「一向聴」の版間の差分
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::テンパイしている状態から何らかの理由により一向聴に戻すことを、特に'''テンパイ崩し'''と言う。 |
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::上の牌姿例は、数巡前からテンパイしていたが13巡目に親が白をポン、その直後に發を掴まされた図である。このような場合、テンパイしているからと言ってドラの發を切るのはまごうことなき'''暴牌'''であり、切った發にロンが掛ればただごとでは済まない。發単騎の[[小三元]]だったとしても[[役牌#連風牌|ダブ東]]と[[混一色]]がついて親倍24000点、さらに[[混全帯 |
::上の牌姿例は、数巡前からテンパイしていたが13巡目に親が白をポン、その直後に發を掴まされた図である。このような場合、テンパイしているからと言ってドラの發を切るのはまごうことなき'''暴牌'''であり、切った發にロンが掛ればただごとでは済まない。發単騎の[[小三元]]だったとしても[[役牌#連風牌|ダブ東]]と[[混一色]]がついて親倍24000点、さらに[[混全帯么九|チャンタ]]や[[対々和|対々]]がついていれば三倍満36000点。[[大三元]]なら親役満48000点、場合によっては大三元字一色のダブル役満96000点になっているかもしれない。いずれにしても即死の牌であり、發を止めてテンパイを崩す一手であるのみならず、[[現物 (麻雀)|現物牌]]以外の牌は切れない。迂闊に一萬や九索を切って發との双碰に刺されば、[[混老頭]]がついて数え役満となり、發を止めてテンパイを崩した意味がないからである。 |
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== 脚注 == |
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2020年7月24日 (金) 23:35時点における版
一向聴(イーシャンテン)とは、麻雀用語のひとつで、必要な牌があと1牌くればテンパイになる状態のこと。すなわち、テンパイする直前の状態のことである。言葉の用例としては、「場に3枚切れている嵌張(カンチャン)を先に引いて、好形の一向聴になった」「ドラを切ればテンパイだが、愚形で巡目も早いので一向聴に戻した」など。なお、本項では一向聴に関連する用語や概念についても併わせて概説する。
概要
和了形が完成する直前の状態がテンパイ、そのさらに一段階前の状態が一向聴である。一向聴の前段階を二向聴(リャンシャンテン)、さらにその前の段階を三向聴(サンシャンテン)と言う。実戦では多くの場合、五向聴から三向聴程度の配牌をもらい、毎巡ごとのツモと打牌を通して三向聴から二向聴へ、二向聴から一向聴へ、一向聴からテンパイへと手を進めてゆく。
テンパイになるまで有効牌があとX枚(X回)必要な状態がX向聴である。テンパイの状態は言わば0向聴である。なお、シャンテン数の減少は1回のツモにつき必ず1つずつであり、2つ一気に減ったり3つ一気に減ったりすることはない[注 1]。逆に、シャンテン数の増加は2つ以上一気に起こることがある(例えば下図のように国士無双の一向聴からポンしたりしてしまうと、手牌は文字通りバラバラになり、何向聴か分からないくらいの状態になる)[注 2]。
- 国士テンパイからポンしてしまった手恰好。0向聴→6向聴。
一般にある手牌を考えると、一般形・七対子・国士無双に対しての向聴数が考えられ、普通向聴数またはX向聴といった場合、これらのうち最も小さな数で表される。例えば国士無双13面待ちの聴牌は、仮に一般形に対しての向聴数を考えれば8向聴、七対子に対しては6向聴であるし、么九牌が一切ない手牌では仮に国士無双に対しての向聴数を考えれば13向聴である。また、副露面子や暗槓がある手牌では、(その局が終了するまで)どうあがいても七対子や国士無双を狙うことはできない(これらに対しては便宜的に「∞向聴」と見なせる)ので、そのような手牌で向聴数またはX向聴といった場合は必然的に一般形に対してのものとなる。
テンパイの形や種類が無数にあるように、一向聴の形も無数にある。そのうち特徴的な形の一向聴には名前がつけられている。典型的な一向聴の例や、一向聴に関連する用語などもまじえ、以下に一覧する。
一向聴の牌姿例
(例)リャンメンとリャンメンの一向聴
(例)充分形とは言えない一向聴
- 受け入れはとの2種。嵌張を引いて嵌張待ちになる、万全とは言えない形である。加えて浮いている赤五索は表ドラでもあり、五筒か八筒を引いてテンパイになったとしても、みすみすドラドラを捨てて安手にするのはもったいない。このような場合、テンパイしたとしてもそれを崩し、赤五索のくっつきテンパイ(後述)に戻す可能性は小さくない(向聴戻しについても後述)。
(例)高目と安目のある一向聴
(例)七対子の一向聴
- 赤アリの麻雀では、赤引きのテンパイを想定して、一向聴の状態から黒の五を抱えることがある。この例では、運良くを引ければ中単騎か西単騎のリーチを打つ可能性が高い(表ドラを持っておらず、ダマテンでは赤1でも子3200点にしかならないため)。逆に、字牌のどちらかが先に重なってテンパイすることになった場合、黒五索を切ってリーチをかける可能性が高い。中張牌の単騎待ちは待ちとしては優秀とは言えず、字牌単騎で手堅く和了を拾うほうが期待値が高いという思考である。もちろん字牌単騎を選択して裏目の赤五索を引く可能性はあるが、リーチに対して赤牌が切られる可能性は低い。
- 上記のような攻撃上の事情を考えれば、変則的な捨牌で、かつ最後に五の牌が切られてのリーチは、七対子の字牌単騎や、端牌の引っかけ単騎になっている可能性がある。無論、五切りのリーチが常に字牌待ち端牌待ちであるとは限らず、むしろそうでない場合のほうが多いが(単なる余剰牌かもしれないし、五またぎの待ちかもしれない)、考慮の片隅に置いておけば、まったく不用意に大物手を振り込んでしまう可能性は減る。
(例)国士無双の一向聴
(例)メンチンの一向聴
- 13牌すべてが染まり切っているが、テンパイしておらず一向聴の状態である。筒子であれば次に何を引いてもテンパイになるが、どの牌を引くか、あるいはどの牌を切るかで、待ちの良し悪しと値段の良し悪しが分かれる。何を引いて何を切れば何待ちになるかといった場合分けは列挙すると膨大になるので割愛するが、筒子Xを引いてXではない別の筒子Yを切るパターンは全部で72通りある(受け入れ9種、切り出し8種の掛け算)。そのうち、どのような待ちになるかに関わらずテンパイになるパターンは、この牌姿例の場合、計34通りである。最も広い待ちに取れるのは九筒を引いて一筒を切るパターンで、下の通り七面張となる。
- 染め手の一向聴では、あらかじめ受け入れと最終形を考えつつテンパイに備えるのがよい。テンパイになるであろう牌を引いたは良いがどれを切ればよいのか分からず長考していては、他家の過剰な警戒を招いてチャンス手をフイにする可能性もある。
完全一向聴
リャンメンとリャンメンの受け入れがあり、かつ、シャンポンとシャンポンの受け入れにもなっている一向聴を、完全一向聴(かんぜんイーシャンテン)と言う。下例のような形である。
(例)完全一向聴の例その1
(例)完全一向聴の例その2
- 受け入れは、まずリャンメン部分がの4種、次にシャンポン部分がとの2種。上の例と似たような牌姿だが、この牌姿では三色同順という手役が見える。このような場合、手役を優先してテンパイする前に六筒を先に切り、安全牌を1枚抱えるという戦術はありうる。三色に受けるなら六筒はいずれ切る牌だからである。一方、手役の可能性を追うよりテンパイ逃しの可能性を嫌うなら、六筒はテンパイまで引っ張る(切らずに手の内に置いておく)。どちらの戦術が優れているかは簡単には決められず、打ち手の好き好きである。
沼崎定跡
古くは完全一向聴を目指す手作りを指して沼崎定跡(ぬまざきじょうせき)と言った[1]。戦前の雀豪で麻雀数理学・牌効率論を提唱した沼崎雀歩(ぬまざき じゃんぽ)[2]に因む。沼崎は「チーもポンもできて両面の残る形を重視せよ」と説き、完全一向聴の形を「ポンよし、チーよし、ポンチーよし」の型と呼んだ[3]。
(例)東1局8巡目、動きなし
くっつき聴牌
3面子と雀頭が既に完成しており、2牌の浮き牌がある一向聴をくっつきテンパイと言う。下例のような形である。
(例)くっつきテンパイの例
(例)よくあるくっつきテンパイの例その1
- 受け入れはおよびとの計14種。このうちリャンメン以上のテンパイになるのは10種もあり、四萬・五萬・七索なら三面待ちになる(二萬・八萬・三筒を引くと双碰待ち、三萬を引くと嵌張待ち)。受け入れの広さという点では前述の完全一向聴を軽く上回る優秀な形である。
(例)よくあるくっつきテンパイの例その2
黄金の一向聴
タンピン三色と一気通貫の両方が見えるくっつきテンパイの形を黄金の一向聴(おうごんのイーシャンテン)と呼ぶ。下例のような形である。
(例)黄金の一向聴の一例
- このような三色と一通の両天秤は、手作り・役作りのお手本とされることも少なくない。また、得点的にも期待値の高い一向聴である。
- なお、黄金の一向聴と呼ばれる形は、三色同順になるほうにくっついた場合タンヤオの三色になるような形でなければならない。タンヤオにならない123や789の三色同順は、一気通貫との両天秤の形になることはあるが、「黄金の」とは言わない。また、一気通貫と黄金の両天秤を取れるタンピンの三色同順は「234の三色」「345の三色」「567の三色」「678の三色」の4種に限られ、456の三色と一気通貫は黄金の両天秤を取ることができない(下例)。
仮り聴と0.5向聴
形だけ見ればテンパイしているが、待ちの形や枚数が充分でなく、あと1牌の手変わりが欲しい状態を、仮り聴(かりてん)と呼ぶ。また、仮り聴の状態を、充分なテンパイ(ゼロ向聴)と一向聴の中間と捉え、0.5向聴という比喩的な言い方で呼ぶことがある。両者とも同じような状態の手牌を指す言い方だが、どちらかと言えば仮り聴が出あがりの利く形まで含めた呼び方であるのに対し、0.5向聴は、向聴数がゼロではないという点で、出あがりが利かない状態であることを含意する。ただし、0.5向聴という言い方は古くからある言い方ではなく、仮り聴とのニュアンスの違いも明確に分かれているわけではない。
(例)タンヤオのみの仮り聴
- この牌姿ではもしくはを引くことで待ちも広がり、456の三色も狙える。したがってこのようなケースでは、手変わりの可能性を考慮し、リーチをかけないことのほうが多い。
(例)0.5向聴
- 形的には単騎のテンパイだが、萬子か字牌を引けばメンホンになる牌姿である。ドラが暗刻だからと言ってこの状態から六筒単騎のリーチをかけることは通常考えられず、巡目も比較的早いことから、あくまで大物手を狙って手変わりを待つ。を引いて高目一通の六面張になるのが理想形だが、ほかの萬子でも充分に広いテンパイ形となる。この形のまま六筒をツモってきた場合は思案どころで、ツモドラ3の4000オールというアドバンテージを取るもよし、跳満や倍満の見込める和了形には不要と考えてツモ切ってしまうもよし。堅実な打ち手なら前者ツモ和了を取るであろうし、一撃必殺となる高い手が好きな打ち手なら後者ツモ切りを取る。どちらを取るかは打ち手の好き好きだが、六筒のツモ和了を拒否する打ち手にとっては、この形はテンパイであってもテンパイでない「0.5向聴」の牌姿である。
向聴取らずと向聴戻し
待ちが悪い、手が安い、危険牌が切りづらい、などの理由で、敢えてテンパイに取らないことを聴牌取らず(テンパイとらず)もしくは一向聴戻し(イーシャンテンもどし)と言う。同様に、なんらかの理由により一向聴に取らないことを、一向聴取らずもしくは二向聴戻しと言う。すなわち、シャンテン数を1つ下げられる局面であるにもかかわらず、敢えて現状を維持する牌を切るのが向聴取らず(シャンテンとらず)、もともとの状態から何らかの理由で敢えてシャンテン数を上げるのが向聴戻し(シャンテンもどし)である。
(例)テンパイ取らずの例
(例)一向聴取らずの例
- この牌姿はすぐ上の例の2巡前の牌姿である。ここから字牌を切れば上のようなとの一向聴になる。しかし、どのみちドラの五筒を切らないのであれば、受け入れが狭くタンヤオもつかない辺張を残して一向聴に取る意味はない。ドラ周りで2面子、索子のリャンメンも残してあわよくば三色も、という手組みを考えるなら、辺七萬の受けは既にこの段階から不要である。そのような思考のもと、西ではなく八萬か九萬を切るのが一向聴取らずである。
(例)テンパイ崩しの例
- テンパイしている状態から何らかの理由により一向聴に戻すことを、特にテンパイ崩しと言う。
- 上の牌姿例は、数巡前からテンパイしていたが13巡目に親が白をポン、その直後に發を掴まされた図である。このような場合、テンパイしているからと言ってドラの發を切るのはまごうことなき暴牌であり、切った發にロンが掛ればただごとでは済まない。發単騎の小三元だったとしてもダブ東と混一色がついて親倍24000点、さらにチャンタや対々がついていれば三倍満36000点。大三元なら親役満48000点、場合によっては大三元字一色のダブル役満96000点になっているかもしれない。いずれにしても即死の牌であり、發を止めてテンパイを崩す一手であるのみならず、現物牌以外の牌は切れない。迂闊に一萬や九索を切って發との双碰に刺されば、混老頭がついて数え役満となり、發を止めてテンパイを崩した意味がないからである。