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* 「多摩の蕎麦、うどん名店77」 ISBN 4-87751-159-8 |
* 「多摩の蕎麦、うどん名店77」 ISBN 4-87751-159-8 |
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* 「わが家はうどん主義!」・「男のうどん学」武蔵野手打ちうどん保存普及会会長加藤有次著 |
* 「わが家はうどん主義!」・「男のうどん学」武蔵野手打ちうどん保存普及会会長加藤有次著 |
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* [https://web.archive.org/web/20140402064948/http://m-udon.com/mum020.html 村山かてうどん継承研究所 村山うどんの歴史](2014年4月2日時点の[[インターネット |
* [https://web.archive.org/web/20140402064948/http://m-udon.com/mum020.html 村山かてうどん継承研究所 村山うどんの歴史](2014年4月2日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]]) |
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== 関連項目 == |
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2017年9月5日 (火) 00:56時点における版
武蔵野うどん(むさしのうどん)とは、東京都多摩地域と埼玉県に伝わるうどんのことである。「手打ちうどん」とも呼ばれる。
普及範囲
武蔵野とは、狭義には「埼玉県川越以南、東京都府中までの間に拡がる地域」、広義には「武蔵国全部」ともされているが[1]、「武蔵野うどん」の特徴を備えたものは、多摩地域の北西部から埼玉県川越市付近までの武蔵野台地上のエリアを中心に、北は埼玉県北本市や加須市・熊谷市、比企郡、東はさいたま市大宮区など、埼玉県の平野部全体に見られる。
歴史
多摩地域から埼玉県入間郡にまたがる武蔵野台地は、関東ローム層に覆われており、浸水量が降雨量を上回るのが通常であり、水田を使用する米より良質な小麦の生産が盛んであった。こうしたことから、うどんが多く食べられ、小麦主食の文化地帯となっており、各家庭でうどんを打つ習慣があった[2]。
特徴
もともと郷土料理であるため、使用される小麦粉は武蔵野台地で生産されたものを使用する事が原則(地産地消)である。麺は、一般的なうどんよりも太く、色はやや茶色がかっている。加水率は低く塩分は高めである。コシがかなり強く、食感は力強い物でゴツゴツしている(つるりとはしていない)。食するときには麺は、ざるに盛って「ざるうどん」もしくは「もりうどん」とする。つけ麺の汁は、かつおだしを主とした強い味で甘みがある。シイタケ、ゴマなどを具として混ぜたものを、温かいまま茶碗ないしそれに近い大きさの器に盛る。ねぎや油揚げなどの薬味を好みで混ぜ、汁をうどんにからませて食べる。豚肉の細切れを具にしたメニューの「肉汁うどん」などは明治時代中期以降の食べ方で、商業化された「武蔵野うどん」の店舗では「肉汁うどん」「きのこ汁うどん」が「武蔵野うどん」であるかのように近年売り出しているが、「武蔵野うどん」とは武蔵野地方で「手打ちうどん」と呼ばれるコシの強いうどんの麺を指す用語である。天ぷらうどんのような食べ方は元々なく、「糧(かて)」と呼ばれる具(主に茹でた野菜)が付く程度である。(だが、明治維新以前から北多摩の農村部地域では、うどん汁に獣肉(豚肉)を入れていた。それが武蔵野うどんの発祥だと考えられても不思議ではない。)
武蔵野台地では江戸時代はうどんはハレの日の行事食でもあり、旧家では現在でも冠婚葬祭などの祝い事、親戚集まりには(細く長く良い事が続くように)うどんを出す事が多い。過去、うどんが打てなければ嫁に入る事が出来なかった。
製法
すべてのうどんに共通する事項の一部は省略する。
- 麺
一般にうどんは蕎麦と比較して製作を始めてから完成するまでに時間がかかるため、店舗では小麦粉をこねて、強いこしを出すための足で踏む作業をあらかじめ済ませておく場合がある。店舗ではここから先の打つ作業はガラス張りの部屋で行われ、その様子を順番待ちをしている間などに見ることができるようになっている店も多いが、足で踏む工程が最大の特徴である強いこしを出すための大切な要素ともなる。
うどん打ちは、まず太く短い棒を使って徐々に伸ばしていく。しばらくしたら細く長い棒に変えてさらに薄く、丸く伸ばしていく。円形の直径が1mほどになったところで小麦粉をふりかけ、棒に巻きつけて粉をなじませる作業を数回繰り返す。これが終わったら、棒に巻きつけた麺を屏風状に折りたたみ、それを包丁で切る。元が円形のため、折りたたんだ端と中心では麺の長さに大きな差があり、端では10cm程度、中心では1m近くの長さになる。また包丁を使った手作業のため、太さはまちまちである。
- 汁
汁は削り節のだしを主にしたものはすべて共通である。そこ(下地)に具を投入して温めたものを程よく冷ましてから食べる。出汁よりも醤油が利いており、具によってメニューが決められ、主に以下のようなものがある。
- きのこ汁うどん - シイタケやエノキなどの茸を具としたもの。薬味とは別にネギや油揚げが入るがさらに薬味としてネギを添えることもできる。
- 肉汁うどん - ここでいう肉は主に豚肉。(糧=野菜と肉のうどんは、武蔵野うどんの中でも伝統的なものである。)
- なす汁うどん - ナスを具として入れる。
このほかにも具や油を一切加えずに出汁だけの汁を冷ましたものを用意している店もある。この汁は「冷汁」と呼ばれるが、武蔵野うどんと範囲をほぼ同じくする『すったて』とは全く異なったものである。
ブランドイメージ
讃岐うどんが地元企業によって全国に宣伝して町おこしの素材としているのに対して、『武蔵野うどん』は、あくまで埼玉と多摩川以北の多摩地域の郷土料理である。劣化が早く、すぐに茹でるものであり、茹でた後の保存に向かないこともその一因としてある。東京都武蔵村山市では、『村山うどんの会』という組織が結成され町おこしを行っている。
店舗
タネとして天ぷらを出す店も多く、蕎麦を出す店もある。
- 山田うどん - 埼玉県を中心に展開するチェーン店。『つけ汁うどん』として肉汁うどんが供されるが、『つけ汁そば』や『つけ汁相盛り』などのメニューもあり、結果として「肉汁そば」を食べることが出来る。ただし、同社のうどんは、前述した武蔵野うどんの特徴を必ずしも備えているわけではない。むしろ本来の武蔵野うどんとは逆に、博多うどんのようなコシがない麺である。
特殊なもの
汁はつけ汁が一般的だが、多くの人にふるまう場合などには具や薬味を入れない『かけうどん』として出されることもあり、その場合には七味唐辛子を好みで加える。しかし麺は上記の製法によるものである。
脚注
- ^ 『広辞苑 第5版』 岩波書店。
- ^ JR東日本 伝統を味わう武蔵野うどん(2009年8月16日時点のアーカイブ)
参考文献
- 「多摩の蕎麦、うどん名店77」 ISBN 4-87751-159-8
- 「わが家はうどん主義!」・「男のうどん学」武蔵野手打ちうどん保存普及会会長加藤有次著
- 村山かてうどん継承研究所 村山うどんの歴史(2014年4月2日時点のアーカイブ)