「レチノイン酸」の版間の差分
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'''レチノイン酸''' (Retinoic acid) は、[[ビタミンA]]([[レチノール]])の[[代謝物質]]で、成長や発達に必要なビタミンAの機能を媒介する。レチノイン酸は、[[脊椎動物]]にとって必須である。胚の発生初期には、胚の特定領域でレチノイン酸が生成し、胚の後部の発達を導く細胞間シグナル分子として、胚の軸に沿った前部/後部を決定する助けとなる<ref name="Duester">{{cite journal |last1=Duester |first1=G |title=Retinoic Acid Synthesis and Signaling during Early Organogenesis |journal=Cell |volume=134 |issue=6 |pages=921–31 |date=September 2008 |pmid=18805086 |pmc=2632951 |doi=10.1016/j.cell.2008.09.002 }}</ref>。この機構は、胚の発生初期に[[ホメオティック遺伝子]]によって制御される<ref name="Holland">{{cite journal |author=Holland, Linda Z. |title=Developmental biology: A chordate with a difference |journal=Nature |volume=447 |issue= 7141|pages=153–155 |year=2007 |doi=10.1038/447153a |pmid=17495912}}</ref>。 |
'''レチノイン酸''' (Retinoic acid) は、[[ビタミンA]]([[レチノール]])の[[代謝物質]]で、成長や発達に必要なビタミンAの機能を媒介する。レチノイン酸は、[[脊椎動物]]にとって必須である。胚の発生初期には、胚の特定領域でレチノイン酸が生成し、胚の後部の発達を導く細胞間シグナル分子として、胚の軸に沿った前部/後部を決定する助けとなる<ref name="Duester">{{cite journal |last1=Duester |first1=G |title=Retinoic Acid Synthesis and Signaling during Early Organogenesis |journal=Cell |volume=134 |issue=6 |pages=921–31 |date=September 2008 |pmid=18805086 |pmc=2632951 |doi=10.1016/j.cell.2008.09.002 }}</ref>。この機構は、胚の発生初期に[[ホメオティック遺伝子]]によって制御される<ref name="Holland">{{cite journal |author=Holland, Linda Z. |title=Developmental biology: A chordate with a difference |journal=Nature |volume=447 |issue= 7141|pages=153–155 |year=2007 |doi=10.1038/447153a |pmid=17495912}}</ref>。 |
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胚の発達におけるレチノイン酸の主要な役割は、分化のコントロールであるが、この効果自体が副作用を引き起こす原因にもなる。例として挙げると[[癌]]や[[ニキビ]]の治療に用いられる[[イソトレチノイン]]等の[[レチノイド|レチノイド製剤]]の高い[[催奇性]]の原因となり、ビタミンA前駆体([[パルミチン酸レチノール]])やレチノイン酸自体の経口での大量摂取でも、同じ機構により催奇性を示す可能性がある。 |
胚の発達におけるレチノイン酸の主要な役割は、分化のコントロールであるが、この効果自体が副作用を引き起こす原因にもなる。例として挙げると[[癌]]や[[尋常性痤瘡|ニキビ]]の治療に用いられる[[イソトレチノイン]]等の[[レチノイド|レチノイド製剤]]の高い[[催奇性]]の原因となり、ビタミンA前駆体([[パルミチン酸レチノール]])やレチノイン酸自体の経口での大量摂取でも、同じ機構により催奇性を示す可能性がある。 |
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皮膚に塗布すると皮膚の剥離作用があり、[[ケミカルピーリング]]に使われる<ref>{{Cite journal |和書|author1=古川福実 |author2=船坂陽子 |author3=師井洋一ほか |date=2008 |title=日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン 改訂第3版 |journal=日本皮膚科学会雑誌 |volume=118 |issue=3 |pages=347-356 |naid=130004708588 |doi=10.14924/dermatol.118.347 |url=https://doi.org/10.14924/dermatol.118.347 }}</ref>。[[レチノール]]では吸収された細胞内でレチノイン酸に変換されるため、このような作用はない<ref>{{cite journal |author=Zein E. Obagi |date=2013 |title=Taking the Pulse of Hydroquinone Therapy: A Plea for Caution |url=http://modernaesthetics.com/2013/04/taking-the-pulse-of-hydroquinone-therapy-a-plea-for-caution |journal=Modern Aesthetics |volume=2013 |issue=March/April |pages= }}</ref>。 |
皮膚に塗布すると皮膚の剥離作用があり、[[ケミカルピーリング]]に使われる<ref>{{Cite journal |和書|author1=古川福実 |author2=船坂陽子 |author3=師井洋一ほか |date=2008 |title=日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン 改訂第3版 |journal=日本皮膚科学会雑誌 |volume=118 |issue=3 |pages=347-356 |naid=130004708588 |doi=10.14924/dermatol.118.347 |url=https://doi.org/10.14924/dermatol.118.347 }}</ref>。[[レチノール]]では吸収された細胞内でレチノイン酸に変換されるため、このような作用はない<ref>{{cite journal |author=Zein E. Obagi |date=2013 |title=Taking the Pulse of Hydroquinone Therapy: A Plea for Caution |url=http://modernaesthetics.com/2013/04/taking-the-pulse-of-hydroquinone-therapy-a-plea-for-caution |journal=Modern Aesthetics |volume=2013 |issue=March/April |pages= }}</ref>。 |
2020年8月24日 (月) 23:58時点における版
レチノイン酸 | |
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(2E,4E,6E,8E)-3,7-dimethyl-9-(2,6,6-trimethylcyclohexen-1-yl)nona-2,4,6,8-tetraenoic acid | |
別称 vitamin A acid; RA | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 302-79-4 |
PubChem | 444795 |
ChEMBL | CHEMBL38 |
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特性 | |
化学式 | C20H28O2 |
モル質量 | 300.43512 g/mol |
外観 | 黄色から明るい橙色の結晶性粉末で、特徴的な花のような香りを持つ[1] |
融点 |
180 - 182 °C, 271 K, -116 °F (エタノールから結晶化[1]) |
水への溶解度 | ほぼ不溶 |
fatへの溶解度 | 可溶 |
関連する物質 | |
関連物質 | レチノール; レチナール; β-カロテン |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
レチノイン酸 (Retinoic acid) は、ビタミンA(レチノール)の代謝物質で、成長や発達に必要なビタミンAの機能を媒介する。レチノイン酸は、脊椎動物にとって必須である。胚の発生初期には、胚の特定領域でレチノイン酸が生成し、胚の後部の発達を導く細胞間シグナル分子として、胚の軸に沿った前部/後部を決定する助けとなる[2]。この機構は、胚の発生初期にホメオティック遺伝子によって制御される[3]。
胚の発達におけるレチノイン酸の主要な役割は、分化のコントロールであるが、この効果自体が副作用を引き起こす原因にもなる。例として挙げると癌やニキビの治療に用いられるイソトレチノイン等のレチノイド製剤の高い催奇性の原因となり、ビタミンA前駆体(パルミチン酸レチノール)やレチノイン酸自体の経口での大量摂取でも、同じ機構により催奇性を示す可能性がある。
皮膚に塗布すると皮膚の剥離作用があり、ケミカルピーリングに使われる[4]。レチノールでは吸収された細胞内でレチノイン酸に変換されるため、このような作用はない[5]。
出典
- ^ a b Merck Index, 13th Edition, 8251.
- ^ Duester, G (September 2008). “Retinoic Acid Synthesis and Signaling during Early Organogenesis”. Cell 134 (6): 921–31. doi:10.1016/j.cell.2008.09.002. PMC 2632951. PMID 18805086 .
- ^ Holland, Linda Z. (2007). “Developmental biology: A chordate with a difference”. Nature 447 (7141): 153–155. doi:10.1038/447153a. PMID 17495912.
- ^ 古川福実、船坂陽子、師井洋一ほか「日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン 改訂第3版」『日本皮膚科学会雑誌』第118巻第3号、2008年、347-356頁、doi:10.14924/dermatol.118.347、NAID 130004708588。
- ^ Zein E. Obagi (2013). “Taking the Pulse of Hydroquinone Therapy: A Plea for Caution”. Modern Aesthetics 2013 (March/April) .