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「ケイドロ」の版間の差分

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書誌情報
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{{Redirect|ドロケイ|漫画作品及びテレビドラマ|ドロ刑}}
{{Redirect|ドロケイ|漫画作品及びテレビドラマ|ドロ刑}}
'''ケイドロ'''あるいは'''ドロケイ'''は、[[鬼ごっこ]]の一種である{{Sfn|多田|2002|p=27}}{{Sfn|小川|1988|p=513}}{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}{{Sfn|増田|2013|p=113}}。'''警泥'''とも表記される{{Sfn|羽崎|2013|p=30}}。[[日本]]の[[伝承遊び]]の一つ{{Sfn|西田他|2009|p=46}}{{Sfn|穐丸|2010|p=59}}。
{{独自研究|date=2019年8月}}
'''ケイドロ'''もしくは'''ドロケイ'''は、[[鬼ごっこ]]の一種<ref>笹間良彦 『日本こどものあそび大図鑑』遊子館 2005年(p.160)では「どろけい」として解説されている。</ref>。名称は地方によって様々であり、以下に詳述する。


「[[警察]]」{{Sfn|小川|1988|p=513}}{{Sfn|山路|2016|p=503}}{{Sfn|内藤|1987|p=12}}([[刑事]]{{Sfn|多田|2002|p=27}}{{Sfn|笹間|2010|p=160}}、[[警察官|警官]]{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}{{Sfn|羽崎|2013|p=30}})と「泥棒」の二組に分かれ、警察が泥棒を捕まえて「牢屋」に入れるという設定であり、牢屋に入れられた泥棒も仲間に助けられて再び逃げることができることから、「'''助け鬼'''」に分類される{{Sfn|杉谷|2013|p=6}}{{Sfn|戸田他|1989|p=317}}{{Sfn|河崎他|2007|p=95}}。
== 呼称について ==
呼び方は全国的に多いのが'''ケイドロ'''([[警察]]と[[泥棒]])であるが、'''ドロケイ'''(主に首都圏での呼び名)の他にも、'''ドロジュン'''(泥棒と[[巡査]])、'''ジュンドロ'''、'''ドロタン'''(泥棒と[[探偵]])、'''ヌスタン'''(盗っ人と探偵)、'''タンヌ'''(探偵と盗っ人)、'''ドロジ '''(泥棒じいさん)、'''悪漢探偵'''、'''タンテイ'''('''探偵''')、'''探偵ごっこ'''、'''助け鬼'''(捕まった人を助けるから)など様々である。


地域によってさまざまな呼び名があり{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}{{Sfn|羽崎|2013|p=30}}{{Sfn|鬼ごっこ協会|2018|p=36}}、'''どろじゅん'''{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}{{Sfn|菅原|1996|p=90}}{{Sfn|増田|2013|p=109}}などとも呼ばれる([[#呼称]]参照)。
[[犯人]]役(以下「泥棒組」)と捕まえる役(以下「警察組」<ref>笹間良彦 『日本こどものあそび大図鑑』遊子館 2005年(p.160)では「泥棒組」と「刑事組」として解説されている。</ref>)に分けて、グループで遊ぶ。捕まえる役([[鬼]])が泥棒役を追いかけて、[[牢屋]](または[[刑務所]]など呼び方は様々)に捕まえる。


== グループ分け ==
== 概要 ==
「[[警察]]」(鬼)と「[[泥棒]]」(子)に分かれて遊ぶ[[鬼ごっこ]]である{{Sfn|西田他|2009|p=46}}{{Sfn|笹間|2010|p=160}}{{Sfn|鬼ごっこ協会|2018|p=36}}。警察はかくれている泥棒を見つけて捕まえ、「牢屋」に入れる{{Sfn|亀卦川|2007|p=19}}{{Sfn|加古|2008|p=446}}。牢屋に入れられた泥棒も、仲間の泥棒に助けられると再び逃げることができる{{Sfn|笹間|2010|p=160}}{{Sfn|亀卦川|2007|p=19}}{{Sfn|竹井|2012|p=23}}。泥棒が全員捕まると終了となり、警察と泥棒を入れ替えて次のゲームに移る{{Sfn|笹間|2010|p=160}}{{Sfn|亀卦川|2007|p=19}}{{Sfn|竹井|2012|p=23}}。
グループ分けに「[[いろは歌]]」を用いることもある(ただし、自己申告制によるところも多い)。
*いろはにほへとちり'''ぬ'''→「盗人」
*るをわかよ'''た'''→「探偵」
あるいは
*いろはにほへ'''と'''→「泥棒」
*ちりぬるをわかよ'''た'''→「探偵」


広い場所で大勢で行うダイナミックな遊びで{{Sfn|勝木他|1999|p=499}}、ストーリー性のある{{Sfn|羽崎|2013|p=30}}スリリングな設定もあって{{Sfn|菅原|1996|p=90}}、子どもたちに人気の鬼ごっこの一つとなっている{{Sfn|羽崎|2013|p=30}}{{Sfn|鬼ごっこ協会|2018|p=36}}。[[日本]]では、[[昭和]]以前から行われていた{{Sfn|河崎|2008|p=13}}伝承遊びの一つであり{{Sfn|西田他|2009|p=46}}{{Sfn|穐丸|2010|p=59}}、地域によってさまざまな名称で呼ばれている{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}{{Sfn|羽崎|2013|p=30}}{{Sfn|鬼ごっこ協会|2018|p=36}}。ただし、警察が泥棒を追いかけるという同様の遊びは日本以外でも見られる{{Sfn|加古|2008|p=557}}。
というふうにして順番に指名していく。探偵を指名するときに「るを」を飛ばして「わかよた」とする地域や「いろわかよた」とする地域もある。


子が捕まっても仲間に助けられて再び逃げることができるという点から、「助け鬼」の一種に分類される{{Sfn|杉谷|2013|p=6}}{{Sfn|戸田他|1989|p=317}}{{Sfn|河崎他|2007|p=95}}。また、鬼と子の関係は、集団と集団の関係となることから{{Sfn|小川|1988|p=513}}{{Sfn|河崎他|1979|p=41}}、仲間同士での協力や作戦が重要となる{{Sfn|西田他|2009|p=46}}{{Sfn|河崎他|1979|p=41}}{{Sfn|増田|2013|pp=113-112}}。この観点からの分類では、「集団遊戯おに型」{{Sfn|加古|2008|pp=16-17,446}}{{Sfn|増田|2013|p=120}}、その中の「対抗おに」に分類される{{Sfn|加古|2008|pp=16-17,446}}。
また、他にも京都の一部の地域では、「一匹・二匹・合いの子・盗って・逃げるは・泥棒の子・・・そ・れ・を・追・い・か・け・る・の・は・巡査(じゅんさん)の子」と言って指名していく方法などもある。


[[フジテレビ]]で放送されている「[[run for money 逃走中]]」はケイドロの派生形とされる{{Sfn|杉谷|2013|p=6}}。この番組のヒットによって「run for money 逃走中」をまねた遊びが小学校などで流行したが、「ミッション」が省略されたりルールが変更された結果、昔からのケイドロと同じものとなっていることも多い{{Sfn|杉谷|2013|p=6}}。
== 基本ルール ==
これは、あくまで基本ルールであり、地域によってかなり差異が生じる。


== 呼称 ==
*警察組の者による泥棒組の者の全員[[逮捕]]を目的とする。
地域によってさまざまな呼び名があり{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}{{Sfn|羽崎|2013|p=30}}{{Sfn|鬼ごっこ協会|2018|p=36}}、「[[警察]]{{Sfn|小川|1988|p=513}}{{Sfn|山路|2016|p=503}}{{Sfn|内藤|1987|p=12}}([[刑事]]{{Sfn|多田|2002|p=27}}{{Sfn|笹間|2010|p=160}}、[[警察官|警官]]{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}{{Sfn|羽崎|2013|p=30}})と泥棒」を表す'''ケイドロ'''{{Sfn|多田|2002|p=27}}{{Sfn|山路|2016|p=503}}{{Sfn|杉谷|2013|p=6}}{{Sfn|増田|2013|p=120}}(けいどろ{{Sfn|西田他|2009|p=46}}{{Sfn|笹間|2010|p=160}}{{Sfn|加古|2008|p=446}}{{Sfn|勝木他|1999|p=498}})・'''ドロケイ'''{{Sfn|内藤|1987|p=12}}{{Sfn|河崎|2008|p=13}}{{Sfn|田中|2010|p=213}}{{Sfn|増田|2013|p=124}}(どろけい{{Sfn|増田|2013|p=109}}{{Sfn|竹井|2012|p=22}}{{Sfn|河崎他|1979|p=40}}{{Sfn|河崎|1984|p=8}})のほかに以下のように呼ばれている。
*警察組の者は、泥棒組の者を捕まえて一定の秒を数えるかタッチする(触る)ことで「捕まえた」ことになる(牢屋まで連行しないと捕まったことにならないルールもある)。
* '''どろじゅん'''・'''じゅんどろ'''{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}{{Sfn|菅原|1996|p=90}}{{Sfn|加古|2008|p=446}} - 「泥棒と[[巡査]]」から{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}
*捕まえた泥棒組の者を集めておく場所を、「牢屋」などと呼ぶ。
* '''ぬすたん'''・'''ぬけたん'''{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}} - 「盗っ人と[[探偵]]」から{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}
牢屋は、後述する性質上、周りが壁に囲まれているような場所なら警察組の者に有利に、逆に周りが完全にひらけていたり、見通しが悪いと泥棒側に有利に働く。牢屋決めは双方のチームの最初の駆け引きと言っても過言ではない。
* '''どろたん'''・'''たんどろ'''{{Sfn|加古|2008|p=446}}
*泥棒組の者は、仲間に助けられる(仲間が既に捕まっている者にタッチする)と再度逃げることができる(もっとも、警察組の者の隙を見て、タッチされていないのに逃げる者もいる)。
* '''悪漢探偵'''{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}
泥棒が再度逃げることができるようになるためには2つのパターンがある。
* '''探偵ごっこ'''{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}
;牢屋外での再逃亡
* '''ギャンポリ'''{{Sfn|加古|2008|p=446}}
:泥棒が警察組の者にタッチされると捕まったことになるが、牢屋へ連行されている間に泥棒組の仲間が捕まった泥棒にタッチすることによって復活することができる。それを防ぐために警察組の者は捕まえた泥棒の服や手を握ったまま連行するなど、考慮が必要となる。
;牢屋内での再逃亡
:捕まった泥棒はあらかじめ設定された牢屋まで連行され、そこでゲームの終了まで待機することになる。ただし、捕まっていない泥棒は捕まった泥棒をタッチすることで解放することができる<ref name="nihonkodomonoasobidaizukan_p160">笹間良彦 『日本こどものあそび大図鑑』遊子館 p.160 2005年</ref>。これは助ける側、助けてもらう側ともに高度なテクニックを必要とする。この時に、前述した牢屋の仕様(場所や広さ、形)が重要になってくる<ref>ここで呼称している"牢屋"とは実際に[[格子]]のあるものではない。</ref>。
*一定の逃走許可範囲を設定しておく。これを怠ると、泥棒組が圧倒的有利になってしまい警察組は全員を捕まえることが大変難しくなってしまう。通常は、ある範囲を囲むようにして大きな道路、フェンス、壁などで設定する。小・中学生なら[[半径]]1キロほどが限度であろうが(ステージとする場所の高低差、住宅の有無、建物の密集具合などで変動はある)、高校生や大人が行う場合は[[町]]・[[街]]をステージとすることもしばしばある。
*適当な人数は、その逃走許可範囲によって変動する。半径が1キロほどまでなら1チーム3〜6人ほどで充分であるが、それ以上・街などがステージとなる場合は1チーム10人以上は必要だろう。まさに、テレビ番組『[[ザ!鉄腕!DASH!!]]』で行われていた鬼ごっこのようになる。
*時間設定も重要である。小規模なケイドロならば、1ゲームが20分から1時間ほどで自然に終了すると思われる。だが、泥棒組が相当な強者を有していたりする場合がある。その場合、何時間経っても泥棒を捕まえられないという事態が発生することになる。何時間逃げ続けても構わないのだが、徐々に双方の士気が下がることは明白なので、ゲームを始める前に時間を設定しておくべきだろう。その設定時間以上泥棒が逃げ切ると泥棒側の勝利となる。
*泥棒組の全員が捕まえられたら、泥棒組の負けでゲームは終了となる<ref>笹間良彦 『日本こどものあそび大図鑑』遊子館 2005年(p.160)では全員捕まった場合には刑事役と交代すると解説されている。</ref>。


=== ローカルルール ===
== 遊び方 ==
=== 人数と年齢 ===
*警察組は任意地点を牢屋と定めることが出来る(警察組に牢屋設定の優越権がある)。
10人以上が望ましいものの{{Sfn|菅原|1996|p=90}}{{Sfn|亀卦川|2007|p=18}}、人数が少ない場合でも、警察の数を1人や2人にすることで楽しむことができる{{Sfn|菅原|1996|p=90}}{{Sfn|羽崎|2013|p=31}}。上限は特になく、20人以上でも可能である{{Sfn|河崎他|1979|p=41}}。
*警察組の者は、泥棒を捕まえるときに一定の条件を満たさなければならない。条件は「数を数える」「キーワードを言う」「泥棒の背中を数回連続でタッチする」など地域によって様々であるが、ここでは数を数える場合のものを紹介しておく。

**身体または衣服の一部を掴んだ状態で1から10までを数えなければならない。数え終わる前に振り切ることが出来れば、泥棒は逃走を継続することが出来る。その場合は警察側は再度捕まえても数えなおしとなる。数を数え終わった場合は、泥棒は一切抵抗しない。
3歳児から遊べるとしている資料もあるが{{Sfn|羽崎|2013|p=30}}、仲間同士の協力が必要なため一般的には5歳児以降で多く見られるとされる{{Sfn|田中|2010|p=213}}。幼児や小学校低学年の児童の場合は、警察の数を多めにするなどの工夫が必要であり{{Sfn|鬼ごっこ協会|2018|p=37}}、特に幼児の場合は、作戦会議を提案するなど仲間同士の協力を促す保育者の働きかけが重要である{{Sfn|田中|2010|p=213}}。さらに低年齢児の場合には、「泥棒」を「警察」が捕まえるということに対する恐怖感を「うさぎ、さる、とり」を「飼育員さん」が迎えに行くと置き換えることで和らげることができたという実践も報告されている{{Sfn|山路|2016|p=503}}。
*最初に捕まった者は[[拘留]]を表すために、まず牢屋付近の樹木やポール、電柱などに片手を当てておく。2人目は、1人目の者の手を繋ぐ。3人目は2人目の手を繋ぐ。こうして捕まるたびに手を繋いで列を伸ばしていく。拘留前には解放することは出来ない。

*泥棒が捕まっている者を助けるためには、捕まっている者が繋いでいる手と手を払う必要がある。そうすることで分離された列のより最近に捕まった一団が解放される。より最初に捕まった一団は継続して拘留される。
=== 場所 ===
*牢屋の前にボールやコーンなどを置き、泥棒がそれを取るまたは倒すと捕まっている者は全員逃げられる(つまりボール、コーンは牢屋の「[[鍵]]」の役割である)。
[[校庭]]や[[公園]]、[[広場]]など{{Sfn|亀卦川|2007|p=18}}、隠れるところのある広い場所が適する{{Sfn|菅原|1996|p=90}}。ただし、あまり広すぎるとだらけてしまうため{{Sfn|竹井|2012|p=23}}、泥棒が逃げてよい範囲をあらかじめ決めておくと良い{{Sfn|菅原|1996|p=90}}{{Sfn|亀卦川|2007|p=19}}{{Sfn|竹井|2012|p=23}}。
*何かを宝に見立てて(帽子など)そこにも警察を置いて泥棒がそれを捕まらずにとることができたら泥棒の勝ち。

*宝を取るときは一気に攻めていってその泥棒を捕まえるために警官が離れた隙に取る。
かつては[[生活道路|路地裏]]遊びの定番であり{{Sfn|穐丸他|2007|p=76}}、街路や[[住宅]]の[[庭]]、[[家屋]]と家屋の隙間などを利用して遊ばれていた{{Sfn|内藤|1987|p=12}}。
*捕獲の条件として"警察が泥棒にタッチ"ではなく"背中を三回(回数は地域によって異なる)叩く(タッチ)"というローカルルールも存在する。これにより泥棒はピンチに達した時、地面や壁に背を着け触れさせないなど抵抗する悪あがきが可能となる。

=== 基本ルール ===
# グループ分け
#: じゃんけんなどで{{Sfn|菅原|1996|p=90}}{{Sfn|竹井|2012|p=22}}{{Sfn|亀卦川|2007|p=18}}「警察」と「泥棒」の2組に分かれる{{Sfn|鬼ごっこ協会|2018|p=36}}{{Sfn|加古|2008|p=446}}{{Sfn|竹井|2012|p=22}}{{Sfn|亀卦川|2007|p=18}}。
#:: グループ分けに「[[いろは歌]]」を用いることもある{{Sfn|加古|2008|p=447}}。「いろはに'''ほ'''へ'''と'''ちり'''ぬ'''るをわかよ'''た'''」と順にあてていき、「ほ」(ポリス)あるいは「た」(探偵)が警察、「と」(泥棒)あるいは「ぬ」(盗っ人)が泥棒となる{{Sfn|加古|2008|p=447}}。
# 「牢屋」を決める
#: あらかじめ牢屋の場所を決めておく{{Sfn|笹間|2010|p=160}}{{Sfn|鬼ごっこ協会|2018|p=36}}{{Sfn|竹井|2012|p=22}}{{Sfn|亀卦川|2007|p=18}}。
#:: サッカーゴールやジャングルジム、砂場などがあればそれを牢屋としても良いし{{Sfn|竹井|2012|p=23}}、地面に丸{{Sfn|亀卦川|2007|p=18}}や四角{{Sfn|菅原|1996|p=90}}を書いてその内側を牢屋としても良い{{Sfn|菅原|1996|p=90}}{{Sfn|亀卦川|2007|p=18}}。また、木や鉄棒{{Sfn|多田|2002|p=27}}、ジャングルジム{{Sfn|亀卦川|2007|p=18}}を牢屋として、捕まった泥棒はそれに手を付くこととすることもできる{{Sfn|多田|2002|p=27}}{{Sfn|亀卦川|2007|p=18}}。
#:: 牢屋の場所を決めるのは警察側とする場合もある{{Sfn|多田|2002|p=27}}{{Sfn|竹井|2012|p=22}}。
# ゲーム開始
#: 警察は牢屋の中で50{{Sfn|多田|2002|p=27}}{{Sfn|竹井|2012|p=22}}または100{{Sfn|菅原|1996|p=90}}{{Sfn|亀卦川|2007|p=19}}{{Sfn|加古|2008|p=446}}ないし200{{Sfn|亀卦川|2007|p=19}}を数え、その間に泥棒は逃げ、隠れる{{Sfn|多田|2002|p=27}}{{Sfn|亀卦川|2007|p=19}}{{Sfn|加古|2008|p=446}}{{Sfn|竹井|2012|p=22}}。
#: 数え終わると警察は泥棒を探し、見つけると追いかけて泥棒にタッチすることで泥棒を捕まえる{{Sfn|亀卦川|2007|p=19}}{{Sfn|加古|2008|p=446}}。
#:: 警察が泥棒を捕まえたとする条件については、タッチするだけでは捕まえたことにならないとする地域もあり{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}、「捕まえて10数える{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}{{Sfn|竹井|2012|p=23}}(10数えられる前なら泥棒は警察を振り切って逃げることができる{{Sfn|多田|2002|p=27}})」、「背中を5回たたく{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}」、「牢屋まで連行する{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}」など地域によってさまざまなルールが存在する{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}。
#: 捕まった泥棒は牢屋に入るが、仲間の捕まっていない泥棒にタッチされることで牢屋から出て再び逃げることができる{{Sfn|笹間|2010|p=160}}{{Sfn|鬼ごっこ協会|2018|p=36}}{{Sfn|亀卦川|2007|p=19}}{{Sfn|竹井|2012|p=23}}。
#:: 警察は牢屋番を置く{{Sfn|鬼ごっこ協会|2018|p=36}}、泥棒は仲間を助けるための「オトリ」になるなどの作戦が重要となる{{Sfn|羽崎|2013|p=30}}。
# ゲームの終了
#: 泥棒が全員捕まると警察の勝利となり{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}、泥棒と警察が交代して次のゲームに移る{{Sfn|笹間|2010|p=160}}{{Sfn|亀卦川|2007|p=19}}{{Sfn|加古|2008|p=446}}{{Sfn|竹井|2012|p=23}}。

== 特徴 ==
鬼ごっこの一つであるが{{Sfn|多田|2002|p=27}}{{Sfn|小川|1988|p=513}}{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}、鬼と子はそれぞれ複数であり{{Sfn|河崎他|1979|p=40}}、かつ、少なくとも1ゲームの間において固定される{{Sfn|河崎他|1979|p=41}}。このため、鬼ごっこの中で鬼や子が複数のグループに分かれる「集団遊戯おに型」{{Sfn|増田|2013|p=113}}のうち、2つのグループが競う「対抗おに」に分類される{{Sfn|加古|2008|pp=16-17,446}}。鬼と子の関係は、鬼は協力して子を捕まえようとし、子は鬼から逃れながらも他の子を助けようとするという集団と集団の関係となることから{{Sfn|小川|1988|p=513}}{{Sfn|河崎他|1979|p=41}}、仲間同士で協力しあうことが重要となる{{Sfn|西田他|2009|p=46}}{{Sfn|河崎他|1979|p=41}}。

遊びの終わりは明瞭で、子がすべて捕まった時点でそのゲームは終了する{{Sfn|戸田他|1989|p=317}}{{Sfn|河崎他|1979|p=41}}。すなわち、ゲームを終わらせることができるのは鬼の側だけである{{Sfn|戸田他|1989|p=317}}。ただし、子は一度捕まっても再び復活する可能性がある点で{{Sfn|河崎他|1979|p=41}}「[[かくれんぼ]]」や「[[手つなぎ鬼]]」と異なる{{Sfn|河崎他|1979|p=40}}。この点から、「助け鬼」の一種とされる{{Sfn|杉谷|2013|p=6}}{{Sfn|戸田他|1989|p=317}}{{Sfn|河崎他|2007|p=95}}。

警察が泥棒を捕まえるというストーリー性を持ち{{Sfn|羽崎|2013|p=30}}、「追う-逃げる」という関係に加えて「仲間を助ける」という要素が加わることで{{Sfn|小川|1988|p=513}}、スリルのある遊びとなっている{{Sfn|菅原|1996|p=90}}。また、鬼が警察役で子が泥棒役という、鬼ごっことは善悪が逆の立場となっていることも特徴である{{Sfn|東京おもちゃ美術館|2018|p=150}}。日本では[[昭和]]以前から行われていた{{Sfn|河崎|2008|p=13}}伝承遊びの一つであり{{Sfn|西田他|2009|p=46}}{{Sfn|穐丸|2010|p=59}}、子どもたちの間で人気のある遊びの一つとなっている{{Sfn|羽崎|2013|p=30}}{{Sfn|鬼ごっこ協会|2018|p=36}}。[[明治|明治時代]]にはすでに子どもたちの間で遊ばれていたとする資料もある{{Sfn|増田|2013|p=109}}。警察が泥棒を追いかけるという同様の遊びは、アルゼンチン、オーストリア、タイ、ブルガリアでも見られる{{Sfn|加古|2008|p=557}}。

特に鬼は、子を追い陣地を守る必要から運動量が多くなり{{Sfn|羽崎|2013|p=31}}、体力向上に資する{{Sfn|鬼ごっこ協会|2018|p=37}}。逆に子の側には、仲間を助ける際の瞬間的な判断と勇気が求められる{{Sfn|羽崎|2013|p=31}}。

== 認知度 ==
[[1998年]]([[平成]]10年)9月から10月にかけて近畿圏の[[大学]]・[[短期大学]]の[[保育]]専攻学生に行った[[アンケート]]調査では、ケイドロをしたことがあるという回答は74.1%で、これは、ルールが必要な屋外の集団遊びの中で、[[Sケン]](28.8%)、[[うずまきじゃんけん]](32.0%)、[[陣取り]](65.0%)などに次いで5番目に低い値であった{{Sfn|勝木他|1999|pp=498-499}}。調査を行った[[姫路工業大学]]の[[勝木洋子]]らは、これらは個人の能力が直接勝敗に結び付かない集団と集団のダイナミックな遊びであり、かつては日本中で見られたこのような「弱者がいてもリーダーのもとに異年齢の集団が力を合わせる」遊びが減りつつあるのではないかと論じている{{Sfn|勝木他|1999|p=499}}。

一方で、[[2012年]](平成24年)度に[[札幌大学]]の[[増田敦]]が同大文化学部スポーツ文化コースの1年生から3年生まで144名(男子119名、女子25名)を対象とした調査では{{Sfn|増田|2013|p=121}}、調査に用いた48種類の遊びのうち{{Sfn|増田|2013|p=120}}「好んでよくやった遊び」としてケイドロは男子で1位(66.4%)、女子では2位(68.0%)で{{Sfn|増田|2013|p=111}}、「知らない」または「知っているがおこなったことはない」と答えた学生は男女とも約8%であった{{Sfn|増田|2013|p=109}}。増田は、この結果から「男女が混じって遊んでいる様子が伺える」として「性差のない遊びであると言える」と指摘している{{Sfn|増田|2013|p=109}}。

また、[[2004年]](平成16年)11月から[[2005年]](平成17年)1月にかけて全国の国公私立の[[幼稚園]]・[[保育所|保育園]]1158園を対象としたアンケート調査では{{Sfn|穐丸他|2007|pp=58-59}}、ケイドロを実施している園は52.40%であったが{{Sfn|穐丸他|2007|p=62}}、地域別では、[[東海地方|東海地域]]は76.92%、[[関東地方|関東地域]]は72.97%と、他の地域と比べて実施率が有意に高かった{{Sfn|穐丸他|2007|pp=69-70}}。調査を行った元[[名古屋市立大学]]の[[穐丸武臣]]らは、ケイドロなどは「戦後、[[生活道路|路地裏]]遊びとして子どもたちに人気のあった遊び」であり、こうした遊びが幼稚園や保育園で受け継がれている地域ほど「他の伝承遊も数多く行っている可能性が高い」と推察している{{Sfn|穐丸他|2007|p=76}}。なお、設置者・園種別では、私立幼稚園(59%)、公立保育園(39%)、私立保育園(48%)と比べて、国公立幼稚園の実施率(国立幼稚園67%、公立幼稚園65%)が高かった{{Sfn|穐丸|2010|pp=59-61}}。

== 派生 ==
{{See also|run for money 逃走中}}
[[2004年]]([[平成]]16年)から[[フジテレビ]]で放送されている「run for money逃走中」は、ケイドロの派生形とされる{{Sfn|杉谷|2013|p=6}}。この番組のヒットにより、小学校などで「run for money逃走中」をまねた遊びが流行した{{Sfn|杉谷|2013|p=6}}。また、保護者などによる同様の企画も全国で実施されている{{Sfn|杉谷|2013|p=6}}。

ただし、「ミッション」の設定などは小学生には難しいために省略されたり、また、昼休みなどに短時間で遊ぶためにルールの変更などがされており、結果として普通のケイドロとなっていることも多い{{Sfn|杉谷|2013|p=6}}。しかし、「run for money逃走中」の「ハンター」(鬼)と「逃走者」(子)のイメージが共有されていることで、結果として昔ながらのケイドロと変わらないものになっていたとしても、子どもたちにとってはドラマティックで刺激的な新たな遊びとなっていると指摘されている{{Sfn|杉谷|2013|p=6}}。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{脚注ヘルプ}}
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<references/>

== 参考文献 ==
=== 書籍 ===
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* {{Wikicite|ref={{Sfnref|鬼ごっこ協会|2018}}
|reference=一般社団法人[[鬼ごっこ協会]] 『まるごと鬼ごっこ』 [[いかだ社]]、[[2018年]]。{{ISBN2| 978-4-87051-496-6}}。}}
* {{Wikicite|ref={{Sfnref|東京おもちゃ美術館|2018}}
|reference=[[東京おもちゃ美術館]] 編 『日本伝承遊び事典』 [[黎明書房]]、2018年。{{ISBN2| 978-4-654-07632-1}}。}}

=== 論文等 ===
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* {{Wikicite|ref={{Sfnref|内藤|1987}}
|reference=[[内藤裕子 (研究者)|内藤裕子]] 「[https://doi.org/10.11247/jssdj.1987.5_4 近隣住宅地における子供の遊び環境-遊び行為と利用される空間・モノとの関係]」『デザイン学研究』 1987年 1987巻 61号 p.5-12, {{doi|10.11247/jssdj.1987.5_4}}, 日本デザイン学会。}}
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== 関連項目 ==
* [[鬼ごっこ]]
* [[水雷艦長]]
* [[run for money 逃走中]]


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2020年1月30日 (木) 06:14時点における版

ケイドロあるいはドロケイは、鬼ごっこの一種である[1][2][3][4]警泥とも表記される[5]日本伝承遊びの一つ[6][7]

警察[2][8][9]刑事[1][10]警官[3][5])と「泥棒」の二組に分かれ、警察が泥棒を捕まえて「牢屋」に入れるという設定であり、牢屋に入れられた泥棒も仲間に助けられて再び逃げることができることから、「助け鬼」に分類される[11][12][13]

地域によってさまざまな呼び名があり[3][5][14]どろじゅん[3][15][16]などとも呼ばれる(#呼称参照)。

概要

警察」(鬼)と「泥棒」(子)に分かれて遊ぶ鬼ごっこである[6][10][14]。警察はかくれている泥棒を見つけて捕まえ、「牢屋」に入れる[17][18]。牢屋に入れられた泥棒も、仲間の泥棒に助けられると再び逃げることができる[10][17][19]。泥棒が全員捕まると終了となり、警察と泥棒を入れ替えて次のゲームに移る[10][17][19]

広い場所で大勢で行うダイナミックな遊びで[20]、ストーリー性のある[5]スリリングな設定もあって[15]、子どもたちに人気の鬼ごっこの一つとなっている[5][14]日本では、昭和以前から行われていた[21]伝承遊びの一つであり[6][7]、地域によってさまざまな名称で呼ばれている[3][5][14]。ただし、警察が泥棒を追いかけるという同様の遊びは日本以外でも見られる[22]

子が捕まっても仲間に助けられて再び逃げることができるという点から、「助け鬼」の一種に分類される[11][12][13]。また、鬼と子の関係は、集団と集団の関係となることから[2][23]、仲間同士での協力や作戦が重要となる[6][23][24]。この観点からの分類では、「集団遊戯おに型」[25][26]、その中の「対抗おに」に分類される[25]

フジテレビで放送されている「run for money 逃走中」はケイドロの派生形とされる[11]。この番組のヒットによって「run for money 逃走中」をまねた遊びが小学校などで流行したが、「ミッション」が省略されたりルールが変更された結果、昔からのケイドロと同じものとなっていることも多い[11]

呼称

地域によってさまざまな呼び名があり[3][5][14]、「警察[2][8][9]刑事[1][10]警官[3][5])と泥棒」を表すケイドロ[1][8][11][26](けいどろ[6][10][18][27])・ドロケイ[9][21][28][29](どろけい[16][30][31][32])のほかに以下のように呼ばれている。

  • どろじゅんじゅんどろ[3][15][18] - 「泥棒と巡査」から[3]
  • ぬすたんぬけたん[3] - 「盗っ人と探偵」から[3]
  • どろたんたんどろ[18]
  • 悪漢探偵[3]
  • 探偵ごっこ[3]
  • ギャンポリ[18]

遊び方

人数と年齢

10人以上が望ましいものの[15][33]、人数が少ない場合でも、警察の数を1人や2人にすることで楽しむことができる[15][34]。上限は特になく、20人以上でも可能である[23]

3歳児から遊べるとしている資料もあるが[5]、仲間同士の協力が必要なため一般的には5歳児以降で多く見られるとされる[28]。幼児や小学校低学年の児童の場合は、警察の数を多めにするなどの工夫が必要であり[35]、特に幼児の場合は、作戦会議を提案するなど仲間同士の協力を促す保育者の働きかけが重要である[28]。さらに低年齢児の場合には、「泥棒」を「警察」が捕まえるということに対する恐怖感を「うさぎ、さる、とり」を「飼育員さん」が迎えに行くと置き換えることで和らげることができたという実践も報告されている[8]

場所

校庭公園広場など[33]、隠れるところのある広い場所が適する[15]。ただし、あまり広すぎるとだらけてしまうため[19]、泥棒が逃げてよい範囲をあらかじめ決めておくと良い[15][17][19]

かつては路地裏遊びの定番であり[36]、街路や住宅家屋と家屋の隙間などを利用して遊ばれていた[9]

基本ルール

  1. グループ分け
    じゃんけんなどで[15][30][33]「警察」と「泥棒」の2組に分かれる[14][18][30][33]
    グループ分けに「いろは歌」を用いることもある[37]。「いろはにちりるをわかよ」と順にあてていき、「ほ」(ポリス)あるいは「た」(探偵)が警察、「と」(泥棒)あるいは「ぬ」(盗っ人)が泥棒となる[37]
  2. 「牢屋」を決める
    あらかじめ牢屋の場所を決めておく[10][14][30][33]
    サッカーゴールやジャングルジム、砂場などがあればそれを牢屋としても良いし[19]、地面に丸[33]や四角[15]を書いてその内側を牢屋としても良い[15][33]。また、木や鉄棒[1]、ジャングルジム[33]を牢屋として、捕まった泥棒はそれに手を付くこととすることもできる[1][33]
    牢屋の場所を決めるのは警察側とする場合もある[1][30]
  3. ゲーム開始
    警察は牢屋の中で50[1][30]または100[15][17][18]ないし200[17]を数え、その間に泥棒は逃げ、隠れる[1][17][18][30]
    数え終わると警察は泥棒を探し、見つけると追いかけて泥棒にタッチすることで泥棒を捕まえる[17][18]
    警察が泥棒を捕まえたとする条件については、タッチするだけでは捕まえたことにならないとする地域もあり[3]、「捕まえて10数える[3][19](10数えられる前なら泥棒は警察を振り切って逃げることができる[1])」、「背中を5回たたく[3]」、「牢屋まで連行する[3]」など地域によってさまざまなルールが存在する[3]
    捕まった泥棒は牢屋に入るが、仲間の捕まっていない泥棒にタッチされることで牢屋から出て再び逃げることができる[10][14][17][19]
    警察は牢屋番を置く[14]、泥棒は仲間を助けるための「オトリ」になるなどの作戦が重要となる[5]
  4. ゲームの終了
    泥棒が全員捕まると警察の勝利となり[3]、泥棒と警察が交代して次のゲームに移る[10][17][18][19]

特徴

鬼ごっこの一つであるが[1][2][3]、鬼と子はそれぞれ複数であり[31]、かつ、少なくとも1ゲームの間において固定される[23]。このため、鬼ごっこの中で鬼や子が複数のグループに分かれる「集団遊戯おに型」[4]のうち、2つのグループが競う「対抗おに」に分類される[25]。鬼と子の関係は、鬼は協力して子を捕まえようとし、子は鬼から逃れながらも他の子を助けようとするという集団と集団の関係となることから[2][23]、仲間同士で協力しあうことが重要となる[6][23]

遊びの終わりは明瞭で、子がすべて捕まった時点でそのゲームは終了する[12][23]。すなわち、ゲームを終わらせることができるのは鬼の側だけである[12]。ただし、子は一度捕まっても再び復活する可能性がある点で[23]かくれんぼ」や「手つなぎ鬼」と異なる[31]。この点から、「助け鬼」の一種とされる[11][12][13]

警察が泥棒を捕まえるというストーリー性を持ち[5]、「追う-逃げる」という関係に加えて「仲間を助ける」という要素が加わることで[2]、スリルのある遊びとなっている[15]。また、鬼が警察役で子が泥棒役という、鬼ごっことは善悪が逆の立場となっていることも特徴である[3]。日本では昭和以前から行われていた[21]伝承遊びの一つであり[6][7]、子どもたちの間で人気のある遊びの一つとなっている[5][14]明治時代にはすでに子どもたちの間で遊ばれていたとする資料もある[16]。警察が泥棒を追いかけるという同様の遊びは、アルゼンチン、オーストリア、タイ、ブルガリアでも見られる[22]

特に鬼は、子を追い陣地を守る必要から運動量が多くなり[34]、体力向上に資する[35]。逆に子の側には、仲間を助ける際の瞬間的な判断と勇気が求められる[34]

認知度

1998年平成10年)9月から10月にかけて近畿圏の大学短期大学保育専攻学生に行ったアンケート調査では、ケイドロをしたことがあるという回答は74.1%で、これは、ルールが必要な屋外の集団遊びの中で、Sケン(28.8%)、うずまきじゃんけん(32.0%)、陣取り(65.0%)などに次いで5番目に低い値であった[38]。調査を行った姫路工業大学勝木洋子らは、これらは個人の能力が直接勝敗に結び付かない集団と集団のダイナミックな遊びであり、かつては日本中で見られたこのような「弱者がいてもリーダーのもとに異年齢の集団が力を合わせる」遊びが減りつつあるのではないかと論じている[20]

一方で、2012年(平成24年)度に札幌大学増田敦が同大文化学部スポーツ文化コースの1年生から3年生まで144名(男子119名、女子25名)を対象とした調査では[39]、調査に用いた48種類の遊びのうち[26]「好んでよくやった遊び」としてケイドロは男子で1位(66.4%)、女子では2位(68.0%)で[40]、「知らない」または「知っているがおこなったことはない」と答えた学生は男女とも約8%であった[16]。増田は、この結果から「男女が混じって遊んでいる様子が伺える」として「性差のない遊びであると言える」と指摘している[16]

また、2004年(平成16年)11月から2005年(平成17年)1月にかけて全国の国公私立の幼稚園保育園1158園を対象としたアンケート調査では[41]、ケイドロを実施している園は52.40%であったが[42]、地域別では、東海地域は76.92%、関東地域は72.97%と、他の地域と比べて実施率が有意に高かった[43]。調査を行った元名古屋市立大学穐丸武臣らは、ケイドロなどは「戦後、路地裏遊びとして子どもたちに人気のあった遊び」であり、こうした遊びが幼稚園や保育園で受け継がれている地域ほど「他の伝承遊も数多く行っている可能性が高い」と推察している[36]。なお、設置者・園種別では、私立幼稚園(59%)、公立保育園(39%)、私立保育園(48%)と比べて、国公立幼稚園の実施率(国立幼稚園67%、公立幼稚園65%)が高かった[44]

派生

2004年平成16年)からフジテレビで放送されている「run for money逃走中」は、ケイドロの派生形とされる[11]。この番組のヒットにより、小学校などで「run for money逃走中」をまねた遊びが流行した[11]。また、保護者などによる同様の企画も全国で実施されている[11]

ただし、「ミッション」の設定などは小学生には難しいために省略されたり、また、昼休みなどに短時間で遊ぶためにルールの変更などがされており、結果として普通のケイドロとなっていることも多い[11]。しかし、「run for money逃走中」の「ハンター」(鬼)と「逃走者」(子)のイメージが共有されていることで、結果として昔ながらのケイドロと変わらないものになっていたとしても、子どもたちにとってはドラマティックで刺激的な新たな遊びとなっていると指摘されている[11]

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k 多田 2002, p. 27.
  2. ^ a b c d e f g 小川 1988, p. 513.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 東京おもちゃ美術館 2018, p. 150.
  4. ^ a b 増田 2013, p. 113.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l 羽崎 2013, p. 30.
  6. ^ a b c d e f g 西田他 2009, p. 46.
  7. ^ a b c 穐丸 2010, p. 59.
  8. ^ a b c d 山路 2016, p. 503.
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  10. ^ a b c d e f g h i 笹間 2010, p. 160.
  11. ^ a b c d e f g h i j k 杉谷 2013, p. 6.
  12. ^ a b c d e 戸田他 1989, p. 317.
  13. ^ a b c 河崎他 2007, p. 95.
  14. ^ a b c d e f g h i j 鬼ごっこ協会 2018, p. 36.
  15. ^ a b c d e f g h i j k l 菅原 1996, p. 90.
  16. ^ a b c d e 増田 2013, p. 109.
  17. ^ a b c d e f g h i j 亀卦川 2007, p. 19.
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  20. ^ a b 勝木他 1999, p. 499.
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  23. ^ a b c d e f g h 河崎他 1979, p. 41.
  24. ^ 増田 2013, pp. 113–112.
  25. ^ a b c 加古 2008, pp. 16–17, 446.
  26. ^ a b c 増田 2013, p. 120.
  27. ^ 勝木他 1999, p. 498.
  28. ^ a b c 田中 2010, p. 213.
  29. ^ 増田 2013, p. 124.
  30. ^ a b c d e f g 竹井 2012, p. 22.
  31. ^ a b c 河崎他 1979, p. 40.
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  35. ^ a b 鬼ごっこ協会 2018, p. 37.
  36. ^ a b 穐丸他 2007, p. 76.
  37. ^ a b 加古 2008, p. 447.
  38. ^ 勝木他 1999, pp. 498–499.
  39. ^ 増田 2013, p. 121.
  40. ^ 増田 2013, p. 111.
  41. ^ 穐丸他 2007, pp. 58–59.
  42. ^ 穐丸他 2007, p. 62.
  43. ^ 穐丸他 2007, pp. 69–70.
  44. ^ 穐丸 2010, pp. 59–61.

参考文献

書籍

  • 菅原道彦 『あそびの学校1』 ベースボール・マガジン社1996年ISBN 4-583-03288-9
  • 多田千尋監修 『そとあそび』 パッチワーク通信社<レッスンシリーズ おやこ週末遊びガイド 昔なつかし>1、2002年ISBN 4-89396-657-X
  • 亀卦川茂 『校庭あそび 上』 汐文社<たのしい放課後遊び>1、2007年ISBN 978-4-8113-8427-6
  • 加古里子 『伝承遊び考3 鬼遊び考』 小峰書店2008年ISBN 978-4-338-22603-5
  • 笹間良彦 『日本こどものあそび図鑑』 遊子館<歴史図像シリーズ>3、2010年ISBN 978-4-86361-010-1
  • 竹井史郎 『運動場のあそび』 岩崎書店<学校であそぼう! ゲームの達人>3、2012年ISBN 978-4-265-08253-7
  • 羽崎泰男 『年齢別アレンジつき 元気いっぱい! 鬼ごっこ50』 ひかりのくに<ハッピー保育books>20、2013年ISBN 978-4-564-60818-6
  • 一般社団法人鬼ごっこ協会 『まるごと鬼ごっこ』 いかだ社2018年ISBN 978-4-87051-496-6
  • 東京おもちゃ美術館 編 『日本伝承遊び事典』 黎明書房、2018年。ISBN 978-4-654-07632-1

論文等

関連項目