「日韓貿易紛争」の版間の差分
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「背景」の節の中立性の改善。「日韓GSOMIA協定の破棄」内の2節を統合。一部の内容を「日本世論の反応」節に転記。「韓国の反応」を「韓国世論の反応」に改題。 |
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| 精度=2019年9月 |
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'''日韓経済戦争'''{{Refnest|group="注"|韓国では「日本経済報復」({{lang-ko-short|일본 경제보복}})として知られてい |
'''日韓経済戦争'''{{Refnest|group="注"|韓国では「日本経済報復」({{lang-ko-short|일본 경제보복}})として知られている。<ref>{{Cite news |title=일본 경제보복, 이미 예고됐었다 |newspaper=[[毎日経済新聞]] |date=2019-07-04 |url=https://www.mk.co.kr/news/politics/view/2019/07/488271/ |accessdate=2019-09-23|language=ko}}</ref>}}(にっかんけいざいせんそう)は、[[日本]]が[[2019年]]7月に[[安全保障]]上の理由をあげて[[大韓民国]]向けの[[半導体]]素材の輸出管理を強化、韓国がそれに応酬を加え[[貿易]]紛争に発展したことで起きた二国間の対立問題である<ref>{{Cite news |title=「四世紀ぶりの孤立」を招いた文在寅、日本と北朝鮮から挟み撃ち |newspaper=ライブドアニュース |date=2019-08-20 |url=https://news.livedoor.com/article/detail/16954965/ |accessdate=2019-08-23}}</ref><ref>{{Cite news |title=【日韓経済戦争】耐えるしかない日本企業の無念 ユニクロ、サッポロ、ホンダ、トヨタ、無印良品...... |newspaper=Jcast |date=2019-08-11 |url=https://www.j-cast.com/kaisha/2019/08/11364805.html |accessdate=2019-08-23}}</ref><ref>{{cite news |url=http://news.khan.co.kr/kh_news/khan_art_view.html?artid=201908090855018&code=960205|title=‘일본 도대체 왜?’ 지속되는 한일 경제 전쟁… 그 해법은?|work=[[京郷新聞|Kyunghyang Shinmun]]|date=2019-08-09|language=ko|accessdate=2019-08-23}}</ref><ref>{{cite news |url=https://edition.cnn.com/2019/08/02/business/japan-south-korea-trade-war/index.html|title=South Korea accuses Japan of waging 'economic war'|work=[[CNN]]|date=2019-08-09|accessdate=2019-08-23}}</ref>{{Refnest|group="注"|ただし、「[[経済戦争]]」という語の本来の意味からは外れていることに留意すべきである。}}。 |
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日本の[[キャッチオール規制]](補完的輸出規制)において2019年[[8月2日]]に優遇措置の対象国であるホワイト国(8月2日より「グループA」に改称)から韓国を除外することを決定、8月28日から施行し、それに対抗して韓国政府も同年[[8月12日]]に、安全保障上の輸出管理で優遇措置の対象国から日本を除外する制度改正案を発表し、9月18日に施行した。 |
日本の[[キャッチオール規制]](補完的輸出規制)において2019年[[8月2日]]に優遇措置の対象国であるホワイト国(8月2日より「グループA」に改称)から韓国を除外することを決定、8月28日から施行し、それに対抗して韓国政府も同年[[8月12日]]に、安全保障上の輸出管理で優遇措置の対象国から日本を除外する制度改正案を発表し、9月18日に施行した。 |
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== 背景 == |
== 背景 == |
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{{See also|日韓関係}} |
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2019年の[[極東アジア]]において、日本は[[国内総生産|GDP]]世界3位、韓国は11位の共に経済大国である。韓国では2015年に[[保守派]]の[[朴槿恵]][[大統領 (大韓民国)|大統領]]が[[慰安婦問題日韓合意]]を結び歴史問題へ一定の決着をつけようと図ったものの、2017年5月に大統領に就任した[[共に民主党]]で[[進歩派]]の[[文在寅]]政権は「積弊清算」を掲げて前政権下での各施策を断罪し、対日姿勢を先鋭化させていた。 |
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2019年の[[極東アジア]]において、日本は[[国内総生産|GDP]]世界3位、韓国は11位の共に経済大国である。 |
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両国は2010年代後半以前にも、特に[[日本統治時代の朝鮮|戦前において日本が朝鮮半島を併合していた]]歴史問題を巡って対立を繰り返してきた。 |
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特に2018年後半以降、日本の[[安倍晋三]]政権と韓国[[文在寅]]政権との間で歴史認識・防衛問題を巡る対立が激化していた。 |
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== 時系列 == |
== 時系列 == |
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**[[8月8日]] - [[環境部|韓国環境部]]は、「[[火力発電所]]から排出され[[セメント]]の材料となる[[石炭灰]]の輸入にあたって、従来は一部に限っていた[[放射線]]検査を全てに義務付ける」と発表<ref name="fnn-1" />。 |
**[[8月8日]] - [[環境部|韓国環境部]]は、「[[火力発電所]]から排出され[[セメント]]の材料となる[[石炭灰]]の輸入にあたって、従来は一部に限っていた[[放射線]]検査を全てに義務付ける」と発表<ref name="fnn-1" />。 |
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**[[8月12日]] - 韓国政府は韓国の「ホワイト国」から日本を除外する方針を発表<ref>{{Cite web|title=韓国も「ホワイト国」から日本を除外。これまでの経緯をおさらいする|url=https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5d511efbe4b0820e0af7a994|website=ハフポスト|date=2019-08-12|accessdate=2019-08-13|language=ja}}</ref>。 |
**[[8月12日]] - 韓国政府は韓国の「ホワイト国」から日本を除外する方針を発表<ref>{{Cite web|title=韓国も「ホワイト国」から日本を除外。これまでの経緯をおさらいする|url=https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5d511efbe4b0820e0af7a994|website=ハフポスト|date=2019-08-12|accessdate=2019-08-13|language=ja}}</ref>。 |
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**[[8月22日]] - |
**[[8月22日]] - 韓国大統領府が[[韓国国家安全保障会議|国家安全保障会議(NSC)]]の常任委員会を開き、日韓で防衛秘密を共有する[[日韓秘密軍事情報保護協定]](GSOMIA)の破棄を決定<ref name=nikkei190822>{{Cite news|title=日韓軍事情報協定を破棄 韓国政府が決定|url=https://r.nikkei.com/article/DGXMZO48873830S9A820C1MM8000?s=2|newspaper=日本経済新聞|date=2019-08-22|accessdate=2019-08-22|author=恩地洋介}}</ref>。 |
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**[[8月23日]] - [[外交部 (大韓民国)|韓国外交部]]が[[長嶺安政]]・[[在大韓民国日本国大使館|駐韓大使]]を呼び出し、GSOMIA破棄を通告<ref>{{Cite web |date= 2019-08-23|url=https://s.wowkorea.jp/news/read/240407/|title=韓国外交部、GSOMIA終了を日本大使に伝達|publisher=WoW!Korea|website=Wow!Korea(日本語版)|accessdate=2019-09-11}}</ref>。 |
**[[8月23日]] - [[外交部 (大韓民国)|韓国外交部]]が[[長嶺安政]]・[[在大韓民国日本国大使館|駐韓大使]]を呼び出し、GSOMIA破棄を通告<ref>{{Cite web |date= 2019-08-23|url=https://s.wowkorea.jp/news/read/240407/|title=韓国外交部、GSOMIA終了を日本大使に伝達|publisher=WoW!Korea|website=Wow!Korea(日本語版)|accessdate=2019-09-11}}</ref>。 |
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**[[8月28日]]午前0時 - 日本の「輸出貿易管理令の一部を改正する政令」が発効<ref>{{Cite news |title=輸出優遇国から韓国除外 政令で初の取り消し施行 |newspaper=東京新聞 |date=2019-08-28 |url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201908/CK2019082802000155.html |accessdate=2019-08-28}}</ref>。 |
**[[8月28日]]午前0時 - 日本の「輸出貿易管理令の一部を改正する政令」が発効<ref>{{Cite news |title=輸出優遇国から韓国除外 政令で初の取り消し施行 |newspaper=東京新聞 |date=2019-08-28 |url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201908/CK2019082802000155.html |accessdate=2019-08-28}}</ref>。 |
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2019年7月1日に日本の[[経済産業省]]は、韓国向けに輸出される[[軍事]]転用可能な一部の半導体関連物品について、企業ごとに一定期間包括的に許可する方式から、契約ごとに個別審査する方式へ切り替えると発表した<ref name="asahi-1" />。品目は、半導体の[[基板]]に塗る感光材の「[[レジスト]]」、半導体の[[洗浄]]に使う「[[フッ化水素]]」、[[ディスプレイ (コンピュータ)|ディスプレイ]]パネルの素材となる「フッ素化[[ポリイミド]]」の3品目が指定された<ref name="asahi-1" />。通常ならば個別輸出許可の手続きには90日程度かかり<ref name="asahi-1" />、これは半導体製品の輸出が経済を支える韓国にとって、日本からの円滑な資材調達が困難になることを意味した<ref name="diamond-2-1" />。特に上記3品目は日本企業のシェアが大きく、韓国企業に少なくない影響が見込まれた<ref name="nishinippon-1" />。 |
2019年7月1日に日本の[[経済産業省]]は、韓国向けに輸出される[[軍事]]転用可能な一部の半導体関連物品について、企業ごとに一定期間包括的に許可する方式から、契約ごとに個別審査する方式へ切り替えると発表した<ref name="asahi-1" />。品目は、半導体の[[基板]]に塗る感光材の「[[レジスト]]」、半導体の[[洗浄]]に使う「[[フッ化水素]]」、[[ディスプレイ (コンピュータ)|ディスプレイ]]パネルの素材となる「フッ素化[[ポリイミド]]」の3品目が指定された<ref name="asahi-1" />。通常ならば個別輸出許可の手続きには90日程度かかり<ref name="asahi-1" />、これは半導体製品の輸出が経済を支える韓国にとって、日本からの円滑な資材調達が困難になることを意味した<ref name="diamond-2-1" />。特に上記3品目は日本企業のシェアが大きく、韓国企業に少なくない影響が見込まれた<ref name="nishinippon-1" />。 |
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日本政府はこの措置について、あくまで日本国内における制度運用の問題であり、韓国と協議する |
日本政府はこの措置について、あくまで日本国内における制度運用の問題であり、韓国と協議する理由は無いとの立場を示した<ref name="gendai-1-3" />。また[[菅義偉]][[内閣官房長官]]は、この措置は「(徴用工問題への)対抗措置ではない」としつつ「韓国との信頼関係が損なわれ、輸出管理に取り組むことが困難になった」と一定の因果関係は認めた<ref name="nishinippon-1" />。そして[[8月8日]]に、規制後初めて3品目の一部について、審査により軍事転用の恐れなしとして輸出許可を出し、「正当な取引については恣意的な運用をせず許可を出している」と説明した<ref name="asahi-1" />。 |
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韓国にとって7月1日の日本の発表は、文大統領も出席した[[第14回20か国・地域首脳会合|G20大阪サミット]]の直後だったため、寝耳に水に近いものだった<ref name="jbpress-1-1" />。韓国は日本の措置を、徴用工問題への報復として日本から仕掛けてきた経済戦争と捉え<ref name="bunshun-1-1" />、日本に協議と撤回を求めた<ref name="gendai-1-3" />。7月3日に韓国政府は、半導体材料や装置の国産化支援に毎年1兆ウォンの予算を充てる構想を発表した<ref name="jbpress-1-4" />。そして7月24日に[[世界貿易機関|世界貿易機関(WTO)]]の一般理事会でこの問題を提起し、日本の措置は徴用工問題への報復という外交的な下心によるもので、WTOの存在意義を損ね世界経済に混乱をもたらすと訴え<ref name="reuters-1" />、9月11日付で正式にWTOへ日本を提訴した<ref name="nikkei-2" />。[[東南アジア諸国連合地域フォーラム|ARF]]や[[東アジア地域包括的経済連携|RCEP]]の会合においても日本の措置を非難した<ref name="diamond-1-4" />。 |
韓国にとって7月1日の日本の発表は、文大統領も出席した[[第14回20か国・地域首脳会合|G20大阪サミット]]の直後だったため、寝耳に水に近いものだった<ref name="jbpress-1-1" />。韓国は日本の措置を、徴用工問題への報復として日本から仕掛けてきた経済戦争と捉え<ref name="bunshun-1-1" />、日本に協議と撤回を求めた<ref name="gendai-1-3" />。7月3日に韓国政府は、半導体材料や装置の国産化支援に毎年1兆ウォンの予算を充てる構想を発表した<ref name="jbpress-1-4" />。そして7月24日に[[世界貿易機関|世界貿易機関(WTO)]]の一般理事会でこの問題を提起し、日本の措置は徴用工問題への報復という外交的な下心によるもので、WTOの存在意義を損ね世界経済に混乱をもたらすと訴え<ref name="reuters-1" />、9月11日付で正式にWTOへ日本を提訴した<ref name="nikkei-2" />。[[東南アジア諸国連合地域フォーラム|ARF]]や[[東アジア地域包括的経済連携|RCEP]]の会合においても日本の措置を非難した<ref name="diamond-1-4" />。 |
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=== ホワイト国からの除外 === |
=== ホワイト国からの除外 === |
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2019年8月2日に日本政府は、輸出管理上の[[キャッチオール規制]](補完的輸出規制)における優遇措置、いわゆる「ホワイト国」(のち「グループA」へ改称)から韓国を除外する旨を閣議決定し、政令改正を経て28日より施行するとした。(韓国はアジアで唯一のホワイト国だった。)これにより、韓国向けの輸出管理は包括許可から個別許可へ戻されることになり、対象品目(最大で1000品目程度<ref name="diamond-2-4" />)になった場合は審査に最長で2〜3か月かかることになった<ref name="diamond-2-1" />。 |
2019年8月2日に日本政府は、輸出管理上の[[キャッチオール規制]](補完的輸出規制)における優遇措置、いわゆる「ホワイト国」(のち「グループA」へ改称)から韓国を除外する旨を閣議決定し、政令改正を経て28日より施行するとした。(韓国はアジアで唯一のホワイト国だった。)これにより、韓国向けの輸出管理は包括許可から個別許可へ戻されることになり、対象品目(最大で1000品目程度<ref name="diamond-2-4" />)になった場合は審査に最長で2〜3か月かかることになった<ref name="diamond-2-1" />。 |
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日本側の主張としては、ホワイト国からの除外はあくまで「手続きの見直し」であって「輸出規制」ではなく<ref name="diamond-2-2" />、安全保障上の見地から日本国内での制度運用を見直すものに過ぎないというものである<ref>関税及び貿易に関する一般協定(GATT)の第21条は、安全保障を理由とした輸出管理手続きの運営を、各国が判断できると定めている。</ref> |
日本側の主張としては、ホワイト国からの除外はあくまで「手続きの見直し」であって「輸出規制」ではなく<ref name="diamond-2-2" />、安全保障上の見地から日本国内での制度運用を見直すものに過ぎないというものである<ref>関税及び貿易に関する一般協定(GATT)の第21条は、安全保障を理由とした輸出管理手続きの運営を、各国が判断できると定めている。</ref>(韓国が[[北朝鮮]]向けに無許可で物資支援を行ったり、日本からの輸出品の横流しをしているのではないかとの疑念が、日本では生じていた<ref name="diamond-2-2" />)。また日本から求めた輸出管理に関する協議を、韓国は3年にわたって拒んでいた<ref name="diamond-2-2" />。8月2日、菅官房長官は、今回の措置は「経済報復」ではないと主張し<ref name="sankei-1" />、[[外務省]]幹部も「通常の手続きに戻すだけなのに(韓国は)[[禁輸]]のように騒いでいる」と主張した<ref name="sankei-1" />。 |
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韓国 |
韓国では、8月2日午前の日本の発表を受け、午後には文大統領が閣議を主宰し、テレビの[[生中継]]で「極めて無謀な決定」「状況を悪化させた責任は日本政府にある。今後起きる事態の責任も全面的に日本政府にあることを警告する」<ref name="diamond-1-2" />「日本の不当な経済報復措置に対する相応の措置を断固としてとっていく」<ref name="jbpress-1-1" />と日本を強く非難した。同日、[[洪楠基]]経済副首相兼企画財政部長官は、日本を韓国版「ホワイト国」から外すと発表し、WTOへ日本を提訴する準備を進めると明かした<ref name="shincho-1-1" />。[[8月5日]]に韓国政府は、半導体、ディスプレイ、[[自動車]]、[[電機]]・電子、[[機械]]・[[金属]]、基礎化学の6大分野から100品目を戦略品目に指定し、それら主要な部品・素材の国産化に向けて7年間で7兆8000億ウォンをあてると発表し、特に日本が輸出管理を厳格化した半導体素材3品目を含む重要20品目については1年以内に供給を安定化させ「脱日本依存」を図るとした<ref name="nikkei-1" />。9月18日には韓国側も「国際的な輸出管理体制の基本原則に反して制度を運用する国とは協調が難しい」として、輸出手続きを簡略化できる優遇国のリストから日本を正式に外し、対日輸出は原則として包括許可から個別許可へ切り替えられた<ref name="asahi-2" />。 |
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=== 日韓GSOMIA協定の破棄 === |
=== 日韓GSOMIA協定の破棄 === |
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====GSOMIA破棄前==== |
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2016年より日韓初の防衛協力協定<ref>{{Cite web|title=日韓、戦後初の防衛協力協定を締結へ 聯合ニュース|url=https://www.afpbb.com/articles/-/2886613|website=[[AFPBB]]|accessdate=2019-08-23|language=ja|publisher=|date=2012-06-27}}</ref>である[[軍事情報包括保護協定]]・[[日韓秘密軍事情報保護協定|GSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)]]を締結し、日韓は防衛当局間での情報共有を図ってきたが、自動更新を迎える[[8月24日]]以前に韓国が日本への対抗措置として破棄を通告した場合は、[[北朝鮮核問題|北朝鮮の核]]・[[北朝鮮ミサイル問題|ミサイル]]への対応にあたり、[[米国]]も含め足並みの乱れが生じると危惧された<ref name="kiji-1" />。 |
2016年より日韓初の防衛協力協定<ref>{{Cite web|title=日韓、戦後初の防衛協力協定を締結へ 聯合ニュース|url=https://www.afpbb.com/articles/-/2886613|website=[[AFPBB]]|accessdate=2019-08-23|language=ja|publisher=|date=2012-06-27}}</ref>である[[軍事情報包括保護協定]]・[[日韓秘密軍事情報保護協定|GSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)]]を締結し、日韓は防衛当局間での情報共有を図ってきたが、自動更新を迎える[[8月24日]]以前に韓国が日本への対抗措置として破棄を通告した場合は、[[北朝鮮核問題|北朝鮮の核]]・[[北朝鮮ミサイル問題|ミサイル]]への対応にあたり、[[米国]]も含め足並みの乱れが生じると危惧された<ref name="kiji-1" />。 |
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韓国の[[徐薫]][[国家情報院]]長は8月1日に「GSOMIAは内容上の実益も重要であり、象徴的意味も重要だ」と破棄に否定的な考えを示し<ref name="agora-1" />、[[:ko:노영민|盧英敏]]大統領府秘書室長も8月6日に、アメリカの意向も踏まえると破棄には慎重にならざるを得ないとの立場を示した<ref name="nhk-1" />。 |
韓国の[[徐薫]][[国家情報院]]長は8月1日に「GSOMIAは内容上の実益も重要であり、象徴的意味も重要だ」と破棄に否定的な考えを示し<ref name="agora-1" />、[[:ko:노영민|盧英敏]]大統領府秘書室長も8月6日に、アメリカの意向も踏まえると破棄には慎重にならざるを得ないとの立場を示した<ref name="nhk-1" />。 |
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====GSOMIA破棄後==== |
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韓国大統領府([[青瓦台]])は[[2019年]][[8月22日]]、[[韓国国家安全保障会議|国家安全保障会議(NSC)]]の常任委員会を開き、日韓で防衛秘密を共有する日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた。輸出管理を厳しくした日本への反発から韓国政府内では破棄論が強まっていた<ref name=nikkei190822/>。破棄決定により、同年[[11月23日]]午前0時に効力を失う予定となる。 |
韓国大統領府([[青瓦台]])は[[2019年]][[8月22日]]、[[韓国国家安全保障会議|国家安全保障会議(NSC)]]の常任委員会を開き、日韓で防衛秘密を共有する日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた。輸出管理を厳しくした日本への反発から韓国政府内では破棄論が強まっていた<ref name=nikkei190822/>。破棄決定により、同年[[11月23日]]午前0時に効力を失う予定となる。 |
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GSOMIA破棄に対し、日本政府は外交ルートで抗議した<ref>{{cite news|title=日本政府、韓国に抗議=外相「極めて遺憾」-軍事情報協定破棄で|newspaper=[[時事ドットコム]]|publisher=時事通信社|date=2019-08-22|url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2019082201076&g=pol|accessdate=2019-08-23}}</ref>。また、アメリカの[[マイク・ポンペオ]]国務長官は、「我々は韓国の決定に失望している」と述べた<ref>{{cite news|title=GSOMIA破棄 米国「強い懸念と失望」|newspaper=[[Yahoo!ニュース]]|publisher=Yahoo! JAPAN|date=2019-08-23|url=https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20190823-00000059-nnn-int|accessdate=2019-08-23}}</ref>。これに対して、韓国の[[李洛淵]][[首相]]は[[8月26日]]、GSOMIA破棄決定について、「日本が根拠も示さず、韓国を安全保障上信頼できない国であるかのようにレッテルを貼り、(輸出手続きを簡略化できる)輸出優遇国のリストから韓国を外したためだ」と説明。「日本の不当な措置が元に戻れば、わが政府もGSOMIAを再検討することが望ましい」と述べた<ref>{{cite news|title=日本の対応次第で「GSOMIA再検討」韓国首相が発言|newspaper=[[朝日新聞デジタル]]|publisher=朝日新聞|date=2019-08-26|url=https://www.asahi.com/sp/articles/ASM8V5VDYM8VUHBI01C.html?iref=sptop_8_05|accessdate=2019-08-26}}</ref>。 |
GSOMIA破棄に対し、日本政府は外交ルートで抗議した<ref>{{cite news|title=日本政府、韓国に抗議=外相「極めて遺憾」-軍事情報協定破棄で|newspaper=[[時事ドットコム]]|publisher=時事通信社|date=2019-08-22|url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2019082201076&g=pol|accessdate=2019-08-23}}</ref>。また、アメリカの[[マイク・ポンペオ]]国務長官は、「我々は韓国の決定に失望している」と述べた<ref>{{cite news|title=GSOMIA破棄 米国「強い懸念と失望」|newspaper=[[Yahoo!ニュース]]|publisher=Yahoo! JAPAN|date=2019-08-23|url=https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20190823-00000059-nnn-int|accessdate=2019-08-23}}</ref>。これに対して、韓国の[[李洛淵]][[首相]]は[[8月26日]]、GSOMIA破棄決定について、「日本が根拠も示さず、韓国を安全保障上信頼できない国であるかのようにレッテルを貼り、(輸出手続きを簡略化できる)輸出優遇国のリストから韓国を外したためだ」と説明。「日本の不当な措置が元に戻れば、わが政府もGSOMIAを再検討することが望ましい」と述べた<ref>{{cite news|title=日本の対応次第で「GSOMIA再検討」韓国首相が発言|newspaper=[[朝日新聞デジタル]]|publisher=朝日新聞|date=2019-08-26|url=https://www.asahi.com/sp/articles/ASM8V5VDYM8VUHBI01C.html?iref=sptop_8_05|accessdate=2019-08-26}}</ref>。 |
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== 日本世論の反応 == |
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日本での事前の[[パブリックコメント]]では9割という圧倒的多数が韓国のホワイト国除外を支持し<ref name="sankei-1" />、除外発表直後に産経新聞・FNNが共同で行った[[世論調査]]では除外「支持」が67.6%にのぼり、「不支持」の19.4%を大きく上回った<ref name="sankei-2" />。 |
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== 韓国世論の反応 == |
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[[File:"Boycott Japan" sticker on shop in Mokpo.jpg|thumb|250px|韓国[[木浦市]]の「ボイコット・ジャパン」[[ステッカー]]]] |
[[File:"Boycott Japan" sticker on shop in Mokpo.jpg|thumb|250px|韓国[[木浦市]]の「ボイコット・ジャパン」[[ステッカー]]]] |
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韓国市民の間には、[[日本製品不買運動]]が盛り上がりを見せたが、日本製品の韓国向け輸出は全体の数パーセントであり、日本製品不買運動による日本側への影響は限定的と見られている<ref name="diamond-1-2" />。具体的な例として以下のようなものが挙げられる。 |
韓国市民の間には、[[日本製品不買運動]]が盛り上がりを見せたが、日本製品の韓国向け輸出は全体の数パーセントであり、日本製品不買運動による日本側への影響は限定的と見られている<ref name="diamond-1-2" />。具体的な例として以下のようなものが挙げられる。 |
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* 韓国のネット上では「[[:ko:노노재팬|ノーノージャパン]]」という[[日本のビール|日本産ビール]]、[[ユニクロ]]の衣料品などの日本製品及びその代替物の韓国・他国製品を掲載するサイトが登場し、アクセス数が持続的に増大していた<ref>{{Cite web|title=ノーノージャパン|url=http://world.kbs.co.kr/service/contents_view.htm?lang=j&menu_cate=lifestyle&id=&board_seq=368133|website=world.kbs.co.kr|accessdate=2019-08-13|language=ja|publisher=|date=2019-07-24}}</ref>。 |
* 韓国のネット上では「[[:ko:노노재팬|ノーノージャパン]]」という[[日本のビール|日本産ビール]]、[[ユニクロ]]の衣料品などの日本製品及びその代替物の韓国・他国製品を掲載するサイトが登場し、アクセス数が持続的に増大していた<ref>{{Cite web|title=ノーノージャパン|url=http://world.kbs.co.kr/service/contents_view.htm?lang=j&menu_cate=lifestyle&id=&board_seq=368133|website=world.kbs.co.kr|accessdate=2019-08-13|language=ja|publisher=|date=2019-07-24}}</ref>。 |
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* 韓国の[[化粧品]]会社[[:ko:한국콜마|韓国コルマー]](日本コルマーの現地子会社)の会長による親日・文在寅批判動画の放映<ref>{{Cite web|title=文大統領批判動画で会長辞任 韓国内で不買運動も|url=https://www.fnn.jp/posts/00422284CX/201908121228_CX_CX|website=FNN.jpプライムオンライン|accessdate=2019-08-13|language=ja|publisher=|date=2019年8月12日}}</ref>や[[DHC]]の子会社が制作する[[ネット番組]]「[[虎ノ門ニュース]]」の出演者による[[嫌韓]]発言<ref>{{Cite web|title=日本企業が「嫌韓放送」している 韓国で「#さよならDHC」拡散|url=https://www.j-cast.com/2019/08/12364882.html|website=J-CASTニュース|date=2019-08-12|accessdate=2019-08-13}}</ref>が韓国国内で物議を醸したため、当該企業の製品への不買運動が激しくなり、韓国コルマー、DHCコリアの代表が謝罪 |
* 韓国の[[化粧品]]会社[[:ko:한국콜마|韓国コルマー]](日本コルマーの現地子会社)の会長による親日・文在寅批判動画の放映<ref>{{Cite web|title=文大統領批判動画で会長辞任 韓国内で不買運動も|url=https://www.fnn.jp/posts/00422284CX/201908121228_CX_CX|website=FNN.jpプライムオンライン|accessdate=2019-08-13|language=ja|publisher=|date=2019年8月12日}}</ref>や[[DHC]]の子会社が制作する[[ネット番組]]「[[虎ノ門ニュース]]」の出演者による[[嫌韓]]発言<ref>{{Cite web|title=日本企業が「嫌韓放送」している 韓国で「#さよならDHC」拡散|url=https://www.j-cast.com/2019/08/12364882.html|website=J-CASTニュース|date=2019-08-12|accessdate=2019-08-13}}</ref>が韓国国内で物議を醸したため、当該企業の製品への不買運動が激しくなり、韓国コルマー、DHCコリアの代表が謝罪した。 |
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*7月末、ソウルの[[西大門刑務所]]で韓国の地方自治体の首長らによる日本の措置に反対する糾弾大会が開かれた。日本の措置に対応する連合体も発足し、約100の地方自治体では日本製品の購入や公務員の訪日中断を掲げた。うち[[中区 (ソウル特別市)|ソウル中区]]では[[:ko:서양호|徐良鎬]]区長の指示で、[[8月6日]]に同区内に1000本以上の「ノージャパン」の旗を設置したが、[[明洞]]など観光客を相手に商売をしている商店主や、「韓国が好きで訪れた日本人への礼儀に欠ける」と批判が殺到したため同日中に撤去された。[[江南区 (ソウル特別市)|江南区]]では区内の[[万国旗]]から[[日章旗]]を撤去された。[[西大門区]]や[[水原市]]では役所内に日本製事務用品の回収箱が設置された。[[釜山市]]では日本の[[友好都市]]との行政交流の中断が発表された<ref>{{Cite web|title=韓国「官製反日」に国民が「NO」 自治体トップらに批判|url=https://www.sankei.com/world/news/190807/wor1908070024-n1.html|website=産経ニュース|date=2019-08-07|accessdate=2019-08-13|language=ja| |
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* 韓国から日本への[[旅行]]のキャンセルが相次ぎ、[[格安航空会社]]を中心に日韓路線の運休、減便が続出し、[[対馬]]や[[鳥取県|鳥取]]など韓国人[[観光客]]を多数受け入れてきた地域では影響が出た<ref name="diamond-1-2" />。 |
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* 韓国の一般民衆の間では[[2020年東京オリンピック]]を[[ボイコット]]する動きが見られた。与党・共に民主党の一部からもオリンピック選手への[[福島県]]産農水産物の提供などを理由として日本を批判した<ref>{{Cite web|title=「東京オリンピックをボイコットせよ!」韓国では与党も世論も”過熱暴走”|url=https://bunshun.jp/articles/-/13249|website=文春オンライン|accessdate=2019-08-13| |
* 韓国の一般民衆の間では[[2020年東京オリンピック]]を[[ボイコット]]する動きが見られた。与党・共に民主党の一部からもオリンピック選手への[[福島県]]産農水産物の提供などを理由として日本を批判した<ref>{{Cite web|title=「東京オリンピックをボイコットせよ!」韓国では与党も世論も”過熱暴走”|url=https://bunshun.jp/articles/-/13249|website=文春オンライン|accessdate=2019-08-13|author=名村隆寛(産経新聞ソウル支局長)|publisher=|date=2019/08/04}}</ref>。 |
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韓国国内では「[[安倍政権]]による経済侵略」の見方が強く、「No安倍」という[[プラカード]]を掲げる[[デモ活動|デモ]]が行われた<ref>{{Cite web|title=MBS 全国のニュース|url=https://www.mbs.jp/news/zenkokunews/20190813/3750652.shtml|website=www.mbs.jp|accessdate=2019-08-13|language=ja|last=株式会社毎日放送(MBS)|publisher=|date=2019-08-13}}</ref> |
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2019年[[7月27日]]からは、[[ソウル市]]中心部の広場で[[キャンドル・ビジル|ローソクデモ]]が行われ、初日には5000人が集まった。これは親北朝鮮系 |
2019年[[7月27日]]からは、[[ソウル市]]中心部の広場で[[キャンドル・ビジル|ローソクデモ]]が行われ、初日には5000人が集まった。これは親北朝鮮系とされる学生団体・[[韓国大学総学生会連合|韓国大学生進歩連合]]が主催し、[[全国民主労働組合総連盟|民主労総]]や[[全国教職員労働組合|全教組]]など、かつて[[朴槿恵政権]]弾劾を主導した596団体が加わった<ref name="diamond-1-2" />。 |
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韓国による石炭灰の輸入検査措置の強化に対して、韓国国内のセメント業界・[[建設業]]界を中心に反対意見が上がった。韓国セメント業界での日本産石炭灰への依存度が40%であるため、1週間分の在庫を使い切った後、生産中断の状態に陥る可能性が高いと見られる<ref>{{Cite web|title="재고 일주일 치 뿐인데"…日 석탄재 전수조사에 생산 차질 우려|url=https://www.asiae.co.kr/article/2019080911462424423|website=아시아경제|date=2019-08-09|accessdate=2019-08-13|language=ko}}</ref>。 |
韓国による石炭灰の輸入検査措置の強化に対して、韓国国内のセメント業界・[[建設業]]界を中心に反対意見が上がった。韓国セメント業界での日本産石炭灰への依存度が40%であるため、1週間分の在庫を使い切った後、生産中断の状態に陥る可能性が高いと見られる<ref>{{Cite web|title="재고 일주일 치 뿐인데"…日 석탄재 전수조사에 생산 차질 우려|url=https://www.asiae.co.kr/article/2019080911462424423|website=아시아경제|date=2019-08-09|accessdate=2019-08-13|language=ko}}</ref>。 |
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2019年9月24日 (火) 13:32時点における版
日韓経済戦争[注 1](にっかんけいざいせんそう)は、日本が2019年7月に安全保障上の理由をあげて大韓民国向けの半導体素材の輸出管理を強化、韓国がそれに応酬を加え貿易紛争に発展したことで起きた二国間の対立問題である[2][3][4][5][注 2]。
日本のキャッチオール規制(補完的輸出規制)において2019年8月2日に優遇措置の対象国であるホワイト国(8月2日より「グループA」に改称)から韓国を除外することを決定、8月28日から施行し、それに対抗して韓国政府も同年8月12日に、安全保障上の輸出管理で優遇措置の対象国から日本を除外する制度改正案を発表し、9月18日に施行した。
背景
2019年の極東アジアにおいて、日本はGDP世界3位、韓国は11位の共に経済大国である。
両国は2010年代後半以前にも、特に戦前において日本が朝鮮半島を併合していた歴史問題を巡って対立を繰り返してきた。
特に2018年後半以降、日本の安倍晋三政権と韓国文在寅政権との間で歴史認識・防衛問題を巡る対立が激化していた。 慰安婦問題日韓合意に基づく慰安婦財団の韓国による解散(2018年11月)、韓国海軍艦艇による自衛隊機への火器管制レーダー照射(同年12月)、文喜相韓国国会議長による天皇明仁(当時)への謝罪要求(2019年2月)[6]などがあり、すでに対立は深刻化していた。
徴用工訴訟問題で韓国大法院が日本企業に賠償を命ずる判決を下したこと(2018年10月)に対し、日本は日韓請求権協定を一方的に反故にされたとし、日韓関係の「法的基盤を根本から覆すもの」と強く反発した。日本は日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の設置を求めたが、韓国はこれを無視した[7]。
時系列
- 2019年(令和元年)
- 7月1日 - 日本の経済産業省は、半導体材料3品目(レジスト、高純度フッ化水素、フッ化ポリイミド)について包括的輸出許可から個別輸出許可へ切り替えると発表。同時に、輸出管理上のカテゴリーにおいて韓国をホワイト国(旧名称、現:グループA)から除外する件について、パブリックコメントの受付を開始した。事実上はホワイト国からの除外の予告[8]。
- 7月3日 - 韓国政府は半導体材料や装置の国産化支援に毎年1兆ウォンの予算を充てる構想を発表。
- 7月4日 - 日本の個別輸出許可への切り替えが発効。
- 7月24日 - 世界貿易機関(WTO)の一般理事会で、日本が実施した半導体材料の対韓輸出規制が議題になったが、日韓以外からの発言は無かった[9]。メディアの取材に対して複数の国が、複雑な歴史が絡む日韓の対立に巻き込まれることは望んでおらず[9]、2国間で対処すべき問題だとコメントした[10]。
- 8月1日 - 日本の河野太郎外相と韓国の康京和外相がタイのバンコクで会談し、韓国側はGSOMIAに影響を与えることを示唆した[11]。
- 8月2日 - 日本政府は、韓国をホワイト国から除外する旨を定めた輸出貿易管理令の一部を改正する政令を閣議決定した[12]。また、「ホワイト国」の名称を廃止し、新たにグループ制に切り替えると発表した。韓国は「グループB」に割り当てられた[13]。同日、韓国の洪楠基経済副首相兼企画財政部長官は日本を韓国の「ホワイト国」から外すと示唆した[14]。
- 8月7日 - 日本の「輸出貿易管理令の一部を改正する政令」が公布。
- 8月8日 - 韓国環境部は、「火力発電所から排出されセメントの材料となる石炭灰の輸入にあたって、従来は一部に限っていた放射線検査を全てに義務付ける」と発表[15]。
- 8月12日 - 韓国政府は韓国の「ホワイト国」から日本を除外する方針を発表[16]。
- 8月22日 - 韓国大統領府が国家安全保障会議(NSC)の常任委員会を開き、日韓で防衛秘密を共有する日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)の破棄を決定[17]。
- 8月23日 - 韓国外交部が長嶺安政・駐韓大使を呼び出し、GSOMIA破棄を通告[18]。
- 8月28日午前0時 - 日本の「輸出貿易管理令の一部を改正する政令」が発効[19]。
- 9月11日 - 日本による半導体原料3品目の輸出厳格化を不当として、韓国が日本をWTOへ提訴[20]。
- 9月18日 - 韓国が「ホワイト国」から日本を正式に除外[21]。
- 11月23日 - 8月22日の日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)破棄決定により、午前0時にGSOMIAが効力を失う(予定)。
争点
半導体製品を主力とする2010年代の韓国の製造業において、日本から輸入した素材・部品を韓国が完成品に組み立てて世界に輸出するという、日韓の分業体制が確立していた[22]。ゆえに2018年の韓国の対日貿易赤字は240億ドルと国別では最大であり、2019年1〜6月の対日赤字のうち電子部品が20億ドルを超えていた[22]。
半導体原料の輸出管理
2019年7月1日に日本の経済産業省は、韓国向けに輸出される軍事転用可能な一部の半導体関連物品について、企業ごとに一定期間包括的に許可する方式から、契約ごとに個別審査する方式へ切り替えると発表した[23]。品目は、半導体の基板に塗る感光材の「レジスト」、半導体の洗浄に使う「フッ化水素」、ディスプレイパネルの素材となる「フッ素化ポリイミド」の3品目が指定された[23]。通常ならば個別輸出許可の手続きには90日程度かかり[23]、これは半導体製品の輸出が経済を支える韓国にとって、日本からの円滑な資材調達が困難になることを意味した[24]。特に上記3品目は日本企業のシェアが大きく、韓国企業に少なくない影響が見込まれた[25]。
日本政府はこの措置について、あくまで日本国内における制度運用の問題であり、韓国と協議する理由は無いとの立場を示した[26]。また菅義偉内閣官房長官は、この措置は「(徴用工問題への)対抗措置ではない」としつつ「韓国との信頼関係が損なわれ、輸出管理に取り組むことが困難になった」と一定の因果関係は認めた[25]。そして8月8日に、規制後初めて3品目の一部について、審査により軍事転用の恐れなしとして輸出許可を出し、「正当な取引については恣意的な運用をせず許可を出している」と説明した[23]。
韓国にとって7月1日の日本の発表は、文大統領も出席したG20大阪サミットの直後だったため、寝耳に水に近いものだった[27]。韓国は日本の措置を、徴用工問題への報復として日本から仕掛けてきた経済戦争と捉え[28]、日本に協議と撤回を求めた[26]。7月3日に韓国政府は、半導体材料や装置の国産化支援に毎年1兆ウォンの予算を充てる構想を発表した[29]。そして7月24日に世界貿易機関(WTO)の一般理事会でこの問題を提起し、日本の措置は徴用工問題への報復という外交的な下心によるもので、WTOの存在意義を損ね世界経済に混乱をもたらすと訴え[9]、9月11日付で正式にWTOへ日本を提訴した[20]。ARFやRCEPの会合においても日本の措置を非難した[30]。
ホワイト国からの除外
2019年8月2日に日本政府は、輸出管理上のキャッチオール規制(補完的輸出規制)における優遇措置、いわゆる「ホワイト国」(のち「グループA」へ改称)から韓国を除外する旨を閣議決定し、政令改正を経て28日より施行するとした。(韓国はアジアで唯一のホワイト国だった。)これにより、韓国向けの輸出管理は包括許可から個別許可へ戻されることになり、対象品目(最大で1000品目程度[10])になった場合は審査に最長で2〜3か月かかることになった[24]。
日本側の主張としては、ホワイト国からの除外はあくまで「手続きの見直し」であって「輸出規制」ではなく[31]、安全保障上の見地から日本国内での制度運用を見直すものに過ぎないというものである[32](韓国が北朝鮮向けに無許可で物資支援を行ったり、日本からの輸出品の横流しをしているのではないかとの疑念が、日本では生じていた[31])。また日本から求めた輸出管理に関する協議を、韓国は3年にわたって拒んでいた[31]。8月2日、菅官房長官は、今回の措置は「経済報復」ではないと主張し[11]、外務省幹部も「通常の手続きに戻すだけなのに(韓国は)禁輸のように騒いでいる」と主張した[11]。
韓国では、8月2日午前の日本の発表を受け、午後には文大統領が閣議を主宰し、テレビの生中継で「極めて無謀な決定」「状況を悪化させた責任は日本政府にある。今後起きる事態の責任も全面的に日本政府にあることを警告する」[33]「日本の不当な経済報復措置に対する相応の措置を断固としてとっていく」[27]と日本を強く非難した。同日、洪楠基経済副首相兼企画財政部長官は、日本を韓国版「ホワイト国」から外すと発表し、WTOへ日本を提訴する準備を進めると明かした[14]。8月5日に韓国政府は、半導体、ディスプレイ、自動車、電機・電子、機械・金属、基礎化学の6大分野から100品目を戦略品目に指定し、それら主要な部品・素材の国産化に向けて7年間で7兆8000億ウォンをあてると発表し、特に日本が輸出管理を厳格化した半導体素材3品目を含む重要20品目については1年以内に供給を安定化させ「脱日本依存」を図るとした[22]。9月18日には韓国側も「国際的な輸出管理体制の基本原則に反して制度を運用する国とは協調が難しい」として、輸出手続きを簡略化できる優遇国のリストから日本を正式に外し、対日輸出は原則として包括許可から個別許可へ切り替えられた[21]。
日韓GSOMIA協定の破棄
2016年より日韓初の防衛協力協定[34]である軍事情報包括保護協定・GSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)を締結し、日韓は防衛当局間での情報共有を図ってきたが、自動更新を迎える8月24日以前に韓国が日本への対抗措置として破棄を通告した場合は、北朝鮮の核・ミサイルへの対応にあたり、米国も含め足並みの乱れが生じると危惧された[7]。
韓国の徐薫国家情報院長は8月1日に「GSOMIAは内容上の実益も重要であり、象徴的意味も重要だ」と破棄に否定的な考えを示し[35]、盧英敏大統領府秘書室長も8月6日に、アメリカの意向も踏まえると破棄には慎重にならざるを得ないとの立場を示した[36]。
韓国大統領府(青瓦台)は2019年8月22日、国家安全保障会議(NSC)の常任委員会を開き、日韓で防衛秘密を共有する日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた。輸出管理を厳しくした日本への反発から韓国政府内では破棄論が強まっていた[17]。破棄決定により、同年11月23日午前0時に効力を失う予定となる。
GSOMIA破棄に対し、日本政府は外交ルートで抗議した[37]。また、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は、「我々は韓国の決定に失望している」と述べた[38]。これに対して、韓国の李洛淵首相は8月26日、GSOMIA破棄決定について、「日本が根拠も示さず、韓国を安全保障上信頼できない国であるかのようにレッテルを貼り、(輸出手続きを簡略化できる)輸出優遇国のリストから韓国を外したためだ」と説明。「日本の不当な措置が元に戻れば、わが政府もGSOMIAを再検討することが望ましい」と述べた[39]。
日本世論の反応
日本での事前のパブリックコメントでは9割という圧倒的多数が韓国のホワイト国除外を支持し[11]、除外発表直後に産経新聞・FNNが共同で行った世論調査では除外「支持」が67.6%にのぼり、「不支持」の19.4%を大きく上回った[40]。
読売新聞が7月22日~23日に行った世論調査では、対韓輸出管理厳格化への「支持」は71%、「不支持」が17%と日本政府の対応を多数の日本国民が支持したとの結果が伝えられた[41]。
韓国世論の反応
韓国市民の間には、日本製品不買運動が盛り上がりを見せたが、日本製品の韓国向け輸出は全体の数パーセントであり、日本製品不買運動による日本側への影響は限定的と見られている[33]。具体的な例として以下のようなものが挙げられる。
- 韓国のネット上では「ノーノージャパン」という日本産ビール、ユニクロの衣料品などの日本製品及びその代替物の韓国・他国製品を掲載するサイトが登場し、アクセス数が持続的に増大していた[42]。
- 韓国の化粧品会社韓国コルマー(日本コルマーの現地子会社)の会長による親日・文在寅批判動画の放映[43]やDHCの子会社が制作するネット番組「虎ノ門ニュース」の出演者による嫌韓発言[44]が韓国国内で物議を醸したため、当該企業の製品への不買運動が激しくなり、韓国コルマー、DHCコリアの代表が謝罪した。
- 7月末、ソウルの西大門刑務所で韓国の地方自治体の首長らによる日本の措置に反対する糾弾大会が開かれた。日本の措置に対応する連合体も発足し、約100の地方自治体では日本製品の購入や公務員の訪日中断を掲げた。うちソウル中区では徐良鎬区長の指示で、8月6日に同区内に1000本以上の「ノージャパン」の旗を設置したが、明洞など観光客を相手に商売をしている商店主や、「韓国が好きで訪れた日本人への礼儀に欠ける」と批判が殺到したため同日中に撤去された。江南区では区内の万国旗から日章旗を撤去された。西大門区や水原市では役所内に日本製事務用品の回収箱が設置された。釜山市では日本の友好都市との行政交流の中断が発表された[45]。
- 韓国から日本への旅行のキャンセルが相次ぎ、格安航空会社を中心に日韓路線の運休、減便が続出し、対馬や鳥取など韓国人観光客を多数受け入れてきた地域では影響が出た[33]。
- 韓国の一般民衆の間では2020年東京オリンピックをボイコットする動きが見られた。与党・共に民主党の一部からもオリンピック選手への福島県産農水産物の提供などを理由として日本を批判した[46]。
韓国国内では「安倍政権による経済侵略」の見方が強く、「No安倍」というプラカードを掲げるデモが行われた[47]
2019年7月27日からは、ソウル市中心部の広場でローソクデモが行われ、初日には5000人が集まった。これは親北朝鮮系とされる学生団体・韓国大学生進歩連合が主催し、民主労総や全教組など、かつて朴槿恵政権弾劾を主導した596団体が加わった[33]。
韓国による石炭灰の輸入検査措置の強化に対して、韓国国内のセメント業界・建設業界を中心に反対意見が上がった。韓国セメント業界での日本産石炭灰への依存度が40%であるため、1週間分の在庫を使い切った後、生産中断の状態に陥る可能性が高いと見られる[48]。
脚注
注釈
出典
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