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[[ファイル:Gifujyou5834.JPG|thumb|250px|<center>様々な笠]]
{{出典の明記|date=2019-03-27}}
{{Anchors|広重_四日市_画像}}[[ファイル:Tokaido43 Yokkaichi.jpg|thumb|250px|[[歌川広重]] [[名所絵|名所]][[浮世絵]][[連作|揃物]]『[[東海道五十三次 (浮世絵)|東海道五十三次]]之内 [[四日市宿|四日市]] 三重川』
'''笠'''(かさ)は、[[雨]]や[[雪]]、[[直射日光]]を防ぐために[[頭]]に被る道具。'''被り笠'''(かぶりがさ)ともいう。また、「[[ランプ (照明器具)|ランプ]]の笠」などのように笠に形状が似る物にも用いられる。数える単位は枚、もしくは蓋(がい)。
----
2人の旅人が描かれているが、右にいる蓑笠({{small|みのかさ。[[蓑]]と笠。また、それらを着用した姿}})の男は風に逆らって歩き、左の男は強風で飛ばされた笠を慌てて追いかけている。]]

'''笠'''(かさ)は、[[被り物]]の一種。[[雨]]や[[雪]]、[[直射日光]]などが当たらないように[[頭]]に被る[[道具]]で<ref name="Kb_大辞泉">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/笠 |title=笠 |work=[[小学館]]『デジタル[[大辞泉]]』 |publisher=[[コトバンク]] |accessdate=2019-04-25 }}</ref><ref name="Kb_Brit">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/笠 |title=笠 |work=『[[ブリタニカ国際大百科事典]] 小項目事典』 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref><ref name="Kb_MyPedia">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/笠 |title=笠 |work=[[平凡社]]『[[マイペディア]]』 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref><ref name="Kb_世百典">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/笠 |title=笠 |work=平凡社『[[世界大百科事典]]』第2版 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref><ref name="Kb_Nipponica">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/笠 |title=笠 |work=小学館『[[日本大百科全書]]:ニッポニカ』 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref>、外出の際に顔を隠すのに用いることもある{{r|Kb_Brit}}{{r|Kb_世百典}}。[[東アジア]]および[[東南アジア]]で古くから広く用いられている{{r|Kb_世百典}}{{r|Kb_Nipponica}}。[[傘]](かさ。差[[傘]]/差し傘、手傘)と区別する意をもって'''[[#被り笠|被り笠]]'''(かぶりがさ)ともいう{{r|Kb_大辞泉}}{{r|Kb_Brit}}。

{{Anchors|被り笠_助数詞}}[[助数詞]]は、蓋(かい<ref name="Kb_精選国語">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/蓋 |title=蓋 |work=小学館『精選版 日本国語大辞典』 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref><ref name="皆知帳_数-か">{{Cite web |url=https://www.benricho.org/kazu/ka.html |title=ものの数え方・助数詞 =か= |work=みんなの知識 ちょっと便利帳(ウェブサイト) |publisher=みんなの知識委員会 |accessdate=2019-04-25 }}</ref>、がい。※上からかぶせる覆いや[[蓋]]を数える。笠または笠状のものを数える{{r|Kb_精選国語}}<ref name="目録規則2018">{{Cite web |url=https://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/mokuroku/ncr2018/ncr2018_b2_201812.pdf |title=『日本目録規則 2018年版』付録B.2 |format=PDF |work=公式ウェブサイト |publisher=[[日本図書館協会]] |accessdate=2019-04-25 }}</ref>)<ref name="d大辞林_数-か">{{Cite web |url=http://daijirin.dual-d.net/extra/jyosusi.html |title=個々の助数詞の用法 - 言葉の世界1-6 |work=デュアル大辞林 第3版 特別ページ(公式ウェブサイト) |publisher=[[三省堂]] |accessdate=2019-04-25 }}</ref><ref name="Key事典">{{Cite web |url=http://www.7key.jp/data/bunpou/zyosuushi_k.html |title=カ行からはじまるものの数え方 |date=2007年5月11日更新 |work=Key:雑学事典(ウェブサイト) |publisher= |accessdate=2019-04-25 }}</ref>{{r|皆知帳_数-か}}、笠(りゅう){{r|目録規則2018}}{{r|Key事典}}、頭(かしら。※[[文化財]]に限る){{r|皆知帳_数-か}}、枚(まい){{r|d大辞林_数-か}}{{r|Key事典}}{{r|皆知帳_数-か}}。
* 第2義としては、被り物の「笠」のような形状の物を、被り物の笠に[[転義法|譬えて]]いう。「[[電灯]]の笠」「[[ランプ (照明器具)|ランプ]]の笠」など。{{r|Kb_大辞泉}}
* 第3義としては、紋所の名の一つ。[[家紋]]の一つ。'''[[#笠紋|笠紋]]'''ともいう。笠の図案の助数詞は蓋(かい){{r|皆知帳_数-か}}(例:一蓋笠、二蓋笠)<ref group="*">「一階笠」「二階笠」の「階」は[[当て字]]。</ref>。{{r|Kb_大辞泉}}
* 第4義としては、[[日本語]]の[[姓氏]]の一つ<ref name="Kb_大辞林">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/笠 |title=笠 |work=[[三省堂]]『[[大辞林]]』第3版 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref>。
※本項では、被り物の笠を主として解説し、その後に、[[#笠紋|笠紋]]など(※現状では笠紋のみ)について解説する。


== 概要 ==
== 概要 ==
笠の材質は檜板・[[竹]]・[[藺草]]・[[スゲ属|菅]]製で、'''塗笠'''は、檜や杉の板材を薄く剥いだ「へぎ板」に[[和紙]]を貼って[[漆]]を塗って作成した物で、[[平安時代]]末期には主に老女が使用し、[[江戸時代]]初期には若い女性が使用した。
笠の材質は檜板・[[竹]]・[[藺草]]・[[スゲ属|菅]]製で、'''塗笠'''は、檜や杉の板材を薄く剥いだ「へぎ板」に[[和紙]]を貼って[[漆]]を塗って作成した物で、[[平安時代]]末期には主に老女が使用し、[[江戸時代]]初期には若い女性が使用した。


一方、'''陣笠'''は、竹で[[網代]]を組んで和紙を貼り、墨で染めて[[柿渋]]を塗って作成したである<ref>[[加藤曳尾庵|加藤玄悦]]『[[我衣]]』による。</ref>{{要ページ番号|date=2019-03-27}}。刃や飛来する矢などから身を守る防具であり、手に持って[[盾]]として使用することもあった。
一方、'''陣笠'''は、竹で[[網代]]を組んで和紙を貼り、墨で染めて[[柿渋]]を塗って作成したものである<ref name="Kato_我衣">[[加藤曳尾庵|加藤玄悦]]『[[我衣]]』</ref>{{要ページ番号|date=2019-03-27}}。刃や飛来する矢などから身を守る防具であり、手に持って[[盾]]として使用することもあった。


また、それとは別に[[戦国時代 (日本)|戦国時代]]から[[足軽]]・[[雑兵]]などの農民兵に貸与・支給されていた[[防具]]・代用[[兜]]。はじめは煮締めた皮革の裏側に「[[筋金]](すじがね)」(または骨板金:ほねいたがね、骨板:ほねいた、骨金:ほねかね)と呼ばれる[[鋼|鍛鉄]]製の骨板を渡し漆をかけた陣笠を使っていたが、後に総鍛鉄製のものに取って代わられた。鍛鉄製板を切り抜き、笠状に整形して防水用に漆をかけるだけの工程のため、通常の[[兜]]を作るよりもはるかに手間と費用がかからない。
また、それとは別に[[戦国時代 (日本)|戦国時代]]から[[足軽]]・[[雑兵]]などの農民兵に貸与・支給されていた[[防具]]・代用[[兜]]。はじめは煮締めた皮革の裏側に「[[筋金]](すじがね)」(または骨板金:ほねいたがね、骨板:ほねいた、骨金:ほねかね)と呼ばれる[[鋼|鍛鉄]]製の骨板を渡し漆をかけた陣笠を使っていたが、後に総鍛鉄製のものに取って代わられた。鍛鉄製板を切り抜き、笠状に整形して防水用に漆をかけるだけの工程のため、通常の[[兜]]を作るよりもはるかに手間と費用がかからない。
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「[[具足剣術]]」と呼ばれる[[鎧]]を着込んで行う剣術の一部には手盾として使われる使用法も残っている。『[[海国兵談]]』には、牛皮を用いて笠の形にして、手の甲・手首を守る形の手盾として、「牛皮楯」の記述・絵図があり、オランダ・中国が用いた戦法として紹介されている(足軽の持物でも手軽に作れる)。
「[[具足剣術]]」と呼ばれる[[鎧]]を着込んで行う剣術の一部には手盾として使われる使用法も残っている。『[[海国兵談]]』には、牛皮を用いて笠の形にして、手の甲・手首を守る形の手盾として、「牛皮楯」の記述・絵図があり、オランダ・中国が用いた戦法として紹介されている(足軽の持物でも手軽に作れる)。


防具のほか、野営での調理の際にはよく洗った[[鋼鉄|鍛鉄]]製陣笠を大鍋として用い、[[味噌|味噌玉]]を溶かして[[芋がら縄]]など食材を入れ、3 - 4人分の[[陣中食]](この場合は[[味噌汁]]および[[ねこまんま|汁かけ飯]]・または味噌汁と一緒に穀類を煮込んだ[[雑炊]])を用意するといった使われ方もした<ref>[[笹間良彦]]著:柏書房刊 『図説 日本合戦武具事典』、『図録 日本の甲冑武具事典』、雄山閣刊 『図解 日本甲冑事典』による。</ref>{{要ページ番号|date=2019-03-27}}。
防具のほか、野営での調理の際にはよく洗った[[鋼鉄|鍛鉄]]製陣笠を大鍋として用い、[[味噌|味噌玉]]を溶かして[[芋がら縄]]など食材を入れ、3~4人分の[[陣中食]](この場合は[[味噌汁]]および[[ねこまんま|汁かけ飯]]・または味噌汁と一緒に穀類を煮込んだ[[雑炊]])を用意するといった使われ方もした<ref name="Sasama_2004">[[笹間良彦]]『図説 日本合戦武具事典』[[柏書房]]2004年。</ref><ref name="Sasama_1981">笹間良彦『図録 日本の甲冑武具事典』柏書房1981年。</ref><ref name="Sasama_1988">笹間良彦『図解 日本甲冑事典』[[雄山閣出版]]、1988年。</ref>{{要ページ番号|date=2019-03-27}}。


== 笠の種類 ==
== 種類 ==
江戸時代後期の[[合巻]]作者・[[柳亭種彦]]は、[[随筆]]『柳亭筆記』の中で豊富な[[引用]]文献を付しながら種々の笠を解説している<ref>日本随筆大成編輯部編、柳亭種彦『柳亭筆記』[[吉川弘文館]](日本随筆大成 巻2)、1927年、717-724頁。</ref>。
* 綾藺笠
* 塗笠
* 陣笠
* 車笠<ref>『広辞苑 第六版』 [[岩波書店]]にも記載されている。</ref> - 陣笠の一。[[戦国時代 (日本)|戦国期]]に[[上杉謙信]]が考案したとされる鉄笠<ref>NHK Eテレ系列の番組『[[先人たちの底力 知恵泉]]』「バラバラな組織をまとめるには?「上杉謙信」」の番組内説明を一部引用。</ref>{{出典無効|date=2019-03-27}}で、頭頂の内側に車輪がついており、[[鉄砲]]玉が当たると、笠が回転し、受け流す仕組みとなっており、兜と同様、何枚かの板金を重ねて鋲でとめる構造をしている<!-- 同・知恵泉の番組内映像より -->。
* 一文字笠 - [[武士]]が旅や[[大名行列]]をする時にかぶった、殿中とも呼ぶ。または、円形に編んで二つ折ると頂が一の文字のように平らになる、[[門付]]の女芸人らが踊りなどに用いたもの。
* 編み笠
* 深編み笠 - [[天蓋]]
* 菅笠(すげがさ) - [[富山県]][[高岡市]]の福岡地区(旧 [[福岡町 (富山県)|福岡町]])は古くより菅笠の一大生産地で、現在も全国の約90%のシェアを誇り、菅笠の製作技術を綿々と伝承してきた。これにより越中福岡の菅笠製作技術保存会が「越中福岡の菅笠製作技術」として[[2009年]][[3月11日]]に国の[[重要無形民俗文化財]]の指定を受け、[[2017年]]11月30日には「越中福岡の菅笠」として、[[経済産業大臣指定伝統的工芸品|国の伝統的工芸品]]に指定された。
* [[花笠]]
* 市女笠
* 柳生笠 - [[家紋]]「笠紋」の一種。[[柳生氏]]の替紋の一つで二階笠や二蓋笠とも呼ばれる。
* 鳥追笠
* 網代笠 - 細く削った竹を編んだ笠。僧侶や遍路者などが使用する。
* 浪人笠
* 托鉢笠
* [[三度笠]]
* 饅頭笠


=== 製法で区別 ===
なお、[[柳亭種彦]]の随筆「柳亭筆記」の中に、豊富な引用文献を付して種々の笠を解説した文がある<ref>柳亭種彦「柳亭筆記」吉川弘文館(日本随筆大成 巻2)、[[1927年]]、717-724頁</ref>。
* {{Anchors|編笠|編み笠}}'''編笠'''/'''編み笠'''(あみがさ)
:: 藺草({{small|[[イグサ|いぐさ]]}})、[[稲藁]]({{small|いねわら}})、真菰({{small|[[マコモ|まこも]]}})、木の皮、竹の皮などの茎に材を取り、編んで作る被り笠<ref name="Kb_Nipponica_編笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/編笠 |title=編笠 |work=小学館『[[日本大百科全書]]:ニッポニカ』 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref><ref name="Kb_精選国語_編笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/編笠 |title=編笠 |work=小学館『精選版 日本国語大辞典』 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref>。形態は、材質と用途を基準にして、[[円錐]]形、円錐台形、[[帽子]]形、[[円筒]]形、[[漏斗]]形、二つ折形など、6型に分類される{{r|Kb_Nipponica_編笠}}。
:: 初出は『新撰六帖』(寛元2年〈1244年〉頃に成立)巻5 に見られる記述「ますらをのすげのあみがさ打ちたれてめをもあはせず人の成行く ─[[藤原家良]]」の「すげのあみがさ(菅の編笠)」{{r|Kb_精選国語_編笠}}。
:: [[季語]]としての「'''編笠'''」は、[[夏]]の季語(三夏の季語)<ref name="Kigosai_編笠">{{Cite web |url=http://kigosai.sub.jp/kigo500d/481.html |title=編笠 |work=きごさい歳時記(公式ウェブサイト) |publisher=NPO法人「きごさい」(季語と歳時記の会) |accessdate=2019-04-25 }}</ref>。「編笠」を親季語とする子季語には、'''[[#台笠|台笠]]'''(だいがさ)、'''[[#菅笠|菅笠]]'''(すげがさ、すががさ)、'''[[#藺笠|藺笠]]'''(いがさ)、'''[[#檜笠|檜笠]]'''(ひがさ、ひのきがさ)、'''[[#熊谷笠|熊谷笠]]'''(くまがいがさ、くまがえがさ)、'''[[#網代笠|網代笠]]'''(あじろがさ)、'''[[#市女笠|市女笠]]'''(いちめがさ)がある{{r|Kigosai_編笠}}。
* '''{{Anchor|組笠}}'''(くみがさ)
::
* '''{{Anchor|縫笠}}'''(ぬいがさ)
::
* {{Anchors|押笠}}'''押笠'''/'''押え笠'''(おさえがさ)
:: 竹皮や[[ビロウ]]の葉などを竹の骨組の上からかぶせ、円錐形・帽子形・半円球形・褄折形・桔梗形に押さえ止めて作る笠{{r|Kb_Nipponica}}。
* {{Anchors|張笠|張り笠}}'''張笠'''/'''張り笠'''(はりがさ)
:: [[竹]]の骨組の上に紙を幾重にも張り付け、仕上げに渋([[柿渋]])を引いた笠{{r|Kb_Nipponica}}。また、[[油紙]]を張った笠{{r|Kb_Nipponica}}。
* {{Anchors|塗笠|塗り笠}}'''塗笠'''/'''塗り笠'''(ぬりがさ)
:: 油・渋([[柿渋]])・[[漆]]のいずれかを塗った笠{{r|Kb_Nipponica}}。
* {{Anchors|綾藺笠|綾笠}}'''綾藺笠'''(あやいがさ)<ref name="Kb_綾藺笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/綾藺笠 |title=綾藺笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}■図説もあり。</ref>
:: 藺草({{small|[[イグサ|いぐさ]]}})を綾織りに編み(※綾の組織にならって編み)、裏に[[絹]]布を張って作った被り笠{{r|Kb_綾藺笠}}。中央に大きな巾子({{small|こじ}}。[[髻]]<sup>もとどり</sup>を入れて固定できるようになっている突出部)がある{{r|Kb_綾藺笠}}。[[平安時代]]以降、[[武士]]が[[狩猟]]・遠行・[[流鏑馬]]などの際に被った{{r|Kb_綾藺笠}}。他に、田楽法師([[田楽]]を踊る[[法師]])などもこれを使った{{r|Kb_綾藺笠}}。'''綾笠'''(あやがさ)ともいう{{r|Kb_綾藺笠}}。初出は『[[今昔物語集]]』(保安元年〈1120年〉頃成立か)巻第25 に見られる記述「綾藺笠を著て (...略...) 胡簶<sup>やなぐひ</sup>を負て」の「綾藺笠({{small|あやゐかさ}})」{{r|Kb_綾藺笠}}。


{{Anchors|托鉢笠_画像}}[[ファイル:Japanese_buddhist_monk_hat_by_Arashiyama_cut.jpg|thumb|160px|網代笠を被る托鉢僧/[[#托鉢笠|托鉢笠]]としての網代笠。]]
== ギャラリー ==
{{Anchors|遍路笠_画像}}[[ファイル:TaroTokyo-2012-HenroGasa-IMG 0437.jpg|thumb|160px|[[#遍路笠|遍路笠]]としての網代笠]]
<gallery>

画像:Gifujyou5834.JPG|笠
* '''{{Anchor|網代笠}}'''(あじろがさ)
画像:A begging criminal-J. M. W. Silver.jpg|「深編み笠」の[[虚無僧]]
:: {{Main|網代編}}
画像:Jidai Matsuri 2009 348.jpg|市女笠
:: 網代編({{small|あじろあみ}})の組笠<ref name="Kb_網代笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/網代笠 |title=網代笠 |work= |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref>。編み方に由来する名称であり、素材を問わないが、実際には[[竹ひご]]を主材としたものが主流。そのため、辞書類は「竹ひごを網代に編んだ笠」などと説明するものが多い。今や使用者のほとんどは[[托鉢]][[僧]]と[[遍路]]者<!--※現状「遍路」は「四国八十八箇所」にリダイレクトされ、「遍路=四国霊場の遍路」という誤解の生む不適切状態にあるのが気になる…。-->であるが、[[戦前]]([[第二次世界大戦]]前)までは[[農家]]などでも広く用いられていた{{r|Kb_網代笠}}。托鉢僧がこれを用いるのには、[[修行]]中の身であるがゆえ、顔を隠して外の世界と関係を絶つという意味合いがあるという。また、雨水を防ぎながらも通気性が良いので{{r|Kb_網代笠}}、強い日差しや雨風に曝される過酷な環境で大いに実用的でもある。防水性と防腐性をさらに高めるために[[柿渋]]引きしたものも多く、そういったものは[[飴色]]をしている。なお、右の画像の網代笠は、遍路笠のほうは編み材の持つ自然色そのままで柿渋は引かれていない。托鉢笠のほうは柿渋が引かれているかも知れない。■右列に2画像あり([[#托鉢笠_画像|網代笠で托鉢笠]]、[[#遍路笠_画像|網代笠で遍路笠]])。
画像:Kochi Yosakoi Matsuri 2006 3.jpg|鳥追笠
:: [[季語]]としての「'''網代笠'''」は、夏の季語(三夏の季語)。「[[#編笠|編笠]]」を親季語とする子季語の一つ{{r|Kigosai_編笠}}。
画像:Japanese_buddhist_monk_hat_by_Arashiyama_cut.jpg|僧侶と網代笠

画像:Awaod001.jpg|[[阿波踊り]]
=== 材料で区別 ===
画像:Return of the Samurai 14.JPG|笠 (陣笠、じんがさ)
* '''{{Anchor|藺笠}}'''(いがさ)
</gallery>
:: 藺({{small|[[イグサ|い]]〈いぐさ〉}})の茎で編んだ被り笠<ref name="Kb_藺笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/藺笠 |title=藺笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}■図説もあり。</ref>。日除け用{{r|Kb_藺笠}}。いおりがさ{{r|Kb_藺笠}}。初出は『[[延喜式]]』(延長5年〈927年〉成立){{r|Kb_藺笠}}。
:: [[季語]]としての「'''藺笠'''」は、夏の季語(三夏の季語)。「[[#編笠|編笠]]」を親季語とする子季語の一つ{{r|Kigosai_編笠}}。
* '''{{Anchor|菅笠}}'''(すげがさ、すががさ)
:: 菅({{small|[[スゲ属|すげ]]、すが}})の葉を編んで作った被り笠<ref name="Kb_菅笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/菅笠 |title=菅笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}■図説もあり。</ref>。'''菅の笠'''(すげのかさ)ともいう{{r|Kb_菅笠}}。初出は『[[万葉集]]』で{{r|Kb_菅笠}}、巻第11-2819、[[笠縫邑]]にゆかりの菅笠の歌「おしてる 難波管笠 置き古し 後は誰が着む 笠ならなくに(※解釈例:照り渡る[[難波]]の菅で作った笠を着けもせずに置いて古びさせてしまった。後で誰かが被る笠というのでもないのに)」 や{{r|Kb_菅笠}}、巻第16-3875「すくなきよ 道にあはさば いろげせる 菅笠小笠 吾がうなげる 珠の七つを 取替へも」に、「菅笠({{small|すがかさ}})」の名がある{{r|Kb_菅笠}}。
:: [[富山県]][[高岡市]]の福岡地区(旧 [[福岡町 (富山県)|福岡町]])は古くより菅笠の一大生産地で、現在も全国の約90%のシェアを誇り、菅笠の製作技術を綿々と伝承してきた。これにより越中福岡の菅笠製作技術保存会が「越中福岡の菅笠製作技術」として[[2009年]][[3月11日]]に国の[[重要無形民俗文化財]]の指定を受け、[[2017年]]11月30日には「越中福岡の菅笠」として、[[経済産業大臣指定伝統的工芸品|国の伝統的工芸品]]に指定された。
:: [[季語]]としての「'''菅笠'''」は、夏の季語(三夏の季語)。「[[#編笠|編笠]]」を親季語とする子季語の一つ{{r|Kigosai_編笠}}。
* {{Anchors|檜笠}}'''檜笠'''/'''桧笠'''(ひがさ、ひのきがさ)<ref name="Kb_檜笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/檜笠 |title=檜笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref>
:: 檜({{small|[[ヒノキ|ひのき]]}})、杉({{small|[[スギ|すぎ]]}})、松({{small|[[マツ|まつ]]}})、櫟({{small|[[イチイ|いちい]]}})などで作った[[経木]]を材に取った網代笠{{r|Kb_檜笠}}。古くは[[大和国]][[大峰山]]の[[修験者]]がもっぱら用いたことから、'''行者笠'''(ぎょうじゃがさ)ともいった{{r|Kb_檜笠}}。初出は[[鴨長明]]の[[仏教]][[説話]]集『[[発心集]]』巻第7(建保4年〈1216年〉頃か)に見られる記述「かたかた破れうせたる檜笠をきたり」か{{r|Kb_檜笠}}。
:: [[季語]]としての「'''檜笠'''」は、夏の季語(三夏の季語)。「[[#編笠|編笠]]」を親季語とする子季語の一つ{{r|Kigosai_編笠}}。
* '''{{Anchor|竹笠}}'''(たけがさ)
:: [[竹]]や[[竹ひご]]で作った網代笠<ref name="Kb_竹笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/竹笠 |title=竹笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref>。初出は[[橘成季]]編纂『[[古今著聞集]]』(建長6年〈1254年〉成立)巻第12 に所収の歌「しげどうの弓に のやおひて 竹笠をきたりけり」{{r|Kb_竹笠}}。
* {{Anchors|筍笠|たけのこ笠}}'''筍笠'''/'''たけのこ笠'''(たけのこがさ)<ref name="Kb_筍笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/筍笠 |title=筍笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref>
:: 裂いた[[タケノコ|筍]]の皮を編んで作った被り笠。'''竹皮笠'''/'''竹の皮笠'''(たけのかわがさ)、'''たけかわ'''、'''法性寺笠'''(ほっしょうじがさ)ともいう{{r|Kb_筍笠}}。初出は[[京大]]本『湯山聯句鈔』(永正元年〈1504年〉刊)に見られる記述「雨の時の具は たけのこがさであるぞ」{{r|Kb_筍笠}}。
* {{Anchors|葛笠|葛籠笠|水口笠|葛小笠|葛帽子}}'''葛笠'''/'''葛籠笠'''(つづらがさ)
:: 葛藤({{small|[[オオツヅラフジ|つづらふじ]]}})で作った網代笠<ref name="Kb_葛笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/葛笠 |title=葛笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref>。[[#市女笠|市女笠]]に似ているが、中の峰がやや低い{{r|Kb_葛笠}}。多くは[[漆]]塗りが施されていた{{r|Kb_葛笠}}。[[五街道]]が整備された[[江戸時代]]初頭から[[東海道五十三次]]の50番目の宿場町・[[水口宿]]界隈([[近江国]][[甲賀郡]]水口)では旅人を顧客にして[[水口細工]]が隆盛し始めたが、その流れの中から洗練された葛笠が生み出され、'''水口笠'''(みなくちがさ)の名で広く知られるようになった<ref name="Kb_水口細工">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/水口細工 |title=水口細工 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref>{{r|Kb_葛笠}}。水口笠は明暦・天和年間(1655-1684年間)に若い女子の間で流行し{{r|Kb_葛笠}}、のちには風流好みの[[江戸]]の男子までがこれを用いた{{r|Kb_葛笠}}。他に、'''葛小笠'''(つづらおがさ){{r|Kb_葛笠}}、'''葛帽子'''(つづらぼうし)<ref name="Kb_葛帽子">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/葛帽子 |title=葛帽子 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref>ともいう。「葛帽子」の初出は、[[松江重頼]]の[[俳諧]]論書『[[毛吹草]]』(寛永15年〈1638年〉刊)巻第5 所収の句「姫松のつづらほうしや藤の花 ─作者不知」{{r|Kb_葛帽子}}。「葛笠」の初出は、[[井原西鶴]]の[[浮世草子]]『織留』(元禄7年〈1694年〉刊)巻第2 に見られる記述「辻のぬけたる葛笠を被き住みなれたるわが宿の名残」{{r|Kb_葛笠}}。
* '''{{Anchor|藤笠}}'''(ふじがさ)
:: 藤({{small|[[フジ (植物)|ふじ]]}})の[[蔓]]を編んで作った被り笠<ref name="Kb_藤笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/藤笠 |title=藤笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref>。元文年間(1736-1741年)の頃に流行し、若年の武士・医師・僧侶などが多く用いた{{r|Kb_藤笠}}。

=== 用途で区別 ===
* {{Anchors|被り笠|かぶり笠}}'''被り笠'''/'''かぶり笠'''(かぶりがさ)<ref name="Kb_被り笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/被り笠 |title=被り笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}</ref>
:: 頭にかぶって使う笠。柄がついていて手で持って差す[[傘]]を意味する「差傘/差し傘(さしがさ)」「手傘(てがさ)」の[[対義語]]{{r|Kb_大辞泉}}{{r|Kb_Brit}}。
* '''{{Anchor|男笠}}'''(おとこがさ)
:: [[男性]]用の被り笠を総じていう。
* '''{{Anchor|女笠}}'''(おんながさ)
:: [[女性]]用の被り笠を総じていう。[[#花笠|花笠]]の多くは女笠であるが、例外も少なくない。[[#市女笠|市女笠]]も女笠であるが、例外はある。[[#鳥追笠|鳥追笠]]は、当初は性別を問わないものであったが、もっぱら女笠として発展していった。[[#三度笠|三度笠]]は当初は女笠で、それゆえに深く被る作りであったが、男笠に置き換わり、女笠としては廃れていった経緯がある。[[#加賀笠|加賀笠]]は女笠ならではの優美さが特徴となっている。
* '''{{Anchor|雨笠}}'''(あまがさ)
:: [[雨具]]として使う被り笠<ref name="Kb_雨笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/雨笠 |title=雨笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}</ref>。
* '''{{Anchor|陽笠}}'''(ひがさ)
:: 日除けに使う被り笠。
* '''{{Anchor|装飾笠}}'''(そうしょくがさ)
:: 「美しく飾り立てた笠」を意味する、現代の用語。花笠が代表例。
* {{Anchors|花笠}}'''[[花笠]]'''(はながさ)
:: この語の第1義とする辞書と第3義とする辞書があるが、一つには、紙製の[[造花]]を笠本体や垂らした[[竹ひご]]などに付けることで美しく飾りたてた被り笠をいい、祭礼や舞踊などに用いる<ref name="Kb_花笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/花笠 |title=花笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}</ref>。また、そこから大きく発展して多様化した各地の花笠(■当該記事に画像あり)をも指す。

* '''{{Anchor|市女笠}}'''(いちめがさ)
:: {{Main|市女笠}}
{{Anchors|市女笠_画像}}[[ファイル:Jidai Matsuri 2009 348.jpg|thumb|200px|<center>市女笠]]
:: [[平安時代]]以降の代表的な女笠<ref name="Kb_市女笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/市女笠 |title=市女笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}</ref>。市女({{small|いちめ}})とは[[市]]で物を商う女のことで、平安時代に都の東・西市で市人({{small|いちびと}})と共に商取引に従事した<ref name="Kb_世百典_市女">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/市女笠 |title=市女笠 |work=平凡社『[[世界大百科事典]]』第2版 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}</ref>。市女笠は、市女が被る独特な形の晴雨兼用の被り笠を指して呼ぶようになったことに始まる{{r|Kb_世百典_市女}}。平安時代末期の特に[[院政]]期に流行した[[装飾経]]の一つである[[扇面法華経冊子]]の[[下絵]]には、京の町に並ぶ[[間口]]一[[間]]の小さな店で様々な物を売る市女達と、市女と思しき市女笠を被った女性が店に立ち寄る様子が描かれており、最古級で良質の史料として注目されている{{r|Kb_世百典_市女}}。平安時代中期以降には上流階級の女性が外出時に用いるようになり{{r|Kb_市女笠}}、雨天の[[行幸]]供奉で[[公卿]](※全て男性)も用いるようになったが{{r|Kb_市女笠}}、これらの市女笠を指して、深く窄んだ形あるいは[[局]]を語源とする「'''窄笠'''(つぼみがさ)<ref name="Kb_窄笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/窄笠 |title=窄笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}</ref>」「'''壷笠'''(つぼがさ)<ref name="Kb_壷笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/壷笠 |title=壷笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}</ref>」「'''局笠'''(つぼねがさ)<ref name="Kb_局笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/局笠 |title=局笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}</ref>」という名称も生まれた{{r|Kb_市女笠}}。■[[#市女笠_画像|右列に画像あり]]。
:: 被り笠を図案化した[[家紋]]である「[[#笠紋|笠紋]]」は、一部の例外を除いて、多くが市女笠を図案に採り入れたものである。
:: [[季語]]としての「'''市女笠'''」は、夏の季語(三夏の季語)。「[[#編笠|編笠]]」を親季語とする子季語の一つ{{r|Kigosai_編笠}}。

* '''{{Anchor|鳥追笠}}'''(とりおいがさ)
:: {{Main|鳥追笠}}
[[ファイル:Kochi Yosakoi Matsuri 2006 3.jpg|thumb|200px|{{Anchors|鳥追笠_画像}}<center>[[阿波踊り]]の鳥追笠]]
:: 元々は[[田畑]]を[[害鳥|害する鳥]]を追い払う[[東日本]]の正月行事([[小正月]]行事)「[[鳥追い|鳥追]]」で、鳥を追い払う人が被っていた笠である。[[#折編笠|折編笠]]の一種。[[江戸時代]]になると[[三味線]]を弾いて[[新年]]の[[門付]]をする女[[芸人]]である「鳥追女」の[[風俗]]に取り込まれて広まり、芸事を行う女の被り物として定着していった。現代では[[阿波踊り]]の踊子が被ってる笠(■[[#鳥追笠_画像|右列に画像あり]])のイメージが強いが、これも鳥追女の流れを汲んでいる。ただ、現代の阿波踊りの鳥追笠は、正面から見た時の三角形の角度が、江戸時代のものと大して変わりない[[昭和]]前期のものに比べて随分と先鋭になっていて、実用性を離れて見た目の格好良さ・軽やかさに向けた選択のあったことが伺える。また、編み材を束ねた頂の突起部は阿波踊りのものでも昭和前期にはあったが、昭和後期以降のものでは無くなっている。右の画像でも頂にある束ねた部分は突起になっていない。

[[ファイル:Return of the Samurai 14.JPG|thumb|200px|{{Anchors|陣笠_画像}}<center>陣笠]]
[[ファイル:Onnatayu.jpg|thumb|150px|{{Anchors|一文字笠(門付)_画像}}(門付の女芸人の)一文字笠/[[歌川国貞]]の[[浮世絵]][[美人画]]『江戸名所百人美女 葵坂』]]
[[ファイル:Jidai Matsuri 2009 517.jpg|thumb|200px|{{Anchors|一文字笠(殿中)_画像}}一文字笠(殿中)/[[時代祭]]で大名行列の[[侍]]に扮する人々。]]
[[ファイル:Jidai Matsuri 2009 098.jpg|thumb|200px|{{Anchors|韮山笠_画像}}韮山笠/[[時代祭]]で[[幕末]]の幕府軍の[[砲兵]]に扮する人。]]

* '''{{Anchor|唐人笠}}'''(とうじんがさ)
:: [[南蛮人]]が被る帽子<ref name="Kb_唐人笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/唐人笠 |title=唐人笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}■図説もあり。</ref>。祭礼で唐人囃子などを行う時に被る笠{{r|Kb_唐人笠}}。中央が高く尖っており、頂に紅い布が付いている{{r|Kb_唐人笠}}。唐人飴の売り子もこれを被った{{r|Kb_唐人笠}}。
* {{Anchors|陣笠}}'''陣笠'''(じんがさ)
:: 日本の戦陣所用の被り笠<ref name="Kb_陣笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/陣笠 |title=陣笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}■図説もあり。</ref>。[[室町時代]]以降、陣中で主として[[足軽]]・雑兵などが用いた{{r|Kb_陣笠}}。薄い鉄または革で作り、[[漆]]を塗った笠で、[[兜]]の代用としたもの{{r|Kb_陣笠}}。■[[#陣笠_画像|右列に画像あり]]。
* '''{{Anchor|端反笠}}'''(はそりがさ)
:: 端が反り返った形の陣笠<ref name="Kb_端反笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/端反笠 |title=端反笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}■図説もあり。</ref>。張笠の上に油・渋([[柿渋]])・[[漆]]などを塗り仕上げ(つまり、塗笠にし)、定紋を付けた笠。
* '''{{Anchor|車笠}}'''(くるまがさ)<ref>『広辞苑 第六版』 [[岩波書店]]にも記載されている。</ref>
:: 陣笠の一種。[[戦国時代 (日本)|戦国期]]に[[上杉謙信]]が考案したとされる鉄笠<ref>NHK Eテレ系列の番組『[[先人たちの底力 知恵泉]]』「バラバラな組織をまとめるには?「上杉謙信」」の番組内説明を一部引用。</ref>{{出典無効|date=2019-03-27}}で、頭頂の内側に車輪がついており、[[鉄砲]]玉が当たると、笠が回転し、受け流す仕組みとなっており、兜と同様、何枚かの板金を重ねて鋲でとめる構造をしている<!-- 同・知恵泉の番組内映像より -->。
* '''{{Anchor|騎射笠}}'''(きしゃがさ)
:: 江戸時代の武士が、騎射や馬での遠行の時に用いた、竹などを材に網代に編んだ笠<ref name="Kb_騎射笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/騎射笠 |title=騎射笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}■図説もあり。</ref>。縁が反っている{{r|Kb_騎射笠}}。のちには平時の[[乗馬]]用にもなった{{r|Kb_騎射笠}}。
* '''{{Anchor|一文字笠}}'''(いちもんじがさ)
:: 一つには、円形に編んで二つ折ると頂が「一」の文字のように平らになる、[[門付]]の女芸人らが踊りなどに用いた被り笠<ref name="Kb_一文字笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/一文字笠 |title=一文字笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}■図説もあり。</ref>。'''一文字'''ともいう{{r|Kb_一文字笠}}。■[[#一文字笠(門付)_画像|右列に画像あり]]。
:: 一つには、武士が遠行や行列([[大名行列]]など)をする時に被った笠{{r|Kb_一文字笠}}。'''殿中'''(でんちゅう)ともいう{{r|Kb_一文字笠}}。■[[#一文字笠(殿中)_画像|右列に画像あり]]。
* {{Anchors|韮山笠|藪潜}}'''韮山笠'''/'''韭山笠'''(にらやまがさ)<ref name="Kb_韮山笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/韮山笠 |title=韮山笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}■図説もあり。</ref>{{r|Kb_Brit}}
:: [[江戸幕府]]の[[伊豆国|伊豆]][[韮山代官所]]の世襲[[代官]]・[[江川太郎左衛門]]が考案し{{r|Kb_韮山笠}}{{r|Kb_Brit}}、[[幕末]]に用いられた笠{{r|Kb_韮山笠}}。江川太郎左衛門の門人らが被ったことからその名がある{{r|Kb_韮山笠}}。幕末戦争の際に幕府軍の[[砲兵]]の士卒が多くかぶった{{r|Kb_韮山笠}}。観世小縒/観世紙縒({{small|かんぜごより}}。和紙を細長く裂いて小縒/紙縒<sup>こより</sup>にしたもの)で編笠を作り、その上に黒漆を塗り、定紋を付けた笠{{r|Kb_Brit}}{{r|Kb_韮山笠}}。農兵が用い、傭兵用でもあった{{r|Kb_Brit}}。'''藪潜'''(やぶくぐり){{r|Kb_韮山笠}}ともいう。■[[#韮山笠_画像|右列に画像あり]]。
* '''{{Anchor|托鉢笠}}'''(たくはつがさ)
:: [[托鉢#日本における托鉢|日本の托鉢]][[僧]]が被ることの多い笠。多くは網代笠が用いられる。真横から見るとシルエットはなだらかな丘のように丸く、遍路笠の三角形とは異なる。■[[#托鉢笠_画像|右列に画像あり]]。
* '''{{Anchor|遍路笠}}'''(へんろがさ)
:: [[遍路]]者が被ることの多い笠。多くは網代笠であるが、材も形も数種類あり、商品名にしても、最も多い「[[#菅笠|菅笠]]」のほか、「[[#竹笠|竹笠]]」「遍路笠」「[[#網代笠|網代笠]]」「[[#檜笠|檜笠]]」など様々である。最も一般的なものの場合、真横から見たシルエットに丸みがある托鉢笠と違って、頂部は尖っており、真横から見ると三角形である。つまり、全体の形はやや扁平な[[円錐]]である。ただし、托鉢笠と同じ丸い形の遍路笠も無いわけではない。頂部から放射状に[[梵字]]・経文などが墨字で記されており、それも意匠の一つになっている。托鉢笠でも墨字の書かれていることはあるが、遍路笠のように必ずではない。なお、西国巡礼([[四国八十八箇所]]霊場巡り)の場合に必ず「同行二人({{small|どうぎょうににん}})」と記されているのは、四国遍路における一人巡礼は自身と[[弘法大師]]の二人旅を意味しているが所以である。■[[#遍路笠_画像|右列に画像あり]]。
* '''{{Anchor|富士笠}}'''(ふじがさ)
:: [[富士山]]の登拝者が被る笠。他に、農作業や雪中作業でも用いられる。全体の形は背の低い[[円錐]]であるが、富士山の山容を模して頂部は尖らせず、平らな形に整えてある。頂は編み材の結束点であるが、富士笠ではこの結束箇所から材を放射状にほんの少しだけ突出させる形もある。完全に平らな形のものにも結束部は当然あるが、材を綺麗に寝かせてあるために目立たず、富士の山容を完璧に模している。遍路笠とは違って、出荷時・購入時に既に墨字が書かれているということは無い。

{{Anchors|虚無僧笠_画像}}[[ファイル:A begging criminal-J. M. W. Silver.jpg|thumb|160px|円筒形・深編の虚無僧笠を被った虚無僧(右)]]

* '''{{Anchor|虚無僧笠}}'''(こむそうがさ)
:: [[虚無僧]]の被る編笠<ref name="Kb_虚無僧笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/虚無僧笠 |title=虚無僧笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref>。古くは[[#熊谷笠|熊谷笠]]([[擂鉢]]を伏せたような形の笠)であったが{{r|Kb_虚無僧笠}}、時代が下ると背の高い[[円筒]]形の深編笠に置き換わっていった{{r|Kb_虚無僧笠}}。'''熊谷笠'''、'''薦笠'''/'''菰笠'''(こもがさ)、'''[[#天蓋|天蓋]]'''(てんがい)、'''虚無僧編笠'''(こむそうあみがさ)ともいうが{{r|Kb_虚無僧笠}}、「熊谷笠」は早期の虚無僧笠に限り、「天蓋」は深編笠に置き換わってからの名称である。「薦笠/菰笠」は虚無僧の別名である「薦僧/菰僧(こもそう、こもぞう)」から来ている<ref name="Kb_薦僧">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/薦僧 |title=薦僧 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}</ref>。初出は随筆『むかしむかし物語』(享保17年〈1732年〉頃刊行)に見られる記述「延宝の頃熊谷笠 薦僧笠抔時花て 八分ぞりはやる」の「熊谷笠({{small|くまかへかさ}})」。■[[#虚無僧笠_画像|右列に画像あり]]。
* '''{{Anchor|浪人笠}}'''(ろうにんがさ)
:: [[浪人]]の被る笠。独特の形状をもつ深編笠を指すことが多い。
* '''{{Anchor|褄折笠}}'''(つまおりがさ)
:: 本来は女性用であった[[三度笠]]が男性用に置き換わった後、女性用であった昔の三度笠をこの名で呼ぶようになった。

=== 形状で区別 ===
* '''{{Anchor|平笠}}'''(ひらがさ)
:: 浅くて上部の平たい笠。
* '''{{Anchor|尖笠}}'''(とがりがさ)
:: 中央の巾子({{small|こじ}}。[[髻]]<sup>もとどり</sup>を入れて固定できるようになっている突出部)を尖らせた風流笠。
* '''{{Anchor|三角笠}}'''(さんかくがさ)
:: [[円錐]]の形をした笠。
* '''{{Anchor|とんがり笠}}'''(とんがりがさ)
:: 尖りの強い三角笠。
* {{Anchors|折編笠|折編み笠}}'''折編笠'''/'''折編み笠'''(おりあみがさ)
:: 二つ折りにした編笠。[[#鳥追笠|鳥追笠]]が典型。
* {{Anchors|深編笠|深編み笠}}'''深編笠'''/'''深編み笠'''(ふかあみがさ)
:: 顔を隠すように深く作った編笠で<ref name="Kb_深編笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/深編笠 |title=深編笠 |work=小学館『精選版 日本国語大辞典』 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}■図説もあり。</ref>、[[武士]]や[[虚無僧]]が人目を避けるために用いた{{r|Kb_深編笠}}。虚無僧の用いる深編笠は'''[[#天蓋|天蓋]]'''(てんがい)ともいう<ref name="Kb_天蓋">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/天蓋 |title=天蓋 |work=小学館『精選版 日本国語大辞典』、ほか |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}■図説もあり。</ref>。初出は[[井原西鶴]]の[[浮世草子]]『好色二代男』(貞享元年〈1684年〉刊)巻7 に見られる記述「深編笠に竹杖」{{r|Kb_深編笠}}。■[[#深編笠_画像|右列に画像あり]]。
* {{Anchors|天蓋}}'''[[天蓋]]'''(てんがい)
:: [[虚無僧]]の用いる深編笠{{r|Kb_天蓋}}。転じて、虚無僧をも指す{{r|Kb_天蓋}}。初出は[[俳諧]]論書『[[毛吹草]]』巻6(寛永15年〈1638年〉刊)に所収の句「天蓋<sup>てんかい</sup>とあれこそいはめ月の笠 ─昌意」{{r|Kb_天蓋}}。
* '''{{Anchor|熊谷笠}}'''(くまがいがさ、くまがえがさ)<ref name="Kb_熊谷笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/熊谷笠 |title=熊谷笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-25 }}■図説もあり。</ref>
:: [[武蔵国]][[大里郡]]の[[熊谷宿]]界隈(現・[[熊谷市]]中核)で産した深編笠。[[擂鉢]]({{small|すりばち}})を伏せたような形の笠で{{r|Kb_熊谷笠}}、[[虚無僧]]、[[医師]]、人目をしのぶ[[武士]]などが被った{{r|Kb_熊谷笠}}。'''熊谷籠'''(くまがいかご)ともいう{{r|Kb_熊谷笠}}。初出は[[井原西鶴]]の役者評判記『難波の㒵は伊勢の白粉』(天和3年〈1683年〉頃刊行)巻2 に見られる記述「うはかぶりになっておのれをたかぶり思日もよらぬ熊谷笠<sup>くまかへかさ</sup>のしゅかう」{{r|Kb_熊谷笠}}。
:: [[季語]]としての「'''熊谷笠'''」は、夏の季語(三夏の季語)。「[[#編笠|編笠]]」を親季語とする子季語の一つ。
* '''{{Anchor|桔梗笠}}'''(ききょうがさ)
:: 祭礼や踊りなどで被る飾り笠<ref name="Kb_桔梗笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/桔梗笠 |title=桔梗笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}■図説もあり。</ref>。桔梗({{small|[[キキョウ|ききょう]]}})の花を伏せた形を模しており、各[[花弁]]の先端は尖らせて赤・黄・青など極彩色を施してある{{r|Kb_桔梗笠}}。
* '''{{Anchor|加賀笠}}'''(かががさ)
:: [[加賀国]]で産した菅笠<ref name="Kb_加賀笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/加賀笠 |title=加賀笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}■図説もあり。</ref>。[[町家]]の[[女房]]や[[比丘尼]]などが外出時に用いた{{r|Kb_加賀笠}}。'''加賀菅笠'''(かがすげがさ)ともいう{{r|Kb_加賀笠}}。
* '''{{Anchor|ざんざら笠}}'''(ざんざらがさ)
:: 編み上げた菅({{small|[[スゲ|すげ]]}})の端を切り揃えずに笠の頂にそのまま飛び出させた形の、菅笠<ref name="Kb_ざんざら笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/ざんざら笠 |title=ざんざら笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}■図説もあり。</ref>。笠の頂で1株の草が茂っているような形になる{{r|Kb_ざんざら笠}}。[[江戸時代]]に[[宿駅]]の[[馬子]]や[[駕籠#駕籠者、駕籠舁|駕籠舁]]({{small|かごかき}})などが用いた{{r|Kb_ざんざら笠}}。頂部に造花を挿して祭礼時に用いることもあった{{r|Kb_ざんざら笠}}。

{{Anchors|饅頭笠_画像}}[[ファイル:Studio portrait of young woman in ricksaw posed with driver (NYPL Hades-2360296-4044095).jpg|thumb|160px|これは[[明治]]時代後期の[[手彩色絵葉書]]であるが、[[人力車]]夫は饅頭笠を被っている。]]

* '''{{Anchor|三度笠}}'''(さんどがさ)
:: {{Main|三度笠}}
:: 江戸時代に三度飛脚が用いたことからその名で呼ばれる、菅笠の一種<ref name="Kb_三度笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/三度笠 |title=三度笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}■図説もあり。</ref>。当初は[[#女笠|女笠]]で{{r|Kb_三度笠}}、顔を隠せるよう深く被れる作りになっていて、この特徴から「'''大深'''(おおぶか)」と呼ばれていた{{r|Kb_三度笠}}。その後、男性が用いるようになると女笠としては廃れていった{{r|Kb_三度笠}}。[[飛脚]]や[[行商人]]などが多く用いた{{r|Kb_三度笠}}。女笠であった頃のこの笠は「[[#褄折笠|褄折笠]](つまおりがさ)」と呼ばれる{{r|Kb_三度笠}}。
* '''{{Anchor|饅頭笠}}'''(まんじゅうがさ)
:: 頂が丸くて浅い笠で、[[饅頭]]の上半分を切ったような形をしていることからその名がある<ref name="Kb_饅頭笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/饅頭笠 |title=饅頭笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}■図説もあり。</ref>。[[籐]]・[[菅]]・[[竹]]などを主材とする{{r|Kb_饅頭笠}}。[[人力車]]夫は今も昔もこれを被っているのが、事実はともかく、イメージ的には定番といえる。■[[#饅頭笠_画像|右列に画像あり]]。

=== その他 ===
* '''{{Anchor|台笠}}'''(だいがさ)
:: {{Main|台笠}}
:: [[江戸時代]]、[[大名行列]]などの際、袋に入れて長い棒の先に付けて小者に持たせた被り笠をいう<ref name="Kb_台笠">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/台笠 |title=台笠 |publisher=コトバンク |accessdate=2019-04-29 }}</ref>。
:: [[季語]]としての「'''台笠'''」は、夏の季語(三夏の季語)。「[[#編笠|編笠]]」を親季語とする子季語の一つ{{r|Kigosai_編笠}}。

== 笠紋 ==
[[家紋]]としての被り笠(総称)は、'''笠'''(かさ)といい{{r|Kb_大辞泉}}、'''笠紋'''(かさもん)ともいう。

現代でも[[地鎮祭]]で見られるように、天上から神を迎えるに当たって清浄な[[神域]]を生み出すべく四方に“竹を立てる”[[儀礼]]があり、これに由来して、[[神職]]の間で笠紋が普及していった。「一蓋笠/一階笠」ともいう基本図案の「笠」を始めとして、二蓋笠/二階笠(※柳生笠に代表される)、三蓋笠/三階笠、三つ寄せ笠、頭合わせ三つ笠、五つ市女笠、建部笠、神宮笠、丸に笠、丸に陣笠、丸に切り竹笹に笠、丸に変わり切り竹笹に笠、中輪に房付き笠、中輪に房付き二蓋笠/中輪に房付き二階笠、ほか、種類は多い。

* {{Anchors|一蓋笠|一階笠}}'''一蓋笠'''/'''一階笠'''(いっかいがさ)
:: [[#市女笠|市女笠]]を[[図案]]化した家紋。笠紋の代表紋で、笠紋の多くはこれを基本図案としている。普通は単に「'''笠'''」といい<ref name="Minagi">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/http://minagi.p-kit.com/page135484.html |title=笠 - 家紋図鑑 |work=きものと悉皆みなぎ(公式ウェブサイト) |publisher=みなぎ |accessdate=2019-04-29 }}</ref>、他と区別する際に[[助数詞]]「蓋(かい)」を用いて「一蓋笠」といい、「蓋(かい)」が「階(かい)」に転じて「一階笠」ともいう。
* {{Anchors|二蓋笠|二階笠}}'''二蓋笠'''/'''二階笠'''(にかいがさ)
:: 横並び2蓋の市女笠。もしくは、縦に2蓋重ねた市女笠。最も有名なのは前者にあたる柳生笠。
* '''{{Anchor|柳生笠}}'''(やぎゅうがさ)
:: [[大和国|大和]][[柳生氏|柳生家]]の替紋の一つ。二蓋笠/二階笠の代表であることから、その名でも呼ばれる。
* {{Anchors|三蓋笠|三階笠}}'''三蓋笠'''/'''三階笠'''(さんがいがさ)
:: 縦に3蓋重ねた市女笠。
* '''{{Anchor|頭合わせ笠}}'''(あたまあわせかさ)
:: 頂を合わせた3蓋の市女笠。
* '''{{Anchor|三つ寄せ笠}}'''(みつよせがさ)
:: 内側を合わせた3蓋の笠。笠の種類は市女笠。変わり三つ寄せ笠では、笠の種類が[[#花笠|花笠]]になる。
* '''{{Anchor|五つ市女笠}}'''(いつついちめがさ)
:: 頂を合わせた5蓋の市女笠。咲いた花のような図形をなす。
* '''{{Anchor|丸に笠}}'''(まるにかさ)
:: 丸(太い環の図形)に収めた市女笠。
* '''{{Anchor|井桁に笠}}'''(いげたにかさ)
:: [[井桁]]に収めた市女笠。
* {{Anchors|花笠 (家紋)}}'''花笠'''(はながさ)
:: [[#花笠|花笠]]を図案化した家紋。
* {{Anchors|編笠 (家紋)}}'''編笠'''(あみがさ)
:: [[#編笠|編笠]]を図案化した家紋。
* {{Anchors|陣笠 (家紋)}}'''陣笠'''(じんがさ)
:: [[#陣笠|陣笠]]を図案化した家紋。
* {{Anchors|足軽笠 (家紋)}}'''足軽笠'''(あしがるがさ)
:: 陣笠の一種である足軽笠を図案化した家紋。
* {{Anchors|唐人笠 (家紋)}}'''唐人笠'''(とうじんがさ)
:: [[#唐人笠|唐人笠]]を図案化した家紋。
* '''{{Anchor|深被り笠}}'''(ふかかぶりがさ)
:: 深被り笠を図案化した家紋。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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<references />
=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 関連項目 ==
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2019年5月9日 (木) 03:18時点における版

様々な笠

歌川広重 名所浮世絵揃物東海道五十三次之内 四日市 三重川』
2人の旅人が描かれているが、右にいる蓑笠(みのかさ。と笠。また、それらを着用した姿)の男は風に逆らって歩き、左の男は強風で飛ばされた笠を慌てて追いかけている。

(かさ)は、被り物の一種。直射日光などが当たらないようにに被る道具[1][2][3][4][5]、外出の際に顔を隠すのに用いることもある[2][4]東アジアおよび東南アジアで古くから広く用いられている[4][5](かさ。差/差し傘、手傘)と区別する意をもって被り笠(かぶりがさ)ともいう[1][2]

助数詞は、蓋(かい[6][7]、がい。※上からかぶせる覆いやを数える。笠または笠状のものを数える[6][8][9][10][7]、笠(りゅう)[8][10]、頭(かしら。※文化財に限る)[7]、枚(まい)[9][10][7]

  • 第2義としては、被り物の「笠」のような形状の物を、被り物の笠に譬えていう。「電灯の笠」「ランプの笠」など。[1]
  • 第3義としては、紋所の名の一つ。家紋の一つ。笠紋ともいう。笠の図案の助数詞は蓋(かい)[7](例:一蓋笠、二蓋笠)[* 1][1]
  • 第4義としては、日本語姓氏の一つ[11]

※本項では、被り物の笠を主として解説し、その後に、笠紋など(※現状では笠紋のみ)について解説する。

概要

笠の材質は檜板・藺草製で、塗笠は、檜や杉の板材を薄く剥いだ「へぎ板」に和紙を貼ってを塗って作成した物で、平安時代末期には主に老女が使用し、江戸時代初期には若い女性が使用した。

一方、陣笠は、竹で網代を組んで和紙を貼り、墨で染めて柿渋を塗って作成したものである[12][要ページ番号]。刃や飛来する矢などから身を守る防具であり、手に持ってとして使用することもあった。

また、それとは別に戦国時代から足軽雑兵などの農民兵に貸与・支給されていた防具・代用。はじめは煮締めた皮革の裏側に「筋金(すじがね)」(または骨板金:ほねいたがね、骨板:ほねいた、骨金:ほねかね)と呼ばれる鍛鉄製の骨板を渡し漆をかけた陣笠を使っていたが、後に総鍛鉄製のものに取って代わられた。鍛鉄製板を切り抜き、笠状に整形して防水用に漆をかけるだけの工程のため、通常のを作るよりもはるかに手間と費用がかからない。

具足剣術」と呼ばれるを着込んで行う剣術の一部には手盾として使われる使用法も残っている。『海国兵談』には、牛皮を用いて笠の形にして、手の甲・手首を守る形の手盾として、「牛皮楯」の記述・絵図があり、オランダ・中国が用いた戦法として紹介されている(足軽の持物でも手軽に作れる)。

防具のほか、野営での調理の際にはよく洗った鍛鉄製陣笠を大鍋として用い、味噌玉を溶かして芋がら縄など食材を入れ、3~4人分の陣中食(この場合は味噌汁および汁かけ飯・または味噌汁と一緒に穀類を煮込んだ雑炊)を用意するといった使われ方もした[13][14][15][要ページ番号]

種類

江戸時代後期の合巻作者・柳亭種彦は、随筆『柳亭筆記』の中で豊富な引用文献を付しながら種々の笠を解説している[16]

製法で区別

  • 編笠/編み笠(あみがさ)
藺草(いぐさ)、稲藁いねわら)、真菰(まこも)、木の皮、竹の皮などの茎に材を取り、編んで作る被り笠[17][18]。形態は、材質と用途を基準にして、円錐形、円錐台形、帽子形、円筒形、漏斗形、二つ折形など、6型に分類される[17]
初出は『新撰六帖』(寛元2年〈1244年〉頃に成立)巻5 に見られる記述「ますらをのすげのあみがさ打ちたれてめをもあはせず人の成行く ─藤原家良」の「すげのあみがさ(菅の編笠)」[18]
季語としての「編笠」は、の季語(三夏の季語)[19]。「編笠」を親季語とする子季語には、台笠(だいがさ)、菅笠(すげがさ、すががさ)、藺笠(いがさ)、檜笠(ひがさ、ひのきがさ)、熊谷笠(くまがいがさ、くまがえがさ)、網代笠(あじろがさ)、市女笠(いちめがさ)がある[19]
  • 組笠(くみがさ)
  • 縫笠(ぬいがさ)
  • 押笠/押え笠(おさえがさ)
竹皮やビロウの葉などを竹の骨組の上からかぶせ、円錐形・帽子形・半円球形・褄折形・桔梗形に押さえ止めて作る笠[5]
  • 張笠/張り笠(はりがさ)
の骨組の上に紙を幾重にも張り付け、仕上げに渋(柿渋)を引いた笠[5]。また、油紙を張った笠[5]
  • 塗笠/塗り笠(ぬりがさ)
油・渋(柿渋)・のいずれかを塗った笠[5]
  • 綾藺笠(あやいがさ)[20]
藺草(いぐさ)を綾織りに編み(※綾の組織にならって編み)、裏に布を張って作った被り笠[20]。中央に大きな巾子(こじもとどりを入れて固定できるようになっている突出部)がある[20]平安時代以降、武士狩猟・遠行・流鏑馬などの際に被った[20]。他に、田楽法師(田楽を踊る法師)などもこれを使った[20]綾笠(あやがさ)ともいう[20]。初出は『今昔物語集』(保安元年〈1120年〉頃成立か)巻第25 に見られる記述「綾藺笠を著て (...略...) 胡簶やなぐひを負て」の「綾藺笠(あやゐかさ)」[20]

網代笠を被る托鉢僧/托鉢笠としての網代笠。

遍路笠としての網代笠
  • 網代笠(あじろがさ)
網代編(あじろあみ)の組笠[21]。編み方に由来する名称であり、素材を問わないが、実際には竹ひごを主材としたものが主流。そのため、辞書類は「竹ひごを網代に編んだ笠」などと説明するものが多い。今や使用者のほとんどは托鉢遍路者であるが、戦前第二次世界大戦前)までは農家などでも広く用いられていた[21]。托鉢僧がこれを用いるのには、修行中の身であるがゆえ、顔を隠して外の世界と関係を絶つという意味合いがあるという。また、雨水を防ぎながらも通気性が良いので[21]、強い日差しや雨風に曝される過酷な環境で大いに実用的でもある。防水性と防腐性をさらに高めるために柿渋引きしたものも多く、そういったものは飴色をしている。なお、右の画像の網代笠は、遍路笠のほうは編み材の持つ自然色そのままで柿渋は引かれていない。托鉢笠のほうは柿渋が引かれているかも知れない。■右列に2画像あり(網代笠で托鉢笠網代笠で遍路笠)。
季語としての「網代笠」は、夏の季語(三夏の季語)。「編笠」を親季語とする子季語の一つ[19]

材料で区別

  • 藺笠(いがさ)
藺(〈いぐさ〉)の茎で編んだ被り笠[22]。日除け用[22]。いおりがさ[22]。初出は『延喜式』(延長5年〈927年〉成立)[22]
季語としての「藺笠」は、夏の季語(三夏の季語)。「編笠」を親季語とする子季語の一つ[19]
  • 菅笠(すげがさ、すががさ)
菅(すげ、すが)の葉を編んで作った被り笠[23]菅の笠(すげのかさ)ともいう[23]。初出は『万葉集』で[23]、巻第11-2819、笠縫邑にゆかりの菅笠の歌「おしてる 難波管笠 置き古し 後は誰が着む 笠ならなくに(※解釈例:照り渡る難波の菅で作った笠を着けもせずに置いて古びさせてしまった。後で誰かが被る笠というのでもないのに)」 や[23]、巻第16-3875「すくなきよ 道にあはさば いろげせる 菅笠小笠 吾がうなげる 珠の七つを 取替へも」に、「菅笠(すがかさ)」の名がある[23]
富山県高岡市の福岡地区(旧 福岡町)は古くより菅笠の一大生産地で、現在も全国の約90%のシェアを誇り、菅笠の製作技術を綿々と伝承してきた。これにより越中福岡の菅笠製作技術保存会が「越中福岡の菅笠製作技術」として2009年3月11日に国の重要無形民俗文化財の指定を受け、2017年11月30日には「越中福岡の菅笠」として、国の伝統的工芸品に指定された。
季語としての「菅笠」は、夏の季語(三夏の季語)。「編笠」を親季語とする子季語の一つ[19]
  • 檜笠/桧笠(ひがさ、ひのきがさ)[24]
檜(ひのき)、杉(すぎ)、松(まつ)、櫟(いちい)などで作った経木を材に取った網代笠[24]。古くは大和国大峰山修験者がもっぱら用いたことから、行者笠(ぎょうじゃがさ)ともいった[24]。初出は鴨長明仏教説話集『発心集』巻第7(建保4年〈1216年〉頃か)に見られる記述「かたかた破れうせたる檜笠をきたり」か[24]
季語としての「檜笠」は、夏の季語(三夏の季語)。「編笠」を親季語とする子季語の一つ[19]
  • 竹笠(たけがさ)
竹ひごで作った網代笠[25]。初出は橘成季編纂『古今著聞集』(建長6年〈1254年〉成立)巻第12 に所収の歌「しげどうの弓に のやおひて 竹笠をきたりけり」[25]
  • 筍笠/たけのこ笠(たけのこがさ)[26]
裂いたの皮を編んで作った被り笠。竹皮笠/竹の皮笠(たけのかわがさ)、たけかわ法性寺笠(ほっしょうじがさ)ともいう[26]。初出は京大本『湯山聯句鈔』(永正元年〈1504年〉刊)に見られる記述「雨の時の具は たけのこがさであるぞ」[26]
  • 葛笠/葛籠笠(つづらがさ)
葛藤(つづらふじ)で作った網代笠[27]市女笠に似ているが、中の峰がやや低い[27]。多くは塗りが施されていた[27]五街道が整備された江戸時代初頭から東海道五十三次の50番目の宿場町・水口宿界隈(近江国甲賀郡水口)では旅人を顧客にして水口細工が隆盛し始めたが、その流れの中から洗練された葛笠が生み出され、水口笠(みなくちがさ)の名で広く知られるようになった[28][27]。水口笠は明暦・天和年間(1655-1684年間)に若い女子の間で流行し[27]、のちには風流好みの江戸の男子までがこれを用いた[27]。他に、葛小笠(つづらおがさ)[27]葛帽子(つづらぼうし)[29]ともいう。「葛帽子」の初出は、松江重頼俳諧論書『毛吹草』(寛永15年〈1638年〉刊)巻第5 所収の句「姫松のつづらほうしや藤の花 ─作者不知」[29]。「葛笠」の初出は、井原西鶴浮世草子『織留』(元禄7年〈1694年〉刊)巻第2 に見られる記述「辻のぬけたる葛笠を被き住みなれたるわが宿の名残」[27]
  • 藤笠(ふじがさ)
藤(ふじ)のを編んで作った被り笠[30]。元文年間(1736-1741年)の頃に流行し、若年の武士・医師・僧侶などが多く用いた[30]

用途で区別

  • 被り笠/かぶり笠(かぶりがさ)[31]
頭にかぶって使う笠。柄がついていて手で持って差すを意味する「差傘/差し傘(さしがさ)」「手傘(てがさ)」の対義語[1][2]
  • 男笠(おとこがさ)
男性用の被り笠を総じていう。
  • 女笠(おんながさ)
女性用の被り笠を総じていう。花笠の多くは女笠であるが、例外も少なくない。市女笠も女笠であるが、例外はある。鳥追笠は、当初は性別を問わないものであったが、もっぱら女笠として発展していった。三度笠は当初は女笠で、それゆえに深く被る作りであったが、男笠に置き換わり、女笠としては廃れていった経緯がある。加賀笠は女笠ならではの優美さが特徴となっている。
  • 雨笠(あまがさ)
雨具として使う被り笠[32]
  • 陽笠(ひがさ)
日除けに使う被り笠。
  • 装飾笠(そうしょくがさ)
「美しく飾り立てた笠」を意味する、現代の用語。花笠が代表例。
この語の第1義とする辞書と第3義とする辞書があるが、一つには、紙製の造花を笠本体や垂らした竹ひごなどに付けることで美しく飾りたてた被り笠をいい、祭礼や舞踊などに用いる[33]。また、そこから大きく発展して多様化した各地の花笠(■当該記事に画像あり)をも指す。
  • 市女笠(いちめがさ)

市女笠
平安時代以降の代表的な女笠[34]。市女(いちめ)とはで物を商う女のことで、平安時代に都の東・西市で市人(いちびと)と共に商取引に従事した[35]。市女笠は、市女が被る独特な形の晴雨兼用の被り笠を指して呼ぶようになったことに始まる[35]。平安時代末期の特に院政期に流行した装飾経の一つである扇面法華経冊子下絵には、京の町に並ぶ間口の小さな店で様々な物を売る市女達と、市女と思しき市女笠を被った女性が店に立ち寄る様子が描かれており、最古級で良質の史料として注目されている[35]。平安時代中期以降には上流階級の女性が外出時に用いるようになり[34]、雨天の行幸供奉で公卿(※全て男性)も用いるようになったが[34]、これらの市女笠を指して、深く窄んだ形あるいはを語源とする「窄笠(つぼみがさ)[36]」「壷笠(つぼがさ)[37]」「局笠(つぼねがさ)[38]」という名称も生まれた[34]。■右列に画像あり
被り笠を図案化した家紋である「笠紋」は、一部の例外を除いて、多くが市女笠を図案に採り入れたものである。
季語としての「市女笠」は、夏の季語(三夏の季語)。「編笠」を親季語とする子季語の一つ[19]
  • 鳥追笠(とりおいがさ)
阿波踊りの鳥追笠
元々は田畑害する鳥を追い払う東日本の正月行事(小正月行事)「鳥追」で、鳥を追い払う人が被っていた笠である。折編笠の一種。江戸時代になると三味線を弾いて新年門付をする女芸人である「鳥追女」の風俗に取り込まれて広まり、芸事を行う女の被り物として定着していった。現代では阿波踊りの踊子が被ってる笠(■右列に画像あり)のイメージが強いが、これも鳥追女の流れを汲んでいる。ただ、現代の阿波踊りの鳥追笠は、正面から見た時の三角形の角度が、江戸時代のものと大して変わりない昭和前期のものに比べて随分と先鋭になっていて、実用性を離れて見た目の格好良さ・軽やかさに向けた選択のあったことが伺える。また、編み材を束ねた頂の突起部は阿波踊りのものでも昭和前期にはあったが、昭和後期以降のものでは無くなっている。右の画像でも頂にある束ねた部分は突起になっていない。
陣笠
(門付の女芸人の)一文字笠/歌川国貞浮世絵美人画『江戸名所百人美女 葵坂』
一文字笠(殿中)/時代祭で大名行列のに扮する人々。
韮山笠/時代祭幕末の幕府軍の砲兵に扮する人。
  • 唐人笠(とうじんがさ)
南蛮人が被る帽子[39]。祭礼で唐人囃子などを行う時に被る笠[39]。中央が高く尖っており、頂に紅い布が付いている[39]。唐人飴の売り子もこれを被った[39]
  • 陣笠(じんがさ)
日本の戦陣所用の被り笠[40]室町時代以降、陣中で主として足軽・雑兵などが用いた[40]。薄い鉄または革で作り、を塗った笠で、の代用としたもの[40]。■右列に画像あり
  • 端反笠(はそりがさ)
端が反り返った形の陣笠[41]。張笠の上に油・渋(柿渋)・などを塗り仕上げ(つまり、塗笠にし)、定紋を付けた笠。
  • 車笠(くるまがさ)[42]
陣笠の一種。戦国期上杉謙信が考案したとされる鉄笠[43][出典無効]で、頭頂の内側に車輪がついており、鉄砲玉が当たると、笠が回転し、受け流す仕組みとなっており、兜と同様、何枚かの板金を重ねて鋲でとめる構造をしている。
  • 騎射笠(きしゃがさ)
江戸時代の武士が、騎射や馬での遠行の時に用いた、竹などを材に網代に編んだ笠[44]。縁が反っている[44]。のちには平時の乗馬用にもなった[44]
  • 一文字笠(いちもんじがさ)
一つには、円形に編んで二つ折ると頂が「一」の文字のように平らになる、門付の女芸人らが踊りなどに用いた被り笠[45]一文字ともいう[45]。■右列に画像あり
一つには、武士が遠行や行列(大名行列など)をする時に被った笠[45]殿中(でんちゅう)ともいう[45]。■右列に画像あり
  • 韮山笠/韭山笠(にらやまがさ)[46][2]
江戸幕府伊豆韮山代官所の世襲代官江川太郎左衛門が考案し[46][2]幕末に用いられた笠[46]。江川太郎左衛門の門人らが被ったことからその名がある[46]。幕末戦争の際に幕府軍の砲兵の士卒が多くかぶった[46]。観世小縒/観世紙縒(かんぜごより。和紙を細長く裂いて小縒/紙縒こよりにしたもの)で編笠を作り、その上に黒漆を塗り、定紋を付けた笠[2][46]。農兵が用い、傭兵用でもあった[2]藪潜(やぶくぐり)[46]ともいう。■右列に画像あり
  • 托鉢笠(たくはつがさ)
日本の托鉢が被ることの多い笠。多くは網代笠が用いられる。真横から見るとシルエットはなだらかな丘のように丸く、遍路笠の三角形とは異なる。■右列に画像あり
  • 遍路笠(へんろがさ)
遍路者が被ることの多い笠。多くは網代笠であるが、材も形も数種類あり、商品名にしても、最も多い「菅笠」のほか、「竹笠」「遍路笠」「網代笠」「檜笠」など様々である。最も一般的なものの場合、真横から見たシルエットに丸みがある托鉢笠と違って、頂部は尖っており、真横から見ると三角形である。つまり、全体の形はやや扁平な円錐である。ただし、托鉢笠と同じ丸い形の遍路笠も無いわけではない。頂部から放射状に梵字・経文などが墨字で記されており、それも意匠の一つになっている。托鉢笠でも墨字の書かれていることはあるが、遍路笠のように必ずではない。なお、西国巡礼(四国八十八箇所霊場巡り)の場合に必ず「同行二人(どうぎょうににん)」と記されているのは、四国遍路における一人巡礼は自身と弘法大師の二人旅を意味しているが所以である。■右列に画像あり
  • 富士笠(ふじがさ)
富士山の登拝者が被る笠。他に、農作業や雪中作業でも用いられる。全体の形は背の低い円錐であるが、富士山の山容を模して頂部は尖らせず、平らな形に整えてある。頂は編み材の結束点であるが、富士笠ではこの結束箇所から材を放射状にほんの少しだけ突出させる形もある。完全に平らな形のものにも結束部は当然あるが、材を綺麗に寝かせてあるために目立たず、富士の山容を完璧に模している。遍路笠とは違って、出荷時・購入時に既に墨字が書かれているということは無い。

円筒形・深編の虚無僧笠を被った虚無僧(右)
  • 虚無僧笠(こむそうがさ)
虚無僧の被る編笠[47]。古くは熊谷笠擂鉢を伏せたような形の笠)であったが[47]、時代が下ると背の高い円筒形の深編笠に置き換わっていった[47]熊谷笠薦笠/菰笠(こもがさ)、天蓋(てんがい)、虚無僧編笠(こむそうあみがさ)ともいうが[47]、「熊谷笠」は早期の虚無僧笠に限り、「天蓋」は深編笠に置き換わってからの名称である。「薦笠/菰笠」は虚無僧の別名である「薦僧/菰僧(こもそう、こもぞう)」から来ている[48]。初出は随筆『むかしむかし物語』(享保17年〈1732年〉頃刊行)に見られる記述「延宝の頃熊谷笠 薦僧笠抔時花て 八分ぞりはやる」の「熊谷笠(くまかへかさ)」。■右列に画像あり
  • 浪人笠(ろうにんがさ)
浪人の被る笠。独特の形状をもつ深編笠を指すことが多い。
  • 褄折笠(つまおりがさ)
本来は女性用であった三度笠が男性用に置き換わった後、女性用であった昔の三度笠をこの名で呼ぶようになった。

形状で区別

  • 平笠(ひらがさ)
浅くて上部の平たい笠。
  • 尖笠(とがりがさ)
中央の巾子(こじもとどりを入れて固定できるようになっている突出部)を尖らせた風流笠。
  • 三角笠(さんかくがさ)
円錐の形をした笠。
  • とんがり笠(とんがりがさ)
尖りの強い三角笠。
  • 折編笠/折編み笠(おりあみがさ)
二つ折りにした編笠。鳥追笠が典型。
  • 深編笠/深編み笠(ふかあみがさ)
顔を隠すように深く作った編笠で[49]武士虚無僧が人目を避けるために用いた[49]。虚無僧の用いる深編笠は天蓋(てんがい)ともいう[50]。初出は井原西鶴浮世草子『好色二代男』(貞享元年〈1684年〉刊)巻7 に見られる記述「深編笠に竹杖」[49]。■右列に画像あり
虚無僧の用いる深編笠[50]。転じて、虚無僧をも指す[50]。初出は俳諧論書『毛吹草』巻6(寛永15年〈1638年〉刊)に所収の句「天蓋てんかいとあれこそいはめ月の笠 ─昌意」[50]
  • 熊谷笠(くまがいがさ、くまがえがさ)[51]
武蔵国大里郡熊谷宿界隈(現・熊谷市中核)で産した深編笠。擂鉢すりばち)を伏せたような形の笠で[51]虚無僧医師、人目をしのぶ武士などが被った[51]熊谷籠(くまがいかご)ともいう[51]。初出は井原西鶴の役者評判記『難波の㒵は伊勢の白粉』(天和3年〈1683年〉頃刊行)巻2 に見られる記述「うはかぶりになっておのれをたかぶり思日もよらぬ熊谷笠くまかへかさのしゅかう」[51]
季語としての「熊谷笠」は、夏の季語(三夏の季語)。「編笠」を親季語とする子季語の一つ。
  • 桔梗笠(ききょうがさ)
祭礼や踊りなどで被る飾り笠[52]。桔梗(ききょう)の花を伏せた形を模しており、各花弁の先端は尖らせて赤・黄・青など極彩色を施してある[52]
  • 加賀笠(かががさ)
加賀国で産した菅笠[53]町家女房比丘尼などが外出時に用いた[53]加賀菅笠(かがすげがさ)ともいう[53]
  • ざんざら笠(ざんざらがさ)
編み上げた菅(すげ)の端を切り揃えずに笠の頂にそのまま飛び出させた形の、菅笠[54]。笠の頂で1株の草が茂っているような形になる[54]江戸時代宿駅馬子駕籠舁かごかき)などが用いた[54]。頂部に造花を挿して祭礼時に用いることもあった[54]

これは明治時代後期の手彩色絵葉書であるが、人力車夫は饅頭笠を被っている。
  • 三度笠(さんどがさ)
江戸時代に三度飛脚が用いたことからその名で呼ばれる、菅笠の一種[55]。当初は女笠[55]、顔を隠せるよう深く被れる作りになっていて、この特徴から「大深(おおぶか)」と呼ばれていた[55]。その後、男性が用いるようになると女笠としては廃れていった[55]飛脚行商人などが多く用いた[55]。女笠であった頃のこの笠は「褄折笠(つまおりがさ)」と呼ばれる[55]
  • 饅頭笠(まんじゅうがさ)
頂が丸くて浅い笠で、饅頭の上半分を切ったような形をしていることからその名がある[56]などを主材とする[56]人力車夫は今も昔もこれを被っているのが、事実はともかく、イメージ的には定番といえる。■右列に画像あり

その他

  • 台笠(だいがさ)
江戸時代大名行列などの際、袋に入れて長い棒の先に付けて小者に持たせた被り笠をいう[57]
季語としての「台笠」は、夏の季語(三夏の季語)。「編笠」を親季語とする子季語の一つ[19]

笠紋

家紋としての被り笠(総称)は、(かさ)といい[1]笠紋(かさもん)ともいう。

現代でも地鎮祭で見られるように、天上から神を迎えるに当たって清浄な神域を生み出すべく四方に“竹を立てる”儀礼があり、これに由来して、神職の間で笠紋が普及していった。「一蓋笠/一階笠」ともいう基本図案の「笠」を始めとして、二蓋笠/二階笠(※柳生笠に代表される)、三蓋笠/三階笠、三つ寄せ笠、頭合わせ三つ笠、五つ市女笠、建部笠、神宮笠、丸に笠、丸に陣笠、丸に切り竹笹に笠、丸に変わり切り竹笹に笠、中輪に房付き笠、中輪に房付き二蓋笠/中輪に房付き二階笠、ほか、種類は多い。

  • 一蓋笠/一階笠(いっかいがさ)
市女笠図案化した家紋。笠紋の代表紋で、笠紋の多くはこれを基本図案としている。普通は単に「」といい[58]、他と区別する際に助数詞「蓋(かい)」を用いて「一蓋笠」といい、「蓋(かい)」が「階(かい)」に転じて「一階笠」ともいう。
  • 二蓋笠/二階笠(にかいがさ)
横並び2蓋の市女笠。もしくは、縦に2蓋重ねた市女笠。最も有名なのは前者にあたる柳生笠。
  • 柳生笠(やぎゅうがさ)
大和柳生家の替紋の一つ。二蓋笠/二階笠の代表であることから、その名でも呼ばれる。
  • 三蓋笠/三階笠(さんがいがさ)
縦に3蓋重ねた市女笠。
  • 頭合わせ笠(あたまあわせかさ)
頂を合わせた3蓋の市女笠。
  • 三つ寄せ笠(みつよせがさ)
内側を合わせた3蓋の笠。笠の種類は市女笠。変わり三つ寄せ笠では、笠の種類が花笠になる。
  • 五つ市女笠(いつついちめがさ)
頂を合わせた5蓋の市女笠。咲いた花のような図形をなす。
  • 丸に笠(まるにかさ)
丸(太い環の図形)に収めた市女笠。
  • 井桁に笠(いげたにかさ)
井桁に収めた市女笠。
  • 花笠(はながさ)
花笠を図案化した家紋。
  • 編笠(あみがさ)
編笠を図案化した家紋。
  • 陣笠(じんがさ)
陣笠を図案化した家紋。
  • 足軽笠(あしがるがさ)
陣笠の一種である足軽笠を図案化した家紋。
  • 唐人笠(とうじんがさ)
唐人笠を図案化した家紋。
  • 深被り笠(ふかかぶりがさ)
深被り笠を図案化した家紋。

脚注

注釈

  1. ^ 「一階笠」「二階笠」の「階」は当て字

出典

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関連項目