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「学校における働き方改革」の版間の差分

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一方で、昭和23年3月施行の[[政府職員の俸給等に関する法律]]に教員はその勤務の特殊性から、一応1週48時間以上勤務するものとして一般公務員より有利に切り替えられ、また同年5月には[[政府職員の新給与実施に関する法律]]制定され、ここでは調整号俸という形で一定の基礎号俸の上に1,2号俸を積み上げている。ここで超過勤務は支給されないこととなった<ref>{{Cite web
一方で、昭和23年3月施行の[[政府職員の俸給等に関する法律]]に教員はその勤務の特殊性から、一応1週48時間以上勤務するものとして一般公務員より有利に切り替えられ、また同年5月には[[政府職員の新給与実施に関する法律]]制定され、ここでは調整号俸という形で一定の基礎号俸の上に1,2号俸を積み上げている。ここで超過勤務は支給されないこととなった<ref>{{Cite web
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更に、昭和49年施行となっている[[学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法]]では、一般公務員より教員の給与を優遇する措置が取られてきた経緯がある<ref>{{Cite web
更に、昭和49年施行となっている[[学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法]]では、一般公務員より教員の給与を優遇する措置が取られてきた経緯がある<ref>{{Cite web

2020年8月11日 (火) 01:09時点における版

平成26年(2014年)のOECD国際教員指導環境調査(TALIS)、平成29年(2017年)の文部科学調査で日本における小中学校教諭の勤務時間が突出して長時間となっていることが明らかになった。このため教職員の働き方と学校業務の在り方を検討した中央教育審議会の答申が学校における働き方改革として、平成31年(2019年)1月に取りまとめられた。 これを受け、文部科学省は、学校における働き方改革の取組を進め、各自治体でも教職員の勤務時間短縮と学校業務改革についての実施計画が策定されている。神奈川県では教員の働き方改革、岐阜県では教職員の働き方改革など、地域によって若干呼び方が異なる。

現状

OECD国際教員指導環境調査(TALIS)でも平成26 年6月に公表された第2回調査の結果で、日本の教員の1週間当たりの勤務時間は参加国中最長であった。また、平成29年4月、文部科学省は、「教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について」を公表したが、小学校教諭の約3割、中学校教諭の約6割は、1週間当たりの勤務時間が、厚生労働省が過労死の労災認定基準として定める「1か月当たり80 時間以上の時間外労働」に相当する60 時間以上に上っていることが 明らかになった。増加主要因は、若手教師の増加、総授業時間数の増加、中学校における部活動指導時間の増加と分析されている。

これらのことから、平成29年6月閣議決定の「経済財政運営と改革の基本方針2017」(骨太の方針)では、教員の適正な勤務時間管理の実施や業務の効率化などに触れ、長時間勤務の状況を早急に是正することとし、年末までに緊急対策を取りまとめるとした。 なお教職員の長時間労働の根本的な原因には、昭和46年制定の「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」で時間外労働が「自主的な活動」とされている点が指摘されている。この法に基づき公立学校の教員には、時間外勤務手当及び休日給が支給されない代わりに、給料月額の4%に相当する教職調整額が支給されている [1]

これは、戦後に労働法関連の諸法規が制定された際に教師も労働者の一員として基本的には労働基準法が適用されることになり、 8 時間労働制を定める労基法32条、時間外労働の手続や残業手当について定める36,37 条も適用され残業に対しては手当が支払われるべきものとされたことが影響している。当時国の指導にも関わらず現実には残業手当が支払われなかったことが起こり、残業手当請求訴訟が繰り返し提起され、判決は法律の規定に従って手当の支払いを命じた。これに対応し、将来の紛糾を防ぐため、文部省は教師の勤務状況を調査し残業の実態を把握し、それを踏まえて平均的時間数(月間8時間程度))に見合うものとして「教職調整額」を基本給の4%とした経緯があり、当時としては平均的な残業分の手当てが含まれるようになった。この法令を研究した学識者からは、現代の状況を指し、教師に精神障害が多発しているが、長時間労働も一因と考えられるとの意見がある[2]。 関連して、給特法とは関係なく労働基準法が適用となるはずの私立学校の教員も、その多くで残業代が払われていないとの指摘もある[3]

一方で、昭和23年3月施行の政府職員の俸給等に関する法律に教員はその勤務の特殊性から、一応1週48時間以上勤務するものとして一般公務員より有利に切り替えられ、また同年5月には政府職員の新給与実施に関する法律制定され、ここでは調整号俸という形で一定の基礎号俸の上に1,2号俸を積み上げている。ここで超過勤務は支給されないこととなった[4]。なお、公立義務教育諸学校教員の給与は、市町村立学校職員給与負担法により都道府県が負担し、その半額は国庫が負担となっている。ただし兵庫県明石市では小学校1年生の教員国基準1クラス35人を、市独自基準で人件費を負担して30人学級にしているところもある[5]

更に、昭和49年施行となっている学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法では、一般公務員より教員の給与を優遇する措置が取られてきた経緯がある[6]

なお、平成29年度の精神疾患による教育職員の病気休職者数は、5,077人(全教育職員数の0.55%)で、28年度から増加している[7]。過労死と認定された公立校の教職員は2016年度までの10年間で63人と報道されている[8]

対象教員が全員受講しなければならない悉皆研修も教員の多忙化に拍車をかける場合があり、研修回数を減らす、開催時期をアンケートで意見を聞くなどの努力をする取り組みをする市教育委員会もある[9]

2020年12月、公立学校教員の勤務時間を年単位で調整する「変形労働時間制」の導入を柱とした改正教職員給与特別措置法(給特法)が成立した。自治体の判断により2021年度から、変形労働時間制を活用した「休日まとめ取り」が可能となる[10]。これを受けて、文部科学省は2019年6月、公立小中高校の教員が夏休み中に休日をまとめ取りできるよう、学校の夏季休暇中の業務を減らす指針を出した[11]

しかし、2020年4月からの新型コロナウイルス感染症対策として全国で小中学校の休校が相次ぎ、その代償として学習指導要領のカリキュラムを履行するため、夏休みを返上を表明している自治体も出ていると報道されている[12]。このような場合、夏休みに休日まとめどりを行うことが不可能となって来る。都道府県で条例を制定し21年度から導入することが可能だが、地方議会において反対の動きが出ていると報道されている[13]

ところで教育多忙の要因は、平成26年11月の文部科学省調査では「国や教育委員会からの調査等への対応」を筆頭に、「研修会や教育研究のレポート作成」、「児童・生徒・保護者アンケートの実施・集計」、「保護者・地域からの要望・苦情等への対応」に多くの時間が費やされ、多忙感を増大させているとの結果となっている[14]。またその対策としては、財務省の見解では教員増ではなく、例えば精神科医や臨床心理士の資格を持つカウンセラー、社会福祉士などのソーシャルワーカー、外国語を教えることができる人材やICTの専門家、不登校児等を専門に扱うNPO・フリースクール、部活動指導ができるコーチ、事務作業の経験者などの学校の周りにいる専門家や専門機関、あるいはシルバー人材や元教員等の地域ボランティアなど、多様な協力者の参画を促すべきと示している[15]

東京都教育庁は学習指導や部活動指導などの学校教育活動を支援する者の情報を、東京都の公立学校に提供する人材バンク事業を行っている[16]

学校現場では、いじめの重大事態や児童虐待相談対応件数が過去最多(2019年4月現在)、障害のある児童生徒、不登校児童生徒、外国人児童生徒等の増加といった複数の課題への対応が日々迫られている[17]

2020年春のコロナ禍による全国での休校措置により、長期休校中オンライン授業等に踏み切った学校と対応しない学校に分かれたが、2020年5月11日の文部科学省の学校の情報環境整備に関する説明会では、文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課長が5%が環境が整っていないから実施しないのは言い訳であると断罪し、この非常時にさえICTを活用しないのは何故かと投げかけている[18]。なお岐阜県の公立高校では同時接続数の増加に伴う画像遅延などオンラインならではの不具合が想定に対し録画したDVDを貸し出しすなどして対応する[19]。東京都足立区では、オリジナル学習教材を新たに用意し区立小・中学校の教員が授業を行い、映像を作成。YouTubeで限定公開した[20]長野県白馬村白馬中学校では学校長が保護者や周囲の支援を受け、わずか10日でゼロから双方向オンライン授業を実施した。オンライン授業について私立学校の教諭に教員研修をしてもらい、wi-fi環境不足の生徒には協力ホテル内で受講させる環境を整えた[21]

国の動き

2017年4月、中央教育審議会に「学校における働き方改革特別部会」(以下、部会)が設置され、8月に次を要旨とした緊急提言を出している。

①校長及び教育委員会は、学校において「勤務時間」を意識した働き方を進めること ②すべての教育関係者が、学校・教職員の業務改善の取り組みを強く推進していくこと ③国として、持続可能な勤務環境整備のための支援を充実させること

2017年12月は「中間まとめ」を発表した。それを受けて、文部科学省では「緊急対策」を取りまとめ、業務の役割分担・適正化に向けた方策などとともに、それらの実施に向け、スクール・サポート・スタッフや中学校での部活動指導員といった人的支援、学校給食費の徴収や管理業務の改善を含む2018年度予算案を示した。

2018年2月、「中間まとめ」や「緊急対策」を踏まえた取り組みを徹底するよう、各都道府県と指定都市の教育長宛に通知が発出されている。また、同年3月には、スポーツ庁から「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」が出されている。[22]

新しい時代の初等中等教育の在り方 論点取りまとめ(令和元年12月 初等中等教育分科会)では、令和4年度からを目途とした小学校高学年からの教科担任制度を本格的に導入すべきとしている[23]

改革内容

業務外行為の明確化

国は、指針として学校現場でのICTやタイムカードなどにより客観的に把握する。文部科学省の作成した上限ガイドライン(月45時間、年360時間等)の実効性を高めることが重要であり、文部科学省は、その根拠を法令上規定するなどの工夫を図り、学校現場で確実に遵守されるように取り組むべきとされた。労働安全衛生法に義務付けられた労働安全衛生管理体制の整備や教職員一人一人の働き方に関する意識改計画を掲げている。 また、学校及び教師が担う業務の明確化・適正化を掲げ、夏休み期間のプール指導、勝利至上主義の早朝練習の指導、内発的な研究意欲がない形式的な研究指定校としての業務、運動会等の過剰な準備など、学校の伝統として続いているが、必ずしも適切といえない又は本来は家庭や地域社会が担うべき業務を大胆に削減すべきとしている。

実態としては、夏季のプール指導を適切な管理体制を行うことが困難な場合があり、熊本市では2012年の夏休みに市内の2年生女児が学校のプールで意識不明の重体となり、その後プール開放時は常時、保護者で5人以上、警備会社の警備員らで2人以上の監視員を置くよう義務付けられた。業者は市教委が募り、各校のPTAが契約を結ぶ形となっているが、監視員は市教委が実施する講習の受講義務があるが、受講しない監視会社があったことが問題視されている[24]

専門家等の活用

〇教職員及び専門スタッフ等、学校指導・運営体制の効果的な強化・充実として、事務職員の充実、スクールカウンセラーの全公立小中学校配置及びスクールソーシャルワーカーの全中学校区配置並びに課題を抱える学校への重点配置。部活動指導員の配置促進、授業準備や学習評価等の補助業務を担うサポートスタッフ、理科の観察実験補助員の配置促進、スクールロイヤーの活用促進が提案されている。

運動部活動については、顧問のうち、保健体育以外の教員で担当している部活動の競技経験がない者が中学校で約46%、高等学校で約41%となっており、未経験者による指導がなされている。外部指導者だけでは、活動中の事故等に対する責任の所在が不明確であることなどから、大会等に生徒を引率できない問題があるが、「部活動指導員」は校長の監督を受け、部活動の技術指導や大会への引率等を行うことを職務とすることを学校教育法施行規則に新たに規定されている。[25]。ただし、質の担保や低収入による人材の確保難について問題提起されている[26][27]

東京都港区では2007年に、大阪府では、2013年にスクールロイヤーを導入し、学校トラブルの解決を図っている[28]野田市の児童虐待で女児が死亡した事例では、父の暴力を相談した女児のアンケート回答を父に恫喝されて教育委員会の担当者が渡すなど不適切な対応が明らかになっており、スクールロイヤーの配置を決めた[29]。虐待問題に関しては、兵庫県三木市では、父親から虐待された女児の保護をめぐり、兵庫県三木市立小学校の校長(当時)や市議が、保護にあたった養護教諭のことを父親に漏らしたため嫌がらせを受け休職を余儀なくされ、後に養護教諭が自殺した事件が起こっている。[30]

奈良県大和高田市教育委員会の元幹部ら9人が、市立小学校に通っていた児童の親族から不当な要求を受け続け、計1億円超を私的に支払わされていたり校長に土下座で謝罪を強要するというトラブルが起こっていた。このように学校だけでは解決できない事案も発生することがある[31]

教師間の暴力が起こる場合もあり、神戸市立の小学校内で3中堅層の教員4人が、20代の若手教員4人に暴行や暴言、セクハラを繰り返し、被害届が出された。「職員室カースト」との呼び名もあるように、閉鎖的な学校空間の中で教員間の力関係でパワハラが起こることがある[32]

教師に対する暴力や子ども間の暴力は、警察に通報したり被害届を出すなどの校外の介入を求めることを教育の敗北として受け止めてきた向きがあり、消極的な対応がなされることがあった。しかし子ども間とは言え被害者の人権を守り、また教師の労働における安全確保はなされるべきであるため、文部科学省でも警察との連携を推奨している[33]

2020年コロナ禍による休校措置をきっかけとした中高生の性交渉の増加による妊娠相談がこうのとりのゆりかごなどに多数寄せられるようになった[34]が、2002年から、秋田県では県の教育委員会と医師会が連携し、中高校生向けに性教育を実施している。その結果、全国平均の1.5倍だった10代の中絶が平均以下となり[35]2012年には10代の中絶率が約三分の一となった。性教育で性行動はより慎重になると知られている[36]富山市でも、10代の人工妊娠中絶率はこの5~6年、女子の人口1000人あたり1人前後の割合で推移している。対して全国平均は6人前後で、福岡県や沖縄県などは10人前後となっている。1990年代に女子高生等の性が商品化され、全国で人工妊娠中絶が急増したことに危機感を抱いた産婦人科医と富山市は協力し、1991年から性教育の出張授業を始めた結果となっている。性教育とは危機管理を学ぶことという意識で教育が行われている[37]

学校運営への支援制度の導入等

〇勤務時間管理の適正化や業務改善・効率化への支援として、次の点が問題視されている。登下校の対応などについて地域人材の協力体制整備が不十分、都道府県単位で共通の校務支援システムの導入が必要、業務改善方針等の策定や学校宛ての調査・照会の精選などについて市区町村での取組が不十分、部活動数の適正化や地域クラブとの連携が一層必要、学校給食費や学校徴収金の公会計化が不十分であることの改善が求められている[38]

この対策として、東京都練馬区では2019年度予算において、全国初として、保護者への精算金返金の迅速化を図る学校徴収金管理システムを運用開始する[39]。学校徴収金のうち多額を占める修学旅行費については、全国では旅行会社による教育旅行積立を活用[40]して学校徴収の負担を減らす動きもある。 PTA費や学校給食費などの学校徴収金については、学校事務職員を初め、関係者による不正流用がしばしば起こる問題がある。不正流用が相次ぐ背景には、学校に配置される事務職員が少なく、現金管理を実質的に1人に任せがちな現状があると指摘されている[41]。また、熊本県内では県立高校のPTA会費などを横領した容疑で2018年6月、元後援会職員が逮捕されているような事件も起こっている[42]

文部科学省は、学校給食費等の徴収に関する公会計化等の推進に関する通知を令和元年7月に発出し、学校給食費を初めとして、教材費,修学旅行費等の学校徴収金学校の負担軽減を図る取組の推進を呼びかけている[43]

学校給食費の徴収についての文部科学省の平成28年度実態調査では、公会計は39.7%[前回30.9%]である。徴収・管理業務は主に自治体が行うが17.8%、主に学校が行うが21.9%となっている。また未納の保護者への督促を行っている者は、学校事務職員47.1%、学級担任46.0%、副校長・教頭41.0%、校長等 20.3%である[44]。学校給食法により給食運営費以外となる食材料費については保護者が負担するが、かつて学校長徴収であった私費会計処理を世田谷区千葉市仙台市などで公会計化している。海老名市では平成24年度より給食センターの私費会計であった給食費を公会計化し、実施1年後の収納率は収納率98.11%となっていた[45]。公会計課した場合に生活保護受給者が不払いであった場合については生活保護法第32条第2項により学校長払いは許されている一方、首長への支払いは許されていなかったが、令和2年10月から第10次地方分権一括法により教育扶助費が学校長等に加え、地方公共団体の長等に支払うことが可能となった[46]

新たな生徒指導の取り組み

千代田区立麹町中学校では工藤勇一校長の元で、服装や頭髪の指導は行わない、一律の宿題を出さない、中間・期末テストや固定担任制の廃止や朝の会議の短縮化など学校の改革を進めている[47]。また東京都世田谷区立桜丘中学校でも元西郷孝彦校長の元で、生徒の髪形や服装の校則はなく、携帯電話やタブレット端末の持ち込みも可能となった。遅刻、教室から抜け出し自習することもできる。平均学力は区内トップレベルだと報道されている[48]。生徒の自主性に任せ、強い締め付けを行わない学校では細かい校則を守らせる生徒管理が不要となる。


なお、制服については教育委員会ではなく学校長判断で着用が決定するが、公正取引委員会は2020年7月に愛知県豊田市にある県立高校6校の制服販売において価格カルテルを結んでいたとして、同市の販売業者3社に対し、独占禁止法違反で再発防止を求める排除措置命令を行うなど流通に不透明さが残る場合がある[49]。また、制服については学校長判断で変更等が決められるが、2019年4月から、中野区世田谷区では全区立中学校で女子生徒もスラックスの制服(標準服)を選べるようにした[50]。世田谷区では上川あや議員の経験による質疑がきっかけとなった[51]福岡市では中学校長会の代表や保護者代表などによる市立中学校の制服を見直す検討委員会が発足し2019年5月には新たな標準服の案がまとまり、同年福岡市は全69校のうち4校がジェンダーフリーの独自学生服を採用。残り65校も福岡市が準備した新たな標準服となり、市内全校がスラックスとスカートを自由に選べる選択式の標準服を採用した。動きやすさや寒暖への対応のほか、男女に関係なく、ズボン、キュロット、スカートのいずれを着るか選べる[52][53]世田谷区の区立桜丘中学校では、制服の形状を選択することがカミングアウトにつながるとの校長の配慮もあり制服でも私服でもよいとしている[54]。性自任への配慮やスカート内の盗撮とその動画販売拡散などの被害[55]といった問題もあり、生徒が自らの指向や心身の健康安全のために形状を自由に選択できることが肝要となってきている。

スマートフォンについては文部科学省が2020年6月、原則禁止としてきた中学生によるスマートフォンや携帯電話の学校への持ち込みを、条件付きで認めると決めた[56]。しかし、奈良県では2020年2月、同市立中学校で、2年生の複数の男子生徒が女子生徒のスカートの中や着替えの様子を隠しカメラなどで盗撮し、無料通信アプリ「LINE」で動画や画像を共有し売買されていたため警察に通報された事件があることも明らかにされている[57]。盗撮行為が行われた場合、生徒指導及び施設管理者としての学校長の責務を問われることは必至であり、今後その取扱いが課題となる。

脚注

  1. ^ 学校における働き方改革 ― 教員の多忙化の現状から考える勤務時間制度の在り方 ―”. 参議院. 2019年3月6日閲覧。
  2. ^ 萬井隆令 (龍谷大学教授). “なぜ公立学校教員に残業手当がつかないのか ”. 独立行政法人労働政策研究・研修機構  . 2019年4月4日閲覧。
  3. ^ 今野晴貴 (2018-3-21 ). “私立学校の教員の残業代未払いは労働基準法違反! ”. yahoo news. 2020年4月12日閲覧。
  4. ^ 学制百年史  四 教員の身分・処遇と団体活動”. 文部科学省  . 2020年4月19日閲覧。
  5. ^ 子どもが増えた!明石市人口増・税収増の自治体経営 P89 湯浅誠ほか 光文社新書 2019年2月 ISBN 978-4334043988
  6. ^ 前屋 毅 (2019年11月17日). “「教師=聖職論」は誰のため? ”. BEST T!MES. 2020年4月19日閲覧。
  7. ^ 平成29年度公立学校教職員の人事行政状況調査について  ”. 文部科学省  . 2019年3月10日閲覧。
  8. ^ 教職員過労死 公立校、10年で63人 専門家「氷山の一角」 ”. 毎日新聞   (2018年4月21日). 2020年4月12日閲覧。
  9. ^ 「私たちの働き方改革」上越教育事務所学校支援第1課”. 新潟県. 2020年8月1日閲覧。
  10. ^ 教員の「休日まとめ取り」促進 変形労働制導入で改正法成立”. 時事ドットコムニュース  . 2020年12月4日閲覧。
  11. ^ 教員の夏休み「まとめ取り」復活へ 文科省が方針  ”. 朝日新聞  . 2020年5月5日閲覧。
  12. ^ 前屋 毅 . “「夏休みゼロ」はお上への忖度なのか? 自由と工夫なき『学習指導要領』に意味はない  ”. BESTT!MES  . 2020年5月5日閲覧。
  13. ^ 変形労働時間制 教員の「働き方改革」に逆風 コロナで夏休み短縮/根強い反対論”. 毎日新聞 (2020年7月3日). 2020年7月7日閲覧。
  14. ^ 学校現場における業務改善のためのガイドライン”. 文部科学省 (2017年7月27日). 2019年12月28日閲覧。
  15. ^ 教職員数と多忙の関係”. 財務省. 2019年12月27日閲覧。
  16. ^ 人材バンク”. 東京都教育委員会. 2019年12月27日閲覧。
  17. ^ 新しい時代の初等中等教育の在り方について(諮問)”. 文部科学省 (2019年4月17日). 2020年1月21日閲覧。
  18. ^ 2020年5月11日 学校の情報環境整備に関する説明会”. GIGAスクールch (2020年5月10日). 2020年7月7日閲覧。
  19. ^ “県立高でオンライン授業 全校20日から順次”. 岐阜新聞. (2020年4月16日). https://www.gifu-np.co.jp/news/20200416/20200416-232975.html 2020年7月7日閲覧。 
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  21. ^ “ゼロから実現したオンライン授業、カギは周囲を巻き込む力 白馬中の挑戦(前編)”. The asahi sinbun GLOBE+. (2020年7月18日). https://globe.asahi.com/article/13547019 
  22. ^ 妹尾昌俊. “なぜ働き方改革? まず何に着手すべき?”. Benesse. 2019年3月6日閲覧。
  23. ^ 新しい時代の初等中等教育の在り方 論点取りまとめ(令和元年12月 初等中等教育分科会)”. 文部科学省 . 2020年4月12日閲覧。
  24. ^ “熊本 習受けずプール監視 熊本市の小学校で29人”. 朝日新聞デジタル. (2018年3月24日). https://www.asahi.com/articles/ASL3R32NHL3RTLVB004.html 2019年3月8日閲覧。 
  25. ^ 部活動指導員の制度化について”. 文部科学省. 2019年3月8日閲覧。
  26. ^ “部活職員うまく回れば心強いけど・・・責任重くて定収入”. 朝日デジタル新聞. (2018年8月27日). https://www.asahi.com/articles/ASL8S3FGZL8SUTIL006.html 2019年3月8日閲覧。 
  27. ^ “部活動顧問の負担減に効果 大阪「指導員」配置半年 課題は質の担保”. 毎日新聞. (2018年12月7日). https://mainichi.jp/articles/20181207/k00/00m/040/084000c 2019年3月8日閲覧。 
  28. ^ “学校トラブル、弁護士が助言 東京・港区教委などが導入 ”. 日本経済新聞. (2018年3月24日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28540720U8A320C1CC0000/  2019年3月7日閲覧。 
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  30. ^ 7月23日の人権情報”. 朝日新聞 (2018年4月28日). 2018年4月28日閲覧。
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  32. ^ 教員間暴力 「子ども思い通りに動かせる」教諭が赤裸々に語る、学校現場の閉鎖性”. 神戸新聞  (2019年11月25日). 2020年4月12日閲覧。
  33. ^ 教師への暴力 警察通報にためらい 閉ざされた学校の闇に迫る”. yahoo news (2018年8月17日). 2020年4月12日閲覧。
  34. ^ “中高生の妊娠相談過去最多 新型コロナによる休校影響か 熊本・慈恵病院”. (2020年5月11日). https://mainichi.jp/articles/20200511/k00/00m/040/232000c  2020年5月17日閲覧。 
  35. ^ 三島あずさ、山下知子、山田佳奈、塩入彩 (2018年5月14日). “性教育、親「現実見て正しい知識を」 自治体が講座開催”. 朝日新聞. 2019年2月19日閲覧。
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関連項目