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自然界の物質には、長期間の[[代謝]]や[[風化]]によって'''[[仮像]]'''(英:''pseudomorph'')を起こすことがある。仮像には、物質中の分子配列が単に変化したり成分の増減により組成が変わる'''変質仮像'''(英:''infiltration pseudomorph'')と、物質中の成分が全く入れ替わった結果、元の自然物との間に何らの科学的類似のなくなった'''交代仮像'''(英:''substitution pseudomorph'')とがある。自然物が結晶であった場合、色、硬度、その他の特徴が交代仮像を起こし元の結晶形が維持された鉱物を「元の鉱物の'''仮晶'''」と呼ぶ<ref>英語では仮像と仮晶の区別はあまりなく、どちらも pseudomorph が使われている。</ref>。鉱物から鉱物への置き換えの一例に [[アラゴナイト]]仮晶の[[自然銅]][[双晶]]があり、[[ボリビア]]のコロコロ銅山 ([[:en:Coro Coro, Bolivia|英語版]]) で[[:en:Corocoro United Copper Mines|イギリスの銅山会社]] (英語版) が産出した。 |
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なお、土中の[[化石]]が仮像を起こすことはよくある。[[珪化木]]は、[[リグニン]]の沈着で木質化した部分が[[シリカ]] ([[水晶]]または[[オパール]]) と置き換わったもので、木の細胞構造が保たれた完全な交代仮像である。[[恐竜]]の化石や[[アンモナイト]]、[[二枚貝]]にはシリカで置換されたもの([[アンモライト]]、シェルオパール)や黄鉄鉱で置換されたものが見つかっている。これらは通常は仮晶には含めない。 |
なお、土中の[[化石]]が仮像を起こすことはよくある。[[珪化木]]は、[[リグニン]]の沈着で木質化した部分が[[シリカ]] ([[水晶]]または[[オパール]]) と置き換わったもので、木の細胞構造が保たれた完全な交代仮像である。[[恐竜]]の化石や[[アンモナイト]]、[[二枚貝]]にはシリカで置換されたもの([[アンモライト]]、シェルオパール)や黄鉄鉱で置換されたものが見つかっている。これらは通常は仮晶には含めない。 |
2017年11月29日 (水) 00:02時点における版
仮晶(かしょう、pseudomorph)または仮像(かぞう)[1]とは、鉱物の結晶形が保たれたまま、中身が別の鉱物によって置き換わることで、本来はありえない外形をとる現象。 鉱物の外形が他の鉱物の仮晶である旨を表記する場合には、元の鉱物名に仮晶とつける。例えば、ある鉱物が黄鉄鉱を置き換えて、黄鉄鉱の結晶外形を持っているときは「黄鉄鉱仮晶」のように表現する。
仮像と仮晶
自然界の物質には、長期間の代謝や風化によって仮像(英:pseudomorph)を起こすことがある。仮像には、物質中の分子配列が単に変化したり成分の増減により組成が変わる変質仮像(英:infiltration pseudomorph)と、物質中の成分が全く入れ替わった結果、元の自然物との間に何らの科学的類似のなくなった交代仮像(英:substitution pseudomorph)とがある。自然物が結晶であった場合、色、硬度、その他の特徴が交代仮像を起こし元の結晶形が維持された鉱物を「元の鉱物の仮晶」と呼ぶ[2]。鉱物から鉱物への置き換えの一例に アラゴナイト仮晶の自然銅双晶があり、ボリビアのコロコロ銅山 (英語版) でイギリスの銅山会社 (英語版) が産出した。
なお、土中の化石が仮像を起こすことはよくある。珪化木は、リグニンの沈着で木質化した部分がシリカ (水晶またはオパール) と置き換わったもので、木の細胞構造が保たれた完全な交代仮像である。恐竜の化石やアンモナイト、二枚貝にはシリカで置換されたもの(アンモライト、シェルオパール)や黄鉄鉱で置換されたものが見つかっている。これらは通常は仮晶には含めない。
仮晶となる原因としては、
- 多形の関係にある鉱物同士が温度や圧力の変化などにより入れ替わる場合。
- 鉱物が化学反応を起こして似た組成の鉱物となったり一部の成分が取り残された場合 (例:アラゴナイトから方解石へ)。
- 鉱物が溶け去った後の空間を別の鉱物が埋める場合 (充填仮像) と、結晶の表面をおおう殻状の場合 (包晶仮像・皮殻仮像)。
多形による仮晶
化学反応による仮晶
変質仮像
変質仮像のひとつが多形による仮晶で、元の結晶の形状を保つ。
交代仮像
交代仮像の一種では、鉱物の置き換えが部分的に限られる。化学反応によりある鉱物の組成が類似の組成に変わる場合に典型的に起こり、生成物の結晶は元の仮晶を保つ。硫化鉱物の一種 方鉛鉱仮晶の硫酸鉛鉱 (硫酸塩鉱物) がその例である。その結果包晶が見られ、たとえば方鉛鉱を包む硫酸鉛鉱は元の角錐の形状をしている。
同質仮像
同質仮像 (異相とも) は仮晶が分子レベルのみ変化した場合のこと。科学的な組成も見た目も元の鉱物も仮晶も同じで、構造が異なる。霰石仮晶の方解石の他、カンラン石もしくはケイ酸塩鉱物仮晶の蛇紋岩、石膏 (CaSO4.2H2O) 仮晶の硬石膏 (CaSO4) 、黄鉄鉱 (FeS2) 仮晶の褐鉄鉱〈FeO.(OH).nH2O〉他をいう[3]。
包晶と充填仮像
包晶あるいは皮殻仮像では元の鉱物を他の鉱物が包みこみ、安定して元の素材あるいは鉱物の形状を保ち元の鉱物は溶解する。また、内部の空間 (空洞) を他の鉱物が埋める仮晶が充填仮像である。
古生物学と仮晶
古生物学の分野で知られる化石の珪化木やアンモライト (アンモナイト の化石が霰石に置き換わった化石) なども仮晶である。
脚注
- ^ 文部省編『学術用語集 地学編』日本学術振興会、1984年。ISBN 4-8181-8401-2 。[リンク切れ]
- ^ 英語では仮像と仮晶の区別はあまりなく、どちらも pseudomorph が使われている。
- ^ Nelson, Stephen A.. “Twinning in Crystals”. 2015年11月3日閲覧。This results for example in serpentine pseudomorphed after olivine or pyroxene, anhydrite (CaSO4) pseudomorphed after gypsum (CaSO4.2H2O), limonite [FeO.(OH).nH2O] after pyrite (FeS2), and anglesite (PbSO4) after galena (PbS).
関連項目
参考文献
- 原田準平『鉱物概論 第2版』岩波書店〈岩波全書〉、1973年。ISBN 4-00-021191-9。
- 松原聰『日本の鉱物』学習研究社〈フィールドベスト図鑑〉、2003年。ISBN 4-05-402013-5。
外部リンク
“真贋のはざま――自然界は「自己複製」 (コピー) を繰り返す (鉱物結晶の問題)”. 2015年11月3日閲覧。 39-2 鉱物結晶モデル一式、39-3 水晶 (山田俊弘)|