「Tizen」の版間の差分
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2020年12月23日 (水) 22:16時点における版
開発者 | Tizen Community, Linux Mobile Foundation, Samsung |
---|---|
OSの系統 | Linux |
開発状況 | 開発中 |
ソースモデル | 混合 OS:オープンソース[1], SDK:クローズドソース[2] [1] |
初版 | 2012年1月5日 |
最新安定版 | 4.0.0.4 / 2019年5月29日[3] |
リポジトリ | |
対象市場 | スマートフォン, タブレット, ネットブック, スマートテレビ, IVI[4][注 1] |
パッケージ管理 | RPM Package Manager |
プラットフォーム | ARM, x86 |
カーネル種別 | モノリシックカーネル(Linuxカーネル) |
既定のUI | グラフィカル |
ライセンス | 混合 OS:オープンソース[1], SDK:プロプライエタリ[2] |
ウェブサイト |
www |
Tizen(タイゼン)は、LiMo Foundation、Linux Foundation、Samsungが主導するTizenプロジェクトによる、スマートフォン、タブレット、ノートパソコン、スマートテレビ、IVI用オペレーティングシステム (OS)。異なるデバイス上で共通のユーザー体験を提供することを目標としたオープンソースのシステムである。
概要
Tizenは2011年9月にモトローラ、NEC、NTTドコモ、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、ボーダフォン、サムスン電子の6社でなるLiMo Foundationで開発を行なっていたモバイルOSであるLiMo Platformとインテルが進めていたモバイルOSであるMeeGoと合流したことにより始まり、その後サムスン電子がLiMo Foundationとは別に開発をしていたモバイルOSであるBadaも非公認ではあるがTizenプロジェクトへの統合も表明された。
MeeGoのプロジェクトは元々インテルとノキアが中心に開発を進めていたが、ノキアがWindows Phoneに注力することを決定したため、同プロジェクトが宙に浮き、インテルはTizenと合流したと言われる。
TizenプロジェクトはLinux Foundation内にあり、サムスン電子、インテル、NTTドコモ、オレンジを中心に構成されたTechnical Steering Group(TSG)が行なっている他、ACCESS、パナソニックモバイルコミュニケーションズ、NECカシオと言ったLiMo Foundation参加企業もこの取り組みに協力している。
Tizen AssociationはLiMo Foundationの後継組織でありアメリカ、ニュージャージー州に本社をおき、サンフランシスコに事務所を構えている。Tizenの産業上での役割とTizenの教育を先導する目的で設立されTizen を利用したビジネスモデルや要求仕様、開発者向けのツール、アプリケーション展開、セキュリティー開発を担当している。
Tizenはソフトウェア開発キット(SDK)とアプリケーションプログラミングインタフェース(API)により、開発者は HTML5 や関連 Web 技術を使用して、マルチデバイス(スマートフォン、タブレット、ネットブック、スマートテレビや車載インフォテインメントなど)に対応したアプリケーションの作成が可能となる。その結果 Tizen ユーザーは、 OS、アプリケーションおよびユーザーエクスペリエンス(UX)をデバイスの違いを意識することなく利用できるようになる。
更にJavaScriptとjQuery(モバイル含む)といったHTMLベースのアプリケーション開発ツールも提供しており、バージョン2.0で C/C++ によるネイティブ・アプリケーションの開発が可能になった。
市場調査機関のストラテジーアナリティックスが2017年5月13日に発表した、スマートフォンOSの世界市場占有率を分析した資料によれば、2017年第1四半期のTizenの占有率は0.0%(販売量7万台)[6]。2015年は0.2%(290万台)、2016年は0.1%(98万台)の占有率だった[6]。
開発体制
Tizen の開発体制は、大きく技術グループとビジネスグループの二つに分けられており、前者を Linux Foundation ならびに Tizen Project が、後者を Tizen Association が担当している[7][8]。
Tizen Project は、Linux Foundation に所属し、Tizen の開発や公開、各種デバイスをサポートするワーキンググループの作成など、プロジェクトに関するすべての技術的課題に取り組んでいる[9][7]。2013年2月26日、ファーウェイ・テクノロジーズの TSG への参加が発表された[8][10]。
Tizen Association は、Tizen の産業的役割を主導するために組織された非営利コンソーシアムである[11][12]。Tizen やアプリケーションストアが備えるべき要求仕様を経営戦略的視点から集約し、技術グループへ伝達する[8]。また、産業パートナーシップの構築、サービスモデルの選定、全体的なマーケティングや教育などを行い、Tizen の市場展開に務めている[1][7]。
2016年5月現在、Tizen Association の議長は NTTドコモ がつとめている。
構成
Tizen アーキテクチャは、以下の4つのサブシステムによって構成されている[13]。
- Web framework
- W3C/HTML5 、デバイスAPI および WebKit2/JavaScriptCore ベースの Web ランタイムからなり、HTML5 などのウェブ標準や WAC のウェブ技術を用いてアプリケーションの開発を行う[14]。
- Native framework
- システムサービス、名前空間、API およびオープンソースライブラリからなり、C/C++ を用いてアプリケーションの開発を行う。
- コア
- 上位層のサブシステム(Web/Native framework)が必要とする機能を提供する。オープンソースライブラリと API の追加セットを含む。
- カーネル
- Linuxカーネルおよびデバイスドライバからなる。
アプリケーション開発環境
Tizen のサードパーティー開発者向けのソフトウェアフレームワークは、上記 Web framework および Native framework の2種類からなる。開発言語は Web framework では HTML5 、JavaScript (jQuery/jQuery Mobile) などが、Native framework では C/C++ が使用される[15]。Web framework を利用してパッケージングした場合、W3C Packaged Web Apps になる。
Tizen SDKは公式サイト上[16][2]の開発者専用サイト「Tizen Store Seller Office」で、一般に公開されており、Eclipse ベースの統合開発環境 (IDE)、エミュレータ、コンパイルツールチェーン、サンプルコード、ドキュメントなどを含む。Tizen SDKでは、Tizenの特長である「ネイティブアプリ」と、HTML5ベースの「Webアプリ」の双方の開発方式をサポートする。Tizen SDK の対応 OS は、Ubuntu、MS Windows、macOS である[17]。
-
Web framework IDE
-
Native framework IDE
-
エミュレータ
歴史
- 2011年9月27日、Linux Foundation および LiMo Foundation が、Tizenという新しいプロジェクトの立ち上げを連名で発表、ホストは引き続き Linux Foundation が務める[18][19][20][14][21][22][23]。
- 2012年1月1日、LiMo FoundationはTizen Associationに改められた[24][25][9]。
- 2012年1月5日、最初のα版と SDK がリリース[26]。
- 2012年2月28日、Tizen 1.0 β版がリリースされた[27]。また、ファーウェイ・テクノロジーズの Tizen Association への参加が発表された[28]。
- 2012年4月30日、Tizen 1.0 SDK とソースコードがリリース。コードネームは Larkspur (飛燕草)[29][30]。
- 2012年5月8日、アメリカのキャリアである、スプリント・ネクステルが Tizen Association への参加および、Tizen の端末を将来販売することを発表[31]。
- 2012年9月25日、Tizen 2.0 α版がリリース[32][33]。
- 2013年2月18日、Tizen 2.0 SDK とソースコードがリリース。コードネームは Magnolia (木蓮)。2.0 から HTML5 だけでなく、C/C++ によるネイティブアプリケーションの開発もサポートされた[34][15]。プレインストールアプリは Tizen ネイティブでC言語などで開発された。
- 2013年5月17日、Tizen 2.1 SDK, ソースコード, OSイメージなどが公開された[35]。また、5月3日よりTizen Store[36]のアプリケーションのアップロードの受付を開始した。オープン時点での販売対象国は、日本(ドコモ)、フランス(Orange)、カザフスタン、ロシア、ウクライナ。また、5月4日に IVI の ARM 向けの Tizen 2.0 alpha もリリースされた[37]。
- 2013年7月3日、Tizen 2.2 β版 SDKをリリース。
- 2013年11月11日、シャープ、パナソニック、NTTデータMSE、コナミ、Celsys、McAfee、イーベイ、トレンドマイクロなど新規36社によるパートナープログラムの開設[38]。
- 2014年1月16日、NTTドコモが、導入を予定していたTizen OS搭載スマートフォンの導入を、当面見送ると発表した[39][40]。
- 2014年6月2日、サムスンが商用としては初となるTizenスマートフォン「Samsung Z」を発表[41][42][43]。
- 2014年7月28日、サムスンが2014年第3四半期にロシア で発売するとしていたTizenを採用した初の商用スマートフォン「Samsung Z」の発売延期を発表[44]。
- 2014年8月25日、中国の大手通信機器メーカーHuawei Technologiesが「SamsungのTizenには成功の見込みがない」と述べ、Tizenのスマートフォンへの採用を拒絶していたことが分かったと複数の海外メディアが報じた[45]。
- 2014年8月28日、サムスンがTizenOSを採用したスマートウォッチ「Samsung Gear S」正式発表[46]。
- 2014年9月24日、KDDIはTizen OS搭載のスマートウォッチ「Gear S」をau公式アクセサリー「au +1 collection」から発売すると発表[47]。
- 2015年1月14日、サムスンがインドでTizen OSを採用した初の商用スマートフォン「Samsung Z1」の発売を発表[48][49]。同機種は同年2月3日にバングラデシュでも発売が開始された[50]。
- 2015年12月18日、サムスンがTizen OSを採用したスマートウォッチ「Samsung Gear S2」を日本で発売開始[51]。
- 2016年4月28日、サムスンが2016年9月に「Tizen OS 3.0」の提供開始すると発表[52]。
- 2017年4月5日、イスラエルの独立系セキュリティ研究者であるAmihai Neidermanが、「Tizen」OSに多数の脆弱性が見られ、この2年間に販売されたサムスンのほぼ全てのスマートテレビは、ハッカーに対して無防備であると報告した[53]。この報告に対し、サムスンの広報担当者は、「あらゆる潜在的な脆弱性を解消するため、Neiderman氏に全面的に協力している」とコメントしている[53]。
- 2017年5月16日、サムスンが「Tizen3.0」を搭載した「Samsung Z4」を発表[54]。
- 2017年5月17日、サムスンはアメリカで開催した「Tizen Developer Conference 2017」において「Tizen 4.0」を発表した[55][56]。
- 2018年9月、サムスンがTizen搭載スマートフォンの開発から撤退すると報じられた[57]。
- 2019年2月20日、サムスンが「Tizen Based Wearable OS 4.0」を搭載したスマートウォッチ「Galaxy Watch Active」を発表した[58][59]。
- 2019年8月5日、サムスンが「Tizen Based Wearable OS 4.0」を搭載したスマートウォッチ「Galaxy Watch Active2」を発表した[60]。
- 2020年10月23日、サムスンが「Tizen OS 5.5」を搭載した「Galaxy Watch3」を発表した[61][62]。
ライセンスと開発体制
オープンソースOSとして公開されているが、Tizen 2.x は複雑なライセンスモデルをしている。SDK はオープンソースコンポーネントで作られている[63]が、SDK全体は Tizen SDK ライセンスで公開されている[64]。OS 自体は多くのオープンソースコンポーネントからなる。Samsung 内部で開発されたいくつかのコンポーネント(ブートアニメーション、カレンダー、タスクマネージャ、音楽プレーヤー)は Flora License で公開されている。
脚注
注釈
- ^ 車載インフォテインメント(In-Vehicle Infotainment、IVI)とは、車中における情報と娯楽を提供するソフトウェアスイートのこと。[5]。
出典
- ^ a b c d “About”. tizen.org. 2013年2月27日閲覧。
- ^ a b c サムスン電子. “Tizen SDK License Agreement”. Tizen Developers. 2013年2月27日閲覧。
- ^ Gear S3 (SM-R760)
- ^ “Devices”. tizen.org. 2013年2月27日閲覧。
- ^ “車載用インフォテインメント (IVI)”. インテル. 2013年2月27日閲覧。
- ^ a b “サムスンOS Tizen市場占有率0%”. ハンギョレ. (2017年5月15日) 2017年5月17日閲覧。
- ^ a b c 永田清人. “Expectation for Tizen” (PDF). pp. 14-17, 27-28. 2013年3月1日閲覧。
- ^ a b c “Tizenの可能性を語るドコモ永田氏”. ケータイ Watch. 2013年3月1日閲覧。
- ^ a b “Tizen ワークグループ”. Linux Foundation. 2013年3月1日閲覧。
- ^ “NTTドコモ、今秋にもTizenスマホを発売へ――端末上でdマーケットのサービスも展開”. ITmedia. 2013年3月1日閲覧。
- ^ “Welcome to the Tizen Association”. Tizen Association. 2013年3月1日閲覧。
- ^ “TERMS OF MEMBERSHIP (Last updated November 24, 2012)” (PDF). Tizen Association. p. 1. 2013年2月27日閲覧。
- ^ “Architecture of Tizen”. Tizen Developers. 2013年2月27日閲覧。
- ^ a b Foster, Dawn. “Welcome to Tizen!”. tizen.org. 28 September 2011閲覧。
- ^ a b “Tizen 2.0 Release Notes”. Tizen Developers. 2013年2月27日閲覧。
- ^ [1]
- ^ “Tizen SDK”. Tizen Developers. 2013年2月27日閲覧。
- ^ Toor, Amar (September 28, 2011). “MeeGo to be folded into Linux-based Tizen OS, slated to arrive in 2012”. Engadget. December 18, 2011閲覧。
- ^ Ricker, Thomas (September 28, 2011). “MeeGo is dead: Resurrected as Tizen, the newest Linux-based open source OS”. The Verge. December 18, 2011閲覧。
- ^ Michael Larabel (19 October 2011). “Tizen Is Announced; MeeGo Will Transition To It”. phoronix.com. 19 October 2011閲覧。
- ^ Paul, Ryan. “MeeGo rebooted as Intel and Samsung launch new Tizen platform”. Ars Technica. 28 September 2011閲覧。
- ^ “モバイルOSのMeeGoがLimoと合流、新プロジェクト「Tizen」に”. Computerworld - エンタープライズITの総合ニュースサイト. 2013年2月27日閲覧。
- ^ “MeeGoとLiMoが合流した新モバイルOSプロジェクト「Tizen」 が始動”. マイナビニュース. 2013年2月27日閲覧。
- ^ “About The Tizen Association”. Tizen Association. 2013年2月27日閲覧。
- ^ “Sprint News - Sprint Joins Tizen Association, Adds to its Board of Directors”. Embedded M2M Solutions. 2013年2月27日閲覧。
- ^ “Tizen Alpha (pre-1.0) Release Notes”. Tizen Source. 2013年2月27日閲覧。
- ^ “Tizen Beta (pre-1.0) Release Notes”. Tizen Source. 2013年2月27日閲覧。
- ^ “Tizen ソフトウェアプラットフォーム本格化 業界の支持も増加”. Linux Foundation. 2013年2月27日閲覧。
- ^ tsg. “Tizen 1.0 Larkspur SDK and Source Code Release”. tizen.org. 2012年9月19日閲覧。
- ^ Ben Kersey. “Tizen 1.0 SDK and source code released”. SlashGear. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “Sprint Joins The Tizen Association”. スプリント・ネクステル. 2013年2月27日閲覧。
- ^ “Tizen 2.0 Alpha”. Tizen Source. 2013年2月27日閲覧。
- ^ “Tizen SDK 2.0 Alpha Release Notes”. Tizen Developers. 2013年2月27日閲覧。
- ^ “Tizen 2.0 Magnolia SDK and Source Code Release”. tizen.org. 2013年2月27日閲覧。
- ^ Tizen 2.1 SDK and Source Code Release
- ^ Tizen Store seller office
- ^ IVI/IVI May 4, 2013 2.0 Alpha ARM release
- ^ TIZEN ASSOCIATION LAUNCHES PARTNER PROGRAM WITH 36 NEW MEMBERS
- ^ “ドコモ、新OS「タイゼン」スマホ発売を再延期”. 日本経済新聞. (2014年1月16日) 2014年1月17日閲覧。
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- ^ “韓国サムスン電子、「タイゼン」搭載スマホを第3四半期に発売”. ロイター. (2014年6月2日) 2014年6月6日閲覧。
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- ^ “Samsung、100ドルを切るTizenスマホ「Z1」をインドで発売”. ITpro. (2015年2月9日) 2015年2月10日閲覧。
- ^ “Samsung、Tizenスマホ「Z1」をインドに続きバングラデシュでも発売”. ITpro. (2015年2月9日) 2015年2月10日閲覧。
- ^ ““時計らしさ”を追求した「Gear S2」――サムスンが提案する新しいスマートウォッチの形”. ITmedia. (2015年12月9日) 2016年1月8日閲覧。
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- ^ “Samsung、無線イヤフォン「Galaxy Buds」と「Galaxy Watch Active」「Galaxy Fit」も発表”. ITmedia Mobile (2019年2月21日). 2019年5月22日閲覧。
- ^ “円形有機ELディスプレー 「Galaxy」スマートウォッチ”. J-CASTトレンド (2019年5月22日). 2019年5月22日閲覧。
- ^ “Samsung、Tizenスマートウォッチ「Galaxy Watch Active 2」を9月に米国で発売”. ITmedia Mobile. アイティメディア株式会社 (2019年8月6日). 2020年1月11日閲覧。
- ^ “回転ベゼル復活の Galaxy Watch3 レビュー。日本ではECGを使えないのが残念 - Engadget 日本版”. Engadget JP. Engadget (2020年10月22日). 2020年10月24日閲覧。
- ^ “Galaxy Watch3ハンズオン:Apple Watchの強敵、ついに登場か”. www.gizmodo.jp. ギズモードジャパン (2020年8月6日). 2020年10月24日閲覧。
- ^ Open Source License Announcement
- ^ Tizen SDK License