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「鬼まんじゅう」の版間の差分

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[[File:鬼まんじゅう(不朽園)Oni Manjyu, Aichi.jpg|thumb|250px|鬼まんじゅう(不朽園)]]
{{出典の明記|date=2013年11月}}
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'''鬼まんじゅう'''(おにまんじゅう)または'''芋饅頭'''(いもまんじゅう)は、[[小麦粉|薄力粉]]もしくは[[上新粉]]と砂糖を混ぜ合わせた[[生地 (食品)|生地]]に、[[角切り]]の[[サツマイモ|さつま芋]]を加えて蒸した[[和菓子]]。主に[[愛知県]]などの[[東海地方]]で見られる。略して「'''鬼まん'''(おにまん)」とも呼ばれる。
'''鬼まんじゅう'''(おにまんじゅう)または'''芋饅頭'''(いもまんじゅう)は、[[小麦粉]][[上新粉]]と砂糖を混ぜ合わせた[[生地 (食品)|生地]]に、[[角切り]]の[[サツマイモ|さつま芋]]を加えて蒸した[[和菓子]]。主に[[愛知県]]を中心に[[東海地方]]にみられる郷土和菓子であり、家庭料理を発祥とする。略して「'''鬼まん'''(おにまん)」とも呼ばれ、「芋外郎(ういろう)」「芋まん」「芋まんじゅう」など、多数の別名で知られる<ref name="農林水産省"/>


== 概要 ==
== 概要 ==
一般的な[[饅頭]]や[[中華まん]]とは異なり、菓子の中央部に具([[餡]])がまとまって入りそれを生地が包んだ形ではなく、具であるさつま芋の角切りが生地に混じっており、表面にもさつま芋の角切りがいくつも見えている。また、一般の饅頭や中華まんよりも生地の粘りが強く、生地の表面に光沢がある。
一般的な[[饅頭]]や[[中華まん]]のように中央部に具([[餡]])がまとまって入りそれを生地が包んだ形ではなく、具であるさつま芋の角切りが生地に混じっており、表面にもさつま芋の角切りが見える。また、一般の饅頭や中華まんよりも生地の粘りが強く、生地の表面に光沢がある。


名称の由来は諸説あるが、表面にいくつもさつま芋の角切りが見える様子がごつごつして[[鬼]]やその金棒を連想させること、戦前は今より黒っぽい色で鬼のような不気味さがあったことなど。
名称の由来は諸説あるが、表面にいくつもさつま芋の角切りが見える様子がごつごつして[[鬼]]やその金棒を連想させること、戦前は今より黒っぽい色で鬼のような不気味さがあったことなどが挙げられる

さつま芋の替わりに、[[リンゴ]]の角切りなどが[[食材]]として使用されたものもある。


庶民的な菓子であり、愛知県や[[岐阜県]]では、高級店でなく庶民的な和菓子店には必ずといってよいほど鬼饅頭が売られている。学校・[[学校教育]]の現場では[[日本の学校給食|給食]]で[[デザート]]として出されたり、[[家庭科]]の調理実習で調製する地域もある。また、家庭では[[蒸しパン]]の素にさつま芋の角切りを混ぜて製する場合もある。
庶民的な菓子であり、愛知県や[[岐阜県]]では、高級店でなく庶民的な和菓子店には必ずといってよいほど鬼饅頭が売られている。学校・[[学校教育]]の現場では[[日本の学校給食|給食]]で[[デザート]]として出されたり、[[家庭科]]の調理実習で調製する地域もある。また、家庭では[[蒸しパン]]の素にさつま芋の角切りを混ぜて製する場合もある。


饅頭を製造・販売する店は、[[名古屋市]][[千種区]]の[[覚王山日泰寺]]近くにある梅花堂が知られている{{sfn|牛田正行|2005|p=58}}。
21世紀現在、まんじゅうを製造・販売する店は、[[名古屋市]][[千種区]]の[[覚王山日泰寺]]近くにある梅花堂が知られている{{sfn|牛田正行|2005|p=58}}。

== 名称 ==
角切りのサツマイモの角が突き出て見える形状が、鬼のツノや金棒をイメージさせたことから「鬼まんじゅう」と称されるようになったというのが定説である<ref name="農林水産省"/><ref name="JAあいち女性協議会">{{Cite book|和書|author= |title=あいちのめぐみ |publisher=JAあいち女性協議会 |date=2010 |page=48 |isbn=}}</ref>。食糧難の時代に普及したことから、災いを鬼とみたて、主食であるコメの代用品であるサツマイモを食べて鬼を封じこめようと願う、厄払いの意味を込めて名付けられたともいう<ref name="travel-star"/><ref name="大竹2015,134p">{{Cite book|和書|author=大竹敏之 |title=名古屋めし |publisher=リベラル社 |date=2015 |page=134 |isbn=}}</ref>。

庶民のおやつとして広く普及したことから<ref name="有楽グループ">{{Cite web |url=https://yuraku-group.jp/blog-honten/onimanjyu/ |title=庶民のおやつ『鬼まんじゅう』 |publisher =有楽グループ |accessdate=2020-11-09}}</ref>、和菓子店などが名付けて売り出した「鬼まん(オニマン)」の愛称が定着し、親しまれている<ref name="travel-star">{{Cite web |url=https://travel-star.jp/posts/8428 |title=「鬼まんじゅう」は名古屋名物のおすすめお菓子!由来や人気の名店を紹介! |publisher =TRAVEL STAR |accessdate=2020-11-09}}</ref>。「芋外郎(ういろう)」「芋まん」「芋まんじゅう」など、多数の別名で知られる<ref name="農林水産省"/>。名古屋市は幕末から作られるようになった郷土菓子「[[外郎]]」が庶民的な菓子として有名な土地柄であることから「芋が入った外郎」の意で熱田区では「芋ういろ」と呼び<ref name="あいち郷土料理検討委員会2017">{{Cite book|和書|author=あいち郷土料理検討委員会 |title=あいちの郷土料理レシピ50選 |publisher=愛知県農林水産食育推進課 |date=2017 |page=54 |isbn=}}</ref><ref name="安田2014,95p">{{Cite book|和書|author=安田文吉 |title=なごや飲食夜話 二幕目 |publisher=中日新聞社 |date=2014 |page=95 |isbn=}}</ref>。[[瀬戸市]]や[[尾張旭市]]でも「芋ういろ」と呼ばれていた<ref name="中日新聞20180930"/>。

また、愛知県[[春日井市]]では大分県の石垣まんじゅうに似ていることから「イシカケ(石垣)ボチ」と呼んでいたとも記録される<ref name="和菓子27,104"/>。

昭和30年代、鬼まんじゅうを商品化していた山田餅本店(名古屋市瑞穂区)では、鬼の恐いイメージを払拭するために商品名を「芋まんじゅう」と変えて販売したが、客は皆「鬼まんじゅう」と注文するため、すぐに商品名を戻したという<ref name="中日新聞20180930"/>。

== 歴史 ==
[[File:Kakuozan Baikado ac.jpg|thumb|「鬼まんじゅう」の名店として知られる梅花堂]]
[[File:Yamadamochi Honten 2020-11 ac.jpg|thumb|「鬼まんじゅう」の名店として知られる山田餅本店]]
[[File:Ajima 20201202-04.jpg|thumb|味鋺地区に残る芋畑、砂地である様子がわかる]]
=== 発祥 ===
'''鬼まんじゅう'''の発祥は、史料としては残されていないが<ref name="遠山2018,287p">{{Cite journal|和書|author=遠山佳治 |journal=名古屋女子大学紀要 |title=東海地域のおやつ文化を教材とした保育内容「環境」の一考察 |volume=64 |issue=287|date=2018 |page=287}}</ref><ref>{{Cite news |title=なごや特走隊 |newspaper=中日新聞社 |date=2006-09-25 |author=今村太郎 |page=14}}</ref>、一説によれば江戸時代とされる<ref name="travel-star"/>。日本の[[サツマイモ]]の食文化は、江戸時代後期の江戸を中心に焼き芋が販売されて人気となり、それまでの飢饉の備蓄食料としての位置づけから嗜好品ともみなされるようになった<ref name="和菓子27,103">{{Cite journal|和書|journal=和菓子 |title=東海地域の産業から見た菓子文化の歴史民俗学的考察 |volume= |issue=27|date=2020 |page=103 }}</ref>。関東では焼き芋文化が流行したのに対して、関西上方では蒸し芋文化が流行し、鬼まんじゅうはその調理法から上方文化圏に含まれる食品といえる<ref name="和菓子27,103"/>。

戦中戦後の食糧難の折、サツマイモは比較的容易に手に入る食材であったことから、これと[[小麦粉]]を材料に作られ、[[米]]に換わる主食として普及した<ref name="農林水産省"/>。戦時中のサツマイモは、味よりも収穫量の多さが重視され、三重県で品種改良された「護国芋」という品種が生産されており、水っぽく加熱しても旨味に欠けた。また、小麦粉も粗悪品で黒っぽいものだった<ref name="中日新聞20180930">{{Cite news |title=戦前は黒色 家庭で料理 |newspaper=中日新聞社 |date=2018-09-30 |author= |page=14}}</ref>。これらをできるだけ美味しく食べる工夫から、'''鬼まんじゅう'''が考案されたものと考えられている<ref name="農林水産省"/>。サツマイモそのものが餡の代用品と考えられたため、「饅頭」という名称であるものの、餡は入っていない<ref name="和菓子27,103"/>。

東海地方において、20世紀前半の戦前・戦中のサツマイモ産地は、[[庄内川]]や[[矢田川]]が合流した礫層の砂地である味鋺周辺地域(2020年現在の名古屋市北区)であることから、この地域が'''鬼まんじゅう発祥の地'''のひとつとも考えられている。しかし、21世紀現在、名古屋市地域の文献にみる鬼まんじゅうの記録は乏しく、[[稲沢市]]などの[[尾張]]地域、[[豊田市]]・[[豊川市]]・[[豊橋市]]などの三河地域には多数残るため、農村地域で誕生したことは疑いないものの発祥地を特定する有力な手掛かりは知られていない<ref name="和菓子27,103"/>。

=== 発展 ===
[[File:満開堂の「鬼まんじゅう(よもぎ)」 Oni manjū.jpg|thumb|left|よもぎ味の「鬼まんじゅう」(道の駅瀬戸しなの「満開堂」)]]
'''鬼まんじゅう'''が飛躍的に発展し普及したのは、昭和30年代から40年代にかけての高度経済成長期である<ref name="遠山2018,287p"/><ref name="和菓子27,104"/>。農家において腹持ちの良い安価なおやつとして親しまれ、郷土食として定着したのをきっかけに<ref name="農林水産省">{{Cite web |url=https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/onimanju_aichi.html |title=鬼まんじゅう 愛知県 |publisher =農林水産省 |accessdate=2020-11-09}}</ref><ref name="和菓子27,103"/>、次第に菓子店などでも製造販売されるようになり、[[敷島製パン]]や[[フジパン]]などの大手食品メーカーが鬼まんじゅう風の[[蒸しパン]]を生産して[[スーパーマーケット]]などでも販売を開始したことから、さらに一般庶民の間に広く普及した<ref name="和菓子27,104"/>。黒糖を生地に練り込むなどの「アレンジを加えた鬼まんじゅう」も、この頃すでに誕生している<ref name="和菓子27,104">{{Cite journal|和書|journal=和菓子 |title=東海地域の産業から見た菓子文化の歴史民俗学的考察 |volume= |issue=27|date=2020 |page=104 }}</ref>。

千種区にある覚王山[[日泰寺]]の参道に店を構える1929年(昭和4年)創業の梅花堂パン屋では、昭和30年代以後には鬼まんじゅうの製造販売を開始しており、次第に「懐かしい味」として毎月21日の[[弘法大師]]の縁日の門前菓子として定着した<ref name="和菓子27,104"/>。1980年代後半から一般に広く知られるようになり<ref name="中日新聞20030316"/>、平成時代には名古屋の銘菓と位置付けられるまでになった<ref>{{Cite book|和書|author= |title=名古屋で食べたい100のもの |publisher=JTBパブリッシング |date=2020 |page=61 |isbn=}}</ref>。21世紀には、パン屋から和菓子屋に転身して名を成した梅花堂のほか、守山区の[[浪越軒]]や瑞穂区の[[山田餅本店]]などが、鬼まんじゅうの代表的な和菓子店として知られる<ref name="和菓子27,104"/>。

2020年(令和2年)現在、名古屋市を中心に愛知県全域と<ref name="農林水産省"/>、岐阜県など東海地域におもに普及する。一般的には丸い形をしているが、近隣の岐阜県では四角い形の鬼まんじゅうの製造販売店も複数確認されている<ref name="和菓子27,104"/>。

== 継承活動 ==
保育園や小学校などの学校給食で提供されたり<ref name="TBSラジオ2020.6.24">{{Cite web |url=https://www.tbsradio.jp/494262 |title=愛知県民なら誰もが知っている「鬼まんじゅう」って何? |publisher =TBSラジオ |accessdate=2020-11-09}}</ref><ref name="農林水産省"/>、サツマイモ栽培の学習と関連付けた調理実習を実施するなどして継承に努める<ref name="農林水産省"/>。

手軽に作れることから、家庭料理としても普及しているほか<ref name="農林水産省"/>、名古屋市の餅屋系統の和菓子店では必ずと言ってよいほど製造販売されているほか、デパ地下などでも扱われる<ref name="大竹2015,134p"/><ref>{{Cite book|和書|author=大竹敏之、森崎美穂子 |title=東海の和菓子名店 |publisher=ぴあ株式会社 |date=2015 |page=118 |isbn=}}</ref>。

== 調理法 ==
おもな材料は、[[サツマイモ]]のほか、[[小麦粉|薄力粉]]、[[上新粉|米粉]]、[[砂糖]]、水であり、粉については薄力粉のみで作る例や<ref name="JAあいち女性協議会"/>、米粉などと混ぜて作る例<ref name="あいち郷土料理検討委員会2017"/>、うどん粉を用いる例など<ref name="安田2014,95p"/>、伝統的な家庭料理に定番の多様性がみられる<ref name="あいち郷土料理検討委員会2017"/>。

基本は、1センチメートル角に切ったサツマイモを、小麦粉、砂糖、水とともに混ぜ入れ、適度な大きさに丸めて、蒸す<ref name="農林水産省"/>。

皮つきのサツマイモで作ると、赤色が美しく、皮の食感のちがいを楽しむこともできる<ref name="農林水産省"/>。サツマイモの皮を厚めに剥いて水にさらしてアクを抜いてから使ったり<ref name="中日新聞20030316"/>、サツマイモと砂糖を混ぜて時間を置き、イモの水分を出してからその水分もあわせて使うなど、様々な調理法が知られている<ref name="農林水産省"/>。

鬼まんじゅう独特のもちもちとした食感は、材料を練り混ぜる練り具合によって左右され、和菓子店などでは味を統一するためにその日の気候によって練り具合を変えるなど熟練の工夫が必要とされる<ref name="中日新聞20030316"/><ref>{{Cite news |title=戦前は黒色 家庭で料理 |newspaper=中日新聞社 |date=2018-09-30 |author= |page=14}}</ref>。

また、白砂糖と黒砂糖を使い分けることで味や見た目に変化を付ける、小麦粉だけでなく白玉粉を混ぜるなどして様々に工夫されている<ref name="有楽グループ"/>。

冷えても食べることができるが、蒸したての食感を味わいたい場合は、ラップをかけて[[電子レンジ]]で20~30秒温め直すとよいという<ref name="農林水産省"/><ref name="travel-star"/>。

== 特徴 ==
一般的な饅頭と異なり、餡は無く、具である[[サツマイモ]]が一体化して表面にも見える外見の饅頭である<ref name="travel-star"/>。食感はもちもちとしつつ、イモの歯ごたえを同時に味わうことができる<ref name="中日新聞20030316">{{Cite news |title=郷土の食彩 |newspaper=中日新聞社 |date=2003-03-16 |author= |page=21}}</ref>。

本来の「鬼まんじゅう」は、もっちりとして重量感があり、腹持ちが良いのが特徴であるが、嗜好品として普及して以降は、蒸しパンのように軽い生地のものや、サツマイモではなく[[リンゴ]]の角切りを入れたバージョンなど、様々にアレンジされるようになった<ref name="農林水産省"/>。

家庭においては昔ながらに塩と砂糖をまぶして味をつけることが多いが<ref name="農林水産省"/>、愛知県の和菓子屋では必ずあると言っても過言ではないほどポピュラーな郷土菓子であり<ref name="TBSラジオ2020.6.24"/>、そうした市販の「鬼まんじゅう」では、嗜好性を高めるべく、あらかじめ、サツマイモを蜜煮しているものも多くなっている<ref name="農林水産省"/>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author=牛田正行|chapter=鬼まんじゅう|title=名古屋まる知り新事典|publisher=ゲイン|language=日本語|year=2005|date=2005-02-15|isbn=4901621297|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=牛田正行|chapter=鬼まんじゅう|title=名古屋まる知り新事典|publisher=ゲイン|language=日本語|year=2005|date=2005-02-15|isbn=4901621297|ref=harv}}
*「東海地域の産業から見た菓子文化の歴史民俗学的考察」『和菓子』第27号、2020年
* 遠山佳治「東海地域のおやつ文化を教材とした保育内容「環境」の一考察」『名古屋女子大学紀要』第64巻第287号、2018年
* 『あいちのめぐみ』JAあいち女性協議会、2010年
* 大竹敏之『名古屋めし』リベラル社、2015年
* あいち郷土料理検討委員会『あいちの郷土料理レシピ50選』愛知県農林水産食育推進課、2017年
* 安田文吉『なごや飲食夜話 二幕目』中日新聞社、2014年
* 『名古屋で食べたい100のもの』JTBパブリッシング、2020年、61頁。
* 大竹敏之、森崎美穂子『東海の和菓子名店』ぴあ株式会社、2015年


==関連項目==
==関連項目==
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
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* [https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/onimanju_aichi.html 農林水産省 うちの郷土料理「鬼まんじゅう 愛知県」]
* [https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/onimanju_aichi.html 農林水産省 うちの郷土料理「鬼まんじゅう 愛知県」]
* [http://www1.s3.starcat.ne.jp/oniman/ 全日本鬼まんじゅう普及協議会]
* [http://www1.s3.starcat.ne.jp/oniman/ 全日本鬼まんじゅう普及協議会]
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2020年12月18日 (金) 00:56時点における版

鬼まんじゅう(不朽園)
鬼まんじゅう

鬼まんじゅう(おにまんじゅう)または芋饅頭(いもまんじゅう)は、小麦粉上新粉と砂糖を混ぜ合わせた生地に、角切りさつま芋を加えて蒸した和菓子。主に愛知県を中心に東海地方にみられる郷土和菓子であり、家庭料理を発祥とする。略して「鬼まん(おにまん)」とも呼ばれ、「芋外郎(ういろう)」「芋まん」「芋まんじゅう」など、多数の別名で知られる[1]

概要

一般的な饅頭中華まんのように中央部に具()がまとまって入りそれを生地が包んだ形ではなく、具であるさつま芋の角切りが生地に混じっており、表面にもさつま芋の角切りが見える。また、一般の饅頭や中華まんよりも生地の粘りが強く、生地の表面に光沢がある。

名称の由来は諸説あるが、表面にいくつもさつま芋の角切りが見える様子がごつごつしてやその金棒を連想させること、戦前は今より黒っぽい色で鬼のような不気味さがあったことなどが挙げられる。

庶民的な菓子であり、愛知県や岐阜県では、高級店でなく庶民的な和菓子店には必ずといってよいほど鬼饅頭が売られている。学校・学校教育の現場では給食デザートとして出されたり、家庭科の調理実習で調製する地域もある。また、家庭では蒸しパンの素にさつま芋の角切りを混ぜて製する場合もある。

21世紀現在、鬼まんじゅうを製造・販売する店は、名古屋市千種区覚王山日泰寺近くにある梅花堂が知られている[2]

名称

角切りのサツマイモの角が突き出て見える形状が、鬼のツノや金棒をイメージさせたことから「鬼まんじゅう」と称されるようになったというのが定説である[1][3]。食糧難の時代に普及したことから、災いを鬼とみたて、主食であるコメの代用品であるサツマイモを食べて鬼を封じこめようと願う、厄払いの意味を込めて名付けられたともいう[4][5]

庶民のおやつとして広く普及したことから[6]、和菓子店などが名付けて売り出した「鬼まん(オニマン)」の愛称が定着し、親しまれている[4]。「芋外郎(ういろう)」「芋まん」「芋まんじゅう」など、多数の別名で知られる[1]。名古屋市は幕末から作られるようになった郷土菓子「外郎」が庶民的な菓子として有名な土地柄であることから「芋が入った外郎」の意で熱田区では「芋ういろ」と呼び[7][8]瀬戸市尾張旭市でも「芋ういろ」と呼ばれていた[9]

また、愛知県春日井市では大分県の石垣まんじゅうに似ていることから「イシカケ(石垣)ボチ」と呼んでいたとも記録される[10]

昭和30年代、鬼まんじゅうを商品化していた山田餅本店(名古屋市瑞穂区)では、鬼の恐いイメージを払拭するために商品名を「芋まんじゅう」と変えて販売したが、客は皆「鬼まんじゅう」と注文するため、すぐに商品名を戻したという[9]

歴史

「鬼まんじゅう」の名店として知られる梅花堂
「鬼まんじゅう」の名店として知られる山田餅本店
味鋺地区に残る芋畑、砂地である様子がわかる

発祥

鬼まんじゅうの発祥は、史料としては残されていないが[11][12]、一説によれば江戸時代とされる[4]。日本のサツマイモの食文化は、江戸時代後期の江戸を中心に焼き芋が販売されて人気となり、それまでの飢饉の備蓄食料としての位置づけから嗜好品ともみなされるようになった[13]。関東では焼き芋文化が流行したのに対して、関西上方では蒸し芋文化が流行し、鬼まんじゅうはその調理法から上方文化圏に含まれる食品といえる[13]

戦中戦後の食糧難の折、サツマイモは比較的容易に手に入る食材であったことから、これと小麦粉を材料に作られ、に換わる主食として普及した[1]。戦時中のサツマイモは、味よりも収穫量の多さが重視され、三重県で品種改良された「護国芋」という品種が生産されており、水っぽく加熱しても旨味に欠けた。また、小麦粉も粗悪品で黒っぽいものだった[9]。これらをできるだけ美味しく食べる工夫から、鬼まんじゅうが考案されたものと考えられている[1]。サツマイモそのものが餡の代用品と考えられたため、「饅頭」という名称であるものの、餡は入っていない[13]

東海地方において、20世紀前半の戦前・戦中のサツマイモ産地は、庄内川矢田川が合流した礫層の砂地である味鋺周辺地域(2020年現在の名古屋市北区)であることから、この地域が鬼まんじゅう発祥の地のひとつとも考えられている。しかし、21世紀現在、名古屋市地域の文献にみる鬼まんじゅうの記録は乏しく、稲沢市などの尾張地域、豊田市豊川市豊橋市などの三河地域には多数残るため、農村地域で誕生したことは疑いないものの発祥地を特定する有力な手掛かりは知られていない[13]

発展

よもぎ味の「鬼まんじゅう」(道の駅瀬戸しなの「満開堂」)

鬼まんじゅうが飛躍的に発展し普及したのは、昭和30年代から40年代にかけての高度経済成長期である[11][10]。農家において腹持ちの良い安価なおやつとして親しまれ、郷土食として定着したのをきっかけに[1][13]、次第に菓子店などでも製造販売されるようになり、敷島製パンフジパンなどの大手食品メーカーが鬼まんじゅう風の蒸しパンを生産してスーパーマーケットなどでも販売を開始したことから、さらに一般庶民の間に広く普及した[10]。黒糖を生地に練り込むなどの「アレンジを加えた鬼まんじゅう」も、この頃すでに誕生している[10]

千種区にある覚王山日泰寺の参道に店を構える1929年(昭和4年)創業の梅花堂パン屋では、昭和30年代以後には鬼まんじゅうの製造販売を開始しており、次第に「懐かしい味」として毎月21日の弘法大師の縁日の門前菓子として定着した[10]。1980年代後半から一般に広く知られるようになり[14]、平成時代には名古屋の銘菓と位置付けられるまでになった[15]。21世紀には、パン屋から和菓子屋に転身して名を成した梅花堂のほか、守山区の浪越軒や瑞穂区の山田餅本店などが、鬼まんじゅうの代表的な和菓子店として知られる[10]

2020年(令和2年)現在、名古屋市を中心に愛知県全域と[1]、岐阜県など東海地域におもに普及する。一般的には丸い形をしているが、近隣の岐阜県では四角い形の鬼まんじゅうの製造販売店も複数確認されている[10]

継承活動

保育園や小学校などの学校給食で提供されたり[16][1]、サツマイモ栽培の学習と関連付けた調理実習を実施するなどして継承に努める[1]

手軽に作れることから、家庭料理としても普及しているほか[1]、名古屋市の餅屋系統の和菓子店では必ずと言ってよいほど製造販売されているほか、デパ地下などでも扱われる[5][17]

調理法

おもな材料は、サツマイモのほか、薄力粉米粉砂糖、水であり、粉については薄力粉のみで作る例や[3]、米粉などと混ぜて作る例[7]、うどん粉を用いる例など[8]、伝統的な家庭料理に定番の多様性がみられる[7]

基本は、1センチメートル角に切ったサツマイモを、小麦粉、砂糖、水とともに混ぜ入れ、適度な大きさに丸めて、蒸す[1]

皮つきのサツマイモで作ると、赤色が美しく、皮の食感のちがいを楽しむこともできる[1]。サツマイモの皮を厚めに剥いて水にさらしてアクを抜いてから使ったり[14]、サツマイモと砂糖を混ぜて時間を置き、イモの水分を出してからその水分もあわせて使うなど、様々な調理法が知られている[1]

鬼まんじゅう独特のもちもちとした食感は、材料を練り混ぜる練り具合によって左右され、和菓子店などでは味を統一するためにその日の気候によって練り具合を変えるなど熟練の工夫が必要とされる[14][18]

また、白砂糖と黒砂糖を使い分けることで味や見た目に変化を付ける、小麦粉だけでなく白玉粉を混ぜるなどして様々に工夫されている[6]

冷えても食べることができるが、蒸したての食感を味わいたい場合は、ラップをかけて電子レンジで20~30秒温め直すとよいという[1][4]

特徴

一般的な饅頭と異なり、餡は無く、具であるサツマイモが一体化して表面にも見える外見の饅頭である[4]。食感はもちもちとしつつ、イモの歯ごたえを同時に味わうことができる[14]

本来の「鬼まんじゅう」は、もっちりとして重量感があり、腹持ちが良いのが特徴であるが、嗜好品として普及して以降は、蒸しパンのように軽い生地のものや、サツマイモではなくリンゴの角切りを入れたバージョンなど、様々にアレンジされるようになった[1]

家庭においては昔ながらに塩と砂糖をまぶして味をつけることが多いが[1]、愛知県の和菓子屋では必ずあると言っても過言ではないほどポピュラーな郷土菓子であり[16]、そうした市販の「鬼まんじゅう」では、嗜好性を高めるべく、あらかじめ、サツマイモを蜜煮しているものも多くなっている[1]

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 鬼まんじゅう 愛知県”. 農林水産省. 2020年11月9日閲覧。
  2. ^ 牛田正行 2005, p. 58.
  3. ^ a b 『あいちのめぐみ』JAあいち女性協議会、2010年、48頁。 
  4. ^ a b c d e 「鬼まんじゅう」は名古屋名物のおすすめお菓子!由来や人気の名店を紹介!”. TRAVEL STAR. 2020年11月9日閲覧。
  5. ^ a b 大竹敏之『名古屋めし』リベラル社、2015年、134頁。 
  6. ^ a b 庶民のおやつ『鬼まんじゅう』”. 有楽グループ. 2020年11月9日閲覧。
  7. ^ a b c あいち郷土料理検討委員会『あいちの郷土料理レシピ50選』愛知県農林水産食育推進課、2017年、54頁。 
  8. ^ a b 安田文吉『なごや飲食夜話 二幕目』中日新聞社、2014年、95頁。 
  9. ^ a b c “戦前は黒色 家庭で料理”. 中日新聞社: p. 14. (2018年9月30日) 
  10. ^ a b c d e f g 「東海地域の産業から見た菓子文化の歴史民俗学的考察」『和菓子』第27号、2020年、104頁。 
  11. ^ a b 遠山佳治「東海地域のおやつ文化を教材とした保育内容「環境」の一考察」『名古屋女子大学紀要』第64巻第287号、2018年、287頁。 
  12. ^ 今村太郎 (2006年9月25日). “なごや特走隊”. 中日新聞社: p. 14 
  13. ^ a b c d e 「東海地域の産業から見た菓子文化の歴史民俗学的考察」『和菓子』第27号、2020年、103頁。 
  14. ^ a b c d “郷土の食彩”. 中日新聞社: p. 21. (2003年3月16日) 
  15. ^ 『名古屋で食べたい100のもの』JTBパブリッシング、2020年、61頁。 
  16. ^ a b 愛知県民なら誰もが知っている「鬼まんじゅう」って何?”. TBSラジオ. 2020年11月9日閲覧。
  17. ^ 大竹敏之、森崎美穂子『東海の和菓子名店』ぴあ株式会社、2015年、118頁。 
  18. ^ “戦前は黒色 家庭で料理”. 中日新聞社: p. 14. (2018年9月30日) 

参考文献

  • 牛田正行「鬼まんじゅう」『名古屋まる知り新事典』ゲイン、2005年2月15日。ISBN 4901621297 
  • 「東海地域の産業から見た菓子文化の歴史民俗学的考察」『和菓子』第27号、2020年
  • 遠山佳治「東海地域のおやつ文化を教材とした保育内容「環境」の一考察」『名古屋女子大学紀要』第64巻第287号、2018年
  • 『あいちのめぐみ』JAあいち女性協議会、2010年
  • 大竹敏之『名古屋めし』リベラル社、2015年
  • あいち郷土料理検討委員会『あいちの郷土料理レシピ50選』愛知県農林水産食育推進課、2017年
  • 安田文吉『なごや飲食夜話 二幕目』中日新聞社、2014年
  • 『名古屋で食べたい100のもの』JTBパブリッシング、2020年、61頁。
  • 大竹敏之、森崎美穂子『東海の和菓子名店』ぴあ株式会社、2015年

関連項目

外部リンク