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エンジンは[[ドイツ]]・[[ケルン]]の[[トヨタ・モータースポーツ|TMG]]が開発する。エンジン開発責任者は日本人の青木徳生。空力開発もTMGの風洞設備で行われる。また[[WRカー]]はベースとなる市販車の性能も4割弱ほど影響するため、日本の本社もフィードバックを受けながらWRCと市場のニーズに合った次期ベース車両を開発する<ref>[http://toyokeizai.net/articles/-/184777 トヨタが「WRC再参戦」でつかんだ成果と課題]</ref>。なお基本的な予算や報告についてはTMRと本社が同意の上で進めていくが、全体的にはマキネンのやり方を理解して任せているという。 |
エンジンは[[ドイツ]]・[[ケルン]]の[[トヨタ・モータースポーツ|TMG]]が開発する。エンジン開発責任者は日本人の青木徳生。空力開発もTMGの風洞設備で行われる。また[[WRカー]]はベースとなる市販車の性能も4割弱ほど影響するため、日本の本社もフィードバックを受けながらWRCと市場のニーズに合った次期ベース車両を開発する<ref>[http://toyokeizai.net/articles/-/184777 トヨタが「WRC再参戦」でつかんだ成果と課題]</ref>。なお基本的な予算や報告についてはTMRと本社が同意の上で進めていくが、全体的にはマキネンのやり方を理解して任せているという。 |
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また2016年に合弁会社トヨタ・コネクティドを共同設立した[[マイクロソフト]]をテクノロジー・パートナーとし、①走行データの集積と解析によるマシン開発②情報共有や経理などの迅速な事務処理③"EchoCam"<ref>[http://toyotagazooracing.com/jp/wrc/release/2017/0721-01.html TOYOTA GAZOO Racingとマイクロソフトは |
また2016年に合弁会社トヨタ・コネクティドを共同設立した[[マイクロソフト]]をテクノロジー・パートナーとし、①走行データの集積と解析によるマシン開発②情報共有や経理などの迅速な事務処理③"EchoCam"<ref>[http://toyotagazooracing.com/jp/wrc/release/2017/0721-01.html TOYOTA GAZOO Racingとマイクロソフトは 全く新しいWRC観戦体験サービス「EchoCam」を提供]</ref>のようなクラウドを用いたファンへの情報サービス<ref>[http://toyotagazooracing.com/jp/wrc/release/2016/0929-01.html トヨタ自動車、マイクロソフトとFIA世界ラリー選手権(WRC)での協力関係で合意]</ref>などの点で協力する。 |
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全く新しいWRC観戦体験サービス「EchoCam」を提供]</ref>のようなクラウドを用いたファンへの情報サービス<ref>[http://toyotagazooracing.com/jp/wrc/release/2016/0929-01.html トヨタ自動車、マイクロソフトとFIA世界ラリー選手権(WRC)での協力関係で合意]</ref>などの点で協力する。 |
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2017年8月には[[オット・タナク]]の母国でもある[[エストニア]]に輸送の拠点を築くことが明らかとなっている<ref>[http://www.as-web.jp/rally/152245?all WRC:トミ・マキネン、フィンランドからエストニアへの本拠地移転報道を否定]</ref>。 |
2017年8月には[[オット・タナク]]の母国でもある[[エストニア]]に輸送の拠点を築くことが明らかとなっている<ref>[http://www.as-web.jp/rally/152245?all WRC:トミ・マキネン、フィンランドからエストニアへの本拠地移転報道を否定]</ref>。 |
2017年11月29日 (水) 00:08時点における版
トヨタ・ヤリスWRC | |
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東京オートサロン2017展示車 | |
大阪オートメッセ2017展示車 | |
概要 | |
製造国 |
日本 フィンランド ドイツ |
設計統括 | トム・ファウラー |
ボディ | |
乗車定員 | 2名 |
ボディタイプ | 3ドアハッチバック |
エンジン位置 | フロント |
駆動方式 | 4WD |
パワートレイン | |
エンジン | 1.6L 直列4気筒直噴ターボ |
最高出力 | 380馬力以上[1] |
最大トルク | 425Nm以上[1] |
変速機 | 油圧式6速 |
前 | 前後マクファーソン・ストラット |
後 | 前後マクファーソン・ストラット |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,511mm[1] |
全長 | 4,085mm(空力部品込)[1] |
全幅 | 1,875mm[1] |
車両重量 | 1,190kg(最低重量)[1] |
系譜 | |
先代 | トヨタ・カローラWRC |
トヨタ・ヤリスWRC (Toyota Yaris WRC ) は、トヨタ自動車が開発した競技専用車(ワールドラリーカー)。2017年より世界ラリー選手権 (WRC) に参戦する。
参戦までの歩み
2015年1月、トヨタは新ワールドラリーカー(WRカー)規定が導入される2017年に、1999年以来18年ぶりにWRCに復帰すると表明[2]。欧州市場の主力コンパクトカーであるヤリス(日本名:ヴィッツ)をWRカーのベース車両とした。公認申請時の型式は「NSP131[3]」。
2009年にF1から撤退した後、トヨタのWRC復帰への動向はたびたび報じられてきた。かつてWRCの実働部隊であったTMG(トヨタ・モータースポーツ、旧TTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ))がWRC復帰を視野にヤリスS2000を開発中と報じられ[4][5]、2014年3月にTMG製のヤリスWRCテストカーが登場し[6]、ステファン・サラザン、セバスチャン・リンドホルム、エリック・カミリらのドライブで欧州各地でプライベートテストが行われた[7]。
2015年12月にはチームの新体制が発表され、TOYOTA GAZOO Racing WRT (World Rally Team) の総代表に豊田章男社長、チーム代表にWRC4年連続王者トミ・マキネンが就任。フィンランドプーポラ (Puuppola) にあるマキネンのファクトリーを車体開発・オペレーションの拠点とし、ドイツケルンのTMGでエンジンの開発を行う[8]。設計開発にはトム・フォウラー、サイモン・キャリアー、ミッコ・ルオホら経験豊富なエンジニアが参加[9]。2015年夏から開発がスタートし、2016年4月にマキネンの運転でシェイクダウンが行われた[10]。その後、ミッコ・ヒルボネンらの運転で2017年シーズン開幕までに12,000マイル(19,312km)のテスト走行が続けられた[11]。
参戦体制
TMR(トミ・マキネン・レーシング)が中心となって参戦及びマシン開発の大部分を行う。本拠地はフィンランド・中央スオミ県・ユヴァスキュラ郡の北にあるプーポラという村で、この地はマキネンの故郷であり、周りを田畑や野山に囲まれた田舎である。そして、ファクトリーはマキネンの家にあった納屋の様な農業施設を改造して建てられた。しかし一方ユヴァスキラは先端技術を持った産業の多く集まる地域で、例えばヤリスの油圧システムの大半は普段地元でトラクターシステムを担当している人たちが作業を担うなど、部品サプライヤーには困らなかった。
当初マキネンにWRCを任せるのにトヨタ内部から強い反発があり、豊田章男社長の固い決意とマキネンとの信頼関係無しには誕生しなかった体制であった。外部からも「マキネンで大丈夫か」「彼に丸投げではないか」という声もあったため、2016年2月のGAZOO Racingのプレスカンファレンスではそれを否定するためにコメントを発表する一幕もあった[12]。人材は10ヶ国以上からそれまでの業界を問わず、幅広く情熱ある人材が集められた。全スタッフのうち日本人スタッフは1割ほどである。マキネンは①入ってきて1年目のエンジニアやメカニックであってもしっかりと責任をもたせる(Responsibility)②全てのスタッフが同じ目と耳を持っているかの様に情報を共有する(Transparency)③プロとして互いに信頼し合う(Trust)の3つを守ってチーム作りを進めていった[13][14]。
エンジンはドイツ・ケルンのTMGが開発する。エンジン開発責任者は日本人の青木徳生。空力開発もTMGの風洞設備で行われる。またWRカーはベースとなる市販車の性能も4割弱ほど影響するため、日本の本社もフィードバックを受けながらWRCと市場のニーズに合った次期ベース車両を開発する[15]。なお基本的な予算や報告についてはTMRと本社が同意の上で進めていくが、全体的にはマキネンのやり方を理解して任せているという。
また2016年に合弁会社トヨタ・コネクティドを共同設立したマイクロソフトをテクノロジー・パートナーとし、①走行データの集積と解析によるマシン開発②情報共有や経理などの迅速な事務処理③"EchoCam"[16]のようなクラウドを用いたファンへの情報サービス[17]などの点で協力する。
2017年8月にはオット・タナクの母国でもあるエストニアに輸送の拠点を築くことが明らかとなっている[18]。
メカニズム
ボディワーク
ボディ形状は3ドアハッチバック。2017年にマイナーチェンジされる市販車のエクステリアとイメージを合わせている[注 1]。楕円形のトヨタのエンブレム(トヨタマーク)の周りがエンジン吸気口としてデザインされている[19]。
エアロダイナミクスは新WRカー規定の自由度を利用し、積極的にダウンフォースを発生する方向の造形となっている(グラベルで1.6G、ターマックでは2.2Gのダウンフォースが掛かる[20])。フロントバンパー下端にはチンスポイラーを装着。フェンダー両端のカナードやL字型のサイドミラーステー[注 2]は、後方へ向かう気流の整流効果を持つ[19]。ドアはサイドインパクト規定により厚みのある形状となっている。リアフェンダー後端の開口部には14枚の多層式フィンがあり[19]、大型のリアウィング、ディフューザーと合わせてアグレッシブなリアビューを呈する。リアウィングはメインプレートの上にアーチ形ウィングが跨る2段式で、左右には小型のサブウィングを装備する。
エンジン
エンジンはTMG製のグローバル・レース・エンジン (GRE) [注 3]。1,600cc直列4気筒直噴ターボエンジンで、ボア×ストロークは83.8mm×72.5mm。FIA規定の36mmエア・リストリクターを装着し、公称値で最高出力380馬力以上、最大トルク425Nm以上を発生する。開発段階ではドライバー出身者であるマキネンのリクエストに応じ、エンジンを3回作り直したという[21]。
その他の部品
トランスミッションはXトラック製[22]の6速シーケンシャルセミAT。ステアリング裏右手側のパドルでシフトアップ・シフトダウンを操作する。
駆動系はフルタイム4WD。デファレンシャルギアは前後が機械式で、センターが電子制御式。
サスペンションのダンパーはフランスのBOS製[22]で、リザーバータンクが下側に付くタイプ[23]。
活動
2017年
ドライバーはヤリスWRCの開発プログラムを担当してきたユホ・ハンニネン&カイ・リンドストローム組が最初に決定。もう一台には2016年末にフォルクスワーゲンがWRC撤退を表明したため、移籍先を探していた昨年のチャンピオンセバスチャン・オジェやペター・ソルベルグ、セバスチャン・ローブと言ったチャンピオン経験者の加入が噂されていたが、結局WRC通算16勝を挙げているヤリ=マティ・ラトバラ&ミーカ・アンティラ組の加入が決定した。セカンドシート候補だった2016年WRC2王者エサペッカ・ラッピ・ヤンネ・フェルム組は当初テストドライバーを担当し、第6戦ラリー・ポルトガル以降3台目のヤリスWRCをドライブする[24]。フィンランド人が3名揃ったことで、円滑な情報共有がチームの強みになったという[25][26]。
復帰初年度は「学びを得るためのシーズン」と位置付けられたが[27]、開幕戦ラリー・モンテカルロではラトバラが2位でフィニッシュし、デビュー戦で初表彰台を獲得。第2戦ラリー・スウェーデンではラトバラがトヨタに1999年のチャイナ・ラリー以来となるWRC優勝(通算44勝目)をもたらした[28][29]。チームにとって地元イベントとなる第9戦ラリー・フィンランドでは3台揃って上位を快走。ラトバラは不運なトラブルに見舞われるが、新鋭ラッピがWRC参戦4戦目で初優勝を飾り、ハンニネンも3位初表彰台を獲得した[30]。一方でシーズン通して信頼性不足に悩まされ、フィンランドではラッピと優勝争いを繰り広げていたラトバラがトラブルによりストップしてしまう一幕もあった。またデータ不足のためか、序盤はからきしで、中終盤からペースが良くなることも多かった。
第11戦ラリー・カタルーニャ終了後の10月18日、トヨタは来季Mスポーツでドライバーズランキング2位のオット・タナク&マルティン・ヤルヴェオヤ組を採用することを発表。同時にラトバラとラッピの来季参戦も確定した[31]。ハンニネンは正ドライバーの座を失った上に17年最終戦も欠場することが決まったが、今後もトヨタの一員として活動することが示唆されている。またコ・ドライバーのカイ・リンドストロームは最終戦からスポーティングディレクターとして活動することになった。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d e f “WRC 2017年 ラリー車両解説”. TOYOTA GAZOO Racing. 2017年1月15日閲覧。
- ^ “トヨタ、2017年からのWRC参戦などを明らかにしたモータースポーツ活動発表会”. Car Watch. (2015年1月30日) 2017年1月15日閲覧。
- ^ “ヤリスWRCがFIA公認申請、型式はNSP131”. Rally+.net. (2016年12月13日) 2017年1月17日閲覧。
- ^ “トヨタ、WRC復帰へ? ドイツで新エンジンを開発中”. AUTOSPORT.web. (2012年3月26日) 2017年1月15日閲覧。
- ^ “ヤリスS2000計画、まだ中止決定したわけではない”. RALLY X.net. (2013年2月17日) 2016年1月15日閲覧。
- ^ “トヨタ・ヤリスWRカーの画像が明らかに”. Rall+.net. (2014年3月23日) 2017年1月15日閲覧。
- ^ “トヨタ・ヤリスWRC、モンテカルロでテスト”. RALLY X.net. (2015年2月18日) 2017年2月14日閲覧。
- ^ “トヨタWRCチームの主要メンバーが明らかに”. Rally+.net. (2015年12月4日) 2016年1月15日閲覧。
- ^ “トヨタ、ヤリスWRC最新バージョンを公開”. Rally+.net. (2016年12月13日) 2017年1月15日閲覧。
- ^ “トヨタ、マキネンの手でヤリスWRCをシェイクダウン。「感無量だ」”. AUTOSPORT.web. (2016年4月29日) 2017年1月15日閲覧。
- ^ David Evans (2017年1月24日). “【WRC】マキネン「トヨタには今季で優勝するチャンスがある」”. motorsport.com 2017年1月26日閲覧。
- ^ 豊田章男社長、TMGへの思いがWRC復帰の動機に
- ^ トヨタ WRC復帰への軌跡 〜ゼロからチームを創り上げた男たち〜
- ^ トヨタ勝利、“マキネン流”強いチームの3条件
- ^ トヨタが「WRC再参戦」でつかんだ成果と課題
- ^ TOYOTA GAZOO Racingとマイクロソフトは 全く新しいWRC観戦体験サービス「EchoCam」を提供
- ^ トヨタ自動車、マイクロソフトとFIA世界ラリー選手権(WRC)での協力関係で合意
- ^ WRC:トミ・マキネン、フィンランドからエストニアへの本拠地移転報道を否定
- ^ a b c “発表直後のヤリスWRCを最速チェック!”. Rally+.net. (2016年12月14日) 2017年2月14日閲覧。
- ^ “【WRC】ダウンフォースは最大2.2G! 開発者が語るトヨタ・ヤリスの"強さ"”. motorsport.com. (2017年7月27日) 2017年7月31日閲覧。
- ^ 「RALLY PLUS 2017年 ラリーモンテカルロ速報号」、三栄書房、2017年1月、33頁、ISBN 9784779631955
- ^ a b “トミ・マキネン単独インタビュー「いいチームを作り上げたという自信はある」page.2”. Rally+.net (2016年7月29日). 2017年2月18日閲覧。
- ^ ““ガンダム風”処理のヤリスWRC、見た目も好評【WRCモンテカルロ現地情報2】”. AUTOSPORT.web. (2017年1月19日) 2017年2月18日閲覧。
- ^ “トヨタWRCチーム、今後も“3台体制”を維持”. Rally+.net. (2017年5月20日) 2017年7月31日閲覧。
- ^ “ラッピ「初優勝しても僕の世界は変わっていない」”. Rally+.net. (2017年8月2日) 2017年9月6日閲覧。
- ^ “ハンニネン「トヨタの強みはドライバーの情報共有」”. Rally+.net. (2017年8月2日) 2017年9月6日閲覧。
- ^ “【トヨタWRC】18年ぶりの参戦にスタンバイ完了”. レスポンス. (2017年1月13日) 2017年9月6日閲覧。
- ^ "WRC第2戦ラリー・スウェーデン デイ4 ラトバラが首位の座を守り今季初優勝 トヨタに18年ぶりの勝利をもたらす" (Press release). TOYOTA GAZOO Racing. 13 February 2017. 2017年2月14日閲覧。
- ^ “WRCスウェーデン:総合優勝のトヨタ、感動の瞬間を伝えるデイ4ハイライト動画を公開”. Rally+.net. (2017年2月13日) 2017年2月14日閲覧。
- ^ WRC:トヨタの”ホーム”、フィンランド戦で若手ラッピが初優勝。チームはシーズン2勝目 - オートスポーツ・2017年7月30日
- ^ [1]
関連項目
外部リンク
- 車両紹介 | WRC - TOYOTA GAZOO Racing