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2020年7月17日 (金) 14:30時点における版

隠し砦の三悪人
The Hidden Fortress
監督 黒澤明
脚本 菊島隆三
小国英雄
橋本忍
黒澤明
製作 藤本真澄
黒澤明
出演者 三船敏郎
千秋実
藤原釜足
上原美佐
藤田進
樋口年子
志村喬
音楽 佐藤勝
撮影 山崎市雄
編集 黒澤明
製作会社 東宝
配給 東宝
公開 日本の旗 1958年12月28日
上映時間 139分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 3億4264万円[1]
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隠し砦の三悪人』(かくしとりでのさんあくにん)は、1958年(昭和33年)12月28日公開の日本映画である。東宝製作・配給。監督は黒澤明、主演は三船敏郎モノクロ東宝スコープ、139分。

黒澤作品初のシネマスコープ作品。戦国時代を舞台に[2]、敗国の侍大将が姫と軍用金を擁して敵国突破をする姿を描いた娯楽活劇。第32回キネマ旬報ベスト・テン第2位。

あらすじ

百姓の太平と又七は、褒賞を目当てに山名家と秋月家の戦いに参加したが、何も出来ないまま、秋月の城は落ち、山名の捕虜になって焼け落ちた秋月城で埋蔵金探しの苦役をさせられる。夜、捕虜たちが暴動を起こし、それに紛れて二人は脱走する。2人は谷で、薪の中から秋月の紋章が刻まれた金の延べ棒を発見する。そこに屈強な男が現れる。

男の正体は秋月家の侍大将・真壁六郎太で、落城後、大量の金を薪に仕込んで泉に隠し、秋月家の生き残りである雪姫や重臣らとともに、山中の隠し砦に身を潜めていた。秋月家再興のため、同盟国の早川領へ逃げ延びる方法を思案していた六郎太であったが、秋月領と早川領の国境は山名に固められている。しかし太平と又七が口にした、1度敵の山名領に入ってから早川領へ抜けるという脱出法を聞いてこれを実行に移すことと決める。六郎太について隠し砦に行った2人は、そこで女に出会う。六郎太はその女を「俺のものだ」と言うが、その女こそ雪姫だった。彼女の落とした櫛から姫だと目星をつけた又七は、恩賞欲しさに町へ出かけるが、姫はすでに打ち首になったと聞く。しかし、それは雪姫の身代わりとなった妹の小冬だった。

六郎太は、気性の激しい雪姫の正体を百姓2人にも隠し通すために唖(おし)に仕立て、太平と又七を連れて早川領を目指す。彼らが出立した後、重臣らが残る隠し砦は追っ手に攻められて燃え落ちてしまう。最初の関所でさっそく一行は怪しまれるが、六郎太は隠している金を逆に見せて、番卒に突き出す。そして「褒美をくれ」と駄々をこねるうちに、関所を通される。夜、山名の城下町にある木賃宿に泊まり、人買いに売られた百姓娘を見た雪姫は、彼女を買い戻させ仲間に入れる。

道中、六郎太一行を怪しんだ騎馬武者に発見される。六郎太は武者を斬り捨てるうちに、かつての盟友にして宿敵である山名の侍大将・田所兵衛の陣に駆け込んでしまう。2人は槍で果たし合いをし、六郎太は兵衛を打ち負かす。又七と太平は、姫へ手を出そうとするが、彼女の正体を姫と見抜いて恩義を感じている百姓娘に阻まれる。

一行は火祭りの準備のために薪を運んでいる群集にこれ幸いと紛れ込む。しかし祭りの場には、不審な素振りの者がいればすぐに捕えるべく監視の山名兵が配されていた。又七と太平は祭りの火に薪をくべることを拒むが、六郎太は「燃やせ燃やせ!、踊れ踊れ!」と薪を炎の中に投げ込んで燃やしてしまい、楽しそうに踊る姫に反して、二人は情けない顔で踊る。翌朝、灰の中から拾い上げた金を背負って一行は再び進むが、追手が迫り、又七と太平は姫からかけられた別れの言葉に戸惑いつつも逃亡してしまう。そして、早川領まであと一歩というところで姫と六郎太と娘は山名兵に捕えられる。峠の関所で捕らわれの身となった3人の前に兵衛が現れる。果たし合いの件で大殿に罵られ、弓杖で顔を打たれて傷を負った兵衛は六郎太を恨む。雪姫は「姫は楽しかった。潔く死にたい」と腹をくくり、六郎太も男泣きする。それに心動かされた兵衛は、処刑の日、「裏切り御免!」と宣言して姫と六郎太を解放し、三人は馬に乗って早川領へ逃げのびる。

又七と太平は早川の城に連行されると、本来の姿に戻った雪姫と六郎太、そして兵衛に再会し、ようやく彼等の素性を明かされて仰天する。六郎太は、運んだ金は秋月家再興に用いるため雪姫ですら自由にできないと、せめてもの褒美として大判一枚を2人に渡す。金にこだわり続けていた2人だったが、今は褒美の大判を譲り合いながら仲良く家路につく。

スタッフ

キャスト

作品解説

黒澤作品の中でも特に娯楽性の強い作品であり、ワイド画面を活かした迫力ある映像と、ふんだんに登場するアクションシーンで、ダイナミックに描かれた娯楽大作となった。作品の構想は、菊島隆三甲府近くの城址から軍用に使われていた焼米が出てくる話を元にしており、そこから焼米が軍用金だったらどうなるかというアイデアが飛び出した[3]。秋月の隠し砦の撮影は兵庫県西宮市蓬莱峡で行われ、秋月城のセットは農場オープンと呼ばれた東宝撮影所の敷地内に建てられた[4]

1958年(昭和33年)5月に撮影が開始され、製作日数100日、製作費9000万円として、8月中の完成を予定していた[5]。しかし、撮影後半では天候不良のため、富士山麓でのロケーション撮影は快晴を待ってロケ隊を3ヶ月も待機させた[6]。それらの理由で撮影日数と予算が超過し、結果、撮影日数は200日かかり、製作費も1億5000万円にまで膨れ上がった[5]。封切り前夜には、製作担当の藤本真澄がこの責任を取って進退伺いを提出するという騒動が起きている[7]。その後、東宝は一連の予算的なリスクを負担してもらうために黒澤側にプロダクションの設立を要求することになる。

ヒロインの雪姫役には全国から4000人もの大勢の応募者が集まったが候補者は見つからず[8]、全国の東宝系社員にも探させて、ようやく社員がスカウトした文化女子短期大学生の上原美佐が抜擢された。上原は素人であったため、撮影前に馬術剣道を習い、撮影中はそのつど黒澤が演じてみせ、それに従って演じた。

劇中、火祭りの歌の歌詞は室町時代の成立である『閑吟集』の「なにせうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ」に由来する。この歌集に先行する類似の文句としては、室町幕府初代将軍足利尊氏の清水寺への請願文の書き出しとして有名な「この世は夢のごとくに候」がある。

影響

ジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ』(1977=新版では『エピソードIV/新たなる希望』)のアイディアは、この映画を元に考えられたと監督自らが回想している[9]。姫を救うという流れ、冒頭シーンとラストシーンの類似、レイア姫の男勝りの性格や行動には雪姫の影響がある。狂言回しの百姓コンビの太平と又七は、C-3POR2-D2のモデルとなった。

2008年(平成20年)、東宝の配給で本作品をリメイクした『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』が公開された(主演は松本潤)。

和田慎二と当時の別冊マーガレット編集長・小長井信昌が黒澤監督の大ファンであり、『隠し砦の三悪人』を元にして別冊マーガレット1973年(昭和48年)3月号にアラビアを舞台にした漫画作品『炎の剣』を掲載した。

評価

受賞

ランキング

  • 1999年:「オールタイム・ベスト100・日本映画編」(キネマ旬報発表)第49位
  • 2009年:「オールタイム・ベスト映画遺産200 日本映画篇」(キネマ旬報発表)第106位[10]

エピソード

  • 劇中、疾走する馬にまたがっての殺陣はスタントを使わず、三船敏郎自身が演じている。この撮影シーンは、黒澤映画の中でも語り草となるところで、三船は馬で騎馬武者を追いかけて切り捨てるが、両手は刀を握り八双の構えをとり、膝で馬を制御している[11]。また、狙撃されるシーンで黒澤はリアリティにこだわり、本物の銃弾を撃たせ、三船らに銃弾をかわさせようとしたが、さすがに三船は拒否した。なお、その前年に公開された黒澤の映画『蜘蛛巣城』で三船に対し同じようなスタント(本物の矢が三船に射かけられる)があり、三船を激怒させたというエピソードがある。
  • 冒頭の千秋と藤原が落武者に出会う場面では、藤原が細かい台詞をよく覚えてなかったため、曖昧にしゃべっていた。離れて撮影していた黒澤は気がつかなかったが、アフレコのときに発覚した。
  • 落武者が殺され倒れている横を馬が駆け抜ける場面では、一頭の馬が落ち武者役の加藤武の頭を蹴ったため、加藤は少し頭を上げたかたちで死体を演じつづけた。黒澤はのちに対談で、撮影後加藤の衣装を脱がせる手伝いをした際に、妻が加藤にもたせたお守りを見てほろっとしたと語った。
  • 後半、木を持って太平と又七が逃げるシーンで「県境を超えれば早川領」というセリフがあるが、当時県ではないためDVD字幕では「国境」と直されている。

テレビ放送

  • 地上波では1981年4月4日に、フジテレビ系列の『ゴールデン洋画劇場』(因みにこの日が金曜から土曜へ移動した初回)の特別企画『映画ビッグスペシャル』(19:33 - 22:54)第2部(第1部は『速報!第53回アカデミー賞授賞式』)で放送された[12]。なお映画終了後は、黒澤監督を始め、本作の出演者である千秋実・藤原釜足・上原美佐が出演、当時を振り返った。この時上原は女優業を引退していたため「引退後、主婦、二児の母」と紹介されている。

脚注

  1. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』、キネマ旬報社、2012年5月23日、p.148
  2. ^ 時代設定は明確にされていないが、作中鉄砲が使用されていることから鉄砲伝来後(1543年以降)ということが判別できる
  3. ^ 都築2010、p.290
  4. ^ 黒澤明第3部-PAGE6”. 日本映画写真のキネマ写真館. 2016年7月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年6月30日閲覧。
  5. ^ a b 田中1980、p.305
  6. ^ 都築2010、p.297
  7. ^ 田中1980、p.304
  8. ^ 『芸能画報』1958年2月号、国際写真通信社、1958年、p.33
  9. ^ Nicholas Barber. “The film Star Wars stole from”. BBC. 2019年6月30日閲覧。
  10. ^ 「オールタイム・ベスト 映画遺産200」全ランキング公開”. キネマ旬報映画データベース. 2009年12月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月30日閲覧。
  11. ^ 松田美智子「三船敏郎の栄光とその破滅」(『文藝春秋』 2013年11月号)より。のち改訂され『サムライ 評伝三船敏郎』(文藝春秋、2014年)に収録。
  12. ^ 読売新聞 縮刷版読売新聞社、1981年4月4日付けラジオ・テレビ欄。 

参考文献

  • 田中純一郎日本映画発達史Ⅳ 史上最高の映画時代』、中央公論社、1980年。 
  • 都築政昭『黒澤明 全作品と全生涯』、東京書籍、2010年。ISBN 9784487804344 

外部リンク