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導入部に改名先候補を別名として掲載。エチオピアでの利用法等について加筆。/ 備考: Bekele-Tesemma は他に "Branches are burnt to smoke out new beehives." とも記しているのですが、普通であれば古い巣から蜂たちを追い出すために燻し出すものと思われ疑問符が付きますので、この箇所は掲載見送りと致します。 |
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'''エイジュ'''(栄樹)<ref name="y&h">山崎・堀田 (1989).</ref>あるいは'''ブライヤ'''または'''ブライア'''({{Lang-en|brier, briar}})([[学名]]:{{Snamei|Erica arborea}} {{AU|L.}} '''エリカ・アルボレア'''<ref>冨山 (2003).</ref>)は、ヨーロッパ南部から南西アジアなどの[[地中海]]沿岸地域や[[東アフリカ]]に分布する[[ツツジ科]][[エリカ属]]の常緑低木のことである。 |
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3-7月頃に開花し、温室などで栽培することが多い。また、スコットランドなどに多い[[ヒース]]に似た白い花を咲かせることから、別名としてホワイトヒース(White heath)と呼ばれることもある<ref name="pipeclub">{{Harvcoltxt|日本パイプクラブ連盟|2009}}.</ref>。 |
3-7月頃に開花し、温室などで栽培することが多い。また、スコットランドなどに多い[[ヒース]]に似た白い花を咲かせることから、別名としてホワイトヒース ({{Lang-en-short|White heath}}) と呼ばれることもある<ref name="pipeclub">{{Harvcoltxt|日本パイプクラブ連盟|2009}}.</ref>。 |
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[[パイプ]]の原料となる(参照: [[#利用]])。 |
[[パイプ]]の原料となる(参照: [[#利用]])。 |
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== 分布 == |
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[[アルジェリア]]、[[アルバニア]]、[[アンドラ]]、[[イエメン]]、[[イタリア]]、[[ウガンダ]]、[[エチオピア]]、[[エリトリア]]、[[ギリシャ]](本土および[[クレタ島]])、[[クロアチア]]、[[ケニア]]、[[コンゴ民主共和国]]、[[サウジアラビア]]、[[ジョージア]]、[[スペイン]](本土、[[カナリア諸島]]、[[バレアレス諸島]])、[[ソマリア]]、[[タンザニア]]、[[チュニジア]]、[[トルコ]](ヨーロッパ側)、[[フランス]](本土および[[コルシカ島]])、[[ブルガリア]]、[[ボスニア・ヘルツェゴヴィナ]]、[[ポルトガル]](本土および[[マデイラ島]])、[[南スーダン]]、[[モロッコ]]、[[モンテネグロ]]、[[ルワンダ]]に見られる<ref name="IUCN" />。 |
[[アルジェリア]]、[[アルバニア]]、[[アンドラ]]、[[イエメン]]、[[イタリア]]、[[ウガンダ]]、[[エチオピア]]、[[エリトリア]]、[[ギリシャ]](本土および[[クレタ島]])、[[クロアチア]]、[[ケニア]]、[[コンゴ民主共和国]]、[[サウジアラビア]]、[[ジョージア (国)|ジョージア]]、[[スペイン]](本土、[[カナリア諸島]]、[[バレアレス諸島]])、[[ソマリア]]、[[タンザニア]]、[[チュニジア]]、[[トルコ]](ヨーロッパ側)、[[フランス]](本土および[[コルシカ島]])、[[ブルガリア]]、[[ボスニア・ヘルツェゴヴィナ]]、[[ポルトガル]](本土および[[マデイラ島]])、[[南スーダン]]、[[モロッコ]]、[[モンテネグロ]]、[[ルワンダ]]に見られる<ref name="IUCN" />。 |
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ケニアでは標高2100-4500メートルの岩の多い森林地帯に自生が見られ、高山において[[コソノキ]]({{Snamei||Hagenia abyssinica}})の林よりも標高の高い場所に[[共優占種]]として繁茂している<ref name="hjb">{{Harvcoltxt|Beentje|1994}}.</ref>([[ケニア山#植物相]]も参照)。 |
ケニアでは標高2100-4500メートルの岩の多い森林地帯に自生が見られ、高山において[[コソノキ]]({{Snamei||Hagenia abyssinica}})の林よりも標高の高い場所に[[共優占種]]として繁茂している<ref name="hjb">{{Harvcoltxt|Beentje|1994}}.</ref>([[ケニア山#植物相]]も参照)。 |
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本属の植物はヨーロッパのものがヒースとの関わりもあってよく知られるが、種数としては約600種が南アフリカを中心とした地域に集中しており、その一部は東アフリカ東部にまで分布している。ヨーロッパから地中海に分布するものは14種ほどで、そんな中にあって本種が地中海地方からコーカサスに分布し、その上にアフリカ北部に自生していることは、この属の南北の分布域をつなぐものであり、両者に連絡があったことを示すと考えられる<ref> |
本属の植物はヨーロッパのものがヒースとの関わりもあってよく知られるが、種数としては約600種が南アフリカを中心とした地域に集中しており、その一部は東アフリカ東部にまで分布している。ヨーロッパから地中海に分布するものは14種ほどで、そんな中にあって本種が地中海地方からコーカサスに分布し、その上にアフリカ北部に自生していることは、この属の南北の分布域をつなぐものであり、両者に連絡があったことを示すと考えられる<ref>塚本・三輪 (1988:353).</ref>。 |
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== 特徴 == |
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[[低木]]あるいは[[高木]]、0.5-7.5メートルで枝は傾上する<ref name="hjb" />。以下は部位ごとの説明となる。 |
[[低木]]あるいは[[高木]]、0.5-7.5メートルで枝は傾上する<ref name="hjb" />。以下は部位ごとの説明となる。 |
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葉 |
葉は傾上し、2-6.5×約1ミリメートルである点が挙げられる<ref name="hjb" />。 |
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花 |
花は4部位からなり、色が白か桃色で長さ1.5-3ミリメートル、[[苞]]が[[小花柄]]の下方の中ほどに見られる点が挙げられる<ref name="hjb" />。 |
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果実 |
果実は赤色で長さ3ミリメートル以下となる<ref name="hjb" />[[蒴果]]で、その中に多数の小さな種子を含む<ref name="ETH">Bekele-Tesemma (2007).</ref>。 |
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== 利用 == |
== 利用 == |
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エイジュは木としては強い難燃性を持ち、鉱物に比べ軽量であり、そのため[[タバコ]]の[[パイプ (たばこ)|パイプ]](喫煙具)の材料によく用いられる。このエイジュの木の根(ブライアルート ({{Lang-en-short|briar root}}))から作られるタバコ用の[[パイプ (たばこ)|パイプ]]は、高級品(高級材)としても広く知られている<ref name="pipeclub"/>。ブライヤ材で作るパイプの原材料には、主にエイジュの木の根が使われることが多いが、廉価な製品では幹に近い箇所も利用される。 |
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パイプの種類には |
パイプの種類にはエイジュのほか、金属や陶器、カエデやサクラなどの木材、トウモロコシの芯を使ったもの([[コーンパイプ]])など様々なものがあるが、エイジュ製のものが耐久性に優れ風合いなどが好まれることから広く普及しており、しばしば「パイプの王様」と位置づけられる。 |
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[[エチオピア]]では乾いた枝を家回りの柵作りに用いたりするほか、[[薪]]、[[木炭]]作り、[[飼料]](葉および芽)、[[ミツバチ]]の餌、[[生け垣]]作りに用いる<ref name="ETH" />。 |
[[エチオピア]]では乾いた枝を家回りの柵作りに用いたりするほか、[[薪]]、[[木炭]]作り、[[飼料]](葉および芽)、[[ミツバチ]]の餌、[[生け垣]]作りに用いる<ref name="ETH" />。 |
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* [[フランス語]]: {{Lang|fr|[[:fr:bruyère arborescente|bruyère arborescente]]}}<ref>鈴木ら (1968).</ref> |
* [[フランス語]]: {{Lang|fr|[[:fr:bruyère arborescente|bruyère arborescente]]}}<ref>鈴木ら (1968).</ref> |
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* [[キクユ語]]: {{Lang|ki| |
* [[キクユ語]]: {{Lang|ki|{{linktext|mũthithinda}}}}(モジジンダ) |
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** ただしこの名称は別のエリカ属樹木 {{Snamei|sv|Erica mannii|E. mannii}}(シノニム: {{Snamei|Philippia johnstonii}})や「ヒースに似ている」[[キク科]]の低木 {{Snamei|vi|Stoebe kilimandscharica}}、さらには[[ヒノキ科]][[イトスギ属]]の[[常緑]][[高木]]である[[メキシコイトスギ]]({{Snamei||Cupressus lusitanica}})なども指す<ref>{{Harvcoltxt|Benson|1964}}.</ref>。 |
** ただしこの名称は別のエリカ属樹木 {{Snamei|sv|Erica mannii|E. mannii}} {{small|({{AU|Hook.f.}}) {{AU|Beentje}}}}(シノニム: {{Snamei|Philippia johnstonii}} {{small|{{AU|Schweinf.}} ex {{AU|Engl.}}}})や「ヒースに似ている」[[キク科]]の低木 {{Snamei|Seriphium kilimandscharicum}} {{small|({{AU|O.Hoffm.}}) {{AU|Koek.}}}}(シノニム: {{Snamei|vi|Stoebe kilimandscharica}} {{small|O.Hoffm.}})、さらには[[ヒノキ科]][[イトスギ属]]の[[常緑]][[高木]]である[[メキシコイトスギ]]({{Snamei|Hesperocyparis lusitanica}} {{small|({{AU|Mill.}}) {{AU|Bartel}}}}; シノニム: {{Snamei||Cupressus lusitanica}} {{small|Mill.}})なども指す<ref>{{Harvcoltxt|Benson|1964}}.</ref>。 |
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== 脚注 == |
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== 参考文献 == |
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* {{Cite book|last=Beentje|first=H.J.|year=1994|url=http://www.nzdl.org/gsdlmod?e=d-00000-00---off-0unescoen--00-0----0-10-0---0---0direct-10---4-------0-1l--11-en-50---20-about---00-0-1-00-0--4----0-0-11-10-0utfZz-8-10&a=d&c=unescoen&cl=CL1.6&d=HASH01b88f73433d5003648dbf5b.12.92|title=Kenya Trees, Shrubs and Lianas|location=Nairobi, Kenya|publisher=National Museum of Kenya|isbn=9966-9861-0-3|ref=harv}} |
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* Bekele-Tesemma, Azele (2007). ''Useful trees and shrubs of Ehiopia: Identification, Propagation and Management for 17 Agroclimatic Zones'', [http://www.worldagroforestry.org/usefultrees/pdflib/Erica_arborea_ETH.pdf pp. 238–9]. Nairobi, Kenya: RELMA in ICRAF Project. {{ |
* Bekele-Tesemma, Azele (2007). ''Useful trees and shrubs of Ehiopia: Identification, Propagation and Management for 17 Agroclimatic Zones'', [http://www.worldagroforestry.org/usefultrees/pdflib/Erica_arborea_ETH.pdf pp. 238–9]. Nairobi, Kenya: RELMA in ICRAF Project. {{ISBN2|92 9059 212 5}} Accessed online 27 September 2018 via http://www.worldagroforestry.org/usefultrees {{NCID|BA64717097}} |
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* Harvey-Brown, Y. & Barstow, M. (2017). ''Erica arborea''. The IUCN Red List of Threatened Species 2017: e.T73094040A109616921. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2017-3.RLTS.T73094040A109616921.en. Downloaded on '''24 September 2018'''. |
* Harvey-Brown, Y. & Barstow, M. (2017). ''Erica arborea''. The IUCN Red List of Threatened Species 2017: e.T73094040A109616921. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2017-3.RLTS.T73094040A109616921.en. Downloaded on '''24 September 2018'''. |
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* 「{{Lang|fr|bruyère}}」 [[鈴木信太郎 (フランス文学者)|鈴木信太郎]]ほか共著『スタンダード仏和辞典』大修館書店、1968年。 |
* 「{{Lang|fr|bruyère}}」 [[鈴木信太郎 (フランス文学者)|鈴木信太郎]]ほか共著『スタンダード仏和辞典』大修館書店、1968年。 |
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* 塚本洋 |
* [[塚本洋太郎]]・三輪智「エリカ〔属〕」『園芸植物大事典1』小学館、1988年、353-360頁。 |
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* {{Cite |和書 |editor=日本パイプクラブ連盟 |title=パイプ大全 |edition=第3 |publisher=[[未知谷]] |year=2009 |isbn=978-4-89642-269-6 |pages=40-43 }} |
* {{Cite |和書 |editor=日本パイプクラブ連盟 |title=パイプ大全 |edition=第3 |publisher=[[未知谷]] |year=2009 |isbn=978-4-89642-269-6 |pages=40-43 }} |
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*『園芸植物大事典 2』、(1994)、小学館 |
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2023年3月6日 (月) 05:06時点における最新版
エイジュ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Erica arborea L. | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
エイジュ | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
briar, brier, tree heath |
エイジュ(栄樹)[2]あるいはブライヤまたはブライア(英語: brier, briar)(学名:Erica arborea L. エリカ・アルボレア[3])は、ヨーロッパ南部から南西アジアなどの地中海沿岸地域や東アフリカに分布するツツジ科エリカ属の常緑低木のことである。
3-7月頃に開花し、温室などで栽培することが多い。また、スコットランドなどに多いヒースに似た白い花を咲かせることから、別名としてホワイトヒース (英: White heath) と呼ばれることもある[4]。
リンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物の一つである[5]。
分布
[編集]アルジェリア、アルバニア、アンドラ、イエメン、イタリア、ウガンダ、エチオピア、エリトリア、ギリシャ(本土およびクレタ島)、クロアチア、ケニア、コンゴ民主共和国、サウジアラビア、ジョージア、スペイン(本土、カナリア諸島、バレアレス諸島)、ソマリア、タンザニア、チュニジア、トルコ(ヨーロッパ側)、フランス(本土およびコルシカ島)、ブルガリア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ポルトガル(本土およびマデイラ島)、南スーダン、モロッコ、モンテネグロ、ルワンダに見られる[1]。
ケニアでは標高2100-4500メートルの岩の多い森林地帯に自生が見られ、高山においてコソノキ(Hagenia abyssinica)の林よりも標高の高い場所に共優占種として繁茂している[6](ケニア山#植物相も参照)。
本属の植物はヨーロッパのものがヒースとの関わりもあってよく知られるが、種数としては約600種が南アフリカを中心とした地域に集中しており、その一部は東アフリカ東部にまで分布している。ヨーロッパから地中海に分布するものは14種ほどで、そんな中にあって本種が地中海地方からコーカサスに分布し、その上にアフリカ北部に自生していることは、この属の南北の分布域をつなぐものであり、両者に連絡があったことを示すと考えられる[7]。
特徴
[編集]低木あるいは高木、0.5-7.5メートルで枝は傾上する[6]。以下は部位ごとの説明となる。
葉は傾上し、2-6.5×約1ミリメートルである点が挙げられる[6]。
花は4部位からなり、色が白か桃色で長さ1.5-3ミリメートル、苞が小花柄の下方の中ほどに見られる点が挙げられる[6]。
果実は赤色で長さ3ミリメートル以下となる[6]蒴果で、その中に多数の小さな種子を含む[8]。
利用
[編集]エイジュは木としては強い難燃性を持ち、鉱物に比べ軽量であり、そのためタバコのパイプ(喫煙具)の材料によく用いられる。このエイジュの木の根(ブライアルート (英: briar root))から作られるタバコ用のパイプは、高級品(高級材)としても広く知られている[4]。ブライヤ材で作るパイプの原材料には、主にエイジュの木の根が使われることが多いが、廉価な製品では幹に近い箇所も利用される。
パイプの種類にはエイジュのほか、金属や陶器、カエデやサクラなどの木材、トウモロコシの芯を使ったもの(コーンパイプ)など様々なものがあるが、エイジュ製のものが耐久性に優れ風合いなどが好まれることから広く普及しており、しばしば「パイプの王様」と位置づけられる。
エチオピアでは乾いた枝を家回りの柵作りに用いたりするほか、薪、木炭作り、飼料(葉および芽)、ミツバチの餌、生け垣作りに用いる[8]。
備考
[編集]諸言語における呼称
[編集]- 英語: briar, brier[2], giant heath[8][6], tree heath[9][2]
- ドイツ語: Baumheide[9]
- フランス語: bruyère arborescente[11]
ケニア:
- キクユ語: mũthithinda(モジジンダ)
- ただしこの名称は別のエリカ属樹木 E. mannii (Hook.f.) Beentje(シノニム: Philippia johnstonii Schweinf. ex Engl.)や「ヒースに似ている」キク科の低木 Seriphium kilimandscharicum (O.Hoffm.) Koek.(シノニム: Stoebe kilimandscharica O.Hoffm.)、さらにはヒノキ科イトスギ属の常緑高木であるメキシコイトスギ(Hesperocyparis lusitanica (Mill.) Bartel; シノニム: Cupressus lusitanica Mill.)なども指す[12]。
脚注
[編集]- ^ a b Harvey-Brown & Barstow (2017).
- ^ a b c 山崎・堀田 (1989).
- ^ 冨山 (2003).
- ^ a b c 日本パイプクラブ連盟 (2009).
- ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 353
- ^ a b c d e f Beentje (1994).
- ^ 塚本・三輪 (1988:353).
- ^ a b c Bekele-Tesemma (2007).
- ^ a b 塚本・三輪 (1988:354).
- ^ 小学館ランダムハウス英和大辞典 第2版 編集委員会 (1994).
- ^ 鈴木ら (1968).
- ^ Benson (1964).
参考文献
[編集]英語:
- "thithinda", "mũthithinda2" in Benson, T.G. (1964). Kikuyu-English dictionary. Oxford: Clarendon Press. p. 519. NCID BA19787203
- Beentje, H.J. (1994). Kenya Trees, Shrubs and Lianas. Nairobi, Kenya: National Museum of Kenya. ISBN 9966-9861-0-3
- Bekele-Tesemma, Azele (2007). Useful trees and shrubs of Ehiopia: Identification, Propagation and Management for 17 Agroclimatic Zones, pp. 238–9. Nairobi, Kenya: RELMA in ICRAF Project. ISBN 92 9059 212 5 Accessed online 27 September 2018 via http://www.worldagroforestry.org/usefultrees NCID BA64717097
- Harvey-Brown, Y. & Barstow, M. (2017). Erica arborea. The IUCN Red List of Threatened Species 2017: e.T73094040A109616921. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2017-3.RLTS.T73094040A109616921.en. Downloaded on 24 September 2018.
日本語:
- 「bruyère」 鈴木信太郎ほか共著『スタンダード仏和辞典』大修館書店、1968年。
- 塚本洋太郎・三輪智「エリカ〔属〕」『園芸植物大事典1』小学館、1988年、353-360頁。
- 山崎敬+堀田満「Erica L. エリカ属」 『世界有用植物事典』平凡社、1989年、424頁。ISBN 4-582-11505-5
- 小学館ランダムハウス英和大辞典 第2版 編集委員会 編『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第2)、1994年。ISBN 4-09-510101-6。
- 冨山稔 写真、大場秀章 監修『世界のワイルドフラワーI 地中海ヨーロッパ / アフリカ; マダガスカル編』学研、2003年、12・107頁。ISBN 4-05-201912-1
- 日本パイプクラブ連盟 編『パイプ大全』(第3)未知谷、2009年、40-43頁。ISBN 978-4-89642-269-6。