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{{生物分類表 |
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| fossil_range ={{fossil_range|earliest=330|305|0}}[[ペンシルベニア紀]]–[[現世]] <ref>おとそ3億3000万年前([[古生代]][[石炭紀]]ミシシッピ紀)まで遡るヒヨケムシらしい[[クモガタ類]]の化石がある。[[ヒヨケムシ#化石|後述参照]]。</ref> |
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|名称=ヒヨケムシ目 |
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|目 = '''ヒヨケムシ目''' {{Sname||Solifugae}} |
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| 学名 = ''Solifugae''<br>[[Carl Jakob Sundevall|Sundevall]], 1833 |
| 学名 = '''Solifugae'''<br>[[w:Carl Jakob Sundevall|Sundevall]], 1833 |
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| シノニム = |
| シノニム = |
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| 和名 = ヒヨケムシ |
| 和名 = ヒヨケムシ |
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| 英名 = Solifugid<br>Solifuges<br>Camel spider<br>Sun spider<br>Wind scorpion<br>Red Roman |
| 英名 = Solifugid<br>Solifuges<br>Camel spider<br>Sun spider<br>Wind scorpion<br>Red Roman |
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| 下位分類名 = [[科 (分類学)|科]] |
| 下位分類名 = [[科 (分類学)|科]] |
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| 下位分類 = |
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<center>本文参照 |
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'''ヒヨケムシ'''(日避虫)は、 |
'''ヒヨケムシ'''(日避虫)、および'''ヒヨケムシ類'''は、[[鋏角亜門]]・[[クモ綱|クモガタ綱]]の'''ヒヨケムシ目'''([[w:Solifugae|'''Solifugae''']])に所属する[[節足動物]]の総称。主に[[熱帯]]の乾燥気候の場所に分布し、巨大な[[はさみ (動物)|はさみ]]の様な[[鋏角]]を持つ活発な[[捕食者]]である。 |
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同じく[[クモガタ類]]に属する[[クモ]]らしい姿を持っているが、[[クモ]]ではなく、自ら独自の[[目 (分類学)|目]]を構成したグループである。1000種以上に及ぶ大きな分類群であるにも関わらず、ヒヨケムシに関する研究は少なく、その[[系統分類]]・[[形態学]]・および[[生態学]]は未だに不明点が多い<ref name=":2">{{Cite web|url=http://www.solpugid.com/Introduction.htm|title=Introduction: What Are Solifuges?|accessdate=2018-11-19|website=www.solpugid.com}}</ref>。 |
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== 名前 == |
== 名前 == |
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ヒヨケムシは、地域によって様々な通称を持つ[[動物]]である<ref name=":2" />。 |
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ヒヨケムシは地域によって様々な通称を持つ。和名の'''ヒヨケムシ'''('''日避虫''')と学名の"'''''Solifuges'''''"("太陽から逃げる者")は巣穴や日当りのない場所に身を隠す習性に由来する。英語ではそのコブのように盛り上がる頭胸部から'''Camel spider'''([[ラクダ]]の[[クモ]])、素速い動きから'''Wind scorpion'''や'''Wind spider'''(風の[[サソリ]]/クモ)、昼行性の種類は'''Sun spider'''([[太陽]]のクモ、[[サンディエゴ]]の[[スペイン人]]による'''arañhas 'del sol'''に由来する)、他にも'''Red Roman'''とも呼ばれる。これらのほとんどが"spider"([[クモ]])と"scorpion"([[サソリ]])という別の[[クモ綱]]の動物の名前を含むため誤解されやすい。 |
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和名「'''ヒヨケムシ'''」('''日避虫''')と学名「'''Solifugae'''」("[[太陽]]から逃げる者")は、日当たりを避け、巣穴や日当りのない場所に身を隠す習性に由来する。英語ではそのコブのように盛り上がる前体部から「'''Camel spider'''」([[ラクダ]]の[[クモ]])・素速い動きから「'''Wind scorpion」'''や「'''Wind spider'''」(風の[[サソリ]]/[[クモ]])・[[昼行性]]の種類は「'''Sun spider'''」([[太陽]]のクモ、[[サンディエゴ]]の[[スペイン人]]による「'''arañhas 'del sol」'''に由来する)、他にも「'''Red Roman'''」などの呼称がある。なお、これらのほとんどが「[[w:Spider|spider]]」([[クモ]])と「[[w:Scorpion|scorpion]]」([[サソリ]])という別の[[クモガタ類]]の名称を含むため、誤解を招きやすい。 |
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南アフリカでは女性の髪に引き寄せる噂から'''haarskeerder'''(髪を切る者)<ref name=Punzo/>、古代ギリシアでは10本脚(正確には2本の触肢と8本の脚)のような外見から'''φαλάνγιον''' ('''phalangion'''、"指骨"を意味する)と呼ばれ、他にも第一次世界大戦による[[北部アフリカ]]の駐屯軍から'''jerrymander'''や'''jerrymunglum'''と呼ばれる<ref name=Punzo/>。 |
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[[南アフリカ]]では女性の髪に引き寄せられるという噂から'''haarskeerder'''(髪を切る者)<ref name="Punzo" />・[[古代ギリシア]]では10本脚(正確には2本の[[触肢]]と8本の脚)のような外見から「'''φαλάνγιον'''」('''phalangion'''、"指骨"を意味する)と呼ばれ、他にも第一次世界大戦による[[北部アフリカ]]の駐屯軍から「'''jerrymander'''」や「'''jerrymunglum'''」と呼ばれる<ref name="Punzo" />。 |
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== 形態 == |
== 形態 == |
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[[ファイル:1911 Britannica-Arachnida-Galeodes.png |
[[ファイル:1911 Britannica-Arachnida-Galeodes.png|サムネイル|左|''Galeodes sp.'' の腹側<br >I:[[鋏角]](基節)<br >II:[[触肢]](基節)<br >III-VI:歩脚(基節)<br >''opisth'' 1:生殖口蓋''<br>ge:''生殖孔<br >''l''、''l2''、''l3'':気門<br >''a'':肛門|200px]] |
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体長は数㎜から10㎝まで達し<ref name=":2" />、陸生[[節足動物]]にしては大型種を含む。多くの種は体長5㎝前後で、最大のものは附属肢を含めて12-15㎝となる<ref name="Schmidt"/>。[[鋏角類]]にしては例外的に、分節のある前体・巨大な[[鋏角]]と発達な気管をもつ。他の[[クモガタ類]]と同様に8本脚であるが、[[触肢]]は歩脚のように発達しているため、脚が10本あると誤解されやすい。全身に毛(剛毛)が生えた[[動物]]であり、体色は多くの種類では浅い黄色やクリーム色であるが、赤、黒、白などの色の組み合わせをもつ派手な種類もある。 |
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[[ファイル:Solifugae Ventral aspect of respiratory slots 2012 01 24 0985s.JPG|left|サムネイル|ヒヨケムシの腹面、第4脚基部に一例の白い扇状突起はラケット器官である。|150px]] |
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[[ファイル:Solifugae Chelicera lateral aspect 2012 01 24 0999s.JPG|サムネイル|ヒヨケムシの鋏角、側面から。|150px]] |
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[[ファイル:عقرب الرمال 7377.jpg|サムネイル|雄、鋏角先端に上向きの鞭毛を持つ。]] |
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体長は数㎜から数㎝まで達し、陸生節足動物にしては大型種を含む。多くの種は体長5㎝辺り、最大のものは附属肢を含めて12-15㎝となる<ref name="Schmidt"/>。 |
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他の[[クモガタ類]]から明確に区別できるヒヨケムシの[[固有派生形質]]は、巨大な[[鋏角]]の他に、[[触肢]]の吸盤・後脚のラケット器官・雄の鋏角に備えた鞭毛などが挙げられる<ref name=":2" />。 |
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巨大な[[鋏角]]をもち、全身に毛が生えた[[動物]]である。頭胸部前半は大きく膨らみ、後半部は第2-4歩脚に合わせて3節に分かれている。腹部は楕円形で柔らかく、体節に分かれ、えさを食べると大きく膨らむ。 |
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=== 外部形態 === |
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頭胸部の前端中央に一対の目があり、視力は発達している。前の端からは、前向きに巨大な[[鋏角]]が突き出している。鋏角は頭より大きく、背面には不動指、腹面には上下に動く可動指があり、それが[[はさみ (動物)|鋏]]になっている。毒腺はない。[[触肢]]は歩脚状に発達し、先端には収納可能な'''吸盤'''(suctorial organ)がある<ref name="Ansie">Holm, Erik; Dippenaar-Schoeman, Ansie (2010). Goggo Guide: The arthropods of southern Africa. Pretoria: LAPA Publishers. ISBN 0799346896.</ref>。第一脚は細く短く歩行に使われず、感覚器官としての役割をしている。残り三対は歩行用で、第四脚が最も発達しており、その基部の下面には3対または5対の'''ラケット器官'''(malleoliまたはracquet organs)と呼ばれる小さな扇状の構造が並ぶ。この構造に関する功能は不明で、感覚に関わると思われる。また、一般のクモ形類と異なり、歩脚に膝節はなく、第三、四脚の転節と腿節は更に2節に分かれる。 |
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<gallery mode="packed" heights="120"> |
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File:1911 Britannica-Arachnida-Galeodes4.png|ヒヨケムシの体、側面 |
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</gallery> |
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多くの[[鋏角類]]とは異なり、前体([[頭胸部]])は部分的に分節し、[[背甲]]は3つの外骨格([[w:Peltidium|peltidium]])に分かれる<ref name=":3">{{Cite journal|last=A.|first=Dunlop, Jason|last2=C.|first2=Lamsdell, James|title=Segmentation and tagmosis in Chelicerata|url=https://www.academia.edu/28212892/Segmentation_and_tagmosis_in_Chelicerata|journal=Arthropod Structure & Development|volume=46|issue=3|language=en|issn=1467-8039}}</ref>。[[鋏角]]、[[触肢]]と第1-2脚(第1-4体節)に対応する前半部(propeltidium)は大きく膨らみ、前端中心に1対の[[複眼と単眼|単眼]]をもち、[[視力]]は発達している。後半部の2つの背板(mesopeltidium、metapeltidium)は、それぞれ第3-4脚(第5、6体節)に対応している<ref name=":3" />。この特徴は[[コヨリムシ]]に似通っている<ref name=":3" />。 |
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[[ファイル:Red roman (Solifugae).JPG|サムネイル|右|ヒヨケムシの一種の前体。2つの単眼と巨大な鋏角をもつ|220px]] |
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ヒヨケムシの最大の特徴は、前体の前端から、前向きに突き出した巨大な[[鋏角]]である。2節によって構成され、背面は不動指・腹面は上下に動く可動指があり、[[はさみ (動物)|鋏]]になっている。内側に歯が並んで強い噛む力をもち、[[毒腺]]はない<ref>[https://d-nb.info/999338064/34 Histology and ultrastructure of solifuges comparative studies of organ systems of solifuges (Arachnida, Solifugae) with special focus on functional analyses and phylogenetic interpretations Dissertation]</ref>。 |
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[[ファイル:Solifugae Ventral aspect of respiratory slots 2012 01 24 0985s.JPG|サムネイル|右|ヒヨケムシの一種の腹面。第4脚基部にラケット器官があり、直後に縦割れの生殖口蓋がある|220px]] |
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10本脚のように見えるが、他の[[クモガタ類]]と同じく実際は8本脚で、最初の1対は脚ではなく[[触肢]]である。[[触肢]]は歩脚のように発達し、先端には収納可能な'''吸盤'''(suctorial organ)がある<ref name="Ansie">Holm, Erik; Dippenaar-Schoeman, Ansie (2010). Goggo Guide: The arthropods of southern Africa. Pretoria: LAPA Publishers. ISBN 0799346896.</ref>。第一脚は細短く歩行に用いられず、補助的な感覚器官となる。残り三対は歩行用で、第4脚が最も発達しており、その基部の下面には3対ないし5対の'''ラケット器官'''(malleoli、racquet organs)と呼ばれる小さな扇状の構造が並んでいる。この構造に関する役割は不明確であるが、感覚に関わると考えられる。また、一般の[[クモガタ類]]とは異なり、歩脚に膝節はなく、第三、四脚の転節と腿節は更に2節に細分される<ref>{{Cite web|url=https://www.semanticscholar.org/paper/The-Biology-of-Camel-Spiders-Punzo/5092d72395af6d20b497d1dd7bd812ead4ad0319|title=The Biology of Camel-Spiders|accessdate=2018-11-19|last=Punzo|first=Fred|date=1998|website=Springer US|language=en}}</ref>。跗節の節数は分類群によって異なり、[[科 (分類学)|科]]の重要な同定形質の1つとされる<ref name="keys" />。また、第2-3歩脚の基節の間は1対の気門が開いている<ref name=":4" />。 |
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後体(腹部)は楕円形で柔らかい<ref name=":3" />。外見上からは10節に見えるが、実際には11節があり、第1節は退化的である<ref name=":3" />。第2節の腹側は縦割れの生殖口蓋をもち、中心は生殖孔が開く。その次の第3-4節はそれぞれの後縁中心に1対の気門が開く<ref name=":3" />。なお、第5節に1対ないし1個の気門をも加えた種類もある<ref name=":3" />。 |
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呼吸器官は、クモ形類には他に例がないほどよく発達した[[気管]]を持つ。腹側に頭胸部1対と腹部2対の気門を持ち、気管は全身に貫通し、脚と触肢までにも分布する。それを接続する数対の気嚢は鋏角に集約し、このような配置は鋏角の重さを減少し、鋏角のガス交換の効率を上がる為と思われる<ref>[http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1467803916300718 Morphology of the tracheal system of camel spiders (Chelicerata: Solifugae) based on micro-CT and 3D-reconstruction in exemplar species from three families]</ref>。 |
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=== 雌雄 === |
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<gallery mode="packed" heights="150"> |
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ファイル:Male eremobatid solifugid (F Eremobatidae) (28659789713).jpg|[[w:Eremobatidae|Eremobatidae]]科のヒヨケムシの雄 |
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ファイル:Annals of the South African Museum - Annale van die Suid-Afrikaanse Museum (1959) (17801413243).jpg|''Solpuga Grindleyi''の雄の鋏角。先端の上に特殊な鞭毛をもつ |
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</gallery> |
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[[性的二形]]で、[[雌]]は丈夫な体型をもつのに対して、[[雄]]は細身で脚は長く、ラケット器官は発達し、鋏角はやや貧弱で不動指に'''鞭毛'''(flagellum)と呼ばれる構造体を持つ。雄の鞭毛と雌の生殖口蓋の構造は種によって異なり、同定形質として重要視される<ref name="keys" />。 |
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=== 呼吸器官 === |
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性的二形で、雌の方が大きく、雄は細身で脚も長く、ラケット器官は雌より発達し、鋏角の上に'''鞭毛'''(flagellum)という突起や鞭状構造を持つ。この構造は科によって異なり、交接中には雌の生殖孔を塞ぐことが観察されるが、その功能は不明である<ref name=picta/>。 |
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ヒヨケムシの[[呼吸器|呼吸器官]]は、[[クモガタ類]]には他に例がないほどよく発達した[[気管]]系である。腹側に前体1対と後体2-3対の気門を持ち、気管は全身を貫通し、脚と触肢にも及ぶ<ref name=":4" />。それを接続する数対の気嚢は鋏角に集約している。このような配置は、巨大で力強い鋏角の重さを減少し、その[[ガス交換]]の効率を上げた特徴であると思われる<ref name=":4">{{Cite journal|date=2016-09-01|title=Morphology of the tracheal system of camel spiders (Chelicerata: Solifugae) based on micro-CT and 3D-reconstruction in exemplar species from three families|url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1467803916300718|journal=Arthropod Structure & Development|volume=45|issue=5|pages=440–451|language=en|doi=10.1016/j.asd.2016.08.004|issn=1467-8039}}</ref>。 |
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== 生態 == |
== 生態 == |
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[[ファイル:3453 Sun Spider 2011.JPG|サムネイル|[[南アフリカ]]による[[w:Solpugidae|Solpugidae]]科のヒヨケムシ]] |
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乾燥地に多く生息する。主に[[夜行性]]で、派手な体色を持つ[[昼行性]]の種類もいる。脚は速く、最速のものはおよそ時速16キロメートルまで達する<ref name="geographic">{{cite web |url=http://animals.nationalgeographic.com/animals/bugs/egyptian-giant-solpugid/ |title=Egyptian giant solpugid (camel spider) ''Galeodes arabs'' |publisher=[[National Geographic Society|National Geographic]] |accessdate=June 10, 2011}}</ref>。 |
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主に[[砂漠]]などの乾燥地に生息しており、[[乾燥帯]]の[[生態系]]における重要な[[肉食動物]]である<ref>{{Cite journal|last=Polis|first=Gary A.|last2=McCormick|first2=Sharon J.|date=1986-12|title=Scorpions, spiders and solpugids: predation and competition among distantly related taxa|url=https://doi.org/10.1007/bf00377328|journal=Oecologia|volume=71|issue=1|pages=111–116|doi=10.1007/bf00377328|issn=0029-8549}}</ref>。多くの種類は[[夜行性]]であるが、[[昼行性]]の種類もいくつかある<ref>{{Cite web|url=https://arachnology.org/arachnology/orders/solifugae/behaviour.html|title=International Society of Arachnology|accessdate=2018-11-19|website=arachnology.org|language=en}}</ref>。脚は速く、最速のものはおよそ[[時速]]16[[キロメートル]]まで達する<ref name="geographic">{{cite web |url=http://animals.nationalgeographic.com/animals/bugs/egyptian-giant-solpugid/ |title=Egyptian giant solpugid (camel spider) ''Galeodes arabs'' |publisher=[[National Geographic Society|National Geographic]] |accessdate=June 10, 2011}}</ref>。砂を掘って休憩場所を作る習性を持ち、朽ち木や[[礫]]の下にいることが多い<ref name=":0" />。一日の内の活動しない時間([[夜行性]]の種類は日中、[[昼行性]]の種類は夜)をそこで過ごす<ref name=":0" />。昼行性の種類の中で、後体を立てて体温調節をするものが知られる<ref name=":0" />。詳細の生態は、いくつかの種類のみが記載される。 |
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砂を掘って休憩場所を作る習性を持ち、朽ち木や[[礫]]の下にいることが多い。一日の内の活動しない時間([[夜行性]]の種類は日中、[[昼行性]]の種類は夜)をそこで過ごす<ref name=picta/>。 |
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=== 獲物と天敵 === |
=== 獲物と天敵 === |
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[[ファイル:Solifuge eating caterpillar animation 2016 11 19 5873.gif|220px|サムネイル|イモムシを捕食する[[w:Solpugidae|Solpugidae]]科のヒヨケムシ|代替文=|左]] |
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素早く走る活発な[[捕食者]]であり、[[昆虫]]、[[クモ]]など小動物を捕食するが、ときには[[共食い]]もし、大型種は小型の[[脊椎動物]]も食べることがある。 |
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[[ファイル:Scorpion eating solifugid (Marshal Hedin).jpg|サムネイル|サソリに捕食されるヒヨケムシ]] |
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素早く走る活発な[[捕食者]]であり、主に[[昆虫]]、[[クモ]]、[[サソリ]]など他の[[節足動物]]を捕食するが、ときには[[共食い]]もし、特に大型種では、[[トカゲ]]や[[ネズミ]]などの小型の[[脊椎動物]]も捕食できる<ref>{{Cite book|last=Punzo|first=Fred|title=The Biology of Camel-Spiders: Arachnida, Solifugae|url=https://books.google.com/books?id=cUnt7bAEcMAC&hl=en|date=1998-04-30|publisher=Springer US|language=en|isbn=9780792381556}}</ref>。 |
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徘徊しながら[[触肢]] |
徘徊しながら[[触肢]]を振りまわって周りを感知し、先端の吸盤で平滑な表面や獲物を掴み<ref name="Ansie"/>、強力な[[鋏角]]によって獲物の外皮や肉を食い千切る。その過程で後体は伸縮し、鋏角は左右相互に動きながら獲物の体液を口へ運ぶ。成体は自発的に徘徊しながら獲物を探し・幼生は待ち伏せを通じて獲物を摂るという、同一種類が成長段階の違いによって異なった捕食行動をとるものも知られる<ref>{{Cite web|url=https://www.researchgate.net/publication/232689341_Biology_Of_Galeodes_caspius_subfuscus_Solifugae_Galeodidae|title=(PDF) Biology Of Galeodes caspius subfuscus (Solifugae, Galeodidae)|accessdate=2018-11-19|website=ResearchGate|language=en}}</ref>。 |
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一方、ヒヨケムシは無毒で体も柔らか |
一方、ヒヨケムシは無毒で体も柔らかく、他の[[肉食動物]]に狙われやすい。同じ生息地の[[哺乳類]]や[[鳥類]]などの大型[[脊椎動物]]の糞からヒヨケムシの[[鋏角]]の残骸が多く見られ、特に昼行性の種類は[[鳥類]]によく摂られる。ヒヨケムシの背側に向かった中眼と敏感な視力は、その天敵への警戒のためであると思われる<ref name=":0" />。上述の[[クモ]]や[[サソリ]]などから逆に捕食されることもあり、中でも地面にトンネルを作る[[アシダカグモ科|アシダカグモ]]の一種は、何かのメカニズムを通じてヒヨケムシの1種''Metasolpuga picta'' の雄を誘惑し、自らの穴に同種の雌が居ると勘違いさせて捕食することが記載される<ref name=":0" />。 |
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同じく[[クモ綱]]の[[サソリ]]、[[クモ]]とは、時にお互いを捕食する関係となる。中でも地面にトンネルを作る[[アシダカグモ科|アシダカグモ]]の一種は、何かのメカニズムを通じて雄のヒヨケムシをクモの穴に同種の雌が居ると勘違いさせて捕食する<ref name=picta/>。 |
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=== 防御と擬態 === |
=== 防御と擬態 === |
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[[ファイル:Pseudocerastes urarachnoides.jpeg|thumb|right|ツノメクサリヘビ属の |
[[ファイル:Pseudocerastes urarachnoides.jpeg|thumb|right|[[ツノメクサリヘビ属]]の1種 ''[[w:Pseudocerastes urarachnoides|Pseudocerastes urarachnoides]]''、ヒヨケムシの形に擬態する尾端を持つ]] |
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刺激を受けると[[触肢]]を高く上げ、[[鋏角]]を開き、 |
刺激を受けると[[触肢]]を高く上げ、[[鋏角]]を開き、後体を立てる動作をすることがある。これは[[サソリ]]に[[擬態]]する威嚇姿勢と考えられている。それでも相手が諦めない場合は、[[鋏角]]で噛み付いて自衛する。鋏角を擦り合わせ、音を出して威嚇する種も知られる<ref name="Schmidt">G. Schmidt (1993). Giftige und gefährliche Spinnentiere (in German). Westarp Wissenschaften. ISBN 3-89432-405-8.</ref><ref name=":1">{{Cite journal|last=Hrušková-Martišová|first=Martina|last2=Pekár|first2=Stano|last3=Gromov|first3=Alexandr|date=2008-07-22|title=Analysis of the Stridulation in Solifuges (Arachnida: Solifugae)|url=https://doi.org/10.1007/s10905-008-9141-4|journal=Journal of Insect Behavior|volume=21|issue=5|pages=440–449|language=en|doi=10.1007/s10905-008-9141-4|issn=0892-7553}}</ref>。 |
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Solpugidae科に属し、[[ナミビア]]に生息するヒヨケムシの一種は、黒い体に白い背中を持つ。これは黒い体と白い前翅を持つ一部の''Onymacris''属と''Stenocara''属の[[ゴミムシダマシ科]]の[[甲虫]]に[[擬態]]する特徴であると思われる<ref name="mimicry">{{Cite web|url=http://www.solpugid.com/Mimicry.htm|title=Biology, Behavior, and Ecology|accessdate=2018-11-18|website=www.solpugid.com}}</ref>。 |
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擬態モデルとして、[[イラン]]に生息するツノメクサリヘビ属の[[ヘビ]]''Pseudocerastes urarachnoides''は、尻尾先端でヒヨケムシの腹部と脚に擬態し、それを使って鳥類を誘惑して捕食する([[擬態#攻撃擬態|攻撃擬態]])<ref name=mimicry/>。 |
[[擬態]]モデルとして、[[イラン]]に生息する[[ツノメクサリヘビ属]]の[[ヘビ]]''[[w:Pseudocerastes urarachnoides|Pseudocerastes urarachnoides]]'' は、尻尾の先端でヒヨケムシの腹部と脚に擬態し、それを使って[[鳥類]]を誘惑して捕食する([[擬態#攻撃擬態|攻撃擬態]])<ref name=mimicry/>。 |
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=== 繁殖行動 === |
=== 繁殖行動 === |
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繫殖は多くの[[クモガタ類]]と同様、真の[[交尾]]は行わず、[[精包]]([[精莢]])の受け渡しを通じて行う「交接」となる。 |
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多くの[[クモ綱]]動物と同じく、真の[[交尾]]は行わない。[[配偶行動]]は、雄が雌に触れれば、雌は動かない状態に入り、雄は排出した精包を[[鋏角]]で拾って雌の生殖孔へ受け渡す。''Eremobatidae''科のヒヨケムシは例外的に、雄の生殖孔から精包を直接的に雌の生殖孔へ渡す<ref name=soliinfo/>。途中で雄は鋏角を使って雌の腹部を噛んでマッサージすることも多く、相手を傷つけないように雄の鋏角は相対的に発達しないと思われる<ref name=picta/>。雌は雄よりも体が太っていて力が強く、配偶行動に失敗した雄や、終了後の雄が食べられてしまう事もあり、ほとんどの雄は無事に逃げ出すことができる種も知られる<ref name=picta/>。また、雌がハンドリングなど人為的な刺激を受けて交接過程のような動かない状態に入ることもある<ref name=soliinfo/>。 |
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[[雄]]が[[雌]]に触れれば、雌は動かない状態に入り、雄は[[鋏角]]を用いて排出した精包を掴んで雌の生殖孔へ受け渡す。ただし、Eremobatidae科のヒヨケムシは例外的に、雄は生殖孔から精包を直接的に雌の生殖孔へ渡す<ref name="soliinfo" />。交接直前で雄は鋏角を用いて雌の腹部を噛んでマッサージする行動も多く見られる。相手を傷つけないように、雄の鋏角の内歯は相対的に貧弱であったと思われる<ref name=":0">{{Cite journal|author=Robert A. Wharton|year=1986|title=Biology of the Diurnal Metasolpuga picta (Kraepelin) (Solifugae, Solpugidae) Compared with That of Nocturnal Species|url=http://www.americanarachnology.org/joa_free/joa_v14_n3/joa_v14_p363.pdf|journal=The Journal of Arachnology Vol. 14, No. 3|volume=|page=pp. 363-383}}</ref>。一部の種による飼育下の観察では、配偶行動が失敗し、および交接終了後の雄が雌に食べられてしまう事が高頻度に発生するが、自然環境ではほとんどが無事に逃げ出すことができる<ref name=":0" />。また、雌がハンドリングなど人為的な刺激を受けて交接過程のような動かない状態に入ることもある<ref name="soliinfo" />。 |
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産卵を迎えると、雌は深く穴を掘って卵を産む、卵の数は種によって50から200までとなる。卵の世話をする習性を持つ雌は卵を保護する間に捕食しない為、産卵の前には大量の餌を摂食する。幼生は9-10齢期を通じて成体になる。一生の寿命は1年以下、雄の方が短命と思われ、生活環は一年周期である<ref name="Punzo">Fred Punzo (1998). The Biology of Camel-Spiders. Springer. ISBN 0-7923-8155-6. Retrieved January 25, 2010.</ref>。 |
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雄の鞭毛の交接における役割は明らかになっていないが、交接の頃、雄が鞭毛を雌の生殖孔に差し込んでおり、そして交接後は鋏角を砂に潜んで見繕う行動が観察される<ref name=":0" />。 |
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産卵を迎えると、雌は深く穴を掘って卵を産む、卵の数は種によって50から200までとなる。卵の世話をする習性を持つ雌は卵を保護する間に捕食はしない為、産卵の前には大量の餌を摂る<ref>G. Schmidt (1993). ''Giftige und gefährliche Spinnentiere'' (in German). Westarp Wissenschaften. ISBN 3-89432-405-8.</ref>。幼生は9-10齢期を通じて成体になる。一生の寿命は1年以下、雄の方が短命と思われ、[[生活環]]は一年周期と考えられる<ref name="Punzo">Fred Punzo (1998). The Biology of Camel-Spiders. Springer. ISBN 0-7923-8155-6. Retrieved January 25, 2010.</ref>。 |
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== 分布と分類 == |
== 分布と分類 == |
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[[オセアニア]]を除き、[[砂漠]]などの乾燥した地方を中心として世界の[[熱帯]]から[[亜熱帯]]にかけて分布する。[[日本]]には分布しない。 |
[[オセアニア]]を除き、[[砂漠]]などの乾燥した地方を中心として世界の[[熱帯]]から[[亜熱帯]]にかけて分布する。[[日本]]には分布しない。 |
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多くの[[クモガタ類]]と同様、ヒヨケムシの[[クモガタ類]]における系統的位置は明らかになっていない。1990年代前後の多くの形態に基づいた研究では、ヒヨケムシは[[カニムシ]]に最も近縁(共にHaplocnemataを構成する<ref>{{Cite journal|last=Shultz|first=Jeffrey W.|date=1990-03|title=EVOLUTIONARY MORPHOLOGY AND PHYLOGENY OF ARAGHNIDA|url=https://doi.org/10.1111/j.1096-0031.1990.tb00523.x|journal=Cladistics|volume=6|issue=1|pages=1–38|doi=10.1111/j.1096-0031.1990.tb00523.x|issn=0748-3007}}</ref>)であると考えられた<ref>{{Cite web|url=https://www.researchgate.net/publication/247945011_The_Phylogeny_of_the_Extant_Chelicerate_Orders|title=(PDF) The Phylogeny of the Extant Chelicerate Orders|accessdate=2018-11-19|website=ResearchGate|language=en}}</ref>。しかしこれは多くの[[分子系統学]]的情報に支持されず、不安定であるものの、代わりに[[クツコムシ]]や胸板[[ダニ]]類([[w:Acariformes|Acariformes]])との類縁関係を示唆する結果が出ている<ref>{{Cite web|url=https://www.researchgate.net/publication/41422286_Arthropod_relationships_revealed_by_phylogenomic_analysis_of_nuclear_protein-coding_sequences|title=(PDF) Arthropod relationships revealed by phylogenomic analysis of nuclear protein-coding sequences|accessdate=2018-11-19|website=ResearchGate|language=en}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Sharma|first=Prashant P.|last2=Kaluziak|first2=Stefan T.|last3=Pérez-Porro|first3=Alicia R.|last4=González|first4=Vanessa L.|last5=Hormiga|first5=Gustavo|last6=Wheeler|first6=Ward C.|last7=Giribet|first7=Gonzalo|date=2014-08-08|title=Phylogenomic Interrogation of Arachnida Reveals Systemic Conflicts in Phylogenetic Signal|url=https://academic.oup.com/mbe/article/31/11/2963/2925668|journal=Molecular Biology and Evolution|volume=31|issue=11|pages=2963–2984|language=en|doi=10.1093/molbev/msu235|issn=1537-1719}}</ref>。 |
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===科=== |
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化石種を含め、13科153属1100種以上が記載されている。 |
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===下位分類=== |
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化石種をも含め、13科153属1100種以上のヒヨケムシが記載されている。[[クモガタ綱]]のなかで、ヒヨケムシ目は6番目に多様化した[[目 (分類学)|目]]である<ref name=":2" />。 |
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以下の表記した |
以下は既知の13科について記述する。表記した跗節(脚の終端の節単位)数は「第1脚から第4脚までの跗節の節数」である<ref name="keys">{{Cite web|url=http://www.solpugid.com/Key%20to%20Families.htm|title=Key to Families|accessdate=2018-11-18|website=www.solpugid.com}}</ref>。 |
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; |
;[[w:Ammotrechidae|Ammotrechidae]] |
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ファイル:Chinchippusperuvianus.jpg|Chinchippus peruvianus |
ファイル:Chinchippusperuvianus.jpg|''Chinchippus peruvianus'' |
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File:Ammotrecha itzaana? (4414721993).jpg|Ammotrecha sp. |
File:Ammotrecha itzaana? (4414721993).jpg|''Ammotrecha'' sp. |
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:[[南アメリカ]]から[[アメリカ]]南部まで広く分布する。化石1種を含めて、5亜科22属84種が知られる。 |
:[[南アメリカ]]から[[アメリカ]]南部まで広く分布する。化石1種を含めて、5亜科22属84種が知られる。 |
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:歩脚の |
:歩脚の跗節数は1-1-1-1から1-2-2-4となり、第1脚の符節に爪が無い。雄の鞭毛は運動できず、半透明の膜状で鋏角内側に付く。 |
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: |
:前体と[[鋏角]]の接続部は後方へ斜め、眼の部分が前へ突き出すように見える<ref>{{Cite web|url=http://www.solpugid.com/Ammotrechidae.htm|title=Family Ammotrechidae|accessdate=2018-11-18|website=www.solpugid.com}}</ref>。 |
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;[[w:Ceromidae|Ceromidae]] |
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;''Ceromidae'' |
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:現生種は[[南部アフリカ]]に分布する。ブラジルからの化石1種を含めて、4属21種が知られる。 |
:現生種は[[南部アフリカ]]に分布する。ブラジルからの化石1種を含めて、4属21種が知られる。 |
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:歩脚の |
:歩脚の跗節数は1-2-2-2となり、第1脚の符節に2本の爪を持つ。 |
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;[[w:Daesiidae|Daesiidae]] |
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;''Daesiidae'' |
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ファイル:Gluvia dorsalis - 01.jpg|''Gluvia dorsalis'' |
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ファイル:Gluvia1.jpg|''Gluvia dorsalis'' |
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:[[南アメリカ]]南部、[[ヨーロッパ]]南部、[[アフリカ]][[南部アフリカ|南部]]・[[東アフリカ|東部]]・[[北アフリカ|北部]]、[[中東]]、[[インド]]まで広く分布する。6亜科29属177種が知られる。 |
:[[南アメリカ]]南部、[[ヨーロッパ]]南部、[[アフリカ]][[南部アフリカ|南部]]・[[東アフリカ|東部]]・[[北アフリカ|北部]]、[[中東]]、[[インド]]まで広く分布する。6亜科29属177種が知られる。 |
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:歩脚の |
:歩脚の跗節数は1-1-1-1から1-2-2-4となり、第1脚の符節に爪が無い。雄の鞭毛は運動能力を持ち、鞭状から膜状まで多様である。 |
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;[[w:Eremobatidae|Eremobatidae]] |
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;''Eremobatidae'' |
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ファイル:Arachnida, Solifugae, Eremobatidae (3334820318).jpg| Eremobatidae科の1種 |
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ファイル:Solifugid on decomposed granite (9002157633).jpg|Eremobatidae科の1種の雄 |
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:[[アメリカ]]の砂漠地域から[[中央アメリカ]]まで分布する。2亜科7属187種が知られる。 |
:[[アメリカ]]の砂漠地域から[[中央アメリカ]]まで分布する。2亜科7属187種が知られる。 |
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:歩脚の |
:歩脚の跗節数は1-1-1-(1-3)となり、第1脚の符節に1-2本の爪を持つ。雄の鞭毛は運動能力を持ち、集約した毛束である。 |
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:雄の鋏角は途中から細くなり、不動指は針状やへら状など独特の形となるものが多い |
:雄の[[鋏角]]は途中から細くなり、不動指は針状やへら状など独特の形となるものが多い<ref>{{Cite web|url=http://www.solpugid.com/Eremobatidae.htm|title=Family Eremobatidae|accessdate=2018-11-18|website=www.solpugid.com}}</ref>。配偶行動は他のヒヨケムシと異なり、精包は直接的に雄の生殖孔から雌の生殖孔へ渡す<ref name="soliinfo">{{Cite web|url=http://www.solifugae.info/courtship.html|title=Courtship and Mating of Solifuges|accessdate=2018-11-18|website=www.solifugae.info}}</ref>。 |
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;[[w:Galeodidae|Galeodidae]] |
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;''Galeodidae''(サメヒヨケムシ科) |
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File:Galeodes.jpg|Galeodes sp. |
File:Galeodes.jpg|''Galeodes'' sp. |
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File:Сольпуга обыкновенная 1.0.jpg|Galeodes araneoides |
File:Сольпуга обыкновенная 1.0.jpg|''Galeodes araneoides'' |
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:[[アフリカ]][[東アフリカ|東部]]・[[北アフリカ|北部]]から[[中東]]・[[インド]]・[[モンゴル]]まで広く分布する。9属200種が知られる大きな |
:[[アフリカ]][[東アフリカ|東部]]・[[北アフリカ|北部]]から[[中東]]・[[インド]]・[[モンゴル]]まで広く分布する。9属200種が知られる大きなグループである。 |
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:歩脚の |
:歩脚の跗節数は1-2-2-3となり、それぞれの爪に毛が生える。雄の鞭毛は運動能力を持ち、後向きの鞭状となる。 |
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:普遍な大型種が含める代表的な科の1つ。鋏角の摩擦音で威嚇する習性が知られる。 |
:普遍な大型種が含める代表的な科の1つ。[[鋏角]]の摩擦音で威嚇する習性が知られる<ref name=":1" />。 |
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;[[w:Gylippidae|Gylippidae]] |
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;''Gylippidae'' |
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:[[近東]]・[[南アフリカ]]に分布する。5属25種が知られる。 |
:[[近東]]・[[南アフリカ]]に分布する。5属25種が知られる。 |
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:歩脚の |
:歩脚の跗節数は1-1-1-1となる。 |
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;[[w:Hexisopodidae|Hexisopodidae]] |
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;''Hexisopodidae'' |
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ファイル:Chelypus00.jpg|Chelypus sp. |
ファイル:Chelypus00.jpg|''Chelypus'' sp. |
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:[[南アフリカ]]に分布する。2属25種が知られる。 |
:[[南アフリカ]]に分布する。2属25種が知られる。 |
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:歩脚の |
:歩脚の跗節数は1-1-1-1となり。第4脚の符節に爪が無い。雄の鞭毛は運動能力を持つ、渦巻き状に巻く鞭状である。 |
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:砂堀り特化 |
:砂堀りに特殊化したグループ。脚は極端に短く、ラケット器官は3対のみ。全身は濃い毛束に覆われ、その特徴的な外見から「Teddybear Solifuges」という愛称を持つ<ref>{{Cite news|title=The natural history of teddy-bear solifugids: cuddly wonders of the desert|date=2015-10-16|url=https://arthropodecology.com/2015/10/16/the-natural-history-of-teddy-bear-solifugids-cuddly-wonders-of-the-desert/|accessdate=2018-11-18|language=en-US|work=Arthropod Ecology}}</ref>。 |
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;[[w:Karschiidae|Karschiidae]] |
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;''Karschiidae'' |
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:[[ヨーロッパ]]南東部・[[北アフリカ]]・[[中東]]から[[モンゴル]]まで広く分布する。4属40種が知られる。 |
:[[ヨーロッパ]]南東部・[[北アフリカ]]・[[中東]]から[[モンゴル]]まで広く分布する。4属40種が知られる。 |
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:歩脚の |
:歩脚の跗節数は1-1-1-1となる。雄の鞭毛は運動できず、渦巻き状に巻く鞭状から板状まであり、基部に特殊な毛束を持つ。 |
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:雄の鋏角の不動指は二股状など |
:雄の[[鋏角]]の不動指は二股状など独特な形となり、[[触肢]]にも特殊な棘が集約する<ref>{{Cite web|url=https://sites.google.com/site/eusimonia/featuresofthekarschidaefamily|title=featuresofthekarschidaefamily - eusimonia|accessdate=2018-11-18|website=sites.google.com}}</ref>。 |
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;[[w:Melanoblossidae|Melanoblossidae]] |
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;''Melanoblossidae'' |
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:[[南アフリカ]]・[[南東アジア]]([[ベトナム]]・[[インドネシア]])に分布する。2亜科6属16種が知られる。 |
:[[南アフリカ]]・[[南東アジア]]([[ベトナム]]・[[インドネシア]])に分布する。2亜科6属16種が知られる。 |
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:歩脚の |
:歩脚の跗節数は1-1-1-1から1-2-2-4となる。雄は数対の短い鞭毛を持ち、[[鋏角]]の内側に付く。 |
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:唯一 |
:唯一で[[南東アジア]]に生息するヒヨケムシ''Dinorhax rostrumpsittacici'' が知られる。 |
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;[[w:Mummuciidae|Mummuciidae]] |
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;''Mummuciidae'' |
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:[[南アメリカ]]に広く分布する。10属18種が知られる。 |
:[[南アメリカ]]に広く分布する。10属18種が知られる。 |
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:歩脚の |
:歩脚の跗節数は1-1-1-(1-2)となる。雄の鞭毛は膜状で鋏角内側に付く。 |
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:体は往々にして[[ひまわり]]の[[種子]]に似通った黒白の縞模様を持つ。世界最小のヒヨケムシ''Vempironiella aguilari'' を含む<ref>{{Cite journal|last=Botero-Trujillo|first=Ricardo|date=2016|title=The smallest known solifuge: Vempironiella aguilari, new genus and species of sun-spider (Solifugae: Mummuciidae) from the coastal desert of Peru|url=http://www.jstor.org/stable/24892339|journal=The Journal of Arachnology|volume=44|issue=2|pages=218–226}}</ref>。 |
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:体に[[ひまわり]]の種子の様な黒白の縞模様を持つ。中に世界最小のヒヨケムシUspallata pulchraが知られる。 |
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;†[[w:Protosolpugidae|Protosolpugidae]] |
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:[[アメリカ]]、[[イリノイ州]]の[[石炭紀]]地層から発見された[[化石]]種''Protosolpuga carbonaria'' 1種のみからなる。 |
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;†''Protosolpugidae'' |
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;[[w:Rhagodidae|Rhagodidae]] |
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:[[アメリカ]]、[[イリノイ州]]の石炭紀地層から発見された化石Protosolpuga carbonaria1種のみが知られる。 |
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;''Rhagodidae'' |
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ファイル:VB 075 Wind Scorpion.jpg| |
ファイル:VB 075 Wind Scorpion.jpg| Rhagodidae科の1種 |
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ファイル:Rhagodima nigrocincta.jpg|''Rhagodima nigrocincta'' |
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:[[アフリカ]]から[[インド]]まで分布する。27属98種が知られる。 |
:[[アフリカ]]から[[インド]]まで分布する。27属98種が知られる。 |
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:歩脚の |
:歩脚の跗節数は1-1-1-1となり、第1脚の基符節に2本の爪を持つ。雄の鞭毛は運動できず、角の様な太短い板状で[[鋏角]]内側に付く。 |
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:体型のずんぐりした |
:体型のずんぐりしたグループ。後体の尾端は半円形で肛門は腹面に付く。脚は太短く[[鋏角]]は大きく発達し、派手な体色を持つ種類が多い<ref>{{Cite web|url=http://www.solpugid.com/Rhagodidae.htm|title=The Arachnid Order Solifugae|accessdate=2018-11-18|website=www.solpugid.com}}</ref>。いくつかの種類からは、[[アリ]]を自発的に襲いかかる行動が知られる<ref>{{Cite news|title=Camel Spiders Are Fast, Furious and Horrifically Fascinating|last=Bittel|first=Jason|url=https://www.smithsonianmag.com/science-nature/camel-spiders-are-fast-furious-and-horrifically-fascinating-180964439/|accessdate=2018-11-18|language=en|work=Smithsonian}}</ref>。 |
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;[[w:Solpugidae|Solpugidae]](ヒヨケムシ科) |
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;''Solpugidae''(ヒヨケムシ科) |
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ファイル:Metasolpuga picta00.jpg|Metasolpuga |
ファイル:Metasolpuga picta00.jpg|''Metasolpuga picta'' |
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ファイル:Solpugema00.jpg|''Solpugema'' sp. |
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ファイル:Solpugema02.jpg|''Solpugema'' sp. |
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ファイル:Solifugae Family Solpugidae tarsi 3 and 4 2012 01 25 1205s.JPG|第3、4脚の符節 |
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:[[アフリカ]]に広く分布する。2亜科23属200種が知られ、'' |
:[[アフリカ]]に広く分布する。2亜科23属200種が知られ、Galeodidae''科''並の大きなグループである。 |
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:歩脚の |
:歩脚の跗節数は1-4-4-(6-7)となり、第1脚の符節に爪が無い。雄の鞭毛は可動だが自発的に運動できず、後向きの鞭状である。 |
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:代表的な科の1つ。雄は鋏角で雌を持ちあげながら歩き回る配偶行動を持つ種が知られる<ref> |
:代表的な科の1つ。雄は鋏角で雌を持ちあげながら歩き回る配偶行動を持つ種が知られる<ref>{{Cite web|url=http://www.naturalhistorymag.com/features/122921/the-naming-of-parts|title=The Naming of Parts {{!}} Natural History Magazine|accessdate=2018-11-18|website=www.naturalhistorymag.com|language=en}}</ref>。派手な体色をもつ[[昼行性]]の種類がある<ref name=":0" />。 |
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== 化石 == |
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[[ファイル:A monograph of the terrestrial Palaeozoic Arachnida of North America photos 30-35 32.png|サムネイル|220px|''Protosolpuga'' の[[化石]]]] |
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ヒヨケムシは[[化石]]に保存しにくく、化石種の発見例は非常に稀である<ref name=":5">{{Cite web|url=http://www.solpugid.com/Fossil%20History.htm|title=Fossil History|accessdate=2018-11-19|website=www.solpugid.com}}</ref><ref>{{Cite news|title=Fossil arachnids|date=2016-08-30|url=https://depositsmag.com/2016/08/30/fossil-arachnids/|accessdate=2018-11-19|language=en-US|work=Deposits Magazine}}</ref>。 |
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およそ3億3000万年前([[古生代]][[石炭紀]]ミシシッピ紀)まで遡る''Schneidarachne saganii'' という正体が明らかになっていない[[クモガタ類]]の化石は、ヒヨケムシらしい形質をもち、おそらく基盤的なヒヨケムシであると考えられる<ref>{{Cite journal|last=Dunlop|first=Jason|last2=Rößler|first2=Ronny|date=2003-04-28|title=An enigmatic, solifuge-like fossil arachnid from the Lower Carboniferous of Kamienna Göra (Intra-Sudetic Basin), Poland|url=https://www.researchgate.net/publication/225955154_An_enigmatic_solifuge-like_fossil_arachnid_from_the_Lower_Carboniferous_of_Kamienna_Gora_Intra-Sudetic_Basin_Poland|journal=Paläontologische Zeitschrift|volume=77|pages=389–400|doi=10.1007/BF03006949}}</ref>。明らかにヒヨケムシである最古の化石種は、およそ3億500万年前([[古生代]][[石炭紀]][[ペンシルベニア紀]])まで遡る1科1属の''Prosolpuga carbonaria'' である<ref name=":5" />。ほとんどが[[乾燥帯]]に生息する現生ヒヨケムシとは異なり、この化石種は[[沼地]]の多い[[森林]]に生息していたと考えられる<ref name=":5" />。後述の[[白亜紀]]の''Cushingia ellenbergeri'' も似通っており、森林に生息していたと推測される<ref name=":6">{{Cite journal|author=|year=|date=2015-09-01|title=A camel spider from Cretaceous Burmese amber|url=https://bechly.lima-city.de/Dunlop_et_al_2015.pdf|journal=Cretaceous Research|volume=56|page=|pages=265–273|language=en|doi=10.1016/j.cretres.2015.05.003|issn=0195-6671}}</ref>。他にも[[化石]]の保存状態が例外的に良好な''Cratosolpuga wunderlichi''(およそ1億1500万年前、[[白亜紀]]、Ceromidae科)が知られる<ref>Dunlop, J. A. & Martill, D. M. 2004. Four additional specimens of the fossil camel spider ''Cratosolpuga wunderlichi'' Selden 1996 (Arachnida: Solifugae) from the Lower Cretaceous Crato Formation of Brazil. Revista Ibérica de Aracnología 9: 143-156.</ref>。 |
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[[琥珀]]に保存された化石ヒヨケムシもあり、以下の種が挙げられる。 |
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* ''Cushingia ellenbergeri''(およそ9000万年前、[[白亜紀]]Cenomanian紀、Karschiidae科?)<ref name=":6" /><ref>{{Cite web|url=https://www.researchgate.net/publication/310782385_The_Second_Camel_Spider_Arachnida_Solifugae_from_Burmese_Amber|title=The Second Camel Spider (Arachnida, Solifugae) from Burmese Amber {{!}} Request PDF|accessdate=2018-11-19|website=ResearchGate|language=en}}</ref> |
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* ''Palaeoblossia groehni''(およそ5000-4000万年前、[[古第三紀]]-[[始新世]]、Daesiidae科)<ref>{{Cite journal|last=Dunlop|first=Jason A.|last2=Wunderlich|first2=Jörg|last3=Poinar|first3=George O.|date=2003-09|title=The first fossil opilioacariform mite (Acari: Opilioacariformes) and the first Baltic amber camel spider (Solifugae)|url=https://doi.org/10.1017/s0263593300000663|journal=Transactions of the Royal Society of Edinburgh: Earth Sciences|volume=94|issue=03|pages=261–273|doi=10.1017/s0263593300000663|issn=0263-5933}}</ref> |
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* ''Happlodontus proteus''(およそ3000-1000万年前、[[中新世]]-[[新第三紀]]、Ammotrechidae科)<ref>Poinar, G. O. & Santiago-Blay, J. A. 1989. A fossil solpugid, ''Happlodontus proteus'', new genus, new species (Arachnida: Solifugae) from Dominican amber. Journal of the New York Entomological Society 97: 125–132.</ref> |
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== 人間との係わり == |
== 人間との係わり == |
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[[ファイル:Solifugo XIX.jpg|サムネイル|[[サソリ]]とヒヨケムシの闘争が描かれた[[スタンプ]]]] |
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大型種に嚙まれると傷つけるほど痛む種もいるが、ヒヨケムシは無毒で人間を自発的に襲う動物ではなく、傷口を下手にケアしない限り症状を起こす恐れは無いとされる<ref>{{cite book |author=David Penney |year=2009 |title=Common Spiders and Other Arachnids of The Gambia, West Africa |publisher=Siri Scientific Press |isbn=978-0-9558636-3-9 |chapter=Solifugae (camel spiders) |page=71 |url=https://books.google.com/books?id=yjVGuc76_RkC&pg=PA71}}</ref>。 |
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過剰に刺激され、[[鋏角]]で噛み付いて防御する場合は、人間の皮膚を貫通できるほどの力強い大型種も存在するが、ヒヨケムシは無毒で人間を自発的に襲うことはなく、基本的には無害の動物である<ref name=":7">{{Cite news|title=Camel Spiders: Facts & Myths|url=https://www.livescience.com/40025-camel-spiders-facts.html|accessdate=2018-11-20|work=Live Science}}</ref><ref>{{cite book |author=David Penney |year=2009 |title=Common Spiders and Other Arachnids of The Gambia, West Africa |publisher=Siri Scientific Press |isbn=978-0-9558636-3-9 |chapter=Solifugae (camel spiders) |page=71 |url=https://books.google.com/books?id=yjVGuc76_RkC&pg=PA71}}</ref>。 |
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人間の日常とさほど係わりのない動物で、その奇妙な姿から「毒を持つ」「[[ラクダ]]を喰う」など、不正確な情報や根拠のない噂が原産地やネットなどで誇張されて伝えられた。紛らわしい英語名に加えて、[[クモ]](spider)や[[サソリ]](scorpion) |
人間の日常とはさほど係わりのない[[動物]]であるが、[[クモ]]や[[サソリ]]などと同じく、様々な[[都市伝説]]や[[噂]]に因んで過剰に誤解される一生物である<ref name=":7" />。その奇妙な姿から「猛毒を持つ」「[[ラクダ]]を喰う」など、不正確な情報や根拠のない噂が原産地やネットなどで誇張されて伝えられた<ref name=":7" />。石の裏返しなどの経由を通じて日当たりに晒すと、すぐ影のある場所へ向かって走り、そこで近くの人の影に向かう場合は「人を追いかかる」と誤解されてしまうこともある<ref name=":7" />。紛らわしい英語名に加えて、[[クモ]](spider)や[[サソリ]](scorpion)と誤って紹介されることも多い<ref name=":7" />。 |
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稀に[[ペット]]として流通するが、不明点の多い生態により確立した飼育方法は無く、人工飼育に不向きとされる。 |
稀に[[ペット]]として流通するが、不明点の多い生態により確立した飼育方法は無く、人工飼育に不向きとされる。 |
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=== 疑問視される有毒種報告 === |
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[[インド]]産の''Rhagodes nigrocinctus''という種に関しては、上皮腺に毒があるとの報告がインド人の研究者らによって1978年になされている。それによれば、この種の上皮腺から抽出した毒をトカゲ類に注入したところ、10匹のうち7匹が麻痺したとされる。しかし他のヒヨケムシからはそのような上皮腺は見つかっておらず、この種についての追試も行われていない。またもし上皮腺に毒があるとしても、その毒を彼らがどのように用いるのかも不明である<ref>[http://oaktrust.library.tamu.edu/bitstream/handle/1969.1/ETD-TAMU-3278/REDDICK-THESIS.pdf THE DIVERSITY, DISTRIBUTION AND FEEDING BEHAVIOR OF SOLIFUGES (ARACHNIDA; SOLIFUGAE) IN KENYA (112p)]Aruchami, M. & Sundara Rajulu, G. (1978) An investigation on the poison glands and the nature of the venom of ''Rhagodes nigrocinctus'' (Solifugae: Arachnida). ''Nat. Acad. Sci. Letters (India)'' '''1''': 191-192.</ref>。 |
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[[インド]]産の''Rhagodes nigrocinctus'' という種に関しては、上皮腺に毒があるとの報告がインド人の研究者らによって1978年になされている。それによれば、この種の上皮腺から抽出した毒をトカゲ類に注入したところ、10匹のうち7匹が麻痺したとされる。しかし他のヒヨケムシからはそのような上皮腺は見つかっておらず、この種についての追試も行われていない。またもし上皮腺に毒があるとしても、その毒を彼らがどのように用いるのかも不明である<ref>[http://oaktrust.library.tamu.edu/bitstream/handle/1969.1/ETD-TAMU-3278/REDDICK-THESIS.pdf THE DIVERSITY, DISTRIBUTION AND FEEDING BEHAVIOR OF SOLIFUGES (ARACHNIDA; SOLIFUGAE) IN KENYA (112p)]Aruchami, M. & Sundara Rajulu, G. (1978) An investigation on the poison glands and the nature of the venom of ''Rhagodes nigrocinctus'' (Solifugae: Arachnida). ''Nat. Acad. Sci. Letters (India)'' '''1''': 191-192.</ref>。 |
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==ギャラリー== |
== ギャラリー == |
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File:Sun Spider (Solifugae) (16706187405).jpg|''Solpugidae''科のヒヨケムシ |
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File:Sun Spider (Solifugae) (16706187405).jpg |
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File:SUN SPIDER (SOLPIGID) (8-8-12) 78 circulo montana, patagonia lake ranch estates, scc, az -01 (7748883784).jpg |
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File:Solifugae Solpugidae showing malleoli 2012 01 24 0975t.JPG|ラケット器官の特写。(''Solpugidae''科) |
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File:Solfugid in veld near Uniondale (Western Cape) 1600.jpg |
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File:Gluvia3.jpg|カメムシを捕食する''Gluvia dorsalis''(''Daesiidae''科) |
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File:Solifuge eating caterpillar animation 2016 11 19 5873.gif|イモムシを捕食するヒヨケムシ(''Solpugidae''科)、腹部は伸縮し、鋏角は左右相互に動く。 |
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File:Arachnida, Solifugae, immature (4436710511).jpg |
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File:Scorpion eating solifugid (Marshal Hedin).jpg|[[サソリ]]に捕食されるヒヨケムシ。 |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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== 参考文献 == |
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*内田亨監修 『動物系統分類学』第7巻(中A)「真正蜘蛛類」、中山書店。 |
* 内田亨監修 『動物系統分類学』第7巻(中A)「真正蜘蛛類」、中山書店。 |
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*[http://www.solpugid.com/ The Arachnid Order Solifugae] |
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== 関連項目 == |
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*[[鋏角類]] |
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*[[クモガタ類]] |
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== 外部リンク == |
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* [http://www.solpugid.com/ The Arachnid Order Solifugae] |
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* [http://www.solifugae.info/introduction.html Introduction: What are Solifuges?] |
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* [https://www.livescience.com/40025-camel-spiders-facts.html Camel Spiders: Facts & Myths] |
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2018年12月4日 (火) 11:31時点における版
ヒヨケムシ目 | |||||||||||||||
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ヒヨケムシの一種(アリゾナ州)
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地質時代 | |||||||||||||||
石炭紀(ペンシルベニア紀)[2] - 現世 | |||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||
Solifugae Sundevall, 1833 | |||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||
ヒヨケムシ | |||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||
Solifugid Solifuges Camel spider Sun spider Wind scorpion Red Roman | |||||||||||||||
科 | |||||||||||||||
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ヒヨケムシ(日避虫)、およびヒヨケムシ類は、鋏角亜門・クモガタ綱のヒヨケムシ目(Solifugae)に所属する節足動物の総称。主に熱帯の乾燥気候の場所に分布し、巨大なはさみの様な鋏角を持つ活発な捕食者である。
同じくクモガタ類に属するクモらしい姿を持っているが、クモではなく、自ら独自の目を構成したグループである。1000種以上に及ぶ大きな分類群であるにも関わらず、ヒヨケムシに関する研究は少なく、その系統分類・形態学・および生態学は未だに不明点が多い[3]。
名前
ヒヨケムシは、地域によって様々な通称を持つ動物である[3]。
和名「ヒヨケムシ」(日避虫)と学名「Solifugae」("太陽から逃げる者")は、日当たりを避け、巣穴や日当りのない場所に身を隠す習性に由来する。英語ではそのコブのように盛り上がる前体部から「Camel spider」(ラクダのクモ)・素速い動きから「Wind scorpion」や「Wind spider」(風のサソリ/クモ)・昼行性の種類は「Sun spider」(太陽のクモ、サンディエゴのスペイン人による「arañhas 'del sol」に由来する)、他にも「Red Roman」などの呼称がある。なお、これらのほとんどが「spider」(クモ)と「scorpion」(サソリ)という別のクモガタ類の名称を含むため、誤解を招きやすい。
南アフリカでは女性の髪に引き寄せられるという噂からhaarskeerder(髪を切る者)[4]・古代ギリシアでは10本脚(正確には2本の触肢と8本の脚)のような外見から「φαλάνγιον」(phalangion、"指骨"を意味する)と呼ばれ、他にも第一次世界大戦による北部アフリカの駐屯軍から「jerrymander」や「jerrymunglum」と呼ばれる[4]。
形態
体長は数㎜から10㎝まで達し[3]、陸生節足動物にしては大型種を含む。多くの種は体長5㎝前後で、最大のものは附属肢を含めて12-15㎝となる[5]。鋏角類にしては例外的に、分節のある前体・巨大な鋏角と発達な気管をもつ。他のクモガタ類と同様に8本脚であるが、触肢は歩脚のように発達しているため、脚が10本あると誤解されやすい。全身に毛(剛毛)が生えた動物であり、体色は多くの種類では浅い黄色やクリーム色であるが、赤、黒、白などの色の組み合わせをもつ派手な種類もある。
他のクモガタ類から明確に区別できるヒヨケムシの固有派生形質は、巨大な鋏角の他に、触肢の吸盤・後脚のラケット器官・雄の鋏角に備えた鞭毛などが挙げられる[3]。
外部形態
-
ヒヨケムシの体、側面
多くの鋏角類とは異なり、前体(頭胸部)は部分的に分節し、背甲は3つの外骨格(peltidium)に分かれる[6]。鋏角、触肢と第1-2脚(第1-4体節)に対応する前半部(propeltidium)は大きく膨らみ、前端中心に1対の単眼をもち、視力は発達している。後半部の2つの背板(mesopeltidium、metapeltidium)は、それぞれ第3-4脚(第5、6体節)に対応している[6]。この特徴はコヨリムシに似通っている[6]。
ヒヨケムシの最大の特徴は、前体の前端から、前向きに突き出した巨大な鋏角である。2節によって構成され、背面は不動指・腹面は上下に動く可動指があり、鋏になっている。内側に歯が並んで強い噛む力をもち、毒腺はない[7]。
10本脚のように見えるが、他のクモガタ類と同じく実際は8本脚で、最初の1対は脚ではなく触肢である。触肢は歩脚のように発達し、先端には収納可能な吸盤(suctorial organ)がある[8]。第一脚は細短く歩行に用いられず、補助的な感覚器官となる。残り三対は歩行用で、第4脚が最も発達しており、その基部の下面には3対ないし5対のラケット器官(malleoli、racquet organs)と呼ばれる小さな扇状の構造が並んでいる。この構造に関する役割は不明確であるが、感覚に関わると考えられる。また、一般のクモガタ類とは異なり、歩脚に膝節はなく、第三、四脚の転節と腿節は更に2節に細分される[9]。跗節の節数は分類群によって異なり、科の重要な同定形質の1つとされる[10]。また、第2-3歩脚の基節の間は1対の気門が開いている[11]。
後体(腹部)は楕円形で柔らかい[6]。外見上からは10節に見えるが、実際には11節があり、第1節は退化的である[6]。第2節の腹側は縦割れの生殖口蓋をもち、中心は生殖孔が開く。その次の第3-4節はそれぞれの後縁中心に1対の気門が開く[6]。なお、第5節に1対ないし1個の気門をも加えた種類もある[6]。
雌雄
-
Eremobatidae科のヒヨケムシの雄
-
Solpuga Grindleyiの雄の鋏角。先端の上に特殊な鞭毛をもつ
性的二形で、雌は丈夫な体型をもつのに対して、雄は細身で脚は長く、ラケット器官は発達し、鋏角はやや貧弱で不動指に鞭毛(flagellum)と呼ばれる構造体を持つ。雄の鞭毛と雌の生殖口蓋の構造は種によって異なり、同定形質として重要視される[10]。
呼吸器官
ヒヨケムシの呼吸器官は、クモガタ類には他に例がないほどよく発達した気管系である。腹側に前体1対と後体2-3対の気門を持ち、気管は全身を貫通し、脚と触肢にも及ぶ[11]。それを接続する数対の気嚢は鋏角に集約している。このような配置は、巨大で力強い鋏角の重さを減少し、そのガス交換の効率を上げた特徴であると思われる[11]。
生態
主に砂漠などの乾燥地に生息しており、乾燥帯の生態系における重要な肉食動物である[12]。多くの種類は夜行性であるが、昼行性の種類もいくつかある[13]。脚は速く、最速のものはおよそ時速16キロメートルまで達する[14]。砂を掘って休憩場所を作る習性を持ち、朽ち木や礫の下にいることが多い[15]。一日の内の活動しない時間(夜行性の種類は日中、昼行性の種類は夜)をそこで過ごす[15]。昼行性の種類の中で、後体を立てて体温調節をするものが知られる[15]。詳細の生態は、いくつかの種類のみが記載される。
獲物と天敵
素早く走る活発な捕食者であり、主に昆虫、クモ、サソリなど他の節足動物を捕食するが、ときには共食いもし、特に大型種では、トカゲやネズミなどの小型の脊椎動物も捕食できる[16]。
徘徊しながら触肢を振りまわって周りを感知し、先端の吸盤で平滑な表面や獲物を掴み[8]、強力な鋏角によって獲物の外皮や肉を食い千切る。その過程で後体は伸縮し、鋏角は左右相互に動きながら獲物の体液を口へ運ぶ。成体は自発的に徘徊しながら獲物を探し・幼生は待ち伏せを通じて獲物を摂るという、同一種類が成長段階の違いによって異なった捕食行動をとるものも知られる[17]。
一方、ヒヨケムシは無毒で体も柔らかく、他の肉食動物に狙われやすい。同じ生息地の哺乳類や鳥類などの大型脊椎動物の糞からヒヨケムシの鋏角の残骸が多く見られ、特に昼行性の種類は鳥類によく摂られる。ヒヨケムシの背側に向かった中眼と敏感な視力は、その天敵への警戒のためであると思われる[15]。上述のクモやサソリなどから逆に捕食されることもあり、中でも地面にトンネルを作るアシダカグモの一種は、何かのメカニズムを通じてヒヨケムシの1種Metasolpuga picta の雄を誘惑し、自らの穴に同種の雌が居ると勘違いさせて捕食することが記載される[15]。
防御と擬態
刺激を受けると触肢を高く上げ、鋏角を開き、後体を立てる動作をすることがある。これはサソリに擬態する威嚇姿勢と考えられている。それでも相手が諦めない場合は、鋏角で噛み付いて自衛する。鋏角を擦り合わせ、音を出して威嚇する種も知られる[5][18]。
Solpugidae科に属し、ナミビアに生息するヒヨケムシの一種は、黒い体に白い背中を持つ。これは黒い体と白い前翅を持つ一部のOnymacris属とStenocara属のゴミムシダマシ科の甲虫に擬態する特徴であると思われる[19]。
擬態モデルとして、イランに生息するツノメクサリヘビ属のヘビPseudocerastes urarachnoides は、尻尾の先端でヒヨケムシの腹部と脚に擬態し、それを使って鳥類を誘惑して捕食する(攻撃擬態)[19]。
繁殖行動
繫殖は多くのクモガタ類と同様、真の交尾は行わず、精包(精莢)の受け渡しを通じて行う「交接」となる。
雄が雌に触れれば、雌は動かない状態に入り、雄は鋏角を用いて排出した精包を掴んで雌の生殖孔へ受け渡す。ただし、Eremobatidae科のヒヨケムシは例外的に、雄は生殖孔から精包を直接的に雌の生殖孔へ渡す[20]。交接直前で雄は鋏角を用いて雌の腹部を噛んでマッサージする行動も多く見られる。相手を傷つけないように、雄の鋏角の内歯は相対的に貧弱であったと思われる[15]。一部の種による飼育下の観察では、配偶行動が失敗し、および交接終了後の雄が雌に食べられてしまう事が高頻度に発生するが、自然環境ではほとんどが無事に逃げ出すことができる[15]。また、雌がハンドリングなど人為的な刺激を受けて交接過程のような動かない状態に入ることもある[20]。
雄の鞭毛の交接における役割は明らかになっていないが、交接の頃、雄が鞭毛を雌の生殖孔に差し込んでおり、そして交接後は鋏角を砂に潜んで見繕う行動が観察される[15]。
産卵を迎えると、雌は深く穴を掘って卵を産む、卵の数は種によって50から200までとなる。卵の世話をする習性を持つ雌は卵を保護する間に捕食はしない為、産卵の前には大量の餌を摂る[21]。幼生は9-10齢期を通じて成体になる。一生の寿命は1年以下、雄の方が短命と思われ、生活環は一年周期と考えられる[4]。
分布と分類
オセアニアを除き、砂漠などの乾燥した地方を中心として世界の熱帯から亜熱帯にかけて分布する。日本には分布しない。
多くのクモガタ類と同様、ヒヨケムシのクモガタ類における系統的位置は明らかになっていない。1990年代前後の多くの形態に基づいた研究では、ヒヨケムシはカニムシに最も近縁(共にHaplocnemataを構成する[22])であると考えられた[23]。しかしこれは多くの分子系統学的情報に支持されず、不安定であるものの、代わりにクツコムシや胸板ダニ類(Acariformes)との類縁関係を示唆する結果が出ている[24][25]。
下位分類
化石種をも含め、13科153属1100種以上のヒヨケムシが記載されている。クモガタ綱のなかで、ヒヨケムシ目は6番目に多様化した目である[3]。
以下は既知の13科について記述する。表記した跗節(脚の終端の節単位)数は「第1脚から第4脚までの跗節の節数」である[10]。
-
Chinchippus peruvianus
-
Ammotrecha sp.
- 南アメリカからアメリカ南部まで広く分布する。化石1種を含めて、5亜科22属84種が知られる。
- 歩脚の跗節数は1-1-1-1から1-2-2-4となり、第1脚の符節に爪が無い。雄の鞭毛は運動できず、半透明の膜状で鋏角内側に付く。
- 前体と鋏角の接続部は後方へ斜め、眼の部分が前へ突き出すように見える[26]。
- Ceromidae
- 現生種は南部アフリカに分布する。ブラジルからの化石1種を含めて、4属21種が知られる。
- 歩脚の跗節数は1-2-2-2となり、第1脚の符節に2本の爪を持つ。
- Daesiidae
-
Gluvia dorsalis
-
Gluvia dorsalis
- 南アメリカ南部、ヨーロッパ南部、アフリカ南部・東部・北部、中東、インドまで広く分布する。6亜科29属177種が知られる。
- 歩脚の跗節数は1-1-1-1から1-2-2-4となり、第1脚の符節に爪が無い。雄の鞭毛は運動能力を持ち、鞭状から膜状まで多様である。
- Eremobatidae
-
Eremobatidae科の1種
-
Eremobatidae科の1種の雄
- アメリカの砂漠地域から中央アメリカまで分布する。2亜科7属187種が知られる。
- 歩脚の跗節数は1-1-1-(1-3)となり、第1脚の符節に1-2本の爪を持つ。雄の鞭毛は運動能力を持ち、集約した毛束である。
- 雄の鋏角は途中から細くなり、不動指は針状やへら状など独特の形となるものが多い[27]。配偶行動は他のヒヨケムシと異なり、精包は直接的に雄の生殖孔から雌の生殖孔へ渡す[20]。
- Galeodidae
-
Galeodes sp.
-
Galeodes araneoides
- アフリカ東部・北部から中東・インド・モンゴルまで広く分布する。9属200種が知られる大きなグループである。
- 歩脚の跗節数は1-2-2-3となり、それぞれの爪に毛が生える。雄の鞭毛は運動能力を持ち、後向きの鞭状となる。
- 普遍な大型種が含める代表的な科の1つ。鋏角の摩擦音で威嚇する習性が知られる[18]。
- Gylippidae
- 近東・南アフリカに分布する。5属25種が知られる。
- 歩脚の跗節数は1-1-1-1となる。
- Hexisopodidae
-
Chelypus sp.
- 南アフリカに分布する。2属25種が知られる。
- 歩脚の跗節数は1-1-1-1となり。第4脚の符節に爪が無い。雄の鞭毛は運動能力を持つ、渦巻き状に巻く鞭状である。
- 砂堀りに特殊化したグループ。脚は極端に短く、ラケット器官は3対のみ。全身は濃い毛束に覆われ、その特徴的な外見から「Teddybear Solifuges」という愛称を持つ[28]。
- Karschiidae
- ヨーロッパ南東部・北アフリカ・中東からモンゴルまで広く分布する。4属40種が知られる。
- 歩脚の跗節数は1-1-1-1となる。雄の鞭毛は運動できず、渦巻き状に巻く鞭状から板状まであり、基部に特殊な毛束を持つ。
- 雄の鋏角の不動指は二股状など独特な形となり、触肢にも特殊な棘が集約する[29]。
- Melanoblossidae
- 南アフリカ・南東アジア(ベトナム・インドネシア)に分布する。2亜科6属16種が知られる。
- 歩脚の跗節数は1-1-1-1から1-2-2-4となる。雄は数対の短い鞭毛を持ち、鋏角の内側に付く。
- 唯一で南東アジアに生息するヒヨケムシDinorhax rostrumpsittacici が知られる。
- Mummuciidae
- 南アメリカに広く分布する。10属18種が知られる。
- 歩脚の跗節数は1-1-1-(1-2)となる。雄の鞭毛は膜状で鋏角内側に付く。
- 体は往々にしてひまわりの種子に似通った黒白の縞模様を持つ。世界最小のヒヨケムシVempironiella aguilari を含む[30]。
- †Protosolpugidae
- アメリカ、イリノイ州の石炭紀地層から発見された化石種Protosolpuga carbonaria 1種のみからなる。
- Rhagodidae
-
Rhagodidae科の1種
-
Rhagodima nigrocincta
- アフリカからインドまで分布する。27属98種が知られる。
- 歩脚の跗節数は1-1-1-1となり、第1脚の基符節に2本の爪を持つ。雄の鞭毛は運動できず、角の様な太短い板状で鋏角内側に付く。
- 体型のずんぐりしたグループ。後体の尾端は半円形で肛門は腹面に付く。脚は太短く鋏角は大きく発達し、派手な体色を持つ種類が多い[31]。いくつかの種類からは、アリを自発的に襲いかかる行動が知られる[32]。
- Solpugidae(ヒヨケムシ科)
-
Metasolpuga picta
-
Solpugema sp.
-
Solpugema sp.
-
第3、4脚の符節
- アフリカに広く分布する。2亜科23属200種が知られ、Galeodidae科並の大きなグループである。
- 歩脚の跗節数は1-4-4-(6-7)となり、第1脚の符節に爪が無い。雄の鞭毛は可動だが自発的に運動できず、後向きの鞭状である。
- 代表的な科の1つ。雄は鋏角で雌を持ちあげながら歩き回る配偶行動を持つ種が知られる[33]。派手な体色をもつ昼行性の種類がある[15]。
化石
ヒヨケムシは化石に保存しにくく、化石種の発見例は非常に稀である[2][34]。
およそ3億3000万年前(古生代石炭紀ミシシッピ紀)まで遡るSchneidarachne saganii という正体が明らかになっていないクモガタ類の化石は、ヒヨケムシらしい形質をもち、おそらく基盤的なヒヨケムシであると考えられる[35]。明らかにヒヨケムシである最古の化石種は、およそ3億500万年前(古生代石炭紀ペンシルベニア紀)まで遡る1科1属のProsolpuga carbonaria である[2]。ほとんどが乾燥帯に生息する現生ヒヨケムシとは異なり、この化石種は沼地の多い森林に生息していたと考えられる[2]。後述の白亜紀のCushingia ellenbergeri も似通っており、森林に生息していたと推測される[36]。他にも化石の保存状態が例外的に良好なCratosolpuga wunderlichi(およそ1億1500万年前、白亜紀、Ceromidae科)が知られる[37]。
琥珀に保存された化石ヒヨケムシもあり、以下の種が挙げられる。
- Cushingia ellenbergeri(およそ9000万年前、白亜紀Cenomanian紀、Karschiidae科?)[36][38]
- Palaeoblossia groehni(およそ5000-4000万年前、古第三紀-始新世、Daesiidae科)[39]
- Happlodontus proteus(およそ3000-1000万年前、中新世-新第三紀、Ammotrechidae科)[40]
人間との係わり
過剰に刺激され、鋏角で噛み付いて防御する場合は、人間の皮膚を貫通できるほどの力強い大型種も存在するが、ヒヨケムシは無毒で人間を自発的に襲うことはなく、基本的には無害の動物である[41][42]。
人間の日常とはさほど係わりのない動物であるが、クモやサソリなどと同じく、様々な都市伝説や噂に因んで過剰に誤解される一生物である[41]。その奇妙な姿から「猛毒を持つ」「ラクダを喰う」など、不正確な情報や根拠のない噂が原産地やネットなどで誇張されて伝えられた[41]。石の裏返しなどの経由を通じて日当たりに晒すと、すぐ影のある場所へ向かって走り、そこで近くの人の影に向かう場合は「人を追いかかる」と誤解されてしまうこともある[41]。紛らわしい英語名に加えて、クモ(spider)やサソリ(scorpion)と誤って紹介されることも多い[41]。
稀にペットとして流通するが、不明点の多い生態により確立した飼育方法は無く、人工飼育に不向きとされる。
疑問視される有毒種報告
インド産のRhagodes nigrocinctus という種に関しては、上皮腺に毒があるとの報告がインド人の研究者らによって1978年になされている。それによれば、この種の上皮腺から抽出した毒をトカゲ類に注入したところ、10匹のうち7匹が麻痺したとされる。しかし他のヒヨケムシからはそのような上皮腺は見つかっておらず、この種についての追試も行われていない。またもし上皮腺に毒があるとしても、その毒を彼らがどのように用いるのかも不明である[43]。
ギャラリー
脚注
- ^ おとそ3億3000万年前(古生代石炭紀ミシシッピ紀)まで遡るヒヨケムシらしいクモガタ類の化石がある。後述参照。
- ^ a b c d “Fossil History”. www.solpugid.com. 2018年11月19日閲覧。
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参考文献
- 内田亨監修 『動物系統分類学』第7巻(中A)「真正蜘蛛類」、中山書店。