「不安障害」の版間の差分
関連性の有無を判断できるほどのソースがなく、元版でも2016年に削除されている"解離性不安"のくだりと不正確な神経症との対応についての記述を削除 |
m →認知行動療法 |
||
(同じ利用者による、間の10版が非表示) | |||
97行目: | 97行目: | ||
[[認知行動療法]] (CBT) は、とりわけパニック障害や[[社交不安障害]]といった、いくつかの不安障害に対して有効性が高いことを研究は示しており<ref name="cbt">Jonathan R. T. Davidson, MD; Edna B. Foa, PhD; ''et al.'' [http://archpsyc.ama-assn.org/cgi/content/abstract/61/10/1005 ''Fluoxetine, Comprehensive Cognitive Behavioral Therapy, and Placebo in Generalized Social Phobia''] 1998. Retrieved March 1, 2006.</ref>、NICEはとりわけ成人・児童の社交不安障害に有用であるとしている{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2014|loc=Quality statement 2}}。 |
[[認知行動療法]] (CBT) は、とりわけパニック障害や[[社交不安障害]]といった、いくつかの不安障害に対して有効性が高いことを研究は示しており<ref name="cbt">Jonathan R. T. Davidson, MD; Edna B. Foa, PhD; ''et al.'' [http://archpsyc.ama-assn.org/cgi/content/abstract/61/10/1005 ''Fluoxetine, Comprehensive Cognitive Behavioral Therapy, and Placebo in Generalized Social Phobia''] 1998. Retrieved March 1, 2006.</ref>、NICEはとりわけ成人・児童の社交不安障害に有用であるとしている{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2014|loc=Quality statement 2}}。 |
||
====認知行動療法 ==== |
|||
多くの不安障害に有効であり、次のような様々な技法を組み合わせて実施することが多い<ref>ライト,J.H.,テーゼ,M.,&バスコ,M.R. 大野 宏(訳) (2007).認知行動療法トレーニングブック 医学書院</ref>。 |
|||
* [[曝露反応妨害法]]:不安障害に対する認知行動療法の中核をなす技法が[[曝露反応妨害法]] (ERP) である<ref name=":1">田中 恒彦・岡嶋 美代・小松 孝徳 (2015).不安障害治療における行動療法でオノマトペがなぜ有用か?――内部感覚エクスポージャーにオノマトペを用いた実践報告―― 人工知能学会論文誌,''30'',282-290.</ref>。曝露反応妨害法とは、治療者や支援者のサポートのもと、患者が不安や恐怖を感じる物や状況を体験し(曝露)、はじめは不安や恐怖を感じながらもその物や状況からの回避行動をとらないようにすることにより(反応妨害)、「回避行動をしなくても、実際には不安に思っていたことや恐怖を感じていたことが起こらない・起きていないということ(不安・恐怖と現実・事実との間のずれへの気づき)」・「回避行動をしなくても、時間の経過とともに不安や恐怖が和らいでいくということ(セッション内馴化:Within-Session Habituation)」・「曝露と反応妨害のセットを繰り返し行うごとに不安感や恐怖感が弱まっていくということ(セッション間馴化:Between-Session Habituation)」を身をもって学び、不安感・恐怖感と回避行動の低減が実現するという治療法である<ref name=":1" /><ref>金井 喜宏 (2015).社交不安症の認知・行動療法――最近の研究動向からその本質を探る―― 不安症研究,''7'',40-51.</ref><ref name=":0">坂野 雄二・丹野 義彦・杉浦 義典(編) (2006).不安障害の臨床心理学 東京大学出版会</ref>。また、曝露反応妨害法ではほとんどの場合、患者が実行しやすいように、弱い不安感をいだく物や状況から強い不安感をいだく物や状況までを段階的に並べた階層表(不安階層表)を作成し、比較的弱い不安を感じる物や状況から比較的強い不安を感じる物や状況へと段階的に曝露を行っていく<ref name=":0" />。なお、曝露の際に治療者や支援者が付き添ってサポートをすることで、より治療効果が高まる<ref name=":0" /><ref>Gloster, A.T., Wittchen, H. U., Einsle, F., Lang, T., Helbig-Lang, S., Fydrich, T., Fehm, L., Hamm, A. O., Richter, J., Alpers, G. W., Gerlach, A. L., Ströhle, A., Kircher, T., Deckert, J., Zwanzger, P., Höfler, M. & Arolt, V. (2011). Psychological treatment for panic disorder with agoraphobia: a randomized controlled trial to examine the role of therapist-guided exposure in situ in CBT. ''Journal of Consulting and Clinical Psychology'', ''79'', 406-420.</ref>。 |
|||
* 行動実験:不安感や恐怖感の妥当性を実験的手法により検証する行動実験([[認知行動療法]]の一種)が、曝露反応妨害法とセットで用いられることがある。行動実験とは、不安や恐怖が現実になる・事実であるという仮説や、不安を感じる状況や場所等を回避しなければ恐れていることが起こる・恐れている事態になるという仮説(これらの仮説は不安感や恐怖感、回避行動に妥当性があると仮定したものであり、のちに否定・棄却されることになる)をたて(1-仮説の構築)、治療者や支援者のサポートのもと、患者が実際に先ほどの仮説を検証してみることで(2-仮説の実際的検証)、不安や恐怖が現実にはならなかった・事実ではなかったということを知ったり、不安を感じる状況や場所を回避せずに生活しても実際には恐れていることが起こらなかった・恐れている事態にならなかったという結果を得たりすることにより(3-検証結果の把握)、先ほどの仮説を棄却し(4-結果に基づく仮説の棄却)、不安感や恐怖感、回避行動の妥当性を否定し、患者が新たな合理的な認知や行動を獲得していくこと(5-不安感や恐怖感、回避行動の否定と合理的な認知・行動の獲得)をサポートする治療法である<ref>石川 亮太郎・小堀 修・中川 彰子・清水 栄司 (2013).強迫性障害に対する行動実験を用いた認知行動療法.不安障害研究,''5'',54-60.</ref><ref name=":02" />。 |
|||
* 認知再構成法:患者がいだく不安・恐怖の内容に温かく耳を傾けたうえで、不安感・恐怖感そのものと不安や恐怖を持つにいたった根拠を、事実・現実(もしくは事実・現実に根ざした情報)に基づいた説明・反証により否定し、恐れている行為・物・状況・場所などの危険性に関する誤った認知の修正を行い、「恐れていた行為・物・場所・状況は、実際には危険もしくは害のあるものではない」という適切な認知へと導く技法を、認知再構成法([[認知療法]]の一種)と呼ぶ。この技法も曝露反応妨害法とセットで用いられることがある<ref name=":02">ステファン・G・ホフマン 伊藤 正哉・堀越 勝(訳) (2012).現代の認知行動療法――CBTモデルの臨床実践―― 診断と治療社, ISBN 9784787819758</ref>。 |
|||
* [[モデリング (心理学)]]:「自分も他者と同じく人間であるから、他者と同じような行動・振る舞いをして自分だけが被害をこうむったり加害をしたりすることは考えられない」という事実に根ざした認識に基づいて、不安感・恐怖感が発生する状況における他者の考え方を学ぶことや、そのような状況における他者の行動・振る舞い方を観察・習得することなどをサポートし、適切な考え方や行動の獲得を支援する技法である。この技法も曝露反応妨害法と併用される場合がある<ref>坂野 雄二・丹野 義彦・杉浦 義典(編) (2006).不安障害の臨床心理学 東京大学出版会</ref>。 |
|||
* 注意変容:これまで述べられてきたように、恐怖感・不安感は、実際には事実ではなく現実にもならない、全く気にしなくて良いものである。同時に、恐怖・不安を感じる対象も、実際には全く危険ではなく、一切気にする必要のないものである。そこで、治療者・支援者は、恐怖・不安を感じる対象から、楽しいこと・楽しいもの(患者と協働し、楽しいことリストを作成するのも有益である)や今やりたいことへと意識を向け直していくことができるよう、患者をサポートする。この注意変容の技法も、曝露反応妨害法と併用される場合がある<ref name=":02" />。 |
|||
===薬物療法=== |
===薬物療法=== |
2017年12月26日 (火) 07:08時点における版
不安障害 | |
---|---|
概要 | |
診療科 | 精神医学, 臨床心理学 |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | F40-F43 |
ICD-9-CM | 300 |
DiseasesDB | 787 |
eMedicine | med/152 |
MeSH | D001008 |
不安障害(ふあんしょうがい、英:Anxiety disorder)とは、過剰な反すうや心配、恐怖の特徴を有するいくつかの異なる種類の一般的な精神障害を含んだ総称である。不安は、身体と精神の健康に影響を及ぼす可能性がある不確かで現実に基づかないか、あるいは想像上の将来についてである。
不安障害は、さまざまな心理社会的要因を有し、遺伝的素因を含む可能性もある。不安障害の診断は2つの分類に分けられ、それは持続しているか、一時的な症状かどうかに基づく。たびたび全般性不安障害として誤診される、不安障害に類似した症状を有する甲状腺機能亢進症のような医学的疾患も存在する。
不安障害は、全般性不安障害、特定の恐怖症、およびパニック障害に分けられ、各々が特徴と症状を持ち、異なる治療を要する[1]。不安障害が発現させる感情は、単なる緊張から恐怖による発作までにわたる[2]。
テイラー不安検査やツング不安自己評価尺度のような標準化された検査用の臨床アンケートを、不安症状の検出に用いることが可能で、不安障害の正式な診断評価のために必要であることが示唆される[3]。
不安
不安とは、明確な対象を持たない恐怖の事を指し、その恐怖に対して自己が対処できない時に発生する感情の一種である。不安が強く、行動や心理的障害をもたらす症状を総称して不安障害と呼ぶ。精神症状として強い不安、イライラ感、恐怖感、緊張感が現れるほか、発汗、動悸、頻脈、胸痛、頭痛、下痢などといった身体症状として現れることがある[4]。
分類
全般性不安障害
全般性不安障害(GAD)は、対象のない持続的な不安を特徴とする。
不安障害の診断を下す前に、医師は薬物誘発性不安や他の医学的原因を除外することが必要である[5]。
特定の恐怖症
特定の対象や状況に対して著しい恐怖反応を示す。
パニック障害
パニック障害は、突然の強い恐怖や不安により、動悸、混乱、めまい、吐き気、呼吸困難のような特徴がある。このようなパニック発作の原因は特定されないが、ストレスや恐怖に誘発される。
広場恐怖症
広場恐怖症は、特定の場所や状況における不安である。広場恐怖症はしばしばパニック障害に関連付けられ、恐怖によりパニック発作が誘発される。
社交不安障害
社交不安障害(SAD)は、人前で話すといった特定の状況や、社会的交流について生じる。赤面、発汗、会話困難といった身体症状の特徴がある。類似した対人恐怖症は、日本に特有の文化結合症候群とされる。
強迫性障害
強迫性障害(OCD)は、強迫観念(持続する考えや心象)や強迫行為(compulsions)(特定の行為や儀式を行う)の特徴のある不安障害の種類である。
DSM-5では不安障害の下位分類ではなく、不安障害と同等な大項目になった。
心的外傷後ストレス障害
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は外傷体験によって生じる不安障害である。心的外傷後ストレスは、戦闘、自然災害、レイプ、人質状況、児童虐待、いじめ、あるいは重大な災難のような極端な状況が原因となる。
DSM-5では不安障害の下位分類ではなく、不安障害と同等な大項目になった。
分離不安障害
分離不安障害(SepAD)は人や場所から離れた時の過剰な水準の不安である。分離不安は、乳児や子供では正常な発達上の不安である。障害とみなされるのは、過剰な場合のみである。そのような場合、パニックを生じさせる。
近似のもの
- 他の不安障害
- 一般身体疾患による不安障害
- 物質誘発性不安障害
- 特定不能の不安障害
- 不安を伴うもの
- 混合性不安抑うつ障害
- ストレス反応
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- 急性ストレス障害
- 不安を伴う適応障害
原因
生物学
神経伝達物質のGABAの濃度の低下は、中枢神経系における活性を減少させ不安の要因となる。多くの抗不安薬は、このGABA受容体を調節することで作用する。[6][7][8]
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、うつ病の治療に一般的に用いられている薬剤でもあり、不安障害の一次治療とみなされている[9]。2004年の脳機能画像技術を用いた研究は、SSRIの作用は気分改善の二次的な結果というより、GABA神経における直接的な作用により不安を軽減していることを示唆した[10]。
重度の不安や抑うつは、持続的なアルコールの乱用に誘発され、多くの場合、長期の断酒によって弱まる。人によっては、適度な持続的なアルコールの使用でさえ不安や抑うつの水準を増す可能性がある。[11]カフェイン、アルコール、またベンゾジアゼピン系への依存症は、不安やパニック発作の原因となったり、悪化させる[12]。不安は一般にアルコールの急性離脱期に生じ、遷延性離脱症候群の一部として2年まで続き、約25%の人がアルコール依存症から回復する[13]。 1988年から1990年にわたった研究において、あるイギリスの精神病院におけるパニック障害や社交不安障害のような不安障害を対象とした精神福祉サービスに通う患者の約半分が、アルコールあるいはベンゾジアゼピン依存症の結果であることが判明した。これらの患者では、不安の初めの増加は離脱期に生じ、不安症状の停止がその後に続いた。[14]
労働環境において有機溶剤に長い間曝されることが不安障害に結びついていたという証拠が存在する。 塗装や敷物の敷設は、有機溶剤に著しく曝される仕事の例である。[15]
カフェインの摂取は、不安障害の原因となったり悪化させる[16][17]。
多数の研究が、カフェインと不安惹起作用、およびパニック障害との間に相関を示している[18][19][20]。不安患者は高いカフェインへの感度を有する[21][22][23][24][25]。
治療
英国国立医療技術評価機構 (NICE) は、不安障害には根拠に基づいた心理療法が効果的な治療であるとし[26]、最初の治療として薬物治療よりも推奨されるとしている[26]。
心理療法
NICEは根拠に基づいた心理療法を推奨し、その範囲には弱い心理的介入であるセルフヘルプの手法から、高い心理的介入の心理療法までが含まれるとしている[26]。
認知行動療法 (CBT) は、とりわけパニック障害や社交不安障害といった、いくつかの不安障害に対して有効性が高いことを研究は示しており[27]、NICEはとりわけ成人・児童の社交不安障害に有用であるとしている[26]。
認知行動療法
多くの不安障害に有効であり、次のような様々な技法を組み合わせて実施することが多い[28]。
- 曝露反応妨害法:不安障害に対する認知行動療法の中核をなす技法が曝露反応妨害法 (ERP) である[29]。曝露反応妨害法とは、治療者や支援者のサポートのもと、患者が不安や恐怖を感じる物や状況を体験し(曝露)、はじめは不安や恐怖を感じながらもその物や状況からの回避行動をとらないようにすることにより(反応妨害)、「回避行動をしなくても、実際には不安に思っていたことや恐怖を感じていたことが起こらない・起きていないということ(不安・恐怖と現実・事実との間のずれへの気づき)」・「回避行動をしなくても、時間の経過とともに不安や恐怖が和らいでいくということ(セッション内馴化:Within-Session Habituation)」・「曝露と反応妨害のセットを繰り返し行うごとに不安感や恐怖感が弱まっていくということ(セッション間馴化:Between-Session Habituation)」を身をもって学び、不安感・恐怖感と回避行動の低減が実現するという治療法である[29][30][31]。また、曝露反応妨害法ではほとんどの場合、患者が実行しやすいように、弱い不安感をいだく物や状況から強い不安感をいだく物や状況までを段階的に並べた階層表(不安階層表)を作成し、比較的弱い不安を感じる物や状況から比較的強い不安を感じる物や状況へと段階的に曝露を行っていく[31]。なお、曝露の際に治療者や支援者が付き添ってサポートをすることで、より治療効果が高まる[31][32]。
- 行動実験:不安感や恐怖感の妥当性を実験的手法により検証する行動実験(認知行動療法の一種)が、曝露反応妨害法とセットで用いられることがある。行動実験とは、不安や恐怖が現実になる・事実であるという仮説や、不安を感じる状況や場所等を回避しなければ恐れていることが起こる・恐れている事態になるという仮説(これらの仮説は不安感や恐怖感、回避行動に妥当性があると仮定したものであり、のちに否定・棄却されることになる)をたて(1-仮説の構築)、治療者や支援者のサポートのもと、患者が実際に先ほどの仮説を検証してみることで(2-仮説の実際的検証)、不安や恐怖が現実にはならなかった・事実ではなかったということを知ったり、不安を感じる状況や場所を回避せずに生活しても実際には恐れていることが起こらなかった・恐れている事態にならなかったという結果を得たりすることにより(3-検証結果の把握)、先ほどの仮説を棄却し(4-結果に基づく仮説の棄却)、不安感や恐怖感、回避行動の妥当性を否定し、患者が新たな合理的な認知や行動を獲得していくこと(5-不安感や恐怖感、回避行動の否定と合理的な認知・行動の獲得)をサポートする治療法である[33][34]。
- 認知再構成法:患者がいだく不安・恐怖の内容に温かく耳を傾けたうえで、不安感・恐怖感そのものと不安や恐怖を持つにいたった根拠を、事実・現実(もしくは事実・現実に根ざした情報)に基づいた説明・反証により否定し、恐れている行為・物・状況・場所などの危険性に関する誤った認知の修正を行い、「恐れていた行為・物・場所・状況は、実際には危険もしくは害のあるものではない」という適切な認知へと導く技法を、認知再構成法(認知療法の一種)と呼ぶ。この技法も曝露反応妨害法とセットで用いられることがある[34]。
- モデリング (心理学):「自分も他者と同じく人間であるから、他者と同じような行動・振る舞いをして自分だけが被害をこうむったり加害をしたりすることは考えられない」という事実に根ざした認識に基づいて、不安感・恐怖感が発生する状況における他者の考え方を学ぶことや、そのような状況における他者の行動・振る舞い方を観察・習得することなどをサポートし、適切な考え方や行動の獲得を支援する技法である。この技法も曝露反応妨害法と併用される場合がある[35]。
- 注意変容:これまで述べられてきたように、恐怖感・不安感は、実際には事実ではなく現実にもならない、全く気にしなくて良いものである。同時に、恐怖・不安を感じる対象も、実際には全く危険ではなく、一切気にする必要のないものである。そこで、治療者・支援者は、恐怖・不安を感じる対象から、楽しいこと・楽しいもの(患者と協働し、楽しいことリストを作成するのも有益である)や今やりたいことへと意識を向け直していくことができるよう、患者をサポートする。この注意変容の技法も、曝露反応妨害法と併用される場合がある[34]。
薬物療法
選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) が一般的に一次選択として推奨され、SNRIもまた有効であるが、離脱と有害事象が生じる可能性がある[36]。ノルトリプチリンは毒性代謝物に起因して再発率の高さに結びついている。ベンゾジアゼピン系は、時には、短期間あるいは必要に応じて使用される。これらは通常、認知障害と依存症や離脱の危険性といった不利益が理由で二次治療である[37][38]。
NICEはベンゾジアゼピンおよび抗精神病薬らは、特別の事情 (specifically indicated) を除き処方してはならないとし、かつルーチン処方を禁じている[37]。
漢方薬
漢方薬として柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、甘麦大棗湯、桂枝加竜骨牡蠣湯、抑肝散、加味逍遥散、半夏厚朴湯、加味帰脾湯等、漢方薬が有効なこともある。 緊張や神経過敏状態には柴胡系、パニックを起こしやすい場合には甘麦大棗湯が第一選択となる。また胸部の締め付け感などを伴う不安には半夏厚朴湯を用いるが、そこに月経や更年期障害が関係している場合は、加味逍遥散を使用する[39]。
カフェインの除去
一部の人では、カフェインを中止することで不安は大きく緩和できる[40]。不安はカフェインの離脱の間、一時的に増加する[41][42][43]。
代替医療
習慣的な有酸素運動[44]やカフェインの減量[45]はよく不安の治療に用いられる。ヨガが有効かもしれないという試験的な証拠が存在する[46]。
疫学
2010年の患者数は、全世界で2.73億人(人口の4.5%)とされている[47]。男性(2.8%)より女性(5.2%)に多い[47]。
出典
- ^ Psychiatry, Michael Gelder, Richard Mayou, John Geddes 3rd ed. Oxford; New York: Oxford University Press, c 2005
- ^ Phil Barker (2003-10-07). Psychiatric and mental health nursing: the craft of caring. London: Arnold. ISBN 978-0-340-81026-2 2010年12月17日閲覧。
- ^ Zung WW (1971). “A rating instrument for anxiety disorders”. Psychosomatics 12 (6): 371–379. doi:10.1016/S0033-3182(71)71479-0. PMID 5172928.
- ^ 貝谷久宜「知っているようで知らない疾患のトリセツ:パニック障害」『Credentials』第27号、2010年12月、14-15頁。
- ^ Varcarolis. E (2010). Manual of Psychiatric Nursing Care Planning: Assessment Guides, Diagnoses and Psychopharmacology. 4th ed. New York: Saunders Elsevier. p 109.
- ^ Lydiard RB (2003). “The role of GABA in anxiety disorders”. J Clin Psychiatry 64 (Suppl 3): 21–27. PMID 12662130.
- ^ Nemeroff CB (2003). “The role of GABA in the pathophysiology and treatment of anxiety disorders”. Psychopharmacol Bull 37 (4): 133–146. PMID 15131523.
- ^ Enna SJ (1984). “Role of gamma-aminobutyric acid in anxiety”. Psychopathology 17 (Suppl 1): 15–24. doi:10.1159/000284073. PMID 6143341.
- ^ Dunlop BW, Davis PG (2008). “Combination treatment with benzodiazepines and SSRIs for comorbid anxiety and depression: a review”. Prim Care Companion J Clin Psychiatry 10 (3): 222–228. doi:10.4088/PCC.v10n0307. PMC 2446479. PMID 18615162 .
- ^ Bhagwagar Z, Wylezinska M, Taylor M, Jezzard P, Matthews PM, Cowen PJ (2004). “Increased brain GABA concentrations following acute administration of a selective serotonin reuptake inhibitor”. Am J Psychiatry 161 (2): 368–370. doi:10.1176/appi.ajp.161.2.368. PMID 14754790 .
- ^ Evans, Katie; Sullivan, Michael J. (2001-03-01). Dual Diagnosis: Counseling the Mentally Ill Substance Abuser (2nd ed.). Guilford Press. pp. 75–76. ISBN 978-1-57230-446-8
- ^ Lindsay, S.J.E.; Powell, Graham E., eds (1998-07-28). The Handbook of Clinical Adult Psychology (2nd ed.). Routledge. pp. 152–153. ISBN 978-0-415-07215-1
- ^ Johnson, Bankole A. (2011). Addiction medicine : science and practic. New York: Springer. pp. 301–303. ISBN 978-1-4419-0337-2
- ^ Cohen SI (February 1995). “Alcohol and benzodiazepines generate anxiety, panic and phobias”. J R Soc Med 88 (2): 73–77. PMC 1295099. PMID 7769598 .
- ^ Morrow LA et al. (2000). “Increased incidence of anxiety and depressive disorders in persons with organic solvent exposure”. Psychosomat Med 62 (6): 746–750. PMID 11138992 .
- ^ Scott, Trudy (2011). The Antianxiety Food Solution: How the Foods You Eat Can Help You Calm Your Anxious Mind, Improve Your Mood, and End Cravings. New Harbinger Publications. p. 59. ISBN 1572249269 2012年10月7日閲覧。
- ^ Winston AP (2005). “Neuropsychiatric effects of caffeine”. Advances in Psychiatric Treatment 11 (6): 432–439. doi:10.1192/apt.11.6.432.
- ^ Hughes RN (June 1996). “Drugs Which Induce Anxiety: Caffeine”. New Zealand Journal of Psychology 25 (1): 36–42. doi:10.1016/S0278-6915(02)00096-0. PMID 12204388. オリジナルの2013年2月9日時点におけるアーカイブ。 .
- ^ Vilarim MM, Rocha Araujo DM, Nardi AE (August 2011). “Caffeine challenge test and panic disorder: a systematic literature review”. Expert Rev Neurother 11 (8): 1185–95. doi:10.1586/ern.11.83. PMID 21797659.
- ^ Vilarim, Marina Machado; Rocha Araujo, Daniele Marano; Nardi, Antonio Egidio (2011). “Caffeine challenge test and panic disorder: A systematic literature review”. Expert Review of Neurotherapeutics 11 (8): 1185–95. doi:10.1586/ern.11.83. PMID 21797659.
- ^ Lee, Myung Ae; Cameron, Oliver G.; Greden, John F. (1985). “Anxiety and caffeine consumption in people with anxiety disorders”. Psychiatry Research 15 (3): 211–7. doi:10.1016/0165-1781(85)90078-2. PMID 3862156 .
- ^ Lee MA, Flegel P, Greden JF, Cameron OG (May 1988). “Anxiogenic effects of caffeine on panic and depressed patients”. The American Journal of Psychiatry 145 (5): 632–5. PMID 3358468.
- ^ Bruce, Malcolm; Scott, N; Shine, P; Lader, M (1992). “Anxiogenic Effects of Caffeine in Patients with Anxiety Disorders”. Archives of General Psychiatry 49 (11): 867–9. doi:10.1001/archpsyc.1992.01820110031004. PMID 1444724 .
- ^ Nardi, Antonio E.; Lopes, Fabiana L.; Valença, Alexandre M.; Freire, Rafael C.; Veras, André B.; De-Melo-Neto, Valfrido L.; Nascimento, Isabella; King, Anna Lucia et al. (2007). “Caffeine challenge test in panic disorder and depression with panic attacks”. Comprehensive Psychiatry 48 (3): 257–63. doi:10.1016/j.comppsych.2006.12.001. PMID 17445520.
- ^ Nutt, David J; Rogers, Peter J; Hohoff, Christa; Heatherley, Susan V; Mullings, Emma L; Maxfield, Peter J; Evershed, Richard P; Deckert, Jürgen (August 2010). “Association of the Anxiogenic and Alerting Effects of Caffeine with ADORA2A and ADORA1 Polymorphisms and Habitual Level of Caffeine Consumption”. Neuropsychopharmacology 35 (9): 1973–1983. doi:10.1038/npp.2010.71. PMC 3055635. PMID 20520601 .
- ^ a b c d 英国国立医療技術評価機構 2014, Quality statement 2.
- ^ Jonathan R. T. Davidson, MD; Edna B. Foa, PhD; et al. Fluoxetine, Comprehensive Cognitive Behavioral Therapy, and Placebo in Generalized Social Phobia 1998. Retrieved March 1, 2006.
- ^ ライト,J.H.,テーゼ,M.,&バスコ,M.R. 大野 宏(訳) (2007).認知行動療法トレーニングブック 医学書院
- ^ a b 田中 恒彦・岡嶋 美代・小松 孝徳 (2015).不安障害治療における行動療法でオノマトペがなぜ有用か?――内部感覚エクスポージャーにオノマトペを用いた実践報告―― 人工知能学会論文誌,30,282-290.
- ^ 金井 喜宏 (2015).社交不安症の認知・行動療法――最近の研究動向からその本質を探る―― 不安症研究,7,40-51.
- ^ a b c 坂野 雄二・丹野 義彦・杉浦 義典(編) (2006).不安障害の臨床心理学 東京大学出版会
- ^ Gloster, A.T., Wittchen, H. U., Einsle, F., Lang, T., Helbig-Lang, S., Fydrich, T., Fehm, L., Hamm, A. O., Richter, J., Alpers, G. W., Gerlach, A. L., Ströhle, A., Kircher, T., Deckert, J., Zwanzger, P., Höfler, M. & Arolt, V. (2011). Psychological treatment for panic disorder with agoraphobia: a randomized controlled trial to examine the role of therapist-guided exposure in situ in CBT. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 79, 406-420.
- ^ 石川 亮太郎・小堀 修・中川 彰子・清水 栄司 (2013).強迫性障害に対する行動実験を用いた認知行動療法.不安障害研究,5,54-60.
- ^ a b c ステファン・G・ホフマン 伊藤 正哉・堀越 勝(訳) (2012).現代の認知行動療法――CBTモデルの臨床実践―― 診断と治療社, ISBN 9784787819758
- ^ 坂野 雄二・丹野 義彦・杉浦 義典(編) (2006).不安障害の臨床心理学 東京大学出版会
- ^ CG113 - Generalised anxiety disorder and panic disorder (with or without agoraphobia) in adults: Management in primary, secondary and community care (Report). 英国国立医療技術評価機構. 2011-01. Guidance chapt.1.2.23.
{{cite report}}
:|date=
の日付が不正です。 (説明) - ^ a b 英国国立医療技術評価機構 2014, Quality statement 3.
- ^ Stein, Dan J (2004-02-16). Clinical Manual of Anxiety Disorders (1st ed.). USA: American Psychiatric Press Inc. p. 7. ISBN 978-1-58562-076-0
- ^ 精神疾患・発達障害に効く漢方薬―「続・精神科セカンドオピニオン」の実践から (精神科セカンドオピニオン) 内海 聡 (著)
- ^ Bruce, M. S.; Lader, M. (February 2009). “Caffeine abstention in the management of anxiety disorders”. Psychological Medicine 19 (01): 211. doi:10.1017/S003329170001117X. PMID 2727208.
- ^ Prasad, Chandan (2005). Nutritional Neuroscience. CRC Press. p. 351. ISBN 0415315999 2012年10月7日閲覧。
- ^ Nehlig, Astrid (2004). Coffee, Tea, Chocolate, and the Brain. CRC Press. p. 136. ISBN 0415306914 2012年10月7日閲覧。
- ^ Juliano LM, Griffiths RR (2004). “A critical review of caffeine withdrawal: empirical validation of symptoms and signs, incidence, severity, and associated features”. Psychopharmacology (Berl.) 176 (1): 1–29. doi:10.1007/s00213-004-2000-x. PMID 15448977. オリジナルの2012年1月29日時点におけるアーカイブ。 .
- ^ Herring P, O’Connor P, Dishman R (2010-02-22). “The Effect of Exercise Training on Anxiety Symptoms Among Patients”. Archives of Internal Medicine (American Medical Association) 170 (4): 321–331. doi:10.1001/archinternmed.2009.530. PMID 20177034. オリジナルの2010年6月23日時点におけるアーカイブ。 2010年6月14日閲覧。.
- ^ American Psychiatric Association. (1994). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (4th ed.). American Psychiatric Association. ISBN 0-89042-062-9
- ^ Li, AW; Goldsmith, CA (2012 Mar). “The effects of yoga on anxiety and stress”. Alternative medicine review : a journal of clinical therapeutic 17 (1): 21–35. PMID 22502620.
- ^ a b Vos, T; Flaxman, AD; Naghavi, M; Lozano, R; Michaud, C; Ezzati, M; Shibuya, K; Salomon, JA et al. (2012-12-15). “Years lived with disability (YLDs) for 1160 sequelae of 289 diseases and injuries 1990–2010: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2010”. Lancet 380 (9859): 2163–96. doi:10.1016/S0140-6736(12)61729-2. PMID 23245607.
参考文献
- QS53 - Anxiety disorders (Report). 英国国立医療技術評価機構. 2014-02.
{{cite report}}
:|date=
の日付が不正です。 (説明)
関連項目
外部リンク
- Generalised anxiety disorder overview - NICE Pathways
- 不安障害 厚生労働省
- KOMPAS 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト「不安障害」
- 不安症 - 脳科学辞典
- Anxiety Disorders - ウェイバックマシン(2012年10月12日アーカイブ分) Medpedia「不安障害」の項目。