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「のらくろ」の版間の差分

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*田河水泡・のらくろ館 - 森下文化センター(公益財団法人 [http://www.kcf.or.jp/outline.html 江東区文化コミュニティ財団])
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*[http://www5a.biglobe.ne.jp/~norakuro/sub1/index.htm 田河水泡/のらくろ館] - 応援サイト(最終更新2009年)「[http://www5a.biglobe.ne.jp/~norakuro/ のらくろの街誕生!]」<!--公式サイト←「公式」ではないとのこと(Ticket:2013071510002558)-->
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*[http://web.archive.org/web/20120818113949/http://www.comic-terminal.jp/mangakan/norakuro/index.html コミタ漫画館 のらくろちゃん] - ウェブ版「のらくろちゃん」掲載サイト。閉鎖(2012年8月18日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])
*[http://web.archive.org/web/20120818113949/http://www.comic-terminal.jp/mangakan/norakuro/index.html コミタ漫画館 のらくろちゃん] - ウェブ版「のらくろちゃん」掲載サイト。閉鎖(2012年8月18日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])
*[http://cgi2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009060028_00000 のらくろ演芸会 -NHK名作選(動画・静止画) NHKアーカイブス]
*[http://cgi2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009060028_00000 のらくろ演芸会 -NHK名作選(動画・静止画) NHKアーカイブス]



2017年9月4日 (月) 17:23時点における版

のらくろ』は、田河水泡漫画作品、その主人公である野良犬。およびそれを原作としたアニメ作品。

概要

大日本雄辯會講談社(現・講談社)の雑誌『少年倶楽部』にて1931年から連載された。連載のきっかけは、『少年倶楽部』の人気小説「あゝ玉杯に花うけて」の作者である佐藤紅緑が、当時の編集長である加藤謙一に対し、「もっと漫画を載せたらどうか。漫画は家中みんなで読めるし、なにより誌面が明るくなるからね」とアドバイスをしたことであった[1]戦前の漫画としては稀有な長期連載[注釈 1]となっていたが、1941年内務省役人から「この戦時中に漫画などというふざけたものは掲載を許さん」というクレームが入り、編集長がやむなく打ち切りにした[2]。戦後も潮書房の雑誌「」に探偵の物語として1981年まで執筆した。また、田河の編集による「漫画トランク」(東京漫画出版社刊・昭和22年12月20日発行)にも掲載されたのをはじめ、後述のように戦後のリバイバルブーム期に講談社と普通社ろまんす社から復刻連載版と単行本版が発行あるいは刊行された[注釈 2]。なお、最も早い大日本雄辯會講談社版『のらくろ二等兵』再録版は連載最終話[注釈 3]と同時に同社発行の初期作品集「漫画常設館」誌にて収録され、初期の兵制改変に伴い当時の新規の兵制に合わせて復刻加筆されている。

日本の漫画の萌芽期に人気を獲得。当時は、雑誌だけにとどまらず子供向けの商品には次々にのらくろが登場した。現代のキャラクター商品のはしりともいえる「のらくろ」、楽器「のらくろハーモニカ」、筆箱、幼児用の玩具ハンガーなどが発売された。著作権は、このような第二次的な商品にまでは法的規制の及ばない時代で、ほとんど原作者や出版社の無許諾商品である。これに関して原作者の田河は「ええじゃないですか、みなさんよろこんで使ってくれるんだから」と鷹揚なものだった[注釈 4]

1989年に漫画執筆権を弟子の「のらくろトリオ」(山根青鬼山根赤鬼永田竹丸)に継承した。田河と山根赤鬼の死後も「のらくろトリオ」によって新作が発表され続けているが、田河の作品よりギャグ漫画色がどちらかといえば強い。

初出から80年以上を経た今(2016年現在)でもキャラクター関連商品などが多数販売されている。

なお、弟子の長谷川町子の『サザエさん』と同様に、『中部日本新聞』の夕刊に昭和31年1月4日~同年6月29日の間掲載されたことがある。こちらの作品の題名も『のらくろ』だが外伝に位置し、のらくろの息子(小学2年[3])が登場してシンを張っていて、親の方と同じ呼ばれ方で登場する。また、戦後に描かれたのらくろ正伝終盤の伏線が張られている(母親の姿など)。のらくろの息子は掲載誌の関連もあり中日ドラゴンズが大好きな野球少年となっている。親父ののらくろに絡む話もあり[注釈 5]、ブルとデカは重要な役回りで登場する。後に正伝『のらくろ中隊長』(昭和36年1月号~昭和43年10月号「丸」連載、昭和38年12月号にて一時中断し『のらくろの息子』をはさんで昭和42年3月号から再開している)にて赤子にて登場した。正伝『のらくろの息子』(昭和41年2月号~昭和42年2月号「丸」連載。第4回より改題、『のらくろの息子デス』に変更)に登場するデスはこの息子の後年の姿。また、デスは「ぼくら[注釈 6](後の『ぼくらマガジン』→『テレビマガジン』・講談社)」版『まんが自衛隊 のらくろ二等兵』(昭和38年6月号~12月号)の主人公(時代的には『ぼくら』読者層と同年齢であるので新聞版の上、『~"デス"』の下の年齢の頃)でもある。

作品内容

ノラ(野良犬孤児)の黒犬・のらくろ(野良犬黒吉)が、猛犬聯隊(猛犬連隊)という犬の軍隊へ入営して活躍するという話(舞台モデルは帝国陸軍)。最初は二等卒(二等兵)だったが徐々に階級を上げ、最終的に大尉まで昇進する(当初、のらくろを少佐に昇進させるつもりだったが軍から苦情[注釈 7]があり、やむを得ず大尉で除隊させた。別説では、少佐になると偉くなりすぎて前線にはやたらに出せず、動かしにくい)。戦後に描かれた話には、戦闘描写はあるがほとんど誰も死なず、物語の序盤で軍隊は解散する。孤児ゆえの辛さを描写することもあるが、田河はこの辺りの描写を自分自身と重ね合わせたという。ブル聯隊長、もしくはモール中隊長が父親的な役割を演じている。いわゆる正伝では最終的に所帯を持ち、喫茶店の店主になるが、外伝では様々な職業を手がけている。

映像化の歴史

1935年には、「瀬尾発声漫画研究所」主宰の瀬尾光世によるアニメーション映画、『のらくろ二等兵』、『のらくろ一等兵』が映画撮影され公開。戦時下の1938年にも同じく瀬尾の手による、『のらくろ虎退治』(芸術映画社)が公開されている。当時としても少国民らに人気となり、シリーズ化された(いずれも白黒映画)。

それ以前にものらくろのアニメーション映画は製作されている。『のらくろ二等兵』が 横浜シネマで1933(昭和8)年に、『のらくろ伍長』が横浜シネマで1934(昭和9)年に製作されている。

戦後にテレビ放送が盛んになると、連続アニメの番組がテレビ向けに量産されるようになったが1970年10月5日 - 1971年3月29日には、エイケン(TCJ動画センター)によりテレビアニメ『のらくろ』が放映。主人公のらくろの声は大山のぶ代。カラー映像で放映されたが、世間ではまだ白黒テレビも多かった時代である。また、1987年10月4日 - 1988年10月2日にはスタジオぴえろによりフジテレビ系列でテレビアニメ『のらくろクン』が放映された。のらくろ(のら山くろ吉)の孫、のらくろクンを主人公としており、ギャグアニメ色が強いものであった。のらくろクンの声優は坂本千夏、祖父のくろ吉役を八奈見乗児が演じた。のらくろの世界が人間界と別に存在するという設定になっており、人間界の木下家を間借りして「のらくろ探偵事務所」を開くという、『のらくろ捕物帳』を意識した設定になっている。

主要な設定など

原作に準じた設定で記述する。

のらくろ
主人公。顎と手足以外は真っ黒で、大きい目が特徴。口のあたりにあるゴマ粒のようなものは口ではなく模様。ヒゲにも見える。後述の通り雑種[注釈 8]。「野良犬黒吉」(現在では戸籍名「のら山黒吉」ということになっている)を略して「のらくろ」と自称する。性格は明朗快活、マイペースでお調子者のところもあるが、孤児であることにコンプレックスを感じている。好物は豚饅頭豆大福でかなりの健啖家[注釈 9]が大の苦手。猛犬聯隊に入隊した際は大喜びしていた。しかし銃の持ち方が逆だったり、口の聞き方が雑とあまり軍人について詳しくは知らなかった。入隊直後は何かとへま(ドジ)をやらかし、重営倉入り[注釈 10]するなど懲罰を受けること[注釈 11]もあったが、次第に頓知を効かせたり、器用さや度胸のよさを発揮[注釈 12]して聯隊の勝利に貢献、トントン拍子に出世する。伍長の時、師団司令部へ当番に行き、師団長より猛犬聯隊の聯隊旗(軍旗)の図案を任され、自分の腕をモチーフに聯隊旗をデザイン[注釈 13]する。士官学校卒業と同時に少尉に昇進(モデルである帝国陸軍の少尉候補者制度に準拠)、ハンブルと共に官舎支給を受けその隣に住み、後に聯隊旗手や駐屯守備隊長を務める。大尉に昇進しモール中隊長の後を受け第五中隊長まで務め、「大」「日」「本」の三つの勲章を授与されたが、思うところあり退役。なお兵長を経ずに昇進したのではないかという誤解を受けることが多いが、兵長は日中戦争の延長に伴い新設された階級であり、原作者はそれ以前の兵役経験者であることもあり、のらくろの世界では兵長という階級自体が存在しないので二階級特進説は誤りである。戦後は聨隊解散後大陸に渡り、ここでも金山を掘り当てて成功を収める。帰国後は、職を転々とした後喫茶店のマスターを務め、軍隊時代から馴染みだった焼き鳥屋の娘おぎんちゃんと恋愛結婚する。プロポーズの言葉は「ぼくのお嫁さんになるかい?」。場所は押し入れだった。後に息子をもうけることとなる(上記参照)。
ブル聯隊長
太った白いブルドッグ。猛犬聯隊の聯隊長、階級は大佐。威厳が漂うガンコ親父風の犬物だが、根はひょうきんなところもあり[注釈 14]、情が深い。一人息子がいる。のらくろの才能を認め、よく重要な任務を命じるが、『のらくろ武勇談』で、のらくろが瀕死の重傷を負ったときは「今思えば、私がのらくろ中隊に無理な攻撃をさせたのが悪かった。とんだことをした」と猛反省しきりだった。のらくろにとっては厳格な聯隊長であるとともに父親代わりともいえる存在。のらくろが退役するとき、自分が大切にしていた宝刀の「興亜丸」を餞別に贈った。聯隊長の職を退いてから、大陸にて偶然のらくろと再会した。戦後は聨隊解散後ブル商事を興し社長に就任。従兄弟のテキサス大佐は後述の通り、士官学校の生徒隊長としてのらくろ達の恩師となり、その後に退役したブル聯隊長の後任にもなった。のらくろの息子時代には一時期漫画連隊を率いていたことがある。また、時として感情に任せた行動に出ることがある[注釈 15]
モール中隊長
テリア。猛犬聯隊第二大隊第五中隊長、階級は大尉、後に(のらくろの大尉進級と同時に)少佐に進級、大隊長(第二大隊)を務める。のらくろの上官で、良き理解者であり良き相談相手でもある。一人息子がいる。平時は温厚な性格だが、ふざけた態度をとる者には手厳しい。のらくろも「うちの中隊長殿は話が分かる」と評しており、温情をかけてもらったことがある一方、演習中に抜け出して食事をしていたこと、地震を恐れてをかぶったこと、贅沢な飲食店に出入りしたこと、自分の軍刀を落とし紛失したこと、演習中に「回れ右」の号令をかけてふざけたこと、敵軍のゲリラ戦法に引っ掛かったことなどについて叱責されていた[注釈 16]。特に、のらくろが軍人の魂でもある軍刀を紛失したときは、鉄拳制裁のうえ「お前なんか軍人を辞めてしまえ!」と厳しく叱責した。しかし、『のらくろ武勇談』で、のらくろが豚軍の銃弾を受け瀕死の重傷を負ったときには、涙を流しながら「どうぞ神様、私の命と代えてもよろしいですから、どうかのらくろの命をお助けください」と心優しい一面を見せる。のらくろを自分の息子のように育て、かつ新兵の頃から厳しく指導したもう一人の父親的存在である。体格は痩せており、ブル聯隊長と対照的な存在である。戦後は聨隊解散後次点繰り上げ当選で市議会議員となる。戦後版で、モール忠太という名前であることが判明。なおテレビアニメ版は体毛色が茶系になっていた。
ハンブル
ブルドッグと別の犬種とのハーフで、半分ブルドッグに似ているので「ハンブル」である。のらくろの一番の親友。『のらくろ伍長』の「のらくろ突進隊」の巻で、ゴリラとの戦争でブル聯隊長から斥候命令を受ける上等兵として初登場。ゴリラ戦役後一時は旅団司令部に所属したと思われる。のらくろと同時に士官学校に入学し卒業、聯隊に復帰。のらくろとともに活躍する機会が多いので、のらくろが出世すると大抵ハンブルも出世する。卒業時に、軍曹から少尉への昇進をしている。また、のらくろの隣の官舎を支給された。ちょっとのんびり屋だが、勇猛さや智謀ではのらくろに決して劣らない。戦後は聨隊解散後探偵事務所を開く。
爆弾
どんぐり眼が特徴な軍曹。士官学校でのらくろやハンブルと出会い、以来親友になる。口が達者で、士官学校時代はのらくろと口論になることもあったが、仲間に対する頼み事や話し方が上手(爆弾に「熊が攻めてきたので当番を代わってくれ」と言って目的をばらしてしまったハンブルの前で、目的を気づかれないように鉢巻を説得した)。時に工兵としても活躍する。士官学校の6人の中ではのらくろ、ハンブル、爆弾の3人がモール中隊長率いる第五中隊において小隊長としてその後の物語でも活躍する。のちにのらくろやハンブルと一緒に大尉(中隊長)に昇進。戦後は不動産屋を始め、大通りに店を持つこととなった。
鉢巻
耳の先端が曲がった軍曹。そこによく自前の手ぬぐいを巻いている(基本的に軍務関係のときはしていなかったが、豚京城を攻略したときや恐竜退治の時は一時的につけている)。のらくろたちと同時に士官学校に入学し、親友になる。自叙伝によれば頭がいいらしい。のらくろやハンブルと一緒に出世する。名前が片仮名書きされることもある。戦後は聨隊解散後板前の修業をし、後に料亭を開店した。
トンガリ
耳が真っすぐとんがっている軍曹。のらくろたちと同時に士官学校に入学・卒業した親友の一人。自ら発言することは少ないものの、頼れる親友でもある。戦後は生命保険の会社などいくつかのブローカーをしている。
カメ(メガネ)
のらくろたちと同時に士官学校に入学・卒業した親友の一人。6人の中では『のらくろ小隊長』では活躍していたが、後の作品では影が若干薄くなってしまった。しかし、ちゃんと『のらくろ総攻撃』のときなどは戦っている様子も見られた。垂耳で顔に特徴がないため階級章を見ないと区別しにくい。戦後は聨隊解散後メガネをかけて名前も改名、小学校の教師となった。
デカ
黒い鼻の白い犬(犬種不明)。のらくろが軍曹時代に猛犬聯隊に入隊、のらくろのに所属する。たい焼きが大好物。のんきで、頼りなさげなところもあるが、怪力の持ち主で、鉄棒を曲げたり、太鼓を打って皮を破ったこと[注釈 17]がある。蛙討伐の引金を引いてしまったこともある。体が大きいので駆け足が苦手。のらくろに負けず劣らずの健啖家で、一度隊の煮物を二犬で平らげたことも。のらくろの副官的務めを果たすうちにたくましく成長し、彼の右腕となる。のらくろと違い両親健在のうえ兄姉弟妹までいるという正反対の家族境遇。自分も負傷しているにもかかわらず、足を負傷したのらくろの軍代わりになったり、のらくろのために命をかけて奮戦するなど絶対的な忠誠心を持つ。豚軍との戦争の功により、“猛犬”勲章を授与され軍曹に進級。のらくろの退役後には軍で飛行士になる。戦後は聨隊解散後プロレスラーとなり、職を転々とするのらくろを大いに助ける。軍隊では標準語だったが、軍隊をやめてからは、軍隊言葉でなかったらお国言葉でしか話せないということで、九州弁、あるいは東北弁が入った話し方になっている。テレビアニメ版では最初からお国言葉でのらくろと同階級。
破片
小さな、ぶち模様のチン。のらくろが大尉時代に猛犬聯隊に入隊(『のらくろ武勇談』で初登場)。入隊時、身長は辛うじて合格域だったが、あまりの軽さに不合格となった。そこで、のらくろとデカの弁当を勝手に食べて体重を水増しし、再検査で合格した。あわてんぼうでそそっかしいところは、入隊直後ののらくろを思わせる。手先が器用なところと頭の回転の速さはのらくろも認めている。のらくろの勇猛さはデカに、機転が利くところは破片に受け継がれたようである。"破片"との渾名は破片のように小さい体格であったことから名付けられた(当初はチビスケなどと呼ばれていた)。豚軍との戦争の功により一等兵に進級した。連載版では後期のキーパーソンだが、性格、行動がのらくろと類似した主人公型のキャラクターであるためか、単行本版ではほとんど登場せず、戦後版でも未登場。なお当時のらくろは守備隊駐屯地にいたので部下共々詰所暮らしであり、ここで破片はのらくろからライフハックなどを教わっているので、彼にとってはのらくろは上官であると共に人生の師匠でもある。
穂高大隊長
猛犬聯隊第二大隊長、少佐。モール中隊長の上官。外見はカメと変わりないが額に皺がある。『のらくろ総攻撃』で後にも先にも1度しか登場していないが、豚軍との戦争の時敵地の偵察に第五中隊からのらくろ中尉を指名し、斥候司令を出す。「のらくろ中尉に行ってもらえば確かだ」と絶大な信頼を寄せる。
那智猛犬守備隊長
猛犬聯隊第三大隊第十一中隊長・大尉。『のらくろ総攻撃』で羊の国や豚の国を熊の国から守る猛犬守備隊の隊長として派遣(豚勝将軍からの依頼)される。熊にそそのかされた豚勝将軍が軍を率いて守備隊に夜襲を仕掛けるが、守備隊が難無く撃退する。豚勝将軍からいじめられていた羊の国は独立国となったが、逆恨みした豚勝将軍が再び熊の国から武器の援助を受け、守備隊に対して繰り返しの不法襲撃を重ねるため、本国の猛犬聯隊本部へ援軍を要請する。のちに敵地道路の偵察中だったのらくろ中尉から本隊到着の連絡を受ける。
テキサス大佐
猛犬士官学校生徒隊長兼教官。ブル聯隊長の従兄弟。額のシワが印象的。のらくろ曹長以下6名(ハンブル、爆弾、鉢巻、トンガリ、カメ。のらくろ以外は軍曹だが、曹長と軍曹ではそれぞれ軍刀と銃剣で扱う剣が違い公平に教育しにくいため、最初はのらくろにも同じ軍曹として共に教育を受けるように命じた。のちの小隊教練では曹長に戻し、小隊長の任務を命じた)の候補者を将校にするための教育や実戦などを行う。在学中何回となくドジを重ねるのらくろに「貴様は馬鹿のようで、利口なようで、利口なようで、馬鹿のようで、一体どっちが本当なのだ?」とあきれることもあった。卒業時に漫画猛犬軍監督(田河水泡)より承認了解を得て、候補者たちを将校(少尉)に進級させた。優秀な教官であるが戦後版では実戦に不慣れな点があだとなり山猿との戦いで大敗、ブルとのらくろに召集令が下ることになる。
師団長
中将。のらくろ以外では非常に珍しい有色(非白色)犬種。ブル聯隊長の上官。将官である為、ブル聯隊長以下は「師団長閣下」と呼んでいる。体がたいへん大きい。のらくろが一等兵(少年倶楽部版では一等卒)時代に開かれた軍旗祭で、各隊員の展示物を巡っていったが、のらくろが製作した師団長によく似たびっくり箱に脅き逃げ出してしまった(もちろんのらくろはブル聯隊長に怒られた)。その後、のらくろに猛犬連隊の軍旗の意匠の製作を依頼する。有色の犬は、少なくとも破片、緋鯉腹痛事件の相棒、ヤケ大尉、赤城大尉、剣大尉などもいる(さらにテレビアニメではモール中隊長も茶系の体毛の有色種である)。
山猿軍、ゴリラ軍、チンパンジー軍、かえる大王、豚勝将軍、かっぱ
猛犬聯隊と戦う敵たち。特に山猿軍とは何度も戦闘を繰り返し、それも山猿軍が一方的に攻撃を仕掛けているのだが連戦連敗となっている。何度戦っても勝てないので自軍の兵卒にさえ「我ながら愛想が尽きた」などと言われる有様だった。ゴリラ軍は山猿に頼まれて猛犬連隊を攻撃した。兵器や数では猛犬連隊に勝っていることも多いが、のらくろたちの活躍により、最後には敗北を喫する。最終的に山猿とは国境線付近を互いに非武装地帯化したのではないかと思われる講和条件で戦争を停止させている。
山羊、羊、豚、熊
大陸に棲み、それぞれ国家を持つ。犬は日本内地と朝鮮、豚は支那(漢民族)、熊はソ連ロシア人)、羊は満州、山羊は蒙古に棲む。これらは当時の国際情勢と日本の外交政策を反映している。のらくろが大陸にいた頃は親友になった者(犬の金剛、豚の包、山羊の汗、羊の蘭)もおり、一緒に金山の会社を興す。
  • ゲスト出演的なことが多いが人間も適宜登場する。警官や荒間凄左衛門など。上記の通り作者の田河水泡自身も登場した。窓野雪夫、凸凹黒兵衛、蛸の八ちゃん、スタコラサッチャンなど、田河の他の作品からの参加(カメオ出演)も見られた。
  • 単行本の表紙などには田河のトレードマークである後ろ足の生えたオタマジャクシのサインが描かれる。

猛犬聯隊の編制

  • 猛犬聯隊長 - ブル大佐
    • 第一大隊長 - 阿蘇少佐
      • 第一中隊長 - 剣大尉
      • 第二中隊長 - 白馬(しろうま)大尉
      • 第三中隊長 - 赤城大尉
    • 第二大隊長 - 穂高少佐
      • 第五中隊長 - モール大尉
      • 第六中隊長 - 六甲大尉
      • 第七中隊長 - ヤケ大尉
    • 第三大隊長 - 金剛少佐
      • 第九中隊長 - 八甲田大尉
      • 第十中隊長 - 大雪(おおゆき)大尉
      • 第十一中隊長 - 那智大尉
    • 機関銃中隊長 - 癇癪(かんしゃく)大尉
    • 歩兵砲隊長 - 轟大尉
  • 猛犬士官学校生徒隊長兼教官 - テキサス大佐

猛犬聯隊の主な歴史

  • 猛犬聯隊創立(昭和6年)
  • 山猿と戦争(昭和7年)
  • ゴリラと戦争(昭和8年)
  • 軍旗制定(昭和8年)
  • 象狩り(昭和9年)
  • チンパンジーと戦争(昭和10年)
  • かっぱ征伐(昭和10年)
  • 蛙討伐(昭和11年)
  • 熊退治(昭和12年)
  • 豚軍と戦争(昭和12年)

書誌

戦前発表

  • 雑誌連載版:少年倶楽部1931年(昭和6年)1月号 - 1941年(昭和16年)10月号
タイトルは連載開始時が「のらくろ二等卒」。以後、昇進とともにタイトルの階級は大尉まで上がる。ただし、兵制の改正にあわせて「一等卒」を「一等兵」に変更したため、この間のタイトルの種類は在籍した階級より一つ多い。また、特別付録に掲載された場合は「のらくろ大事件」や「のらくろ士官学校」など独自のタイトルがついた。退役後は「のらくろ大陸行」→「のらくろ大陸」→「のらくろ探検隊」と変わった。
少年倶楽部の編集長だった加藤謙一は、読者を増やすためには漫画が不可欠という佐藤紅緑のアドバイスを受け、田河に新作漫画を依頼する。田河は「男の子が好きなものを組み合わせれば人気が出るだろう」と、「犬の戦争ごっこ」をモチーフとした作品を考案した。
当初は実際の兵役同様「志願兵で2年満期除隊」という構想で、最初失敗続きだったのらくろが後半少し手柄を上げてめでたく除隊となる予定だった。初期のエピソードに、後年からは想像もつかない間抜けな話(風呂を沸かすのに爆裂弾を使うなど)があるのはこのためである。しかし、のらくろは加藤や田河の想像を超えた人気作となった。予定の2年目の終わりが近づいたとき、加藤は田河に「ここでやめたら子どもは黙っていない」と連載継続を相談するに至る。結果、のらくろが再び手柄を上げて伍長(下士官)に昇進するという形で作品が続くこととなる。
この伍長時代あたりから登場犬物たちの擬人化が顕著になり、二足歩行が当たり前となる。やがてのらくろが将校になると「に乗る犬」が登場した。
連載版での戦争の相手は多くが山猿軍である。これはいわゆる「犬猿の仲」に基づくもので、あとはゴリラかえるが相手である。いずれも現実の国家をモチーフとしていない点で後述する単行本版とは異なる点である。ただし、大尉時代にはのらくろの率いる中隊が国境警備の任につき、そこに「豚勝将軍の敗残兵」が登場するなど、単行本の世界観が混入した部分もある。
基本的に猛犬連隊側では将兵が死ぬ描写はほとんどない。唯一の例外が、現実の「爆弾三勇士」にならった4名の兵士が決死隊となるエピソード(のらくろ上等兵)である。このときは、決死隊が死ぬ場面は爆発によって鉄兜が吹き飛ぶシーンだけで描写され、最後のコマでは戦友の死を悲しんで涙をこぼすのらくろが描かれていた。当時の検閲への対応に加え、戦争による死を子ども漫画に描くに当たって作者や編集者が意を払ったことが想像される。連載版で現実の戦争に関係するエピソードもこの話だけである[注釈 18]
また、のらくろが守備隊駐屯時代にデカや破片から「戦がないと腕がなまるので、どこかに攻めていきましょう」と持ちかけられた折には、「猛犬連隊は正義の軍隊である。理由もなくよその国に攻め込むような野蛮な軍隊ではない。世の中が平和で戦争がなければこれほど結構なことはないではないか」と答えている。
1967年に、戦前少年倶楽部に掲載された(付録形式のものも含む)全エピソードを1冊にまとめた『のらくろ漫画全集』が講談社から刊行されたが、その後1975年から刊行された「少年倶楽部文庫」の『のらくろ漫画集』(全4巻)では、完成度の低さや全体の統一性から鑑みてと思われるが、いくつか収録されなかったエピソードやページがある。また後者では、戦前の軍国主義、立身出世主義が強く反映しているため差し替えられているセリフやキャラクター名、文庫ゆえに短くされているセリフが多数ある(反面、身分序列による敬語の使用はかえって正確に整えられている[注釈 19])。
1988年に、講談社「Super文庫」の一冊として連載版を全一巻にまとめたB5サイズの大型本『のらくろ漫画大全』が刊行されたが、これは上記の『のらくろ漫画全集』とは別物で、『のらくろ漫画集』収録の全エピソードを、4ページ分を1ページに縮小して収録したものである(なお、同書の巻頭に手塚治虫による「のらくろの思い出」と題された解説[7]、巻末に田河による「『のらくろ』あとがき」[8]が収録されている)。
  • 単行本:全ページカラー印刷・布装の高級本で、全10巻が刊行された。
    • のらくろ上等兵
    • のらくろ伍長
    • のらくろ軍曹
    • のらくろ曹長
    • のらくろ小隊長
    • のらくろ少尉
    • のらくろ総攻撃
    • のらくろ決死隊長
    • のらくろ武勇談
    • のらくろ探検隊
『のらくろ上等兵』から『のらくろ少尉』までと、『のらくろ探検隊』は連載版のエピソードを選んで改めて描きなおしたものが中心(一部オリジナルあり)である。上記の「爆弾三勇士」のエピソードも、より実際に近い形(雑誌では3名が体に丸い爆弾を結わえていたが、単行本では現実と同じく破壊筒を抱えていく)に変更されている。なお、『のらくろ上等兵』には、のらくろの二等兵(兵制改正後の入営であるため)および一等兵時代のエピソードが収録されている。
一方、完全な単行本オリジナルのエピソードである『のらくろ総攻撃』『のらくろ決死隊長』『のらくろ武勇談』の3作はそれらと色彩をかなり異にしている。この3冊は、「豚勝将軍に率いられ熊の国の援助を受けている豚の国と、犬の国の戦争」を描いている。この作品で設定されている状況は、当時の日本政府が国民に説明していた満州事変日中戦争の経緯をなぞったものであった。
このような「現実の戦争をなぞった内容」の作品が本連載でなく、単行本のみで登場したのは、軍から評判のよくなかった漫画的な軍隊漫画『のらくろ』に対する圧力をかわすためだったという見方もある。どちらにせよ「満州事変から日米開戦まで」の10年間に発表された『のらくろ』が、時代からもっとも大きな影響を受けたのはこの3作だったといえよう。しかしそういう時代背景はさておき、この3作は戦闘描写の連続するスリルあふれる内容となっている。地図と戦闘経過がリンクした『のらくろ決死隊長』はゲーム感覚があり、『のらくろ武勇談』で戦場で一度行方不明になったのらくろが最前線までを追いかける臨場感は、それまでの漫画的な要素が多い戦闘シーンとは一線を画している。
そして最後の『のらくろ探検隊』では小村寿太郎以来の開拓精神、興亜と民族協和の精神と、当時の「中国」が決して一つの民族で成り立っていなかった現実をわかりやすく理解できる。
戦後の1969年に全巻が講談社から復刻刊行された。1984年には「のらくろカラー文庫」として文庫化もされている。
のらくろ漫画全集はすでに絶版であるが、各地の公共図書館に所蔵されていることも多く、現在も閲覧するのは比較的容易である。
  • なお、のらくろ漫画をリバイバル連載したものとしては、他に以下のものがある。
    • 単行本
      • 普通社刊
        • 『のらくろ二等兵』
        • 『のらくろ上等兵』
        • 『のらくろ伍長勤務上等兵』
      • ろまん書房刊
        • 『のらくろ新品伍長』
        • 『のらくろ伍長』
        • 『のらくろ軍曹』
      • 「漫画常設館」(昭和6年8月、大日本雄辯會講談社発行。戦後は昭和44年12月講談社復刻発行)
        • 『のらくろ二等兵』
          • (「少年倶楽部」昭和6年新年号~同年8月号分の加筆再録版[注釈 20]
    • 連載漫画
      • 「漫画劇場」(普通社発行)
        • 『のらくろ伍長』昭和38年7月号~
      • 「月刊のらくろ」(ろまん書房発行)
        • 『のらくろ軍曹』昭和39年11月号~昭和40年新年号
        • 『のらくろ曹長』昭和40年2月号
        • 『長編・のらくろ曹長』昭和40年3月号~同年7月号
        • 『長編・のらくろ士官候補生』昭和40年8月号~同年10月号

戦後発表

  • のらくろ召集令
  • のらくろ中隊長
  • のらくろ放浪記
  • のらくろ捕物帳
  • のらくろ喫茶店
    • のらくろが帰国し、「のらくろ中隊長」以降は猛犬聯隊が解散した後の話が語られる。登場犬物たちの擬人化傾向はますます強くなり、人間と変わらない背格好で服を着るようになった(軍犬は裸だが市民は服を着ている、という設定)。かつての戦友たちが家庭や職場に戻る中、野良ゆえに行き場の無いのらくろが職を転々として放浪する姿が描かれる。戦前ののらくろは、子供向けかつ軍国時代ということもあって大儀に邁進し、そそっかしいところもあるものの優秀な面をたくさん見せていたが、戦後の市民生活では颯爽としたところがほとんどなくなり、作品としてもときおりナンセンスと言えるほどのギャグ色が多くなっている。
    • 1983年3月に光人社から刊行された『のらくろ自叙伝』は、のらくろの入隊から依願免官までを文章とイラストで綴られているが、少年倶楽部連載当時のエピソードとは若干の違いを見せている。また同時期に刊行された『のらくろひとりぼっち―夫・田河水泡と共に歩んで』は、田河の夫人である高見沢潤子が、執筆当時のことや長谷川町子などの弟子たちの思い出を綴ったエッセー集である。
    • 1991年に講談社から刊行された『のらくろ一代記 田河水泡自叙伝』は、作者の自叙伝として『のらくろ』に触れているが、執筆途中で本人が亡くなったため、本の後半を夫人が引き継いで書いている。

弟子による作品

  • 田河水泡の弟子である山根赤鬼山根青鬼兄弟は、1989年に田河水泡公認で『のらくろ』の漫画執筆権を譲り受け、田河の没後も下記作品を執筆した。
    • ドクターのらくろ奮戦記(1992年、経済調査会、金田武彦監修) 【山根赤鬼のみ執筆】
    • のらくろの川柳まんが(1998年、あゆみ出版)【山根赤鬼のみ執筆】
    • のらくろちゃん(2001年-2003年、漫画新聞、日本漫画学院)【山根赤鬼、山根青鬼で交代執筆】)
    • 2011年現在は、ウェブサイトコミックターミナル(日本漫画学院)内のコンテンツ『コミタ漫画館』において4コマ版『のらくろちゃん』が不定期連載されている。【山根青鬼のみ執筆】

漫画作品の関連事項

  • のらくろの姿は、アメリカのアニメ『フィリックス・ザ・キャット』の黒猫フィリックスにヒントを得て発想されたもので、犬種としてのモデルは毛並みの色合いからボストン・テリアと誤解されがちであるが雑種である。
  • 幼年教育社の尋常小学一年に掲載された芳賀まさをの『チビクロ』は擬人化された犬の軍隊が舞台で小柄な黒犬が主人公というのらくろを模した内容と成っている。のらくろの息子のチビクロとは別物。
  • 手塚治虫の「ユニコ」に登場する猫・チャオものらくろと同じ模様をしている。境遇も同じで箱に入れられて川に流されて捨てられている。手塚自身ものらくろを題材にパロディー漫画を描いている[9]
  • 漫画のコマで、歩行、走行などの動きを表現する手法として、後方に「土煙」(楕円の側方に太い棒のついたようなもの。棒の向きで動く方向を表し、速いものほどその個数が多い)が用いられた。これは、アメリカのコミックにすでに用いられていた表現である。後に手塚治虫がそれをヒントにヒョウタンツギにしたといわれるが、のらくろによるものか、アメリカからの直輸入かは不明。アニメのエンディングでは、のらくろがこれを不思議に思ってつまみあげたり、七輪で焼いて食べた後に歩き出すと再び発生するというシュールなギャグが挿入された。
  • 田河や「のらくろトリオ」以外の作品ではあるが、1988年に「くまの歩」によりマンガ『のらくろファミリー』が描かれている。のらくろの息子、黒太郎を主人公にしており内容は『のらくろ喫茶店』の続編と思われる設定だった。
  • 作者ゆかりの東京都江東区森下文化センターに「田河水泡・のらくろ館」(運営:公益財団法人 江東区文化コミュニティ財団)があり、近くの高橋商店街は「高橋のらくろ~ド」と名付けられている[注釈 21]。開館5周年の2004年12月18日より、のらくろは江東区の文化親善大使に任命された。また、その親しみやすさから、運送会社「丸運」のイメージキャラクターにもなっている[注釈 22]
  • 物語中に当時の民俗的資料となる物語が散見される(初午祭りなど現在ではほとんど実施されていない行事が描かれている)。
  • のらくろの犬種としての名前は存在しないが、特徴から「四つ白」と呼ばれ、縁起が悪いとされていたそうである。その為に生まれてもすぐ捨てられていたという[10]

映画版

瀬尾光世の主催していた瀬尾発声漫画で制作されたモノクロ版のアニメ映画

  • のらくろ一等兵(1935年)瀬尾発声漫画
  • のらくろ二等兵(1935年)瀬尾発声漫画
  • のらくろ虎退治(1938年)瀬尾発声漫画

映画公開に際して、軍歌「勇敢なる水兵」のメロディーに歌詞を付けた「のらくろの歌」が作られた。この歌詞にある「陽気に元気に生き生きと」という言葉は、戦後朝日放送ラジオの「おはようパーソナリティ」のキャッチフレーズに使われたことがある。

テレビアニメ版

第1作

のらくろ
(第1作)
ジャンル テレビアニメ
原作 田河水泡
脚本 広山明志ほか
監督 村山徹(「CD」名義)
演出 鳥居伸行ほか
出演者 大山のぶ代
雨森雅司
納谷悟朗
松尾佳子ほか
オープニング 「しっぽはぐぐんと」(大山のぶ代、雨森雅司)
エンディング 「アイアイ・ミコちゃん」(天地総子、大山のぶ代、松尾佳子)
製作
プロデューサー 松本美樹
制作 フジテレビTCJ動画センター
放送
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間1970年10月5日 - 1971年3月29日
放送時間月曜19:00 - 19:30
放送枠フジテレビ系列月曜夜7時台枠のアニメ
放送分30分
回数26
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1970年10月5日から1971年3月29日の毎週月曜日の19時00分~19時30分にフジテレビ系列で全26話(カラー作品)が放映された[11]

概要

「明治百年(西暦1967年、昭和42年)」にあたるこの時期に昭和初期のリバイバルブームが起こり、上述の通り「少年倶楽部」連載版をおさめた『のらくろ漫画全集』が復刻・刊行されてヒットした。これを受けて1970年にアニメの制作に至る。

軍隊の話という基本設定は原作と同じであるが、原作の要素「のらくろの出世」は戦後の時代を考慮してはずされ、のらくろは最後まで「二等兵」でデカと同僚の設定。また、原作に女性キャラクターのいない点を補い、従軍看護婦のミコがオリジナルで追加された。

原作が昭和初期の作品であることから、当時の子供向けテレビアニメとしては珍しく大人からの反響が大きかった。本放送開始以後、1970年10月末までにフジテレビには約2,000通の手紙が寄せられたが、その中の約40%が大人からのものだった。大人層からの反響では、原作から戦後向けにアレンジされた点(特にアニメオリジナルキャラクターのミコ)に関しては概ね不評だった[12]

キャスト

名前の後ろに☆印のあるものはアニメオリジナルキャラクター。

スタッフ

  • 原作 - 田河水泡
  • プロデューサー - 松本美樹
  • 制作担当 - 堀越唯義、渡辺米彦
  • 作画監督 - 小室常夫
  • 音楽 - 嵐野英彦
  • 効果 - 赤塚不二夫(同名の漫画家とは無関係の同姓同名)
  • 録音演出 - 岡本知(グロービジョン)
  • 調整 - 坂巻四郎
  • 録音スタジオ - 番町スタジオ
  • 動画 - 鈴木輝昭、福田浄二、鈴木俊男、今村豊子、石野清人、月川秀茂、江口徹、椿清明、林一夫、池田純子
  • 仕上 - 鈴木和男、横田藤一郎、長野礼子、榎本トシ子、堀田ミナ、尾崎孝、鬼沢富士男、藤川きよ子、相沢道子、中島正之
  • 美術 - 大隈敏弘、太田宏、高橋宏、武井明、遠藤守俊、亀谷三良、久保陽彦、加藤嘉明、野畑照子
  • 撮影 - 高橋照治、新井隆文、黒崎千伍、飯塚進、森田弘一、斉藤豊
  • 編集 - 矢吹敏明、山田静男
  • 制作進行 - 小林征史郎
  • アニメーション制作協力 - スタジオマンモス、アニメート
  • 現像 - 東洋現像所
  • チーフアニメーター - 角田利隆
  • アートディレクター - 亀崎経史
  • チーフディレクター - 村山徹
  • 文芸 - 渡辺美恵子
  • 制作協力 - 宣弘社
  • 制作 - TCJ動画センターフジテレビ

主題歌

オープニングテーマ - 「しっぽはぐぐんと」
歌 - 大山のぶ代 / セリフ - 雨森雅司 / 作詞 - やなせたかし / 作曲 - 山下毅雄
  • 歌詞は自己紹介風にのらくろの気質を歌っており、のらくろの侠気が見て取れる。また戦後の作品なので英語の単語語彙が用いられている箇所がある。
  • オリジナルのOP映像では、ラスト近く、花を摘んだのらくろがスキップする土手に「制作 フジテレビ TCJ動画センター」とクレジットされたが、他局での再放送ではその部分が省かれ、ラストにのらくろ達が戦車に乗り、「制作 エイケン」とクレジットされた静止画に差し替えられた。なお2004年3月から9月までホームドラマチャンネルで放送された際も、このフイルムが使用された。
エンディングテーマ - 「アイアイ・ミコちゃん」
歌 - 天地総子 / セリフ - 大山のぶ代、松尾佳子 / 作詞 - やなせたかし / 作曲 - 山下毅雄

各話リスト

話数 サブタイトル 脚本 演出 原画
1 大脱走の巻 広山明志 鳥居伸行 (不明)
特製胃袋の巻 辻真先
2 河童大騒動の巻 岡田宇啓
火薬庫歩哨の巻
3 銃剣術の巻 若林一郎 山本功
防空演習の巻 広山明志 角田利隆
4 山ザル隊長捕虜の巻 村山徹 鈴木輝昭
ガッカリ大手柄の巻 松元力 楠本勝利
5 突撃戦車隊の巻 広山明志 鳥居伸行 金子勲
像狩の巻 城山昇 山本功 (不明)
6 一騎打ちの巻 広山明志 村山修 月川秀茂
飛行機を作れ! 城山昇 渡辺はじめ 山岸弘
7 火事だあ~の巻 岡田宇啓 (不明)
軍事探偵の巻 辻真先 村山修
8 雪の進軍の巻 松元力 高垣幸蔵 楠本勝利
暴れ馬の巻 鳥居伸行 (不明)
9 迷子の子ザルの巻 広山明志 金子勲
清潔検査の巻 大工原正泰 村山徹 角田利隆
10 古池や...の巻 広山明志 鳥居伸行 (不明)
激戦第3高地 松元力 山本功
11 母ちゃん!たすけての巻 雪室俊一 岡田宇啓 楠本勝利
斥候の巻 松元力 (不明)
12 いい湯だぞの巻 広山明志 山本功 鈴木輝昭
面会日の巻 鳥居伸行 (不明)
13 西から来た軍曹殿の巻 高垣幸蔵
武士のなさけの巻 松元力 岡田宇啓
14 ぼくは一人ぼっちの巻 城山昇 山本功 山岸弘
怪獣退治の巻 武田貴美子 渡辺はじめ (不明)
15 大洪水の巻 広山明志 岡田宇啓 月川秀茂
スパイ珍作戦の巻 松元力 村山徹 (不明)
16 トレーニングコーチの巻 城山昇 鳥居伸行
汝の敵を愛せよの巻 広山明志 渡辺はじめ
17 連隊長殿行方不明の巻 山本功 楠本勝利
雪合戦の巻 松元力 村山徹 (不明)
18 不寝番の巻 城山昇 山岸弘
野外演習の巻 広山明志 (不明)
19 空とぶ戦車の巻 辻真先 渡辺はじめ
射撃演習の巻 鳥居伸行
20 使命を果せの巻 城山昇 岡田宇啓
カッパ沼異変の巻 辻真先 山本功 月川秀茂
21 寒い国から来た父子の巻 城山昇 村山徹 (不明)
オンボロ軍旗に敬礼の巻 鈴樹三千夫 高垣幸蔵
22 ミコちゃんSOSの巻 雪室俊一 岡田宇啓
わんぱく大将がやって来たの巻 広山明志 村山徹 山岸弘
23 大列車作戦の巻 生田直親 山本功 (不明)
春よ来いの巻 広山明志 鳥居伸行 鈴木輝昭
24 ウルトラ大砲の巻 村山徹 (不明)
がんばれ二等兵の巻 武田貴美子 渡辺はじめ
25 帰って来た軍曹殿の巻 広山明志 岡田宇啓 山岸弘
わんぱく大将捕虜の巻 山本功 江口徹
26 蛇の目傘作戦の巻 雪室俊一 竹中純 (不明)
男は度胸の巻 鈴樹三千夫 村山徹

映像ソフト

年代不明ながら次の4本(VHS)がビデオソフトされたが、いずれも現在は廃盤になっている。

パワースポーツ企画販売
  • Vol.1「のらくろの大冒険」
    • 第1回「大脱走の巻」・「特製胃袋の巻」と、第2回「河童大騒動の巻」・「火薬庫歩哨の巻」を収録。
  • Vol.2「のらくろの突撃戦車隊」
    • 第3回「銃剣術の巻」・「防空演習の巻」と、第5回「突撃戦車隊の巻」・「像狩りの巻」を収録。
  • Vol.3「のらくろのの一騎打ち」
    • 第6回「一騎打ちの巻」・「飛行機を作れの巻」と、第8回「雪の進軍の巻」・「暴れ馬の巻」を収録。
東映ビデオ
  • 「エイケンTVアニメグラフィティ」(1)
    • 第3回Aパート「銃剣術の巻」を収録。

DVDでは、2012年に安価DVD「アニメの王国」(ニューシネマジャパン)の一環として、第1回と第5回を収録した「01」と、第2回と第3回を収録した「02」が発売された。

オープニング・エンディング映像は、1986年に東映ビデオから発売&レンタルされた「TVヒーロー主題歌全集 8(エイケン篇)」(VHS)と、1999年12月より同じく東映ビデオから発売された「エイケンTVアニメ主題歌大全集」(VHS、LD。後にDVDも)に収録されている。しかし収録されたOP映像はオリジナル版ではなく、先述の「他局再放送用」版である。

2016年8月ベストフィールドから「想い出のアニメライブラリー」シリーズの一環として、DVD-BOXが発売。放送終了後45年にしてようやく全話が映像ソフト化された。なおOPフィルムは「再放送版」かオリジナルかは未定。

フジテレビ 月曜19時台前半
前番組 番組名 次番組
のらくろ
【当番組のみアニメ
金メダルへのターン!
【再び木曜19:00より移動】
【ドラマ枠再開】

第2作(のらくろクン)

1987年10月4日から1988年10月2日までフジテレビ系列で毎週日曜日の18時00分~18時30分に放映された。スタジオぴえろ(現:ぴえろ)制作、全50話。

レコード

  • キングレコード1932年に児童劇『のらくろのレコード』(講談社編集)10インチ優秀盤として8シリーズ発行。1976年にキングレコードからLPレコードとして復刻された。
    • のらくろ二等兵 K153
    • のらくろ一等兵 K179
    • のらくろ上等兵 K197
    • のらくろ伍長 K238
    • のらくろ軍曹 K303
    • のらくろ軍事探偵 K418
    • のらくろ小犬時代 K504
    • のらくろ少尉 K559

モバイル

  • スペースアウト・講談社:2003年にアクションシューティングゲーム『猛犬連隊のらくろ』が講談社のモバイルサイトにて配信。

脚注

注釈

  1. ^ ただし、日中戦争中に一時連載の中断を挟む。
  2. ^ 講談社のものは後述のように復刻加筆版。
  3. ^ 次号より昇進し『のらくろ上等兵』となる為に二等兵時代の物語としては最終話。
  4. ^ キャラクター商品の権利関係で著作権については日本では戦前は法的には否定的な時代であり(明治三十二年法律第三十九号ではキャラクター自体には登録の方法が無かった)、戦後の昭和時代でも問題となる場合はほとんどが他業者と意匠登録したものが競合した場合であった。商業的なメリットとして注目されるのは、アメリカNBCと日本のTBSとの間で(当時としては巨額の)契約が行われた、虫プロダクションの『鉄腕アトム』で派生的にアメリカ法によって米スポンサーからもたらされた放映権以外の商品への排他的な許諾料からである。
  5. ^ 連載第119回には正伝本編の緋鯉食中毒事件が蒸し返される。
  6. ^ 「ぼくら」は「少年倶楽部」の実質上の後継誌となる。
  7. ^ のらくろに人間を登場させるわけにはいかないがゆえにとった他国民の表現が口実にされたと言われている[4]
  8. ^ この事実は幼犬時代を描いた読切の物語『のらくろ子犬時代』で明らかとなっている。
  9. ^ デカの新兵時代には二犬で煮物の鍋を平らげ、軍曹時代の酒保販売係担当時は店の売り物を一人で平らげたくらい。さらに映画『のらくろ伍長』では五人前の焼鳥を一人で平らげている。
  10. ^ 原因は風呂焚きに手間取ったのらくろが後述の爆裂弾を使用したことだった。
  11. ^ 後年には叙勲で受けた勲章を剥奪されたこともあった。
  12. ^ チンパンジー軍に遭遇した時は体色を塗り替えカムチャッカの赤虎に扮し危難を乗り越えた、など。
  13. ^ 失敗を重ねた紆余曲折の末、自身の手足型をヒントにデザインを完成する[5]
  14. ^ のらくろが少尉として初参加した初午祭りの舞台において、隊員達の目の前で滑稽義太夫を吟じたりもした。
  15. ^ 雪合戦の最中に、自分に雪玉をぶつけられたことに怒り、丸太でぶん殴ったり、自分の部下に無茶苦茶な総攻撃を命じたりした。
  16. ^ 中にはしゃっくりの止まらなくなったのらくろのせいで後続の点呼が番号を百増やしてしまう不可抗力(「ヒャック。一。」「百二。」「百三。」となる)もあった。
  17. ^ また大掃除の時にのらくろと寝床の敷布を洗濯・乾燥する際の脱水絞り時に相方となったのらくろだけが捻り回され、その際デカがメタ的発言をしている。
  18. ^ ただし、少年倶楽部版における、大尉進級直後の山猿軍との戦闘のエピソードを描いた「のらくろ豪勇部隊長」には、戦死者の死体が転がっているシーンがある。
  19. ^ 上官からは新兵から下士官時代までは「貴様」と呼び掛けられていたが、士官学校卒業・将校以降は「君」と呼び掛けられるようになった。また会話も新兵時代と士官学校卒業以降とでは口調が違い、後者の場合は相談されるような口調(「~かね」という語尾)にもなったことがある。さらに一人称が新兵から下士官時代は「自分」、士官以上は「我輩(ただ上官に対しては「自分」)となっている。なおモール中隊長は例外的に「私」が一人称になっている。
  20. ^ 計算上、最も早期の加筆再録版である。
  21. ^ 田河の愛飲した酒の販売なども行われている。
  22. ^ 時期によって猛犬聨隊時のものと戦後の長じたものとがある。
  23. ^ 前述の通り原作では「カメ」と呼ばれていた。
  24. ^ 前述の通り原作では漢字書き(時に片仮名書き)

出典

  1. ^ 加藤丈夫『「漫画少年」物語 編集者加藤謙一伝』都市出版、2002年、p.124
  2. ^ 少年倶楽部文庫16 『のらくろ漫画集(1)』(講談社、1975年)P.195.-198。連載開始当時の「少年倶楽部」編集長・加藤謙一によるあとがき。
  3. ^ 連載第89回にて言及される。
  4. ^ 作者の義兄小林秀雄著「考えるヒント」掲載の「漫画」より。
  5. ^ テレビアニメ21話Bパート『オンボロ軍旗に敬礼の巻』より。
  6. ^ 『のらくろ総攻撃』「猛犬聯隊の編成と歴史」より
  7. ^ 元々は『のらくろ漫画集』第3巻の後書き。
  8. ^ 元々は『のらくろ漫画集』第2巻の後書き。
  9. ^ 「のらくろもどき」(1984年、4ページ)手塚治虫漫画全集389巻に収録。
  10. ^ 『のらくろ一代記』より。
  11. ^ DVD『宣弘社フォトニクル』 2015年9月18日発売 発売元-デジタルウルトラプロジェクト DUPJ-133 p56 「その他の宣弘社作品・イベント運営」
  12. ^ 読売新聞』1970年11月4日付朝刊、23頁。

外部リンク