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「カープバールクラトン」の版間の差分

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カープバールクラトンは、現在のアフリカ大陸の南部の120万km<sup>2</sup>の地殻を形成している。ただし、このクラトンの性質は一様ではない。[[始生代]]の地殻が残っているのは一部に過ぎず、南部と西部は[[原生代]]に[[造山運動]]の影響を受けて[[変成作用|変成して]]しまっているし、東部に至っては[[中生代]]の[[ジュラ紀]]にできた[[火成岩]]を含んでいる。
カープバールクラトンは、現在のアフリカ大陸の南部の120万km<sup>2</sup>の地殻を形成している。ただし、このクラトンの性質は一様ではない。[[始生代]]の地殻が残っているのは一部に過ぎず、南部と西部は[[原生代]]に[[造山運動]]の影響を受けて[[変成作用|変成して]]しまっているし、東部に至っては[[中生代]]の[[ジュラ紀]]にできた[[火成岩]]を含んでいる。


カープバールクラトンが形成されて安定したのは、37億年前〜26億年前の間とされる。このクラトンは、火山弧に関係したマグマティズム<ref group="注">マグマティズム([[:en:Magmatism|magmatism]])は[[マグマ]]による[[火成岩]]の形成を指すが、マグマの形成には[[水]]の関与が大きいことが知られている。この水は[[マントル]]中に沈降した[[海洋プレート]]に含まれた[[海水]]に由来する。この水がマントルの[[融点]]を下げ、溶融して[[ケイ酸塩#ケイ酸塩鉱物|珪酸]]を多く含む軽い成分が分化しマントル上部や地殻まで浮上してマグマとなる。沈降したプレートの辺縁ではこのようなマグマが大量に形成されることになり、多くの場合火山となって[[火山弧]]を形成する。比重の軽い火山岩帯がマントル上に大規模に蓄積すれば、沈降することのない安定陸塊となる。[[原生代]]では、基となるマントルは現在よりもまだ高温の状態にあり、マグマも[[鉄]]や[[マグネシウム]]などに富む比重の重い鉱物([[カンラン石]]など)を多く含み緑色(グリーンストーン帯など)を呈することがある。</ref>と堆積作用によって厚くなって安定した大陸性の地殻である。またここは、[[花崗岩]]質の[[バソリス]](英:<i>batholith)</i>となっていることでも有名である。
カープバールクラトンが形成されて安定したのは、37億年前〜26億年前の間とされる。このクラトンは、火山弧に関係したマグマティズム<ref group="注">マグマティズム([[:en:Magmatism|magmatism]])は[[マグマ]]による[[火成岩]]の形成を指すが、マグマの形成には[[水]]の関与が大きいことが知られている。この水は[[マントル]]中に沈降した[[海洋プレート]]に含まれた[[海水]]に由来する。この水がマントルの[[融点]]を下げ、溶融して[[ケイ酸塩#ケイ酸塩鉱物|珪酸]]を多く含む軽い成分が分化しマントル上部や地殻まで浮上してマグマとなる。沈降したプレートの辺縁ではこのようなマグマが大量に形成されることになり、多くの場合火山となって[[火山弧]]を形成する。比重の軽い火山岩帯がマントル上に大規模に蓄積すれば、沈降することのない安定陸塊となる。[[原生代]]では、基となるマントルは現在よりもまだ高温の状態にあり、マグマも[[鉄]]や[[マグネシウム]]などに富む比重の重い鉱物([[カンラン石]]など)を多く含み緑色(グリーンストーン帯など)を呈することがある。</ref>と堆積作用によって厚くなって安定した大陸性の地殻である。またここは、[[花崗岩]]質の[[バソリス]](英:''batholith)''となっていることでも有名である。


ただし、このクラトンを形成する岩石は、全てが同じ時に生成されたわけではない。[[始生代]]の初期の37億年前〜36億年前(原始生代)にできた[[石英閃緑岩]]や[[片麻岩]]もある。始生代の中盤の35億年前〜30億年前(古始生代〜中始生代)にできた大陸断片や付加体の寄せ集めや、{{仮リンク|グリーンストーンベルト|en|Greenstone belt}}(大陸と海洋の境界付近で形成される層状岩体([[オフィオライト]])だが、初期大陸塊では[[堆積岩]]をほとんど含まない。)もある。始生代の中盤の33億年前〜30億年前(古始生代〜中始生代)にできた、[[花崗岩]]質の[[深成岩]]もある。始生代の後半の30億年前〜27億年前(中始生代〜新始生代)にできた、[[火成岩]]や[[堆積岩]]もある。カープバールクラトンは、これらの岩石が入り混じってできているのである。[[始生代]]の初期にできた岩石が露出しているのは、このクラトンの東部の一部だが、それも、色々な岩石が寄せ集められた状態になっている。
ただし、このクラトンを形成する岩石は、全てが同じ時に生成されたわけではない。[[始生代]]の初期の37億年前〜36億年前(原始生代)にできた[[石英閃緑岩]]や[[片麻岩]]もある。始生代の中盤の35億年前〜30億年前(古始生代〜中始生代)にできた大陸断片や付加体の寄せ集めや、{{仮リンク|グリーンストーンベルト|en|Greenstone belt}}(大陸と海洋の境界付近で形成される層状岩体([[オフィオライト]])だが、初期大陸塊では[[堆積岩]]をほとんど含まない。)もある。始生代の中盤の33億年前〜30億年前(古始生代〜中始生代)にできた、[[花崗岩]]質の[[深成岩]]もある。始生代の後半の30億年前〜27億年前(中始生代〜新始生代)にできた、[[火成岩]]や[[堆積岩]]もある。カープバールクラトンは、これらの岩石が入り混じってできているのである。[[始生代]]の初期にできた岩石が露出しているのは、このクラトンの東部の一部だが、それも、色々な岩石が寄せ集められた状態になっている。

2017年11月29日 (水) 00:02時点における版

カープバールクラトンのおおよその範囲を示した図。
アフリカ大陸南部におけるクラトンのおおよその位置を示した図。カープバールクラトンは南東に位置している。

カープバールクラトン(Kaapvaal craton)とは、現在のアフリカ大陸の南部に存在し、この大陸の地殻の一部を形成しているクラトンの1つである [注 1] 。 なお、カープバールクラトンは片仮名表記した時に、カープファールクラトンと書かれる場合もあるが、本稿では以降、カープバールクラトンに統一する 。

概要

カープバールクラトンは、非常に古くから安定して存在しているクラトンとして知られている。始生代に属する、今から36億年前に形成された、遅くとも25億年前までには形成された(25億年前までには安定した)クラトンである。この時代の地球の地殻が現存している例は珍しく、そのような場所は、このカープバールクラトンの他は、現在のオーストラリア大陸の西部に存在するピルバラクラトン以外に知られていない。(ただし、始生代の地殻が残っているのは、カープバールクラトンの一部の場所に過ぎず、南部と西部は原生代に造山運動の影響を受けてしまっているし、東部に至っては中生代ジュラ紀にできた火成岩を含んでいる。)なお、この2つのクラトンは、かつてバールバラ大陸ウル大陸を形成していたとされる。そして、この2つのクラトンには共通点が幾つも確認されていることで知られており、バールバラ大陸が存在していた時代には、両者がくっついていたのではないかとも言われている。

詳細

カープバールクラトンは、現在のアフリカ大陸の南部の120万km2の地殻を形成している。ただし、このクラトンの性質は一様ではない。始生代の地殻が残っているのは一部に過ぎず、南部と西部は原生代造山運動の影響を受けて変成してしまっているし、東部に至っては中生代ジュラ紀にできた火成岩を含んでいる。

カープバールクラトンが形成されて安定したのは、37億年前〜26億年前の間とされる。このクラトンは、火山弧に関係したマグマティズム[注 2]と堆積作用によって厚くなって安定した大陸性の地殻である。またここは、花崗岩質のバソリス(英:batholith)となっていることでも有名である。

ただし、このクラトンを形成する岩石は、全てが同じ時に生成されたわけではない。始生代の初期の37億年前〜36億年前(原始生代)にできた石英閃緑岩片麻岩もある。始生代の中盤の35億年前〜30億年前(古始生代〜中始生代)にできた大陸断片や付加体の寄せ集めや、グリーンストーンベルト英語版(大陸と海洋の境界付近で形成される層状岩体(オフィオライト)だが、初期大陸塊では堆積岩をほとんど含まない。)もある。始生代の中盤の33億年前〜30億年前(古始生代〜中始生代)にできた、花崗岩質の深成岩もある。始生代の後半の30億年前〜27億年前(中始生代〜新始生代)にできた、火成岩堆積岩もある。カープバールクラトンは、これらの岩石が入り混じってできているのである。始生代の初期にできた岩石が露出しているのは、このクラトンの東部の一部だが、それも、色々な岩石が寄せ集められた状態になっている。

このように、カープバールクラトンは場所によって、残っている岩石の古さや性質が違うので、より細かな領域に分けて考えることがある。

カープバールクラトンに関係する主な領域

リンポポベルト

リンポポベルト(Limpopo Belt)とは、カープバールクラトンとジンバブエクラトンとを接続している領域。Limpopo Central Zoneと、Limpopo North Marginal Zoneと、Limpopo South Marginal Zoneとに分けられる。この領域について鍵となる時代は、約32億年前〜29億年前にかけてと、29億年前〜26億年前にかけて、そして、26億年前〜約20億年前にかけてである。約32億年前〜29億年前にかけてと、29億年前〜26億年前にかけては、主に火成岩が生成された。その後、これらの地域は約20億年前までに変成作用を受けた。それからはおおむね安定している。

(より詳しい情報は、Limpopo Beltを参照のこと。)

バーバートングリーンストーンベルト

バーバートングリーンストーンベルト(Barberton greenstone belt)と呼ばれているのは、カープバールクラトンの東の端の領域である。今のところ、この辺りで最も古い岩石は、この領域で見つかっている。グリーンベルトという名前は、変成度の低い玄武岩が野外では緑色に見えること、玄武岩と堆積岩からなる地質体が帯状に分布していることからこの名がついた[1]。 構成する地層は、下位からオンバーワッハト層群、フィグツリー層群、ムーディース層群に分けられ、スワジランド超層群と呼ばれている[2]

(より詳しい情報は、Kaapvaal cratonの、「Barberton greenstone belt」の節などを参照のこと。)

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ 現在のアフリカ大陸は、他のクラトンも内包している。 現在のアフリカ大陸を形成しているクラトンとしては、 カープバールクラトンの他、コンゴクラトンなどが有名。
  2. ^ マグマティズム(magmatism)はマグマによる火成岩の形成を指すが、マグマの形成にはの関与が大きいことが知られている。この水はマントル中に沈降した海洋プレートに含まれた海水に由来する。この水がマントルの融点を下げ、溶融して珪酸を多く含む軽い成分が分化しマントル上部や地殻まで浮上してマグマとなる。沈降したプレートの辺縁ではこのようなマグマが大量に形成されることになり、多くの場合火山となって火山弧を形成する。比重の軽い火山岩帯がマントル上に大規模に蓄積すれば、沈降することのない安定陸塊となる。原生代では、基となるマントルは現在よりもまだ高温の状態にあり、マグマもマグネシウムなどに富む比重の重い鉱物(カンラン石など)を多く含み緑色(グリーンストーン帯など)を呈することがある。

出典

  1. ^ 川上紳一・東條文治『図解入門 最新地球史がよく分かる本 [第2版]』秀和システム 2009年 186ページ
  2. ^ 川上紳一・東條文治『図解入門 最新地球史がよく分かる本 [第2版]』秀和システム 2009年 181ページ

参考文献