除き売り手市場が続いており、2018年3月の大卒の就職率(卒業者のうちの就職者の割合)は77.1%と、バブル期並みの就職率となっている[93]。
脚注
- ^ 【ニッセイ基礎研究所】「はざま世代」が思う、競争と個性2014年6月25日
- ^ 【NIKKEI STYLE】月収2万円低い氷河期世代 政府の就職支援策は有効か2019年6月18日
- ^ 【大学ジャーナルONLINE】しらけ世代からゆとり・さとり世代まで 新卒一括採用を振り返る2020年3月8日
- ^ 【日本経済新聞】「団塊」「バブル」「ロスジェネ」「ゆとり」…2016年4月12日
- ^ 【ニッポンドットコム】中高年化する就職氷河期世代の厳しい現実2018年5月7日
- ^ 【AERA dot.】アラフォー就職氷河期世代を「自己責任」と言えない“構造的不遇”とは?2018年10月1日
- ^ 【弁護士ドットコム】日本は「就職氷河期世代」に手を差し伸べるべき…労働者の立場弱く、OECD局長が懸念2019年4月30日
- ^ 【BUSINESS INSIDER JAPAN】ひきこもる就職氷河期世代。ひきこもり100万人時代、中心は40代。家族が苦悩する「お金問題」2019年4月9日
- ^ 【ニッポンドットコム】中高年化する就職氷河期世代の厳しい現実2018年5月7日
- ^ 【AERA dot.】アラフォー就職氷河期世代を「自己責任」と言えない“構造的不遇”とは?2018年10月1日
- ^ 【キャリコネニュース】氷河期世代あるある「バブル世代にイライラ」「冷遇されても働けることに満足している」2019年3月22日
- ^ 【ITmedia ビジネスオンライン】「もう、諦めるしかない」 中高年化する就職氷河期世代を追い込む“負の連鎖”2019年4月12日
- ^ 【朝日新聞デジタル】就職氷河期、正社員にも傷痕 「スキルや幸福度低く」2019年5月16日
- ^ 【ニュースイッチ】「氷河期世代」の救済が2040年の社会保障のカギを握る2019年6月2日
- ^ 【東洋経済ONLINE】就職氷河期の未婚男はいま何を思っているか2019年6月11日
- ^ 【河北新報】社説(12/25):氷河期世代の支援/長期間のフォローが必要だ2019年12月25日
- ^ 【MoneyVIVA】#2 ロスジェネ世代おひとりさま女性のお金のリアル2020年1月22日
- ^ 【PRESIDENT】40代課長に「なんでこんなやつが」という人材が多い根本原因2020年2月7日
- ^ 【日経BP】DX推進の主役はアラフォーの就職氷河期世代か、それとも「ゆとり世代」か2020年2月13日
- ^ 【キャリコネニュース】「43歳独身。もう人生なんもかんも諦めてる」氷河期世代アラフォー女子たちの人生語りが辛すぎる2020年11月2日
- ^ 【NHK】なぜ?“就職氷河期世代”を支援2019年12月13日
- ^ 大企業や中堅企業への就職は大不況による人員削減のため困難であったが中小企業や零細企業への就職は人気がなく人手不足のため、あまり困難ではなかった。
- ^ 【NHK】なぜ?“就職氷河期世代”を支援2019年12月13日
- ^ フリーター数・ニート数の推移
- ^ 非正規雇用者比率の推移
- ^ 正規雇用者と非正規雇用者の推移
- ^ 国立国会図書館 若年者の雇用支援 ―現状と課題―(pdf)
- ^ 文部科学省 「高卒者の職業生活の移行に関する研究」中間報告
- ^ a b 2006年8月8日に厚生労働省が発表した「労働経済白書 2006年版」によると、35歳~44歳(1962年~1971年生まれ)のフリーターが増えている、という結果が出ている。出典:朝日新聞 2006年8月9日付8頁。
- ^ “学校基本調査”. 文部科学省. 2010年10月9日閲覧。
- ^ 例えるならば、政治経済学部を卒業した者が、新卒で介護福祉の業種に就職し、その現場で介護福祉士の国家資格の取得を資格試験の受験に必要な「実務経験」が全く無い状態から目指す、などといった状況である。
- ^ 『朝日新聞』1997年3月24日。
- ^ 2010年7月6日 読売新聞 就職留年7万9000人…読売調査推計
- ^ 『日刊ゲンダイ』2009年6月5日、7頁。
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関連項目
- 就職活動
- 就職難
- 求人倍率
- バブル崩壊
- 失われた10年
- 失われた20年
- 大学は出たけれど
- 学歴難民
- 社会的排除
- ニート、フリーター
- パラサイト・シングル
- ミドルエイジクライシス
- プレカリアート
- 日本の雇用史