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** 谷口順彦「ニゴロブナ」。{{citation|和書|ref=nihon-no-tansuigyo2002|author=<!--谷口順彦--> |chapter=<!--ニゴロブナ--> |editor=川那部浩哉 |editor2=水野信彦 |editor3=細谷和海 |editorlink=川那部浩哉 |title=日本の淡水魚 |work= |edition=第3 |publisher=山と渓谷社 |year=2002}} |
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2020年1月30日 (木) 14:44時点における版
ニゴロブナ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
絶滅危惧IB類(環境省レッドリスト) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Carassius buergeri grandoculis Temminck et Schlegel, 1846 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
ニゴロブナ |
ニゴロブナ(煮頃鮒、似五郎鮒とも。学名:Carassius buergeri grandoculis[1]、Carassius auratus grandoculis[2])はコイ目コイ科コイ亜科に分類される淡水魚。琵琶湖固有亜種で、琵琶湖やそれに流入出する河川、用水路などに生息する。
一説では、尺以上の魚になると、やはり琵琶湖水系固有の近似種のゲンゴロウブナに似るため、「似五郎鮒」と名付けられたとされる[3]。
形態
全長 35cm 程度に達する[4][7]。他のフナ種と比べて頭部は大きく、低い体高で、ずんぐりしておらず、体長:体高比は2.7倍である。身(体幅)は厚い[8][9]。ナガブナ(諏訪湖産) に形状が似ているという[9]。
見分け方は、腹縁は角張っていることが特徴で、角ばった下あごは斜めに上向いている[9]。鰓耙数は61(52-72)[8]。条数は背鰭が1棘17(15-18)軟条、臀鰭は1棘5軟条[8]をかぞえる。
生態
仔稚魚は琵琶湖のヨシ帯内部[8]、すなわち水草の豊富な内湾[10]に生息し、水面近くから中層くらいの深さにいる。成魚は夏季には浅瀬にいるが、冬場は深層に潜んでいる。
ニゴロブナは、おもに動物性プランクトンに依存する鮒だが、草食性のヘラブナ用の餌であるイモダンゴを釣竿につけて釣ることもできる。
また、成長の過程で食性の生態が変わる。ある研究では、2種類を同じ囲いのなかで観察したところ、体長1cmほどの仔魚(幼生)では、ニゴロブナはほとんど藻類を摂食しなかったのに対し、同サイズのゲンゴロウブナの消化管内容物には、カサで25-50%の藻類が認められた。したがってニゴロブナ幼生の餌はすべて浮遊するミジンコ目など動物性プランクトンであったが、マルミジンコ属(Chydorus)をとくに好み、ついでアサガオケンミジンコ属(Mesocyclops)を食し、豊富なシカクミジンコ属(Alona)は捕食しないなど、偏食性がみられた。対してゲンゴロウブナの幼生は、藻類・ワムシを餌としており、両種の棲み分けが[11]うかがえた。
しかしニゴロは体長 1cm 超の稚魚になると次第に藻類・ワムシが付着した水草をつつく行動をみせるようになり、2cm 級魚になると完全な雑食性をみせ、藻類(少量ワムシ含む)の割合が五分を占めるようになる[8][12]。さらに成長すると、半底生の動物プランクトンを主な餌にするようになる[8]。
繁殖期は4月から6月にかけてであり、浅瀬や内湖などのヨシ帯に、雨期で水位が上がった時、水草に産卵する[8][13]。孵化した稚魚は、成長するにつれて沖合に移動し、2-3 年で成魚となる[14]。
利用
地元近江の伝統食品である鮒寿司(なれずしの一種)の原料の食材として、珍重される。
鮒寿司は本来ニゴロブナのみを使うが、漁獲量が激減しているので、ゲンゴロウブナの代用品が作られる(両種とも絶滅危機種指定)が、本物は骨までやわらかくしあがると評価される[6]。ギンブナを代用することもあるという。
漁業規制
年間漁獲量は、1965年当時は500トンと推計されるが、1989年には 178 トン、1997年には年間18トンに激減した[14]。そこで水産所で稚魚の種苗を確保し、水田などから琵琶湖水系に放流する試みがおこなわれている[14]。近頃では埼玉県あたりでも養殖されているという[15]。
滋賀県ニゴロブナ資源回復計画により、2007年4月1日より全長22cm以下の個体については漁獲が禁止されているが[16]、漁業者の自主規制により6月から12月の間の採取が自粛されている。この規制は全長25cm以下への引き上げが検討されている。有害外来種の駆除、産卵場所の回復も必要とされている。
生息数の減少
種の激減の理由としては、開発・工事による産卵場所の減少、および外来種の影響が挙げられる[13]。
後者については、ブラックバスやブルーギルなど外来魚によって、成魚や卵の捕食がじっさいに生じていると指摘される[17]。しかし根本的要因ではなく、深刻化をもたらす二次的要素との見方もある[18]。
ニゴロブナは琵琶湖のヨシ帯や内湖、水田に産卵する。そのヨシ帯の大半に湖岸堤が建設されており(1976–1991年)、内湖の数も(水田化のための干拓などにより)戦前の数分の一に減り、現存する内湖や田んぼへの移動も水門建設などで阻害される[19]。
水田へのルートは、水門で阻まれたというより、圃場整備事業によって、田底がかさ上げされて段差ができたうえ[注 1]、水路ではなく塩化ビニール製のパイプを通じてポンプで吸い上げて流し込む方式に代えられたため、魚の通り道がないのが現状である[19][18]。
関連項目
注釈
- ^ 琵琶湖の水位が上がっても容易に水没しないようにする措置。
脚注
- ^ “環境省レッドリスト2018 【汽水・淡水魚類】”. 環境省 (2018年). 2019年7月10日閲覧。
- ^ a b 藤岡 2013, p. 57.
- ^ 人見必大 著、島田勇雄 編『本朝食鑑』平凡社、1981年、267頁。ASIN B000J80JPO 。: "又此魚ノ大ナルモノ、一尺二三寸位ナルモノハ源五郎鮒二似タリテ、故ニ似五郎ト呼ブト云フ説ヲ優レリトス"。
- ^ 『日本の淡水魚』(1989年)では35cm;藤岡の論文では『日本の淡水魚』(第2版、1995年)を引いて20-35cm[2]。
- ^ 岡田要; 内田清之助; 内田亨 (監修) 編『新日本動物図鑑』 下、北隆館、1965年 。
- ^ a b 『食材健康大事典』、303頁
- ^ 『新日本動物図鑑 』は200-400mm[5];『食材健康大事典』だと 35-40cm[6]。
- ^ a b c d e f g 国立環境研究所 (2012年3月30日). “ニゴロブナ”. 国立環境研究所 (NIES). 2012年4月5日閲覧。。川那部 2002『日本の淡水魚』を典拠のひとつとしている。
- ^ a b c 『日本の淡水魚』(1989年)、344頁。
- ^ 平井 1969
- ^ 平井 1969, p. 124, Table 1
- ^ 平井 1969, p. 124, Table 2
- ^ a b 藤岡 2013, p. 59.
- ^ a b c 滋賀県庁 (2016年). “ニゴロブナ(Nigorobuna)”. Jul 10, 2019閲覧。
- ^ 葛島一美、熊谷正裕『日本タナゴ釣り紀行』つり人社、2011年、40頁。ISBN 9784885361883 。
- ^ 琵琶湖海区漁業調整委員会 (2007年). “ニゴロブナの資源回復に係る漁獲規制について (Fishing regulation conderning the recoveing of nigoro-buna resources”. Jul 10, 2019閲覧。
- ^ 藤岡 2013, p. 60.
- ^ a b 奥田昇「<パネルディスカッション>水辺のつながりが育む琵琶湖の生物多様性」『時計台対話集会』第5巻、52-59頁、2009年 。
- ^ a b 藤岡 2013, pp. 59–60.
参考文献
- 五明紀春; 古川知子『食材健康大事典: 502品目1590種まいにちを楽しむ』時事通信出版局、2005年、303頁。ISBN 9784788705616 。
- 谷口順彦「ニゴロブナ」。川那部浩哉; 水野信彦 編『日本の淡水魚』桜井淳史 (写真)、山と渓谷社、1989年、344頁 。
- 谷口順彦「ニゴロブナ」。川那部浩哉; 水野信彦; 細谷和海 編『日本の淡水魚』(第2)山と渓谷社、1995年。
- 谷口順彦「ニゴロブナ」。川那部浩哉; 水野信彦; 細谷和海 編『日本の淡水魚』(第3)山と渓谷社、2002年。
- 藤岡康弘「琵琶湖固有(亜)種ホンモロコおよびニゴロブナ・ゲンゴロウブナ激減の現状と回復への課題」『魚類学雑誌』第60巻、第1号、57-63頁、2013年。ISBN 9784788705616 。 doi:10.11369/jji.60.57
- 平井賢一「びわ湖の水性植物帯におけるカワチブナとびわ湖産フナ幼魚の食性の比較」『金沢大学教育学部紀要 自然科学編』第18巻、123-131頁、1969年 。