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[[ファイル:Tren a las nubes cruzando Viaducto la Polvorilla.jpg|thumb|right|列車([[アルゼンチン]]、[[サルタ州]])]]
{{otheruses|車両全般|運転系統としての「列車」|電車線・列車線}}
'''列車'''(れっしゃ)は、[[鉄道]]の[[線路 (鉄道)|線路]]上を運転して、人や物を輸送するために仕立てられた[[鉄道車両]]である。専門的には、[[停車場]]([[鉄道駅|駅]])の外の線路を運転させる目的で組成された車両のことを特に列車と呼び、同じ車両であっても運転させる目的をもたずに留置されているようなものは列車ではなく、単なる車両である<ref name = "鉄道辞典下_1775-1776" />。条件を満たしていれば、車両数に関係なく、1両であっても列車となりうる<ref name = "世界大百科事典" />。
[[ファイル:Tren a las nubes cruzando Viaducto la Polvorilla.jpg|thumb|300px|right|列車<br>([[アルゼンチン]]、[[サルタ州]])]]


== 定義 ==
'''列車'''(れっしゃ、[[ドイツ語|独]]: Zug、[[英語|英]]: [[フランス語|仏]]: train)とは、[[軌道 (鉄道)|鉄道]]の[[線路 (鉄道)|線路]]の上を走行する[[車両]]のことである。[[鉄道]]に於いて営業用に運転される[[鉄道車両]]ならびに鉄道車両によるサービスのことを指す用語としても用いられる。複数の車両([[動力車]]と[[客車]]、または自走車両)を列を成して走ることからこのように称されるが、鉄道の場合は[[#日本における定義|単行]](1両のみ)であっても列車と呼ぶ。なお、列車と[[電車]]を混同する者もいるが、電車とは列車の中でも「[[電力]]で動く[[旅客車]]や[[貨車]]のこと」である。これに対して、列車は動力が何であっても良い。
[[日本]]においては[[国土交通省]]の定める[[鉄道に関する技術上の基準を定める省令]]第2条13項で、「停車場外の線路を運転させる目的で組成された車両をいう」とされている<ref name = "省令" />。また[[イギリス]]では、{{仮リンク|1993年鉄道法|en|Railways Act 1993}}83(1)条において、列車 ({{Lang|en|train}}) を「(a) 2両またはそれ以上の鉄道車両が連結されたもので、少なくともそのうち1両は機関車であるもの、(b) 他の鉄道車両と連結されていない機関車」と定義している(機関車方式が前提となっている)<ref name = "1993年鉄道法" />。[[アメリカ合衆国]]の[[アッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道]]の1948年の運行規程では列車を「客貨車の有無にかかわらず、1両またはそれ以上の機関車が連結されており、標識類が示されたもの」と定義していた<ref name = "ATSF" />。


日本では、「[[電車]]」という言葉で鉄道の線路を走る車両すべてを指すことがあるが<ref name = "鉄道のひみつ_96-97" />、電車は本来は電力によって走行する鉄道車両のことを指しており<ref name = "電車" />、列車であるためにはどのような動力源を用いていてもよい<ref name = "日本大百科全書" />。
== 概要 ==
鉄道は、2本のレール([[モノレール]]では1本、[[新交通システム]]には[[軌条|レール]]のない[[案内軌条式鉄道]]も存在する)の上を車両が走行し、その車両に不特定多数の人や物を乗せて運ぶシステムである。<!--運賃の有無は鉄道であるかどうかとは関係ないので-->


== 技術的要件 ==
この鉄道において、一定の条件を満たした上で車両が組成され、駅(厳密には[[停車場]])の間を運転されるものが列車である(日本では後述のような厳密な定義が設けられている)。レール上を走る機械装置としては全く同じものであっても、上のように運転されている場合以外には「(鉄道)車両」と称される。列車に用いられる車両が組成されたものは「(列車)編成」と呼ばれる。(「[[編成 (鉄道)]]」を参照)。
鉄道の運転取り扱いでは、旅客や貨物の輸送に直接鉄道車両を使っている場合と、それ以外の場合を区別している。輸送に直接使われる、停車場間での鉄道車両の運転(移動)を「列車」と呼び、それ以外の鉄道車両の移動を単に「車両」と呼ぶ。輸送の準備や後始末で駅構内や車両基地において行う移動([[入換 (鉄道)|入換]])が車両である。列車として運転する場合には、車両に比べて高度な安全要件を満たすことが要求される<ref name = "ハンドブック_428" />。
* 「列車」の用例:列車の[[ダイヤグラム|ダイヤ]]、[[通勤列車]]、イベント列車
* 「車両」の用例:[[車両基地|車庫]]内の車両、新製車両の搬入([[車両輸送]])、車両故障、車両メーカー
鉄道は通常、1つの閉塞区間の中には1つの列車しか走行できない(「[[鉄道信号機]]」、「[[閉塞 (鉄道)]]」の項を参照)ため、輸送力の増強には[[増解結|連結]]する車両数を増やして1列車あたりの輸送力を増大する手法が取られる。輸送手段の規格を大きく変えることなく、サービス単位の輸送力を柔軟に調整する手法は鉄道の特徴である。他の交通機関同様、輸送頻度を高めて輸送力を増強する手法もあるが、その場合には車両の高性能化や信号設備の整備・調整が必要になることがある。


列車として具備するべき条件は、以下のようなものがある<ref name = "ハンドブック_429" />。
また、列車としてのサービス内容には必然的に車両や編成の特性も関わり、旅客列車と貨物列車では用いられる車両のあり方も大きく異なる。動力方式も列車の特性と深く関わり、列車を牽引する[[機関車]]と、機関車により牽引される[[客車]](または[[貨車]])から成る[[動力集中方式]]と、自らが駆動する旅客車・貨物車([[電車]]・[[気動車]]など)から成る[[動力分散方式]]が場合によって使い分けられる。前者は動力方式が異なる区間を走行することの多い長距離列車に多く用いられ、後者は短い区間を走行する列車に多く見られる形態である。
; 運転時刻の設定
: 旅客や係員への周知のほか、列車相互の安全確保のためにも、あらかじめ時刻を決めて列車を運転する。
; 編成
: 計画した時刻通りに列車の運転ができるように、動力車の配置など所定の編成を確保し、その編成長は停車場に停車した際に他の線路を支障しないように、所定の長さに収まるようにする。
; ブレーキ
: 所要のブレーキ力を発揮できるように、[[貫通ブレーキ]]を装備し、ブレーキ力が作用する車軸が編成全体で一定の割合以上となるようにする。連結した車両が分離した場合でも停止させられるように、何らかの手段で自動的にブレーキが作用するようにしておく。運転に先立ってブレーキテストを行い、正しくブレーキが動作することを確認する。
; 乗務員
: 運転士を乗務させる。必要に応じて列車防護などの役割をする他の乗務員を乗務させる。運転に際しては安全かつ円滑に運転できるように、最前部を運転席とする。
; 標識
: 所定の運転方向がわかるように、連結した車両の最前部には前部標識を、最後部には後部標識を掲げる。
; 危険品の扱い
: 貨物列車において危険品を積載するときには、当該車両の前後に定められた両数の空車または危険のない貨物を搭載した車両を挟む。


== 編成 ==
== 日本における定義 ==
{{Main|編成 (鉄道)}}
[[日本]]においては[[国土交通省]]の定める[[鉄道に関する技術上の基準を定める省令]]で、「停車場外の線路を運転させる目的で組成された車両をいう」とされている。要するに、(車庫内や駅の留置線以外の)普通の営業用の線路上を走行している鉄道車両のことである。車両を列ねていない1両[[編成 (鉄道)|編成]]であっても「列車」と称し、この場合は特に「'''単行列車'''」または「'''単行'''」という(本来、単行とは1両で運転することをいう)。
列車は複数の車両を連結して運転されることがあり、このことを「編成を組む」などと呼び、組み合わせた車両を指して編成と呼ぶ。編成には、列車として具備するべき前述の条件に加えて、動力装置、電源系統、サービス設備などの制約もある<ref name = "編成_3-5" />。


[[機関車]]が客貨車を牽引する[[動力集中方式]]の場合は、[[牽引定数]]が問題となる。列車ダイヤで定められた時刻を守って列車を運転するためには一定の速度以上で走行する必要があり、運転対象路線にある[[縦断勾配|勾配]]と機関車の性能から、牽引する編成の重量は一定の範囲内に収まっている必要がある<ref name = "編成_186-192" />。編成の各車両に動力が分散している電車方式([[動力分散方式]])の列車では、運転を想定している路線の勾配に合わせて、動力車の比率([[MT比]])を決める必要がある<ref name = "編成_129-132" />。
そのほか、動力装置を有していること、減速・停止のための[[ブレーキ]]機能を有していること、標識灯([[前照灯]]・[[尾灯]])を有していること、[[乗務員]]が乗車していること、運転時刻が(原則として)予め定められていること、などが条件となる。


列車暖房においては、[[蒸気暖房 (鉄道)|蒸気暖房]]の時代には[[蒸気機関車]]またはそれ以外の機関車では[[蒸気発生装置]]から蒸気を供給して暖房を行っており、蒸気発生装置のない[[電気機関車]]・[[ディーゼル機関車]]では暖房を使えなかった。[[電気暖房 (鉄道)|電気暖房]]においても、機関車に電気暖房用の送電設備、客車にそれに対応したヒーターが搭載されている必要があり、対応しなければ暖房を使えないという制約がある<ref name = "編成_139-148" />。冷房の面でも、冷房装置とそれに対応した電源がなければ冷房を使えない<ref name = "編成_148-152" />。
[[日本の鉄道車両検査|定期検査]]中の車両、[[休車]]指定を受けた車両、用途廃止([[廃車 (鉄道)|廃車]])となった車両など、[[営業]]線路上を走ることができない状態に置かれている車両がそれら自体が搬送される場合を除いて「列車」となることができないのはもちろん、普段営業用に用いられている[[編成 (鉄道)|編成]]が[[車両基地]]などで休んでいる場合も列車ではない。


サービスの面では、必要に応じて[[グリーン車]]([[一等車]])などの優等車両と[[普通車 (鉄道車両)|普通車]]の割合を決めて編成に連結する<ref name = "編成_101-105" />。現代では売店での食品販売や外食産業に押されて連結は減少しているが、供食設備として[[食堂車]]やビュフェ車が連結されることがある<ref name = "編成_88-92" />。優等車両や[[寝台車 (鉄道)|寝台車]]を連結するに際しては、特別料金を払っていない旅客がこうした車両内を通り抜けることを防止するために、編成の一端にまとめて優等車両や寝台車を連結したり、食堂車や[[ロビーカー]]を間に挟んだりする対策が行われる<ref name = "編成_59-66" />。[[荷物車]]や[[郵便車]]は駅における取り扱い設備の配置の関係から、連結位置が決まっている<ref name = "編成_67-72" />。
路線によっては、[[停車 (鉄道)|停車]]駅パターンや接客設備により、[[特別急行列車|特急]]、[[急行列車|急行]]など複数の[[列車種別]]に分類されている。さらに、「[[のぞみ (列車)|のぞみ]]」、「[[サンダーバード (列車)|雷鳥]]」などの[[列車愛称|愛称]](列車名)の付けられた列車もある。


[[線路容量]]や車両数の制約から、列車の分割・併合を行うことがある。列車が進行していく際に、輸送需要が低くなるにつれて一部の車両を切り離していく、あるいは輸送需要が高くなるにつれて車両を増結していくような運行の仕方([[増解結]])をすることがある。またはそうした切り離した車両が支線に直通して別の終着駅となる列車になっていたり、別の始発駅を出発して支線から直通してくる列車を増結したりする([[多層建て列車]])こともある<ref name = "編成_132-136" />。
なお日本においては、列車を操縦する者のことを、[[鉄道]]、[[軌道 (鉄道)|軌道]]に関わらず、運転手ではなく'''[[運転士]]'''というのが正式な呼称である。

初期の車両では、1両単位で電源や暖房などが独立した構成になっており、自由に連結・解放することができた。しかしそうした機器類にかかる費用を節約するため、走行に必要な機器類や空調電源などを編成全体でまとめて最適設計して各車両に配置する、固定編成という考えが生まれた。さらに基本編成と付属編成という組み合わせにして、輸送需要に応じて付属編成を切り離すといった運用が行われている<ref name = "車両研究_15-17" />。

== 列車の設定と運行 ==
=== 列車の計画 ===
[[ファイル:Diagram-Cross.jpg|thumb|列車ダイヤ(ダイヤグラム)]]
{{Main|鉄道運行計画|ダイヤグラム|運用 (鉄道)}}
列車の運行計画は、[[ダイヤグラム]](列車ダイヤ)の形で立案される<ref name = "鉄道工学ハンドブック_218" />。

運行計画においてはまず、対象路線の輸送量を想定し、各種列車の輸送力を設定する。乗車率(混雑率)が低いほど、旅客にとって座席を確保しやすくなってサービス上は好ましいが、乗車率が低いと輸送量に対し必要とされる車両数が増えることになり、鉄道事業者の運営コスト上は好ましくない。競合する交通機関の状況を踏まえて決定される<ref name = "鉄道工学ハンドブック_213-214" />。

続いて列車の設定本数と区間を決定する。輸送量に応じて列車本数を調整したり、編成両数を増減したりする。また列車の運転する区間や異なる路線への直通列車の設定を検討する。列車本数が多い方が旅客にとっては利用しやすいが、線路容量や車両運用との兼ね合いもある<ref name = "鉄道工学ハンドブック_214" />。

設定した列車の配列順序・出発時刻を決定する。利用者の利便性を考慮しつつ、線路容量や駅の発着番線の都合などを考えて、各列車の順序と時刻を決定する<ref name = "鉄道工学ハンドブック_214" />。そして各列車の使用車両の性能や線路の条件に応じて計算された[[基準運転時分]]に基づいて駅間の走行時間を決め、各列車の停車駅と停車時間を定めて列車の時刻を確定していく<ref name = "鉄道工学ハンドブック_214-216" />。こうした時刻を決定するにあたっては、各駅間の[[閉塞 (鉄道)|閉塞]]の条件、線路容量、駅の信号の条件、車両の性能といった条件から決まる[[運転時隔|最短時隔]]を守る必要がある<ref name = "鉄道工学ハンドブック_216-218" />。

列車には、他の列車と区別するために、[[列車番号]]が与えられる。列車のおおよその性質を知ることができるような番号体系が定められており、運行管理上重要であることから、同一駅に同一番号の列車が発着しないようにされている<ref name = "日本大百科全書" />。

列車の時刻決定と表裏一体のものとして、列車に乗務員および車両の割り当てを行う、乗務員運用計画および車両運用計画([[運用 (鉄道)|運用]])が作成される。乗務員や車両が循環して各列車に割り当たっていくことで、実際の列車の運行が行われる<ref name = "鉄道工学ハンドブック_222" />。

=== 運行管理 ===
[[ファイル:Japanese National Railways head office 19971108-5.jpg|thumb|運転指令所から列車の運行管理が行われる]]
{{Main|運転整理}}
列車の運転は、常に当初の計画通りに行えるわけではなく、何らかの原因で列車に遅れが生じることがある。そうした列車の運行状況を監視し、必要に応じて対応策を講じて正常な運転に復帰させるために運行管理が行われる<ref name = "鉄道工学ハンドブック_223" />。

元来は、中央の[[運転指令所]]から[[電話]]で各地の駅や列車と連絡を取って指示命令を行っていた。現代においては、[[列車集中制御装置]] (CTC) の導入が進み、運転指令所から各駅の信号設備を遠隔制御して列車の運行を制御している<ref name = "ハンドブック_445" /><ref name = "鉄道工学ハンドブック_223" />。また運転指令所と列車の情報伝達には、[[列車無線]]が用いられるようになった<ref name = "ハンドブック_445" />。

CTCにおいても、列車の現在位置と列車ダイヤをもとに指令員が判断を行い、制御盤から信号を制御して列車の運行を管理していた。さらなる発展として、列車の運行状況をコンピューターを用いて自動的に追跡・監視し、あらかじめ入力された列車ダイヤのデータと照合して、自動的に運行管理を行う[[自動進路制御装置]] (PRC) という装置が導入されるようになった<ref name = "ハンドブック_446-447" />。

列車ダイヤが乱れた際には、運転指令員が列車ダイヤや車両・乗務員運用計画の変更を行う。この作業のことを[[運転整理]]と呼ぶ。運転整理は、評価基準があいまいで難しく、制約が厳しいうえに大規模な[[組合せ最適化]]問題であるという、非常に難しい問題である<ref name = "ハンドブック_436-443" />。


== 列車の種類 ==
== 列車の種類 ==
=== 用途目的による分類 ===
=== 用途目的による分類 ===
用途目的による列車の分類として、運賃を徴収して一般の旅客貨物を輸送する営業用列車と、鉄道事業者の業務の都合上運転する事業用列車の区分がある<ref name = "鉄道辞典下_1775-1776" />。営業用列車はさらに、下記のようにいくつかに区分されている。
* [[旅客列車]] - 旅客(人)を乗せて運ぶ列車<ref name="world52">井上孝司『ダイヤグラムで広がる鉄の世界』秀和システム、2009年、52頁</ref>。

** [[通勤列車]]
==== 旅客列車 ====
** [[特別急行列車|特急列車]]
** [[急行列車]]
{{Main|旅客列車}}
[[旅客列車]]は、旅客(人)を乗せて運ぶ列車である<ref name="world52" />。
** [[夜行列車]]

** [[寝台列車]]
** [[団体専用列車]]
; [[長距離列車]]
: 都市や観光地など需要の集中する地点を結んで設定され、中長距離を移動する人の需要を主体に考えた列車である。所要時間の関係から[[夜行列車]]となる場合もある。場合によって[[特別急行列車|特急列車]]、[[急行列車]]、[[準急列車]]などの優等列車として設定される。長距離列車は、旅客列車の中ではもっとも大きな収入源となる<ref name = "鉄道論_148-152" />。
** [[荷物列車]] - 乗客の手荷物や小口荷物を扱う旅客列車の一種<ref name="world52" />。
; [[通勤列車]]
** 観光列車 - 単なる移動手段でなく、乗車自体を観光目的とするサービス(豪華な内外装の車両・景色・食事など)を提供する列車<ref>[https://www.tourism.jp/tourism-database/glossary/tourist-train/ 観光列車] - JTB総合研究所、2017年11月18日閲覧</ref>。JRグループでは主に車両に対して[[ジョイフルトレイン]]とも呼称する。日本の[[嵯峨野観光鉄道嵯峨野観光線|嵯峨野観光線]]やオーストラリアの[[キュランダ高原列車]]のようにこういった列車の運行を専門とした路線もあり、[[ウェールズ]]の[[タリスリン鉄道]]のように路線・車両の[[動態保存]]を目的とした[[保存鉄道]]にもこの性格を有しているところが多く存在する。
: 大都市圏を中心に、通勤輸送を担当する列車である。膨大な輸送需要と時間的な需要の変化が大きいことを特徴とする。鉄道旅客輸送が斜陽となっている国においても、大都市の通勤輸送に限っては鉄道の巨大な輸送力に頼らざるを得ない傾向がある。輸送力の整備に多大な費用が掛かるにもかかわらず、その設備が短時間しか稼働せず、しかも社会的な要請により割引率の高い運賃となっていることから、鉄道経営に与える負担が大きい<ref name = "鉄道論_152-155" />。
* [[貨物列車]] - 大型荷物の輸送を行うための列車<ref name="world52" />。
; [[団体専用列車]]
* [[混合列車]]・準混合列車 - 客車と貨車を併結したもので、客車に貨車を併結した列車を混合列車、貨車に客車を併結した列車を準混合列車という<ref name="world52" />。
: 事前に申し込みを受け付けた団体の輸送のために運転される列車である。大口団体輸送と小口団体輸送に分けられ、大口団体の場合はそのために特別に列車を編成して臨時列車として運転するが、小口団体は一般旅客と混乗輸送となる<ref name = "鉄道論_155-156" />。小口団体を何組も合わせて同一列車で輸送する集約臨時列車もある<ref name = "鉄道辞典下_1760-1761" />。
* [[事業用列車]] - 鉄道事業のために用いられるが営業列車ではない列車<ref name="world53">井上孝司『ダイヤグラムで広がる鉄の世界』秀和システム、2009年、53頁</ref>。
** [[回送|回送列車]]
; [[荷物列車]]
: 乗客の手荷物や小口荷物を扱う旅客列車の一種<ref name="world52" />。荷物類は本質的には、貨物列車で運んでいる貨物と異なるものではないが、旅客の手荷物は旅客と一緒に輸送する必要があり、また小荷物類は速達の必要があることから、旅客列車に連結した[[荷物車]]で運ぶことになり、旅客輸送の一部であるとされてきた。しかし手小荷物の取扱量が増えると、その積み下ろしのために旅客列車を長時間停車させることはサービス上問題であり、輸送効率の点からも荷物車だけを集約した荷物列車を運行することになって、さらに貨物列車との差異は小さくなった<ref name = "鉄道論_156-157" />。なお[[郵便車]]による郵便物輸送も同様の理由で旅客輸送の一部であるとされる<ref name = "鉄道論_158-159" />。
** [[回送#単行機関車列車|単行機関車列車]]
** [[特殊列車]]
; 観光列車
: 単なる移動手段でなく、乗車自体を観光目的とするサービス(豪華な内外装の車両・景色・食事など)を提供する列車<ref name = "観光列車" />。

<gallery mode="nolines" widths="150" heights="150">
ファイル:Acela old saybrook ct summer2011.jpg|[[北東回廊]]の高速長距離列車、[[アセラ・エクスプレス]]
ファイル:Korail Line 1 Gyeongin express train at Guro.jpg|[[ソウル特別市|ソウル]]の[[首都圏電鉄1号線]]の通勤列車
ファイル:Salonexpresstokyo.jpg|団体専用列車に使う専用車両の[[サロンエクスプレス東京]]
ファイル:GlacierLandwasser.jpg|スイスの観光列車[[氷河急行]]
</gallery>

==== 貨物列車 ====
{{Main|貨物列車}}
[[貨物列車]]は、貨物の輸送を行うための列車である<ref name="world52" />。

; 一般貨物列車
: 様々な種類の貨物を搭載した雑多な貨車を連結した貨物列車である。発地も着地もばらばらであり、[[操車場 (鉄道)|操車場]]で貨車をつなぎ変えながら目的地へ輸送する<ref name = "貨物種類" /><ref name = "manifest" />。1両の貨車を特定の荷主で占有(貸切)して輸送するものを車扱い(しゃあつかい)、複数の荷主で共有して輸送するものを小口扱いという<ref name = "鉄道論_161-163" />。
; 専用貨物列車
: 専用貨物列車はユニットトレインとも呼ばれ、単一種類の貨物を単一種類の貨車で、決まった発地から着地まで輸送する<ref name = "貨物種類" />。一般貨物列車とは異なり、途中で貨車をつなぎ変えることなく直送するため、時間的にも費用的にも有利な方式である。[[石炭]]・[[穀物]]・[[セメント]]など多くの[[ばら積み貨物]]がこの方式で輸送されている<ref name = "unit" />。
; インターモーダル貨物列車
: [[インターモーダル輸送]]を行う貨物列車で、[[コンテナ船]]や[[貨物自動車|トラック]]など、異なる貨物輸送手段との間を連絡して貨物を輸送する。貨物を搭載した[[コンテナ]]や[[牽引自動車|トレーラー]]を貨物列車に搭載する。トレーラーを搭載する場合[[ピギーバック輸送]]となる<ref name = "貨物種類" /><ref name = "intermodal" />。

また、鉄道車両自体を貨物として輸送する[[車両輸送|甲種鉄道車両輸送]]や、[[大物車]]を使った特大貨物輸送も貨物列車の一種である<ref name = "鉄道工学ハンドブック_211" />。

<gallery mode="nolines" widths="150" heights="150">
ファイル:Carnforth wcml geograph-2188751.jpg|雑多な貨車を連ねた一般貨物列車
ファイル:Maschen NS 010405.jpg|貨物列車の貨車を組み替える[[操車場 (鉄道)|操車場]]
ファイル:BNSF 5216 West Kingman Canyon AZ (293094839).jpg|[[ダブルスタックカー]]にコンテナを2段積みにして運行される[[大陸横断鉄道]]の貨物列車
ファイル:Tail of Japan Oil Transportation Freight Train.jpg|石油を輸送する[[タンク車]]
ファイル:Wagons 550.jpg|石灰岩を運ぶ鉱石貨物列車
</gallery>

==== 混合列車 ====
[[ファイル:Nemuro-Line 442train.jpg|thumb|混合列車の例、機関車に近い側に客車が、後ろ側に貨車が連結されている]]
{{Main|混合列車}}
客車と貨車を併結した列車を[[混合列車]]という。さらに区別して、客車に貨車を併結した列車を混合列車、貨車に客車を併結した列車を準混合列車という<ref name="world52" />。準混合列車は貨物列車としての運行が主体であり、貨車の解結、貨物の積み下ろしに重点が置かれて、旅客扱いは従たるものである<ref name = "鉄道辞典上_265" />。

==== 事業用列車 ====
{{Main|特殊列車}}
[[事業用列車]]は、鉄道事業のために用いられるが営業列車ではない列車である<ref name="world53" />。一般の旅客貨物を輸送する列車と使命が異なる列車として、[[特殊列車]]とも呼ぶ<ref name = "用語事典_234" />。
; 工事列車
: 鉄道の工事用材料を運搬する列車で、[[軌条]]・砂利などを運び、停車場以外の場所でも積み下ろしする<ref name = "鉄道辞典下_1775-1776" />。
; 試運転列車
: 新製車両や修理完了した車両の試験・確認や、線路・橋梁などの状態確認といった目的で運転される列車<ref name = "鉄道辞典下_1775-1776" />。
; [[回送|回送列車]]
: 車両を車両基地から発駅まで送り込んだり、貨物を降ろした貨車を送り返したり(返空)する目的で運転される列車<ref name = "用語事典_31" />。回送列車を特殊列車の分類ではなく、旅客列車や貨物列車の分類とする考え方もある<ref name = "鉄道工学ハンドブック_210" />。機関車が客車や貨車を連結せずに単独で走ることを特に単行機関車列車、略して単機という<ref name = "用語事典_291" />。
; 排雪列車
: 線路の[[除雪]]をするために運転される列車。[[雪かき車]]を用いて積雪を排除しながら運転する。近くに適当な雪捨て場がない場合に、貨車に雪を積み込んで河川などの適当な雪捨て場まで運ぶために運転する雪捨列車もある<ref name = "鉄道辞典下_1775-1776" />。[[ラッセル車]]を用いる排雪列車は列車ダイヤに組み込まれて冬期間は定期的に運転される例が多く、[[ロータリー車]]を用いる排雪列車は特殊排雪列車などと呼ばれ、必要に応じて臨時に設定されることが多い。[[モーターカー]]を用いた排雪も行われるが、正式には車両ではなく機械としての扱いである<ref name = "用語事典_388" />。
; 救援列車
: 事故や故障が発生した際に、現場に復旧のための資材や要員を送り込んだり、車両を収容したりする目的で運転される列車である。その性格上、列車としての要件に例外が認められており、駅間での後退が認められたり、信号条件にかかわらず1閉塞区間に複数列車の進入が認められたりする<ref name = "鉄道辞典下_1775-1776" />。
; 配給列車
: 鉄道事業者内部で必要とされる物品を部内各所に配給するために運転される列車である<ref name = "鉄道辞典下_1775-1776" />。
; [[お召し列車]]
: お召し列車、ロイヤルトレイン(宮廷列車)といった貴賓を乗せる列車も特殊列車として扱われることがある。日本の場合は、天皇・皇后が乗る列車がお召し列車、皇太子が乗る列車が御乗用列車と呼ばれる。またお召し列車の安全のために、その直前に先行して走らせる列車を指導列車、通称露払い列車と呼ぶ<ref name = "鉄道辞典下_1775-1776" /><ref name = "用語事典_314" />。

<gallery mode="nolines" widths="150" heights="150">
ファイル:RhB Xrotd 9213 am Lago Bianco 3.jpg|[[スイス]]・[[レーティッシュ鉄道]]のロータリー雪かき車
ファイル:E655お召し列車.jpg|お召し列車
</gallery>


=== 動力車による分類 ===
=== 動力車による分類 ===
列車は動力車の種類により、機関車牽引列車、電車列車、気動車列車などに分類される<ref name="world53" />。異種動力車が併結されている場合はメインとなる動力車が基準となる<ref name="world53" />。
列車は動力車の種類により、機関車牽引列車、電車列車、気動車列車などに分類される<ref name="world53" />。異種動力車が併結されている場合はメインとなる動力車が基準となる<ref name="world53" />。機関車牽引列車には、蒸気機関車を使用する蒸機列車、電気機関車を使用する電機列車、内燃機関車を使用する内燃機列車などがある<ref name = "鉄道辞典下_1775-1776" />。機関車牽引列車は、特に蒸機列車は、「[[汽車 (曖昧さ回避)|汽車]]」とも呼ばれる<ref>『現代国語例解辞典』第二版、 1993年、小学館、279頁。ISBN 4-09-501032。</ref>。


=== 運行距離による分類 ===
=== 運行時期による分類 ===
* [[ダイヤグラム#定期列車・定期便|定期列車]] - 毎日定期的に運行される列車(ただし曜日により時刻が多少異なる場合を含む)<ref name="world53" />。
; [[ダイヤグラム#定期列車・定期便|定期列車]]
: 毎日定期的に運行される列車(ただし曜日により時刻が多少異なる場合を含む)<ref name="world53" />。
; [[季節列車]]
* [[季節列車]] - 特定の期間限定して運行される列車<ref name="world53" />。
: 特定の期間限定して運行される列車<ref name="world53" />。たとえば、夏の多客期や冬のスキーシーズンに合わせて運転されるような列車のことで、季節による輸送需要の変化に対応するためのものである<ref name = "鉄道工学ハンドブック_211" />。
* [[臨時列車]] - 特定の日に限定して運行される列車<ref name="world53" />。
; [[臨時列車]]
: 特定の日に限定して運行される列車<ref name="world53" />。団体向けの列車([[団体専用列車]])や年末年始・ゴールデンウィークなどの多客時期に増発する列車、イベントのために設定する列車、鉄道事業者の内部目的で運転される[[特殊列車]](試運転・排雪・救援・工事・配給など)などがある<ref name = "鉄道工学ハンドブック_211" />。


=== 運行距離による分類 ===
=== 運行距離による分類 ===
* 距離
; [[長距離]]
: 直通列車あるいは直行列車などとも呼び、ある区間の全部を始点から終点まで通しで運転する列車である<ref name = "鉄道辞典下_1775-1776" />。
* [[中距離電車|中距離列車]]
* [[長距離列車]]
; 区間列車
: 比較的短区間を運転するもので、近郊列車、ローカル列車などとも呼ぶ<ref name = "鉄道辞典下_1775-1776" />。
; 小運転列車
: 区間列車の中でも特に短い区間を運行する列車のことを区別して小運転列車、俗に「ちょん行」と呼ぶ<ref name = "鉄道辞典下_1775-1776" />。

=== 運転時間帯による分類 ===
; 昼行列車
: 昼間有効時間帯に運転される列車であり、始発駅の出発時刻がおおむね5時以降、終着駅の到着時刻がおおむね23時以前程度になるものである<ref name = "鉄道辞典下_1775-1776" />。昼行列車は夜行列車に比べると快速性に重きをおき、1日をできるだけ有効に使えるような時刻設定が良いとされる<ref name = "鉄道論_149-151" />。
; [[夜行列車]]
: おおむね18時以降に始発駅を出発し、おおむね翌朝8時頃までに終着駅に到着するような列車である。主要な大都市相互間の有効時間帯を考慮して設定される。所要時間が長い列車になると、昼間に運転される区間については昼行列車の性格を併せ持つことがある<ref name = "鉄道辞典下_1775-1776" />。夜行列車の場合は必ずしも速達性は重視されず、出発地と到着地が適時になることが重視される<ref name = "鉄道論_149-151" />。所要時間が6時間を超えると、旅客は昼行列車より夜行列車を好む傾向があるとされている<ref name = "夜行選好" />。

== 愛称付き列車 ==
[[ファイル:London victoria 2052605 b6a388dc.jpg|thumb|[[ロンドン・ヴィクトリア駅]]を出発する「[[黄金の矢 (列車)|黄金の矢]]」号、蒸気機関車の前頭部にヘッドマークを掲げている]]
[[ファイル:Takara Container Train.jpg|thumb|貨物列車に愛称を付けた例、日本国有鉄道のコンテナ特急「[[たから (列車)|たから]]」]]
{{Main|列車愛称}}
旅客にアピールする目的で、列車に「[[黄金の矢 (列車)|黄金の矢]]」([[イギリス]]・[[フランス]])や「[[20世紀特急]]」([[アメリカ合衆国]])など、[[列車愛称]]を付けることがある<ref name = "列車名大事典_14-35" />。そうした愛称付きの列車(ネームド・トレイン {{Lang|en|named train}})には、シンボルマークを描いた[[ヘッドマーク]]・テールマークを取り付けることがある<ref name = "ネームドトレイン50年" />。

世界で最初に愛称を付けた列車は、1848年にイギリスで運行開始した「アイリッシュ・メール」である。鉄道の普及以前には、[[駅馬車]](ステージコーチ)の中でもっとも速いものに郵便物を載せて運んでおり、そうしたステージコーチを特にメールコーチと呼ぶ慣習があった。そのためにメールが付く名前には速いという印象があったことから、[[アイルランド]]行き最速列車をアピールしてアイリッシュ・メールと名付けられた(ただしアイルランドへ直通しているわけではなく、アイルランド行きの船が出る港への列車である)。以降、行き先の地名にメールを付けた愛称がつけられていった<ref name = "ヨーロッパ鉄道_85-86" />。また、[[競走馬]]の[[ザフライングダッチマン]]の名前にちなんで[[グレート・ウェスタン鉄道]]が名付けた「[[フライング・ダッチマン (列車)|フライング・ダッチマン]]」も人気を博し、「[[フライング・スコッツマン]]」など同様にフライングを付けた列車名がイギリス国外を含めて広がっていった<ref name = "ヨーロッパ鉄道_86-87" />。

日本では長らく列車番号のみで列車を識別していたが、昭和初期の不況で輸送力が余剰気味であったことから、列車に愛称を付けて親しんでもらおうという意図で、東京 - 下関間の特急列車2往復に愛称を付けることになり、列車名を一般公募して「[[富士 (列車)|富士]]」「[[さくら (列車)|櫻]]」と名付けて1929年(昭和4年)9月15日のダイヤ改正から時刻表にも掲載されて運行されるようになった。[[第二次世界大戦]]中一時的に列車愛称は途絶えるが、戦後復活し、列車の増発とともに愛称は増加していった。同じような運行系統・運行目的の列車を「〇〇1号・2号」あるいは「第1・第2〇〇」のように番号付きで区別することも始まり、[[ヨンサントオ]](昭和43年10月1日ダイヤ改正)で同一区間の列車名はできるだけ愛称を統一することや、末尾に1号・2号と付番することで出発順序を区別することなどが決められた<ref name = "列車名大事典_14-35" />。

なお、「[[鮮魚貨物列車|とびうお]]」「[[たから (列車)|たから]]」など、貨物列車に愛称がつけられた事例もある<ref name = "百三十年史_261-263" />。
{{-}}


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references />
{{Reflist|30em|refs=
<ref name = "world52">[[#world|『ダイヤグラムで広がる鉄の世界』p.52]]</ref>
<ref name = "world53">[[#world|『ダイヤグラムで広がる鉄の世界』p.53]]</ref>
<ref name = "車両研究_15-17">[[#車両研究|『車両研究で広がる鉄の世界』pp.15 - 17]]</ref>
<ref name = "鉄道辞典上_265">[[#鉄道辞典上|『鉄道辞典 上巻』p.265]]</ref>
<ref name = "鉄道辞典下_1760-1761">[[#鉄道辞典下|『鉄道辞典 下巻』pp.1760 - 1761]]</ref>
<ref name = "鉄道辞典下_1775-1776">[[#鉄道辞典下|『鉄道辞典 下巻』pp.1775 - 1776]]</ref>
<ref name = "鉄道工学ハンドブック_210">[[#鉄道工学ハンドブック|『鉄道工学ハンドブック』p.210]]</ref>
<ref name = "鉄道工学ハンドブック_211">[[#鉄道工学ハンドブック|『鉄道工学ハンドブック』p.211]]</ref>
<ref name = "鉄道工学ハンドブック_213-214">[[#鉄道工学ハンドブック|『鉄道工学ハンドブック』pp.213 - 214]]</ref>
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<ref name = "列車名大事典_14-35">[[#列車名大事典|『国鉄・JR列車名大事典』pp.14 - 35]]</ref>
<ref name = "ヨーロッパ鉄道_85-86">[[#ヨーロッパ鉄道|『小池滋のヨーロッパ鉄道 歴史と文化II』pp.85 - 86]]</ref>
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<ref name = "編成_3-5">[[#編成の謎|『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.3 - 5]]</ref>
<ref name = "編成_59-66">[[#編成の謎|『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.59 - 66]]</ref>
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<ref name = "編成_101-105">[[#編成の謎|『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.101 - 105]]</ref>
<ref name = "編成_129-132">[[#編成の謎|『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.129 - 132]]</ref>
<ref name = "編成_132-136">[[#編成の謎|『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.132 - 136]]</ref>
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<ref name = "鉄道論_158-159">[[#鉄道論|『日本国有鉄道論』pp.158 - 159]]</ref>
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== 参考文献 ==
* {{Cite book | 和書 | author = 井上孝司 | title = ダイヤグラムで広がる鉄の世界 | publisher = 秀和システム | date = 2009-10-23 | isbn = 978-4-7980-2412-7 | ref = world}}
* {{Cite book | 和書 | author = 井上孝司 | title = 車両研究で広がる鉄の世界 | publisher = 秀和システム | date = 2010-05-01 | isbn = 978-4-7980-2611-4 | ref = 車両研究}}
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* {{Cite book | 和書 | title = 鉄道辞典 下巻 | date = 1958-03-31 | editor = 日本国有鉄道 | publisher = 日本国有鉄道 | ref = 鉄道辞典下}}
* {{Cite book | 和書 | author = [[久保田博]] | date = 1992-02-13 | title = 鉄道工学ハンドブック | publisher = [[グランプリ出版]] | edition = 第4刷 | language = 日本語 | isbn = 4-87687-163-9 | ref = 鉄道工学ハンドブック}}
* {{Cite book | 和書 | author = [[久保田博]] | date = 2003-06-16 | title = 新版 鉄道用語事典 | publisher = [[グランプリ出版]] | edition = 初版 | language = 日本語 | isbn = 4-87687-247-3 | ref = 用語事典}}
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* {{Cite book | 和書 | author = 佐藤正樹 | date = 2010-10-15 | title = 国鉄/JR列車編成の謎を解く | publisher = [[交通新聞社]] | edition = 第1刷 | language = 日本語 | isbn = 978-4-330-17410-5 | ref = 編成の謎}}
* {{Cite book | 和書 | editor = 日本貨物鉄道株式会社貨物鉄道百三十年史編纂委員会 | year = 2007 | month = 7 | title = 貨物鉄道百三十年史 中巻 | publisher = [[日本貨物鉄道]] | language = 日本語 | ref = 百三十年史}}
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* {{Cite journal | 和書 | author = 関崇博 | title = ネームド・トレイン50年 | journal = [[鉄道ファン (雑誌)|鉄道ファン]] | year = 1980 | month = 3 | issue = 227 | publisher = 交友社 | pages = 14 - 30 | ref = ネームドトレイン50年}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Commonscat}}
{{commonscat|Trains}}
{{Wiktionary}}
* [[輸送]] - [[旅客輸送]]・[[貨物輸送]]・[[チッキ]]・[[鉄道郵便]]
* [[輸送]] - [[旅客輸送]]・[[貨物輸送]]・[[チッキ]]・[[鉄道郵便]]
* [[鉄道車両]]
* [[鉄道車両]]
72行目: 273行目:
* [[装甲列車]]
* [[装甲列車]]
* [[弾丸列車]]
* [[弾丸列車]]

==外部リンク==
*{{Kotobank}}


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2018年2月22日 (木) 14:07時点における版

列車(アルゼンチンサルタ州

列車(れっしゃ)は、鉄道線路上を運転して、人や物を輸送するために仕立てられた鉄道車両である。専門的には、停車場)の外の線路を運転させる目的で組成された車両のことを特に列車と呼び、同じ車両であっても運転させる目的をもたずに留置されているようなものは列車ではなく、単なる車両である[1]。条件を満たしていれば、車両数に関係なく、1両であっても列車となりうる[2]

定義

日本においては国土交通省の定める鉄道に関する技術上の基準を定める省令第2条13項で、「停車場外の線路を運転させる目的で組成された車両をいう」とされている[3]。またイギリスでは、1993年鉄道法英語版83(1)条において、列車 (train) を「(a) 2両またはそれ以上の鉄道車両が連結されたもので、少なくともそのうち1両は機関車であるもの、(b) 他の鉄道車両と連結されていない機関車」と定義している(機関車方式が前提となっている)[4]アメリカ合衆国アッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道の1948年の運行規程では列車を「客貨車の有無にかかわらず、1両またはそれ以上の機関車が連結されており、標識類が示されたもの」と定義していた[5]

日本では、「電車」という言葉で鉄道の線路を走る車両すべてを指すことがあるが[6]、電車は本来は電力によって走行する鉄道車両のことを指しており[7]、列車であるためにはどのような動力源を用いていてもよい[8]

技術的要件

鉄道の運転取り扱いでは、旅客や貨物の輸送に直接鉄道車両を使っている場合と、それ以外の場合を区別している。輸送に直接使われる、停車場間での鉄道車両の運転(移動)を「列車」と呼び、それ以外の鉄道車両の移動を単に「車両」と呼ぶ。輸送の準備や後始末で駅構内や車両基地において行う移動(入換)が車両である。列車として運転する場合には、車両に比べて高度な安全要件を満たすことが要求される[9]

列車として具備するべき条件は、以下のようなものがある[10]

運転時刻の設定
旅客や係員への周知のほか、列車相互の安全確保のためにも、あらかじめ時刻を決めて列車を運転する。
編成
計画した時刻通りに列車の運転ができるように、動力車の配置など所定の編成を確保し、その編成長は停車場に停車した際に他の線路を支障しないように、所定の長さに収まるようにする。
ブレーキ
所要のブレーキ力を発揮できるように、貫通ブレーキを装備し、ブレーキ力が作用する車軸が編成全体で一定の割合以上となるようにする。連結した車両が分離した場合でも停止させられるように、何らかの手段で自動的にブレーキが作用するようにしておく。運転に先立ってブレーキテストを行い、正しくブレーキが動作することを確認する。
乗務員
運転士を乗務させる。必要に応じて列車防護などの役割をする他の乗務員を乗務させる。運転に際しては安全かつ円滑に運転できるように、最前部を運転席とする。
標識
所定の運転方向がわかるように、連結した車両の最前部には前部標識を、最後部には後部標識を掲げる。
危険品の扱い
貨物列車において危険品を積載するときには、当該車両の前後に定められた両数の空車または危険のない貨物を搭載した車両を挟む。

編成

列車は複数の車両を連結して運転されることがあり、このことを「編成を組む」などと呼び、組み合わせた車両を指して編成と呼ぶ。編成には、列車として具備するべき前述の条件に加えて、動力装置、電源系統、サービス設備などの制約もある[11]

機関車が客貨車を牽引する動力集中方式の場合は、牽引定数が問題となる。列車ダイヤで定められた時刻を守って列車を運転するためには一定の速度以上で走行する必要があり、運転対象路線にある勾配と機関車の性能から、牽引する編成の重量は一定の範囲内に収まっている必要がある[12]。編成の各車両に動力が分散している電車方式(動力分散方式)の列車では、運転を想定している路線の勾配に合わせて、動力車の比率(MT比)を決める必要がある[13]

列車暖房においては、蒸気暖房の時代には蒸気機関車またはそれ以外の機関車では蒸気発生装置から蒸気を供給して暖房を行っており、蒸気発生装置のない電気機関車ディーゼル機関車では暖房を使えなかった。電気暖房においても、機関車に電気暖房用の送電設備、客車にそれに対応したヒーターが搭載されている必要があり、対応しなければ暖房を使えないという制約がある[14]。冷房の面でも、冷房装置とそれに対応した電源がなければ冷房を使えない[15]

サービスの面では、必要に応じてグリーン車一等車)などの優等車両と普通車の割合を決めて編成に連結する[16]。現代では売店での食品販売や外食産業に押されて連結は減少しているが、供食設備として食堂車やビュフェ車が連結されることがある[17]。優等車両や寝台車を連結するに際しては、特別料金を払っていない旅客がこうした車両内を通り抜けることを防止するために、編成の一端にまとめて優等車両や寝台車を連結したり、食堂車やロビーカーを間に挟んだりする対策が行われる[18]荷物車郵便車は駅における取り扱い設備の配置の関係から、連結位置が決まっている[19]

線路容量や車両数の制約から、列車の分割・併合を行うことがある。列車が進行していく際に、輸送需要が低くなるにつれて一部の車両を切り離していく、あるいは輸送需要が高くなるにつれて車両を増結していくような運行の仕方(増解結)をすることがある。またはそうした切り離した車両が支線に直通して別の終着駅となる列車になっていたり、別の始発駅を出発して支線から直通してくる列車を増結したりする(多層建て列車)こともある[20]

初期の車両では、1両単位で電源や暖房などが独立した構成になっており、自由に連結・解放することができた。しかしそうした機器類にかかる費用を節約するため、走行に必要な機器類や空調電源などを編成全体でまとめて最適設計して各車両に配置する、固定編成という考えが生まれた。さらに基本編成と付属編成という組み合わせにして、輸送需要に応じて付属編成を切り離すといった運用が行われている[21]

列車の設定と運行

列車の計画

列車ダイヤ(ダイヤグラム)

列車の運行計画は、ダイヤグラム(列車ダイヤ)の形で立案される[22]

運行計画においてはまず、対象路線の輸送量を想定し、各種列車の輸送力を設定する。乗車率(混雑率)が低いほど、旅客にとって座席を確保しやすくなってサービス上は好ましいが、乗車率が低いと輸送量に対し必要とされる車両数が増えることになり、鉄道事業者の運営コスト上は好ましくない。競合する交通機関の状況を踏まえて決定される[23]

続いて列車の設定本数と区間を決定する。輸送量に応じて列車本数を調整したり、編成両数を増減したりする。また列車の運転する区間や異なる路線への直通列車の設定を検討する。列車本数が多い方が旅客にとっては利用しやすいが、線路容量や車両運用との兼ね合いもある[24]

設定した列車の配列順序・出発時刻を決定する。利用者の利便性を考慮しつつ、線路容量や駅の発着番線の都合などを考えて、各列車の順序と時刻を決定する[24]。そして各列車の使用車両の性能や線路の条件に応じて計算された基準運転時分に基づいて駅間の走行時間を決め、各列車の停車駅と停車時間を定めて列車の時刻を確定していく[25]。こうした時刻を決定するにあたっては、各駅間の閉塞の条件、線路容量、駅の信号の条件、車両の性能といった条件から決まる最短時隔を守る必要がある[26]

列車には、他の列車と区別するために、列車番号が与えられる。列車のおおよその性質を知ることができるような番号体系が定められており、運行管理上重要であることから、同一駅に同一番号の列車が発着しないようにされている[8]

列車の時刻決定と表裏一体のものとして、列車に乗務員および車両の割り当てを行う、乗務員運用計画および車両運用計画(運用)が作成される。乗務員や車両が循環して各列車に割り当たっていくことで、実際の列車の運行が行われる[27]

運行管理

運転指令所から列車の運行管理が行われる

列車の運転は、常に当初の計画通りに行えるわけではなく、何らかの原因で列車に遅れが生じることがある。そうした列車の運行状況を監視し、必要に応じて対応策を講じて正常な運転に復帰させるために運行管理が行われる[28]

元来は、中央の運転指令所から電話で各地の駅や列車と連絡を取って指示命令を行っていた。現代においては、列車集中制御装置 (CTC) の導入が進み、運転指令所から各駅の信号設備を遠隔制御して列車の運行を制御している[29][28]。また運転指令所と列車の情報伝達には、列車無線が用いられるようになった[29]

CTCにおいても、列車の現在位置と列車ダイヤをもとに指令員が判断を行い、制御盤から信号を制御して列車の運行を管理していた。さらなる発展として、列車の運行状況をコンピューターを用いて自動的に追跡・監視し、あらかじめ入力された列車ダイヤのデータと照合して、自動的に運行管理を行う自動進路制御装置 (PRC) という装置が導入されるようになった[30]

列車ダイヤが乱れた際には、運転指令員が列車ダイヤや車両・乗務員運用計画の変更を行う。この作業のことを運転整理と呼ぶ。運転整理は、評価基準があいまいで難しく、制約が厳しいうえに大規模な組合せ最適化問題であるという、非常に難しい問題である[31]

列車の種類

用途目的による分類

用途目的による列車の分類として、運賃を徴収して一般の旅客貨物を輸送する営業用列車と、鉄道事業者の業務の都合上運転する事業用列車の区分がある[1]。営業用列車はさらに、下記のようにいくつかに区分されている。

旅客列車

旅客列車は、旅客(人)を乗せて運ぶ列車である[32]

長距離列車
都市や観光地など需要の集中する地点を結んで設定され、中長距離を移動する人の需要を主体に考えた列車である。所要時間の関係から夜行列車となる場合もある。場合によって特急列車急行列車準急列車などの優等列車として設定される。長距離列車は、旅客列車の中ではもっとも大きな収入源となる[33]
通勤列車
大都市圏を中心に、通勤輸送を担当する列車である。膨大な輸送需要と時間的な需要の変化が大きいことを特徴とする。鉄道旅客輸送が斜陽となっている国においても、大都市の通勤輸送に限っては鉄道の巨大な輸送力に頼らざるを得ない傾向がある。輸送力の整備に多大な費用が掛かるにもかかわらず、その設備が短時間しか稼働せず、しかも社会的な要請により割引率の高い運賃となっていることから、鉄道経営に与える負担が大きい[34]
団体専用列車
事前に申し込みを受け付けた団体の輸送のために運転される列車である。大口団体輸送と小口団体輸送に分けられ、大口団体の場合はそのために特別に列車を編成して臨時列車として運転するが、小口団体は一般旅客と混乗輸送となる[35]。小口団体を何組も合わせて同一列車で輸送する集約臨時列車もある[36]
荷物列車
乗客の手荷物や小口荷物を扱う旅客列車の一種[32]。荷物類は本質的には、貨物列車で運んでいる貨物と異なるものではないが、旅客の手荷物は旅客と一緒に輸送する必要があり、また小荷物類は速達の必要があることから、旅客列車に連結した荷物車で運ぶことになり、旅客輸送の一部であるとされてきた。しかし手小荷物の取扱量が増えると、その積み下ろしのために旅客列車を長時間停車させることはサービス上問題であり、輸送効率の点からも荷物車だけを集約した荷物列車を運行することになって、さらに貨物列車との差異は小さくなった[37]。なお郵便車による郵便物輸送も同様の理由で旅客輸送の一部であるとされる[38]
観光列車
単なる移動手段でなく、乗車自体を観光目的とするサービス(豪華な内外装の車両・景色・食事など)を提供する列車[39]

貨物列車

貨物列車は、貨物の輸送を行うための列車である[32]

一般貨物列車
様々な種類の貨物を搭載した雑多な貨車を連結した貨物列車である。発地も着地もばらばらであり、操車場で貨車をつなぎ変えながら目的地へ輸送する[40][41]。1両の貨車を特定の荷主で占有(貸切)して輸送するものを車扱い(しゃあつかい)、複数の荷主で共有して輸送するものを小口扱いという[42]
専用貨物列車
専用貨物列車はユニットトレインとも呼ばれ、単一種類の貨物を単一種類の貨車で、決まった発地から着地まで輸送する[40]。一般貨物列車とは異なり、途中で貨車をつなぎ変えることなく直送するため、時間的にも費用的にも有利な方式である。石炭穀物セメントなど多くのばら積み貨物がこの方式で輸送されている[43]
インターモーダル貨物列車
インターモーダル輸送を行う貨物列車で、コンテナ船トラックなど、異なる貨物輸送手段との間を連絡して貨物を輸送する。貨物を搭載したコンテナトレーラーを貨物列車に搭載する。トレーラーを搭載する場合ピギーバック輸送となる[40][44]

また、鉄道車両自体を貨物として輸送する甲種鉄道車両輸送や、大物車を使った特大貨物輸送も貨物列車の一種である[45]

混合列車

混合列車の例、機関車に近い側に客車が、後ろ側に貨車が連結されている

客車と貨車を併結した列車を混合列車という。さらに区別して、客車に貨車を併結した列車を混合列車、貨車に客車を併結した列車を準混合列車という[32]。準混合列車は貨物列車としての運行が主体であり、貨車の解結、貨物の積み下ろしに重点が置かれて、旅客扱いは従たるものである[46]

事業用列車

事業用列車は、鉄道事業のために用いられるが営業列車ではない列車である[47]。一般の旅客貨物を輸送する列車と使命が異なる列車として、特殊列車とも呼ぶ[48]

工事列車
鉄道の工事用材料を運搬する列車で、軌条・砂利などを運び、停車場以外の場所でも積み下ろしする[1]
試運転列車
新製車両や修理完了した車両の試験・確認や、線路・橋梁などの状態確認といった目的で運転される列車[1]
回送列車
車両を車両基地から発駅まで送り込んだり、貨物を降ろした貨車を送り返したり(返空)する目的で運転される列車[49]。回送列車を特殊列車の分類ではなく、旅客列車や貨物列車の分類とする考え方もある[50]。機関車が客車や貨車を連結せずに単独で走ることを特に単行機関車列車、略して単機という[51]
排雪列車
線路の除雪をするために運転される列車。雪かき車を用いて積雪を排除しながら運転する。近くに適当な雪捨て場がない場合に、貨車に雪を積み込んで河川などの適当な雪捨て場まで運ぶために運転する雪捨列車もある[1]ラッセル車を用いる排雪列車は列車ダイヤに組み込まれて冬期間は定期的に運転される例が多く、ロータリー車を用いる排雪列車は特殊排雪列車などと呼ばれ、必要に応じて臨時に設定されることが多い。モーターカーを用いた排雪も行われるが、正式には車両ではなく機械としての扱いである[52]
救援列車
事故や故障が発生した際に、現場に復旧のための資材や要員を送り込んだり、車両を収容したりする目的で運転される列車である。その性格上、列車としての要件に例外が認められており、駅間での後退が認められたり、信号条件にかかわらず1閉塞区間に複数列車の進入が認められたりする[1]
配給列車
鉄道事業者内部で必要とされる物品を部内各所に配給するために運転される列車である[1]
お召し列車
お召し列車、ロイヤルトレイン(宮廷列車)といった貴賓を乗せる列車も特殊列車として扱われることがある。日本の場合は、天皇・皇后が乗る列車がお召し列車、皇太子が乗る列車が御乗用列車と呼ばれる。またお召し列車の安全のために、その直前に先行して走らせる列車を指導列車、通称露払い列車と呼ぶ[1][53]

動力車による分類

列車は動力車の種類により、機関車牽引列車、電車列車、気動車列車などに分類される[47]。異種動力車が併結されている場合はメインとなる動力車が基準となる[47]。機関車牽引列車には、蒸気機関車を使用する蒸機列車、電気機関車を使用する電機列車、内燃機関車を使用する内燃機列車などがある[1]。機関車牽引列車は、特に蒸機列車は、「汽車」とも呼ばれる[54]

運行時期による分類

定期列車
毎日定期的に運行される列車(ただし曜日により時刻が多少異なる場合を含む)[47]
季節列車
特定の期間限定して運行される列車[47]。たとえば、夏の多客期や冬のスキーシーズンに合わせて運転されるような列車のことで、季節による輸送需要の変化に対応するためのものである[45]
臨時列車
特定の日に限定して運行される列車[47]。団体向けの列車(団体専用列車)や年末年始・ゴールデンウィークなどの多客時期に増発する列車、イベントのために設定する列車、鉄道事業者の内部目的で運転される特殊列車(試運転・排雪・救援・工事・配給など)などがある[45]

運行距離による分類

長距離列車
直通列車あるいは直行列車などとも呼び、ある区間の全部を始点から終点まで通しで運転する列車である[1]
区間列車
比較的短区間を運転するもので、近郊列車、ローカル列車などとも呼ぶ[1]
小運転列車
区間列車の中でも特に短い区間を運行する列車のことを区別して小運転列車、俗に「ちょん行」と呼ぶ[1]

運転時間帯による分類

昼行列車
昼間有効時間帯に運転される列車であり、始発駅の出発時刻がおおむね5時以降、終着駅の到着時刻がおおむね23時以前程度になるものである[1]。昼行列車は夜行列車に比べると快速性に重きをおき、1日をできるだけ有効に使えるような時刻設定が良いとされる[55]
夜行列車
おおむね18時以降に始発駅を出発し、おおむね翌朝8時頃までに終着駅に到着するような列車である。主要な大都市相互間の有効時間帯を考慮して設定される。所要時間が長い列車になると、昼間に運転される区間については昼行列車の性格を併せ持つことがある[1]。夜行列車の場合は必ずしも速達性は重視されず、出発地と到着地が適時になることが重視される[55]。所要時間が6時間を超えると、旅客は昼行列車より夜行列車を好む傾向があるとされている[56]

愛称付き列車

ロンドン・ヴィクトリア駅を出発する「黄金の矢」号、蒸気機関車の前頭部にヘッドマークを掲げている
貨物列車に愛称を付けた例、日本国有鉄道のコンテナ特急「たから

旅客にアピールする目的で、列車に「黄金の矢」(イギリスフランス)や「20世紀特急」(アメリカ合衆国)など、列車愛称を付けることがある[57]。そうした愛称付きの列車(ネームド・トレイン named train)には、シンボルマークを描いたヘッドマーク・テールマークを取り付けることがある[58]

世界で最初に愛称を付けた列車は、1848年にイギリスで運行開始した「アイリッシュ・メール」である。鉄道の普及以前には、駅馬車(ステージコーチ)の中でもっとも速いものに郵便物を載せて運んでおり、そうしたステージコーチを特にメールコーチと呼ぶ慣習があった。そのためにメールが付く名前には速いという印象があったことから、アイルランド行き最速列車をアピールしてアイリッシュ・メールと名付けられた(ただしアイルランドへ直通しているわけではなく、アイルランド行きの船が出る港への列車である)。以降、行き先の地名にメールを付けた愛称がつけられていった[59]。また、競走馬ザフライングダッチマンの名前にちなんでグレート・ウェスタン鉄道が名付けた「フライング・ダッチマン」も人気を博し、「フライング・スコッツマン」など同様にフライングを付けた列車名がイギリス国外を含めて広がっていった[60]

日本では長らく列車番号のみで列車を識別していたが、昭和初期の不況で輸送力が余剰気味であったことから、列車に愛称を付けて親しんでもらおうという意図で、東京 - 下関間の特急列車2往復に愛称を付けることになり、列車名を一般公募して「富士」「」と名付けて1929年(昭和4年)9月15日のダイヤ改正から時刻表にも掲載されて運行されるようになった。第二次世界大戦中一時的に列車愛称は途絶えるが、戦後復活し、列車の増発とともに愛称は増加していった。同じような運行系統・運行目的の列車を「〇〇1号・2号」あるいは「第1・第2〇〇」のように番号付きで区別することも始まり、ヨンサントオ(昭和43年10月1日ダイヤ改正)で同一区間の列車名はできるだけ愛称を統一することや、末尾に1号・2号と付番することで出発順序を区別することなどが決められた[57]

なお、「とびうお」「たから」など、貨物列車に愛称がつけられた事例もある[61]

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 『鉄道辞典 下巻』pp.1775 - 1776
  2. ^ 列車”. コトバンク(世界大百科事典 第2版). 2018年2月11日閲覧。
  3. ^ 鉄道に関する技術上の基準を定める省令”. e-gov. 2018年2月12日閲覧。
  4. ^ Railways Act 1993”. legislation.gov.uk. 2018年2月12日閲覧。
  5. ^ Atchison, Topeka and Santa Fe Railway (1948). Rules: Operating Department. pp. 7 
  6. ^ 『鉄道のひみつ』pp.96 - 97
  7. ^ 電車”. コトバンク. 2018年2月11日閲覧。
  8. ^ a b 土田廣. “列車”. コトバンク(日本大百科全書). 2018年2月11日閲覧。
  9. ^ 『電気鉄道ハンドブック』p.428
  10. ^ 『電気鉄道ハンドブック』p.429
  11. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.3 - 5
  12. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.186 - 192
  13. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.129 - 132
  14. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.139 - 148
  15. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.148 - 152
  16. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.101 - 105
  17. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.88 - 92
  18. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.59 - 66
  19. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.67 - 72
  20. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.132 - 136
  21. ^ 『車両研究で広がる鉄の世界』pp.15 - 17
  22. ^ 『鉄道工学ハンドブック』p.218
  23. ^ 『鉄道工学ハンドブック』pp.213 - 214
  24. ^ a b 『鉄道工学ハンドブック』p.214
  25. ^ 『鉄道工学ハンドブック』pp.214 - 216
  26. ^ 『鉄道工学ハンドブック』pp.216 - 218
  27. ^ 『鉄道工学ハンドブック』p.222
  28. ^ a b 『鉄道工学ハンドブック』p.223
  29. ^ a b 『電気鉄道ハンドブック』p.445
  30. ^ 『電気鉄道ハンドブック』pp.446 - 447
  31. ^ 『電気鉄道ハンドブック』pp.436 - 443
  32. ^ a b c d 『ダイヤグラムで広がる鉄の世界』p.52
  33. ^ 『日本国有鉄道論』pp.148 - 152
  34. ^ 『日本国有鉄道論』pp.152 - 155
  35. ^ 『日本国有鉄道論』pp.155 - 156
  36. ^ 『鉄道辞典 下巻』pp.1760 - 1761
  37. ^ 『日本国有鉄道論』pp.156 - 157
  38. ^ 『日本国有鉄道論』pp.158 - 159
  39. ^ 観光列車”. JTB総合研究所. 2017年11月18日閲覧。
  40. ^ a b c Penny Morris (2017年4月12日). “Three Types of Modern Freight Trains”. Our Pastimes. 2018年2月17日閲覧。
  41. ^ Jarrett Zielinski. “UNIT VS. MANIFEST TRAINS” (PDF). CRUDE MARKETS & RAIL TAKEAWAY SUMMIT CANADA 2013. 2018年2月17日閲覧。
  42. ^ 『日本国有鉄道論』pp.161 - 163
  43. ^ Unit train”. Encyclopædia Britannica. 2018年2月17日閲覧。
  44. ^ What is Intermodal”. ユニオン・パシフィック鉄道. 2018年2月17日閲覧。
  45. ^ a b c 『鉄道工学ハンドブック』p.211
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  47. ^ a b c d e f 『ダイヤグラムで広がる鉄の世界』p.53
  48. ^ 『新版 鉄道用語事典』p.234
  49. ^ 『新版 鉄道用語事典』p.31
  50. ^ 『鉄道工学ハンドブック』p.210
  51. ^ 『新版 鉄道用語事典』p.291
  52. ^ 『新版 鉄道用語事典』p.388
  53. ^ 『新版 鉄道用語事典』p.314
  54. ^ 『現代国語例解辞典』第二版、 1993年、小学館、279頁。ISBN 4-09-501032。
  55. ^ a b 『日本国有鉄道論』pp.149 - 151
  56. ^ 幻の「寝台新幹線」構想 食堂車は高速化で姿消す 東海道新幹線、開業50年(上)”. NIKKEI STYLE (2014年9月8日). 2018年2月16日閲覧。
  57. ^ a b 『国鉄・JR列車名大事典』pp.14 - 35
  58. ^ 「ネームド・トレイン50年」
  59. ^ 『小池滋のヨーロッパ鉄道 歴史と文化II』pp.85 - 86
  60. ^ 『小池滋のヨーロッパ鉄道 歴史と文化II』pp.86 - 87
  61. ^ 『貨物鉄道百三十年史 中巻』pp.261 - 263

参考文献

  • 井上孝司『ダイヤグラムで広がる鉄の世界』秀和システム、2009年10月23日。ISBN 978-4-7980-2412-7 
  • 井上孝司『車両研究で広がる鉄の世界』秀和システム、2010年5月1日。ISBN 978-4-7980-2611-4 
  • 日本国有鉄道 編『鉄道辞典 上巻』日本国有鉄道、1958年3月31日。 
  • 日本国有鉄道 編『鉄道辞典 下巻』日本国有鉄道、1958年3月31日。 
  • 久保田博『鉄道工学ハンドブック』(第4刷)グランプリ出版、1992年2月13日。ISBN 4-87687-163-9 
  • 久保田博『新版 鉄道用語事典』(初版)グランプリ出版、2003年6月16日。ISBN 4-87687-247-3 
  • 電気鉄道ハンドブック編集委員会 編『電気鉄道ハンドブック』コロナ社、2007年2月28日。ISBN 978-4-339-00787-9 
  • 川辺謙一『「超」図説講義 鉄道のひみつ』(第1刷)学習研究社、2010年3月30日。ISBN 978-4-05-404512-5 
  • 寺本光照『国鉄・JR列車名大事典』(初版第2刷)中央書院、2002年9月25日。ISBN 4-88732-093-0 
  • 小池滋『小池滋のヨーロッパ鉄道 歴史と文化II』(第1版第1刷)ヨーロッパ鉄道協会、2012年7月1日。ISBN 978-4-89718-269-8 
  • 佐藤正樹『国鉄/JR列車編成の謎を解く』(第1刷)交通新聞社、2010年10月15日。ISBN 978-4-330-17410-5 
  • 日本貨物鉄道株式会社貨物鉄道百三十年史編纂委員会 編『貨物鉄道百三十年史 中巻』日本貨物鉄道、2007年7月。 
  • 兼松学『日本国有鉄道論』東京大学出版会、1962年8月31日。 
  • 関崇博「ネームド・トレイン50年」『鉄道ファン』第227号、交友社、1980年3月、14 - 30頁。 

関連項目

外部リンク